No.190580

真・恋姫無双アナザーストーリー 雪蓮√ 今傍に行きます アフターストーリー第5話

葉月さん

お久しぶりです。

今回は一部の人からから大人気(?)の管輅のお話になります。

管輅の生い立ちが少し判明します。

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2010-12-19 22:06:46 投稿 / 全13ページ    総閲覧数:7090   閲覧ユーザー数:5132

真・恋姫無双アナザーストーリー 

雪蓮√ 今傍に行きます アフターストーリー第5話

 

 

 

 

【陽だまりの中は暖かと……】

 

「ふぅ、暇ですね……」

 

一人椅子に座り、行き交う人たちをただ呆然と眺める。

 

「今日も、お客さんは誰も来ないようですね」

 

まあ、このような店と店との間でやっていれば誰も気がつかないと思いますが……

 

もっとも、わたくしは人と接することが余り好きではありませんから丁度よいのですが。

 

人の心が読める……今ではコントロール出来る様になりましたが、子供の頃はそれが出来ず、大人達の薄汚い心が私の頭の中に流れ込んできて、一時期心が壊れそうになったこともありました。

 

そんな時、わたくしの素質を見込んでかあの筋肉だる、もとい、卑弥呼がわたくしの元に現れました。

 

……

 

…………

 

………………

 

『お主、名は?』

 

『……管輅……公明』

 

『そうか、管輅よ、わしと一緒に来ぬか?そうすれば、その耳障りな声を聞こえなくしてやるぞ』

 

『……ほん、と?』

 

『ああ。だが、それは与えられるものではない、自分で身に付けるのだ。少々、辛いが今の状態よりはましだろう』

 

『……いく……』

 

『そうか。では今日からお主は我々と同じ管理者になる。歓迎するぞ管輅よ』

 

……

 

…………

 

………………

 

とまあ、自分の生い立ちはこんな所でいいのですが、あのあと危うく、漢女の何たるかを教え込まれそうになり逆に生命の危機を感じるくらいでしたわ。

 

「今、思い出しても寒気が走りますね。嫌ですわ。もう少しまともな人に拾われたかったものです」

 

ですが、こうして私の力をコントロール出来る様にしてもらった事には感謝しないわけにはいきませんわね。

 

こうして行き交う人々の心を見ていると、この街がどれほどすばらしいかが手に取るようにわかります。

 

「みなさん、幸せに溢れていますわね。これも雪蓮さんの力なのかしら?それとも……」

 

天の御遣い、北郷さんかしら?

 

あちらの世界で彼を見た時、なぜ優未さんや雪蓮さん、他のお三方が北郷さんを好きになったか良くわかりませんでした。

 

あの世界では、ごく一般的な顔つきにちょっと身体能力が他の人より高いくらいで、勉強もそこそこの、いわゆる凡人ですのに。

 

しかし、暫く彼を観察していると分かったことがありました。

 

彼の笑顔は周りを和やかにし、そして一人一人を大切に思っているということでした。

 

相手が悩んでいる時は、自分の事の様に悩み。そして、喜んでいる時は、相手の方以上に喜び労い、または賛美の言葉をおかけになる。

 

そして何より、必要な時には必ず傍に居てくれるということでしょうか。

 

ですが、色恋事に関しては鈍感もいいところですね。それが良いのか悪いのか相手方をやきもきさせて気づいてもらおうと必死になっているうちに、どんどんと好きになって行ってしまうと言う、言わば、恋の螺旋ですね。それを無自覚でやっている北郷さんは凄いのだか凄くないのだかわかりませんわ。

 

「はぁ、それにしてもホント暇ですね」

 

人と接するのは余り好きではないと言いましたがこうも誰にも気づかれないと少々気が滅入ってしまいますね。

 

「仕方ありません。場所を変えてみましょうか」

 

なんとなく場所を変えようと片付けをしているときでした。聞き覚えのある声がわたくしに声を掛けてきたのです。

 

「あれ?もしかして管輅さんですか?」

 

振り返るとそこに北郷さんが立っていました。

 

「あら、噂をすれば何とやらですね」

 

「え?」

 

「いえ、こちらの話です」

 

「?」

 

北郷さんは首を傾げて不思議そうにしていました。

 

「ふふふ、それよりこのようなところで何をしているのですか?」

 

「えっと……街の警邏を……」

 

