No.198457

茜ちゃん 第七話 『開始』

R.saradaさん

リレー七話目っ。
カオスっ!

2011-01-29 11:53:28 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:2275   閲覧ユーザー数:1907

 人ひとりが丸々入り込める様なダンボールを背負いながら、美しい白馬――白龍に跨り私は先を急いでいた。

 あの化物たちから逃げ始めて一体どれくらい経ったのだろう。

 ふと視線を上へと向ければ日は既に西へと沈みかけ、そろそろ夜の帳が落ちようかと言うところ。

 

「何がどうしてこんなことに!?」

 

 それは問いかけ。

 答えなど返って来はしないと、わかってはいるけれど。

 それでも私は、誰かに問いかけずにはいられなかった。

 

「あーもう! 訳わかんないよぉ!!」

 

 それは心の叫び。

 自分のおかれた状況と、目の前に広がる現実に。

 自分のおかれた状況の理不尽さと、目の前に広がる現実の非現実さに。

 私は叫ばずにはいられなかった。

 

 

 それはまさしく突然だった。

 誰かに問いかけ、しかし誰にも答えてはもらえず。

 心の内を吐き出し、やはり誰にも答えてはもらえず。

 もう嫌と、心の中で呟いた瞬間。

 

『ん、おお。君が茜か』

「――えっ」

 

 それが頭の中に響いたのは。

 

『やぁやぁ、茜。どうだい? 行き先は決まったのかい?』

 

 その声は気の知れた友人に話しかける様に。

 しかしそれでいて、どこかこちらを見下ろす様に。

 

「だ、誰……?」

 

 私は一人呟いた。

 すごい速さで駆けていく白龍にしがみ付きながら、周りを恐る恐る見渡してみる。

 しかしどこを見ても目的の人物はおらず、どこまでもどこまでも荒れた土地が続いているだけだった。

 

『探しても俺の姿は見えないよ』

「見えないって――」

『君も感じてはいるとは思うけど、俺は直接君の頭に語りかけているからね。

 いわゆるテレパシー、もしくは天の声ってやつさ』

「テレパシー? 天の声?」

『そそ。君が今まで会ってきた連中と、同じ類の力だと思えば良いよ』

「……」

 

 納得できない。

 と言うより納得したくない。

 

『ま、別に納得してもしなくても良いけど。

 でもこのままだと話が進まないから、とりあえずまず聞かせてくれ』

「な、何ですか?」

「うん、それはね――」

 

 それは一度、言葉を切って。

 

『行くところ、決まった?』

 

 やがて放たれた言葉は、正確にそこをついてきた。

 

「……」

『うん、その様子だとまだ決まっていないようだね』

「――っ、し、仕方ないじゃないですか!」

 

 それは激昂。

 たまりにたまった不平や不満。

 自分のおかれた状況の理不尽さと、自分の目の前に広がる現実の非現実さに。

 それは目を向けたことで唐突に溢れだし、零れだした。

 

「――可愛い顔と見れば見境なく手を出す覇王。

 ――血に酔うと相手が気絶しようがむしゃぶり尽くす様に愛す自由奔放な王。

 ――友達顔で皆と仲良くしようねと言って、数人掛かりで開発してゆく自称人徳の王。

 そんな三人の一体誰を選べって言うんですか!!」

『なるほど、それは確かに』

「抑え役がいるとは言っていましたけど、私はその人のことを知らないんですよ!?」

 

 そう、知らない。

 私は抑え役が一体どんな人なのかを。

 

『んー、そうだなぁ』

 

 頭の中の声はそう呟くと、少し考える様に唸る。

 

『――“姉者は可愛いなぁ”と実の姉を見ながら悶える、新ジャンル姉萌を開拓した人。

 ――あまりにも自由奔放すぎる王の行動にいつも頭を悩ませ痛めている苦労人。

 ――一歩間違うと嫉妬神。

 そんな人たちかな?』

「大丈夫なんですか!?」

 

 どうしよう!? とても不安なんですけど!

 そんなところに私に助けを求めろって言うんですか!?

