No.198836

真恋姫無双~風の行くまま雲は流れて~第60話

第60話です。

ザック最高だあああああ!

2011-01-30 23:15:30 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:5181   閲覧ユーザー数:4755

はじめに

 

この作品はオリジナルキャラが主役の恋姫もどきな作品です。

 

原作重視、歴史改変反対な方、ご注意ください。

 

 

「貴女にとって袁家の軍師が如何な存在なのか…なんて野暮な事を聞く心算はないわ。でも、そうまでして『彼』に固執する理由というものも…貴女には説明する義務があるのではなくて?…桂花」

 

壇上から見下ろす冷めた視線から彼女の呆れと怒りがひしひしと伝わる

 

軍師として有るまじき失態の数々はもとより

 

敵方である袁家参謀の秘密裏の捕縛命令

 

彼女には

 

華琳には不思議でならない

 

両の手を床につけ平伏する眼下の少女はそれが決して演技などというものではなく

 

心からの

 

真からの

 

自身が王への絶対の忠心

 

それを今日まで、今尚をして

 

疑ったことがなければやはりこれからも無い、在り得ないと…だが

 

「聞きましょう…貴女の弁明を」

 

この子が身の保身を立てた時

 

果たして何がその口から出てくるものかと

 

覇王はその一挙手一投足を見逃さんと玉座に肘を張り身を乗り出していた

 

「恐れながら…此度の戦における我が失態の数々、並びに秋蘭への越権命令…弁明はもとより、釈明も御座いません」

 

顔を床に向けたまま、しかし決してその声に後ろめたさも悪びれも無く、桂花は言い切る

 

「へえ」

 

一瞬の間の後に突いて出る華琳の生返事

 

覇王の声色が曇る

 

(何を…?)

 

何を言っているのだろうかと

 

繭を潜める華琳を他所に桂花は尚も平伏のまま言葉を紡ぐ

 

「此度の戦…曹魏にとって何を以ってして勝利と成すか?如何お考えでしょうか?」

「…」

 

(この私を土俵に乗せようと…貴女が?)

 

故に

 

覇王は返事を明確にはせず

 

「…続けなさい」

 

すうっと桂花が息を呑む音が聞こえた

 

「此度の戦が最大が首級は袁家当主が袁本初…『曹孟徳』が目には如何に映りましょうか?」

 

…ピクリ

 

覇王の頬が引きつる

 

(あくまでも…)

 

此方を誘い込もうというのか荀彧は

 

(いいわ…その旨…良しとする)

 

「名家に生まれた凡俗よ、袁の冠無くば今日この日をして我が前に存在も相対もしてなかったでしょうね」

 

吐き捨てるように捲し立て彼女への侮蔑に語尾が上がる

 

「しかし彼のものは今日この日をして『曹孟徳』が前に並び立ち、覇を争うものとして存在しております…袁家が四代にわたり三公を輩出したのも今や昔。嘗ての威光はなく国は衰退の足を止めることも出来ず痩せ細るばかりに御座いました…あの者が現れるまでは」

「それが田豊だと…?」

「御意に」

 

床に向けたままの姿勢故、此方からは桂花の顔色は分からない…が、彼女は現状に臆するでもなくつらつらと言葉を続ける

 

それまでの

 

彼女が知る桂花ではなく

 

彼女が知らない軍師荀彧が姿がそこにあった

 

「内政においては国基盤の抜本的な建直し、社会設備の整備により民の人心を掌握し袁家の風評を上げそれを外に流し、国政にあっては戦は元よりその交渉術により属国を纏め中央、北の州の平定。袁本初の無能を補って余るばかりの画策…いずれも彼の者の功績は内外に知れ渡ることは言わずもがな…之を得てこそ」

 

不意に顔を上げる桂花、その柔和な笑みに華琳が息を呑む

 

「此度の戦は『華琳様』が覇道のほんの一歩目に過ぎません…しかし大陸の端から端まで曹魏の旗が並び尽くした時、その者が知と政は間違いなくお役に立つことでしょう。」

「…彼がこの先長くないと言ったのは貴女よ」

「これは…言葉を誤られたのは華琳様…貴女様です。明日には大陸全てが手に入るとでも?」

「っ!?」

 