あらあら、嘘がバレバレですよ、北郷さん。そうでなくても北郷さんは嘘がつけないお人のようですからお顔に直ぐ出てきますわ。

 

「ふふふ、そう言う事にしておいてあげましょう」

 

「えーっと……あっ!片付けるの?手伝うよ!」

 

「ふふふ、ありがとうございます。では、そちらをお願いしますね」

 

「それにしてもこんな所でお仕事ですか?」

 

「ええ」

 

「もっと広場とかでやれば人も来るんじゃないですか?」

 

「そうですね。ですが、わたくしはこういった所が好きなのです。ですからいいのですよ」

 

まあ、事情を知らなければそう言うでしょうね。

 

「ふ~ん……よいしょっと。こっちは終わりましたよ」

 

「ありがとうございます……?」

 

わたくしが北郷さんが片付けた荷物を受け取ろうとすると逆にわたくしの持っていた荷物を持っていかれてしまいました。

 

「管輅さんみたいな女性にはこれは重いでしょ。俺が目的の場所まで持って行きますよ」

 

「あらあら、こう見えてもわたくし、力はあるのですよ?」

 

「そうだとしても、管輅さんにこんな重たいのを持たせるわけには行きませんよ」

 

ホントになんの下心も無く言うお方ですね。北郷さんは、だから種馬なんて言われてしまうのですよ?

 

「ふふふ……」

 

「な、なんで笑うんですか?」

 

「いいえ、お優しいのだなと思いまして」

 

「そんな事ないですよ。もしかしたら下心からかもしれませんよ?」

 

「あらあら、それは困りましたね」

 

そんな冗談を言っても心のうちではそんな事をも思っていないことは丸分かりですのに。

 

そう言えば、北郷さんには伝えてなかったのでしたね。わたくしが心を読めると言う事を。

 

教えてもよいのですが、この類は人に気味悪がられこそして、決して褒めて貰えるものではない事は小さな頃にいやと言うほど思い知らされていますし。

 

「?管輅さんどうかしましたか?顔色が悪いですよ」

 

「いいえ。なんでもありませんわ」

 

「そうですか?ならいいんですけど……」

 

北郷さんは心の底からわたくしを心配してくれているようでした。

 

別に、心を読んだわけではありませんが、その表情や仕草でわかります。

 

「そうだ。少し休んでいきましょう。この近くに美味しいお茶屋さんがあるんですよ」

 

私を気遣ってでしょう。北郷さんはお茶にしようと提案してきました。

 

「お気遣いありがとうございます。ですが、わたくしは平気ですので」

 

「いや、俺が疲れちゃって、それに喉も渇いたから。あっ、奢りますから一緒に行きませんか?」

 

明らかにわたくしを気遣っての嘘でしたがそう言われては断るわけにも行きませんね。

 

「わかりましたわ。ありがとうございます。北郷さん」

 

「何の事ですか?俺が休みたかっただけなんでお礼なんていいんですよ」

 

「そうでしたわね」

 

わたくしが微笑むと北郷さんは少しは安心したのか、そのお顔は柔らかい微笑みを浮かべていました。

 

「……っ!?え?あ、ほ、北郷さん?なぜ手を繋ぐのでしょうか?」

 

不意に手を握られてわたくしは驚きました。

 

「え?ああっ!ご、ごめんなさい!雪蓮とか優未と一緒だといつも手を握らされるからつい癖で……いやですよね」

 

「いいえ、少々ビックリしましたが嫌ではありませんよ」

 

生まれてこの方、殿方に手を握られたことが無く年甲斐も無く、途惑ってしまいました……あの筋肉達磨どもは別ですよ?あれは化け物ですから。

 

「そうですか。それならよかったです」

 

――どくんっ!

 

「っ!」

 

わたくしの胸が大きく高鳴りました。

 

一体どうしてしまったのでしょう、わたくしは?たかだが手を握られて笑ってくださっただけだと言うのに……

 

「……」

 

わたくしは北郷さんに握られた手をじっと見つめていました。

 

ですが、先ほどの様に胸の高鳴りは起きる事はありませんでした。

 

一体なんだったのでしょう。先程の高鳴りは?