 

『ははっ、0割冗談だよ』

「で、ですよね。さすがに抑え役の人が……って待って!? 今0割って言いました!?

 ってことは全部本当――」

『はっはっは。冗談だよ、冗談。気にしなくていいよ』

「信用できない!!」

 

 そんな私の叫びを見事に無視し、頭の中の声は軽快に笑い続けた。

 この人絶対私で楽しんでる……!

 

 

『く、くくっ。ご、ごめん。ついね、つい。……くくっ』

「……」

 

 笑い声を無理に止めようとして止められず、それでも必死に抑えようとしている声が頭の中に駄々漏れである。

 この人は一体何がしたいんだろうか。

 

 やがて落ち着いたのか、頭の中の声はこほんと小さく咳き込むと。

 

『さて、まぁいろいろ言ったけれど』

 

 仕切り直す様にそう語りだした。

 しかしその声から、どこか楽しそうにしている印象を受けるのは気の所為だろうか。

 そして次に口にした言葉は。

 

『行くところ、決まった?』

「今までの流れでどう決めろと!?」

『え? 決まってないの?』

「何であなたが驚いているんですか!?

 むしろ今までの流れで決まっていると思っているあなたに驚きですよ!」

 

 仕切り直す気などさらっさらなかった。

 ただただ私で遊ぶことに全力を注いでいた。

 

『ぷっ、くくっ、君最高。さいっこうだよ。面白すぎ』

「全く嬉しくない!」

 

 

 本当、一体この人は何をしたいだろう。

 突然現れ、私の心をかき乱していく。

 そう思ったら、私の口は勝手に動いていた。

 

「あなたは一体――」

『気は晴れたか?』

「何を――え?」

 

 しかし動かした口からもれた声は、重ねる様に頭の中に響いた声によって遮られる。

 

『君、唐突にこんな世界に飛ばされて、いろいろ沈んでいただろう』

 

 その声はさっきまでの楽しそうなモノではなく。

 

『目を覚ませば眼前に化物二人にホモとその相方』

 

 とても穏やかで、とても優しげな。

 

『何だ何だと驚いている内に、あれよあれよと巻き込まれ』

 

 それは私に言い聞かせる様に。

 

『変態どもに追いかけられ、誰も知っている人がいない土地を逃げ回る』

 

 それは私を落ち着かせる様に。

 

『怖かっただろうさ。心細かっただろうさ』

 

 そしてどこか気恥ずかしそうに。

 

『まぁそんな君を見ていられなくてね。

 ちょっと声をかけてみたんだけど……』

「あっ……」

 

 そうか、そう言うことか。

 この人は、私を元気付けてくれたんだ。

 恐怖にさらされ、一人孤独に逃げ続ける。

 手を貸してくれる人たちはいたけれど、それでも逃げるときにはただ一人。

 でもこの声の主と言葉を交わし、からかわれ。

 それに対して声を荒らげながら言い返す。

 そんな私は、いつしか沈んでいたことすら忘れていた。

 それを、この人は……。

 

「えっと、すみません。一つだけ、聞いてもいいですか?」

『ん、何?』

「名前を、教えて貰えないでしょうか」

『名前?』

「はい、名前を」

 

 感謝。さっきまで心にあった怒りは消え、いつしかそれで一杯になっていた。

 暖かい。それで一杯になった心は、とても暖かかった。

 

『……ははっ、俺の名前は――』

 

 

『さて、落ち着いたところで話を戻そうか』

「はい」

 

 今度こそ仕切り直す様に。

 

『君はまだ、逃げるところを決めていない』

「……すみません」

『いや、君は全然悪くないんだが……しかしそれははっきり言ってまずい』

「それは、わかってますけど……」

 

 決められない。渡された情報を選び取ることができない。

 

『……そうだな、じゃあ少し言い方を変えよう』

 

 そこで声の主は言葉を切る。

 言葉を切ることで、次に述べる言葉をはっきりと聞かせるために。

 