前屈みになっていた体を玉座に埋める様に深く腰をおとしす華琳

 

(言ってくれるじゃない)

 

ふうっと息を吐く華琳の姿に桂花は喉を鳴らす

 

本人は気づいていない…が

 

その姿は嘗て自身に交渉の術を演じて見せた悠のそれに重なっていた

 

「彼の者が築く基盤は大国、小国問わず必ずや後の曹魏に生きましょう…重要なのは彼が『生きて』いる事ではなく…彼が残した物を『生かす』事」

 

再び両の手を床に付け額を擦り付ける様に平伏する桂花

 

「その役目…必ずや私めが果たして見せましょう…王佐の才として!」

 

静まり返る玉座の間

 

そして

 

「降参よ…桂花、今回の件は貴女に一任するわ」

 

そろそろと見上げれば覇王は両手を挙げ此方に微笑んでいた

 

お互いの視線が交差し、此処にきて初めて二人は笑顔になった

 

「一つ!」

 

そんな空気を割るかのように覇王は人差し指を立てる

 

「風が言ってたわ…袁家との戦、百回やれば百回勝てるって」

「…」

 

華琳が一体何言う物かと首を傾げる桂花

 

立て続けるように華琳はその人差し指をくるくると回し

 

「だけど百一回やれば私達は負けるとね…それは桂花、田豊が貴女を狙った時よ」

「…」

 

それは揺るぎも無い事実

 

事実

 

つい先日まで桂花は悠の策に乗せられかけていた

 

戦力に劣る袁家が揺さぶりをかけてくるとすれば曹魏の弱点

 

それは兵糧でも兵の数でもなく

 

桂花という存在

 

彼女を介して

 

曹魏の内情を混乱させること

 

桂花を曹魏の足枷とし

 

曹魏全体の動きを封じること

 

「獲らぬ狸の何とやら…かの者を引き入れるというのなら屈服させて見せなさい、貴女の力で…袁家最高の頭脳を」

 

悪戯気に首を傾げて笑みを浮かべる華琳

 

「…必ずや」

 

そう言ってたちあがると身を翻しコツコツと音を立てて玉座の間を後にする桂花

 

その後姿に

 

華琳は噴出しそうになるのを必死になって堪えていた

 

「猫が犬か…尻尾があれば千切れんばかりに振ってそうね」

 

ともあれば気になってしょうがない

 

田豊と言う存在が

 

「あの子をああまで変えてしまう…か。成る程、余程の策士にて豪胆な奴ね」

 

彼女が軍師たりえん理由にして

 

彼女が才の開花に必要な存在

 

(あの子はまだまだ強くなる…それを引き出すのがあの麗羽の側近とはね)

 

そういえば

 

(あの子も元は麗羽の…か)

 

くくくと喉が鳴る

 

愉快でならない

 

(麗羽…貴女の存在が我が覇道にこんなにも貢献してくれるとはね)

 

面白くてしょうがない

 

「全部私が頂くわ…貴女の物全て」

 

いくら声を殺しても鳴り響く自身の笑い声に

 

覇王は酔いしれていた

 

 

 

「ぶえっきしゅ!」

「ちょっ!汚なっ!」

 

ずずずと鼻を啜る麗羽に高覧が非難の声をあげる

 

「なあんですってえ!」

 

彼女の前で手綱を握る高覧の後頭部にズビシ!とチョップを入れる麗羽

 

「まったくう…これは誰かが私を称える噂を吐いたに違いありませんわ!」

「それにしたって…仮にも袁家の当主たる者があのようなくしゃみなど…」

「やかましい!…ですわ!」

 

再び後頭部に響く痛みに顔を顰めながら高覧は馬のスピードを尚を上げんと鞭を振るった

 

その後方には幾万もの兵が怒声と共に迫り、二人を追い詰めんと馬を走らす

 

「いやはやすごい数…」

 

軽口とは裏腹に額から伝う冷や汗

 

「あんのお裏切り者ぉ…ただじゃ済みませんでしてよ!」

 

怒りに声を張り上げる麗羽、しかし現状ただじゃ済まないのは追われている此方の方である

 