 

「さあ、着きましたよ」

 

北郷さんに連れてこられた場所はとても落ち着いた雰囲気のあるお茶屋、どちらかと言えは正史に何処にでもあるカフェのようでした。

 

人もまだそんなには入っていないのでしょう。それほど騒がしくも有りませんでした。

 

「随分とおしゃれなお茶屋さんですわね」

 

「そうですか?そう言って貰えると嬉しいですよ」

 

「?なぜ北郷さんがお喜びになるのでしょうか?」

 

「ここのデザ、えっと内装は俺が考えたんです。だからそう言って貰えるとうれしくて」

 

テレながらも喜んでいる北郷さんのお顔はとても民を背負っているお顔には到底見えなく、無邪気な子供のように見えました。

 

「いらっしゃいまっ!お、御遣い様!い、いらしていただけたのですね!」

 

お店から出てきたのは可愛らしい服を来た孫権様くらいのお年の女の子でした。

 

「ああ、またお茶とお菓子を食べにきたよ」

 

「御遣い様に来て頂けるだけで光栄です!……そ、それでそちらの方は?」

 

女の子はわたくしに目を向けて北郷さんに伺っていました。

 

「ああ、彼女は管輅さん。孫策の知り合いの人だよ」

 

「そ、そうですか……」

 

あらあら、なんだか敵視されてしまいましたね。しかも、わたくしを見るなり、勝ち誇られてしまいました。

 

ふふふ……これはお仕置きが必要かしら?わたくしはまだまだ現役ですのに。

 

「っひ!!あっ、お、お席にご案内します!」

 

わたくしがニッコリと笑うと女の子は小さく悲鳴を上げて、わたくしから目線を外したい為か北郷さんをお席に案内する為に歩き出しました。

 

「それじゃ行こうか管輅さん……管輅さん?」

 

「ええ、それでは参りましょうか北郷さん」

 

わたくしは微笑むと北郷さんの後を着いて行きました。

 

「で、では、お決まりになりましたら及び下さい。御遣い様!」

 

「ありがとう。それじゃ、後で呼ぶね」

 

「はい!」

 

席に案内してくれた女の子は北郷さんを見つめながら元気に答えて離れていった。

 

「好かれておいでなのですね。北郷さんは」

 

「そうですか?まあ、子供には良く遊んでとせがまれますけど」

 

北郷さんはわたくしの言葉を勘違いしてお答えになりましたが、なるほど……これでは、みなさんが溜め息を吐くのも納得いきますわね。

 

「北郷さんは、もうお考えになってから発言した方がよろしいと思いますわ」

 

「え?あ、はい、そうします?」

 

やっぱり北郷さんは何を言っているのかわかっていないようですわね。まあ、そのしぐさが可愛らしいので許しましょうか。

 

「あ、あの何かおかしいですか?俺」

 

「いいえ、思い出し笑いをしただけですわ」

 

「管輅さんは不思議な人ですね」

 

「そうですか?変わり者とはよく言われますが」

 

「ははっ!そんな事を言ったら俺の方が変わり者ですよ。こんな服着てるし考え方もここの人たちとは違うしね」

 

「ふふ、それに種馬ですか?」

 

「うぐっ!そ、それを言われると……ははは」

 

北郷さんは苦笑いを浮かべながら恥ずかしそうに頬をかきました。その仕草がとても可愛らしく、一瞬保護欲に駆られてしまいましたわ。

 

「ほ、ほら。それより何か頼まないと!どれにしようかな……管輅さんは何にしますか?」

 

「北郷さんと同じものでいいですわ」

 

「え、同じで良いんですか?」

 

「はい」

 

「わかりました。それじゃ……すいませぇん!」

 

「はい!ご注文は何でしょうか御遣い様!」

 

北郷さんが店員を呼ぶと先程、席に案内してくれた女の店員さんが直ぐに現れました。

 

何処かに隠れていたのかしら?あら?良く見ると肩で息をしていますね。と言う事は走って来たということでしょうか。

 

なんとも、慕われていますね北郷さんは。

 

「それじゃ、お願いね」

 

「はい!一番に作らさせます!」

 

「いやいや、他の人も居るんだからそんなに急がなくても」

 

「いいえ!御遣い様をお待たせさせるなんて出来ません!」

 

「そ、そう?なら、お願いしよう、かな?」

 

「はい!!では、行って参ります!」

 

満面の笑みでお辞儀をした少女は、厨房へと走っていった。

 

「北郷さん?」

 

「なんですか?」

 

「あの娘に何かしたのですか?」

 

「い、いえ。なにも……」

 

「……本当ですね?」

 

確かに、やましい事はしていないようですが、やましい事は……

 

「本当ですよ。ただ、足を捻っていたから抱き抱えて医者に連れて行っただけですよ」

 