『――民を想い、民のために力を尽くし、そのためには恨まれることすらいとわない一人の覇王。

 ――権力を求めず、『家族』の笑顔を求め、『家族』の笑顔のために戦う江東の小覇王。

 ――民の無念を知り、自分の無力さを知っていながら、それでもなお仲間と共に理想を掲げ続ける人徳の王。

 君はその三人の誰を選ぶ?』

「……」

 

 

『やっぱり決めきれない、か』

「……」

 

 その声は乗せられた意味と同じく予想通りだと、そう告げていた。

 渡された情報はさっきまでモノとは正反対で、誰もが心引かれるモノだった。

 でも。誰もが心引かれるモノであるが故に。

 

 選ぶことができなくなってしまった。

 

「……すみません」

『いやいや。君の所為じゃないって。しかしどうしたものか……』

 

 声の主は苦笑する様にそう答え、答えたあと、考え込む様に声を潜め。

 

『……ふっ』

「……え?」

 

 小さく笑った。

 

『良いことを思いついたよ』

「良いこと?」

『そう良いこと』

 

 声の主は素晴らしいことを思いついたと、もしくは面白いことを思いついたと言う様に、うれしそうに話していた。

 

『決められないなら、決めてもらえばいい』

「え? 一体、何を言って……」

 

 物凄く嫌な予感がする……。

 

『まぁつまり、君が選ぶんじゃなくてその三人に選んでもらうって言うこと』

「いや、だから。そう言うことじゃなくて……」

『くくっ、ようするに――』

 

 

『一人の少女を賭けて奪い合う、『三国志』再び!』

「ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!」

 

 辺りに響き渡る、私の絶叫。

 

 

「『三国志』再びってどういうことですか!?」

『そのままの意味だよ。君を賭けて三つの国が争うのさ』

「ちょ、ちょっと待って下さい! 争うってまさか戦争をするってことですか!?」

『いやいや、そこまで大きなモノじゃないけど。

 でもまぁ主だった将は基本参加するんじゃないかな』

「え、ぇぇえええ!! 一体どうやってそんなことをおこさせるんですか!? さっき言った三人とも、仮にも王なんでしょう!? まさかそんな馬鹿な理由で争うなんて――」

『そこはほら、俺の能力……まぁぶっちゃけ作者補正と言うかご都合主義と言うか、そんなのだよ、うん』

「何を言ってるんですか、あなたは!?」

『まぁそんな訳で、変態四人と52人の恋姫たちが君をかけて争いあう。

 つかまるのが嫌だったら、全力で逃げると良いよ。はっはっは』

「はっはっはじゃありません!!」

 

 や、やばい。やばすぎる。

 このままだと大変なことに……!

 

「す、すみま――」

『あ。このまま直線に進むと君を手助けしてくれる人のところにたどり着くよ』

「――せん。って、えっ?」

『まぁ俺にできるのはこのくらいだから、あとは頑張ってよ』

「できるのは……ってあなたはかき回しただけじゃないですか!」

『はははっ、そうとも言う』

「そうとしか言いません! ああ、もう!!」

 

 それは諦め。そして無理やりさせられた決意。

 長時間乗り続けた結果かそれとも白龍がすごいのか、それなりに余裕のあった私は、白龍の腹を軽く蹴り。

 

「はぁ!」

 

 できうる限りの全力で駆け出した。

 

『頑張れよー』

 

 気の抜けた声援を受けながら。

 

「――『サラダ』さんの、ばかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 

 

 

 

 

「うん。そ、そういうこと。

 え? ふざけるな? はっはっは、ごめんごめん。

 ま、そう言うことだから。後よろしく――」

 

 

「――『月千一夜』」

 

 

 某所A

 

「へぇ、欲しいわね。その娘」

「華琳様……」

 

 

 某所B

 

「ふふっ、面白いことになりそうね♪」

「雪連……」

 

 

 某所C

 

「愛紗ちゃん、行くよ!」

「えっ、と、桃香様!?」

 

 

 

こんにちは、サラダです。

ただ一言、ごめん。ほんっとごめん。


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