しかしやはり怒りが収まらない我等が当主様は必死の形相で迫る兵達へ首を回して

 

「恥を知りなさいこの田舎者!」

「袁家当主を裏切ったからには地獄を見る覚悟は出来てるんでしょうね!」

「○□△#*%!!!!」

 

しまいには中指を立てて相手を罵り煽る

 

「いやいやそんなことしたら…」

 

高覧が声をあげると同時に

 

「まてやこらああああ!!」

「八つ裂きにしてやるかんなああああ!!!」

 

目に見えて一同のスピードが上がり、走りながらに相手の顔まで認識できるまでに迫る

 

「ひいいいっ!」

「ちょっと!高覧さん!追いつかれますわよ!?」

 

耳元で響く当主様の怒号

 

「誰のせいだと思ってるんですかあああ!」

 

涙目になり必死に鞭を振るう高覧

 

しかしその差は見る見るうちに縮まっていく

 

「高覧さん!!」

 

尚もキンキン声が耳元に響き

 

「安請け合いするんじゃなかった!鳥巣守備に配置換えしてもらえばよかった!斗詩姉と変わってもらえばよかったああああ!!!!」

 

今になって思えば敬愛する悠に「頼みましたよ♪」などと言われたものだから二つ返事に「お任せください!」とこの役目を請け負ってしまった自分が恨めしい

 

溢れ出る涙が頬を伝わることなく風を切って後方に舞って行く

 

「なあんですってえ!?この袁本初を救う最も重要な任を貴女は降りるのですか!?」

「それが貧乏クジだって言ってるんじゃないですかあ!!」

 

全速力で駆ける馬の上でギャアギャアと喚き立てる二人

 

後ろからは「撃ち落してやる!」と馬上から矢が飛び交いヒュンヒュンと耳元で風を切る音が鳴り出す

 

(この状況でも撃ってくるというの!?)

 

山間を全速力で駆ける馬上からの射撃に息を呑む

 

振り返らずとも分かる

 

こんな無茶苦茶な事が出来るのは嘗て自身が所属していた分隊だ

 

どんな状況においても相手を弓矢で射る

 

比呂が嘗て調練し育て上げた精鋭部隊

 

「将軍の馬鹿ぁ!」

「っ!?そうですわ!比呂さんさえいればあんな餓鬼に私があんな…」

 

思い出したかのように後ろの当主もわなわなと震える

 

その様子に高覧はおそるおそる

 

ちょっと…というかかなり聞いてみたかったそれが口を突いて出る

 

「あの…やっぱり袁紹様はあの逢紀と…その」

「御茶などしてやりませんでしたのに!!」

 

一瞬本気で馬から転げ落ちそうになった高覧だった

 

「…なんですの?」

 

じろりと此方を伺う麗羽に

 

「いえ…ちょっと…なんというか…安心したまでです」

 

苦笑いを浮かべ高覧

 

「笑ってる余裕があるならこの状況をどうにかしなさい!」

「いやだからこれは袁紹様が…」

 

反論しかけたその時前方に揺れる松明の明かりが目に入り

 

「しめた!」

「は!?」

 

キョトンと瞳をパチクリさせる麗羽を他所に高覧は声を張り上げる

 

「身を低く!上空に気をつけて!」

「はい!?」

 

上に何があるのかしらと

 

思いっきり仰け反る麗羽

 

そこへ

 

ドンガラガッシャン

 

数人を押し潰せるほどの巨体な岩が

 

空を覆い尽くさんとばかりに振ってきた

「いいやああぁぁぁ!!!!」

あとがき

 

ここまお読みいただきありがとう御座います

 

ねこじゃらしです

 

なんか暫くぶりの更新…すみません長々と…サボってました

 

いやあ、ほら、最近忙しくて中々筆が進まなくて…サボってました

 

だって新年会とかサッカーアジアカップとか身の回りがあわただしくて…サボってました

 

まあ…なんつうか

 

お待たせした分は頑張らねばと

 

ここまで書いて気づいたのですが

 

エアーさんまだ今年なって出番なくね?

 

いやほら!

 

今年入ってまだ二話しか更新してないし!

 

うん…うん

 

…それでは次回の講釈で


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
30
2

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択