はぁ、このお人は……

 

「それで、あの女性が『私は平気ですから。御遣い様の手を煩わせるには』とか言った所を『気にしなくてもいいんですよ。それに、可愛い女の子が怪我をしているのに放っては置けないよ』とか、北郷さんが言った。そんな感じですか?」

 

「な、なんで分かったんですか?」

 

まあ、心を読めますから。ただ、北郷さんの場合は読まなくてもある程度の展開が予想できてしまうと言うかなんと言うか。

 

「……種馬ですね」

 

「はぅ!」

 

「ふふふ♪」

 

「御遣い様!お待たせしまし、た?あ、あのどうかされましたか?」

 

「い、いや。なんでもないよ。は、はは……」

 

「そ、そうですか?あっ!お待たせしました。ご注文の品です!」

 

少女は気を取り直して笑顔で、注文した品を机の上に並べていった。

 

「あれ?これ注文してないよ?」

 

「それは店長が……逢引中の御遣い様持って行けって……」

 

「あ、逢引?!」

 

「あらあら」

 

少女はとても不機嫌そうに伝えてきました。

 

あらあら、女の子の考えが駄々漏れですね……あらあら~、そんな事を思うなんていけない小娘ですね。

 

わたくしは静かに立ち上がるとそれに気がついた北郷さんが話しかけてきました。

 

「?管輅さん、どうかしましたか?」

 

「ええ、ちょっと。このお方と少しお話をしないといけない事が出来ましたので話してまいりますわ」

 

「えっ!わ、私にはないですよ!」

 

「そう、遠慮なさらずに。ささ、参りましょうか」

 

「ひっ!み、御遣い様たす(トスッ)っ!」

 

「管輅さん?なんだか、彼女ぐったりしてませんか?」

 

「気のせいですわ。それと、北郷さん。決して近くに来てはダメですよ」

 

「それはなんでですか?」

 

「い・い・で・す・ね?」

 

「は、はいっ」

 

「ふふふ、物分りのいい子は好きですよ。では、少々お待ちくださいね。ふふふっ……」

 

私は少女を連れて北郷さんから見えない位置まで離れていった。

 

「お待たせしました。北郷さん」

 

「お、おかえりなさい……それで一体何を?」

 

「ちょっと、お話をしてきただけですわ。そうですわよね?」

 

――ビクッ!

 

「は、はい!お、おおお姉様とお話をしていただけです!」

 

「は、はぁ。ならいいんですけど……」

 

少女の態度の変わり方にどうやら北郷さんは私を余り怒らせないほうが言いと思ったようですわね。

 

「それでは、改めてお茶にいたしましょうか」

 

「ええ、そうですわね」

 

わたくしは座りなおすとお茶を手に取り一口啜った。

 

「こくっ……はぁ、美味しいですね」

 

「管輅さんのお口にあってよかったです」

 

「いやですわ。わたくし、美食家ではありませんので贅沢なんていいませんわよ」

 

「そうなんですか?管輅さんは美味しいものを食べてると思ってましたよ」

 

「華琳さんではありませんのでご安心ください」

 

「あはは、それを言われちゃうと返答に困るんですけど」

 

……

 

…………

 

………………

 

「くしゅん!」

 

「華琳様、お風邪ですか?」

 

「風邪のような気だるさは無いのだけれど……誰かが噂話でもしているのかしら?」

 

「そうでなればきっと華琳様を褒め称えている噂話に違いない!」

 

「姉者、悪い噂話かもしれないぞ?」

 

「なにぃ?!もしそんな奴を見つけたら叩ききってくれるわ!」

 

「ふふふ、期待しているわよ春蘭」

 

「はい!お任せください華琳様!」

 

噂話か……もしかして一刀が?

 

「~~~っ」

 

「どうかされましたか華琳様、お顔が赤いようですが。もしや本当にお風邪では?」

 

「な、なんでもないわ。お茶が熱かっただけよ。気にしないで」

 

……

 

…………

 

………………

 

北郷さんとお茶を飲みながら楽しい会話をしてそろそろお店を出ようとした時でした。なんとも聞き覚えのある声が聞こえてきました。

 

「も~~っ!一刀君、こんな所に居たの?!」

 

「優未?!」

 

「あらあら、優未さんではありませんか」

 

「え?えええ?!なんで一刀君が管輅様と一緒に居るの?!」

 

「いや、ばったり管輅さんと出くわして、荷物が重そうだったから持ってあげようと、そうですよね管輅さん」

 

「ええ、概ねそうですね」

 

「む~……」

 

「そ、そんな事より、俺に用があるんじゃないのか?」

 

「え?ああっ!そうだった!冥琳に一刀君を探して来いって言われたんだった」

 

「そ、そうか。でも、管輅さんの荷物が……」

 

あらあら、そんなに戻りたくないのですね。仕事をサボって出てきたのですから仕方の無い事ですが。

 

「わたくしなら大丈夫ですから優未さんと戻ってください」

 

「そ、そんな!」

 

そんな捨てられた子犬のような目をされてしまうと困りますね。

 

「ほらほら、戻るよ一刀君!」

 

「のわっ!ゆ、優未?!そ、そんなに引っ張らなくても!そ、それに当たってるから!」

 

「早く帰らないと私が冥琳に怒られるんだから!それと、わざと当ててるんだもん♪」

 

「か、管輅さん!す、すいませんでしたぁ~~~~~」

 

「あらあら、ご無事で北郷さん」

 

北郷さんは優未さんに連れられてお城へと戻って行ってしまいました。

 

「一人になってしまいましたわね……」

 

一人残されたわたくしはただ呆然と北郷さんが居なくなった方を見つめ不意に微笑みました。

 

「ふふふ、北郷さんと居ると何処に居ても賑やかですね」

 

誰もが笑顔で、時には怒りの念や悲しみの念がある時もありますが、それは全て北郷さんを思っての事。その全てには北郷さんに対する愛情の念が籠められています。

 

「ですが、少々面白くないですね……?」

 

自分で言った言葉に疑問が浮かんだ。

 

なぜ面白くないと想ったのかしら?とても微笑ましいことなのに……

 

その疑問に誰も答える者はここには居ませんでした。

 

翌日……

 

「ふぅ、相変わらず誰一人気がつきませんね」

 

溜息を吐きながら大通りをただ呆然と見続ける。

 

「あっ……」

 

小さな子供がわたくしに気がつき手を振ってきた。

 

「……」

 

わたくしが手を振り返すと子供は嬉しそうに満々の笑みを浮かべた。

 

「……それで、北郷さんはわたくしの後ろで何をしていらっしゃるのですか?」

 

「あ、あはは……気がついてたんだ」

 

「まあ、このような世の中ですから。自分の身は自分で守らなくては」

 

一番の理由は、心の声が漏れ聞こえていたからなのですが。

 

「それで?またサボっておられるのですか?」

 

「え?いや。昨日、荷物を持つって言ったのにさ。全然役に立てなかったから」

 

昨日の事を気にして態々わたくしの所へ?その気持ちは嬉しいのですが……

 

「まさか、それだけの為に政務をサボって来たのですか?」

 

「ちゃんと仕事したよ?ただ、雪蓮が必要以上に抱きついてくるからさ……」

 

「惚気ですか?」

 

「ちがっ!」

 

『かずと~何処行ったのよ~~』

 

「やばっ!管輅さん、俺は居ないって言ってくれるかな」

 

「しかたありませんね。こちらに入ってください」

 

「ありがとう!」

 

わたくしは占いの台の下へと北郷さんを誘い隠した。

 

「あら、管輅じゃない」

 

「こんにちは。今日はどうしたのですか?」

 

「そうよ!一刀見なかった?」

 

「北郷さんですか?いいえ、今日は見ていませんね」

 

「ん~、私の勘ではこの近くのはずなんだけど」

 

流石は小覇王と言ったところですか、中々の勘のよさですね。

 

「それで、今度は北郷さんは何をしでかしたのですか?」

 

「え?別に何もしてないわよ?ちゃんと政務もしてくれてるみたいだし」

 

「では、なぜ探しているのですか?」

 

「一刀といちゃいちゃしたいからに決まってるじゃない」

 

「は、はぁ……」

 

なんとも素直な心なのでしょう。わたくしには無いものの一つですね。

 

「羨ましいですね」

 

「何がよ?」

 

「その素直な気持ちですよ」

 

「ん~、それは相手が一刀だからよ。好きな相手にはいつでも真剣勝負なんだから、そんな所で偽っても仕方ないでしょ?自分を偽ってたら、最後には自分が自分じゃなくなっちゃうもの。そんなの嫌じゃない?管輅にはそんな人居ないの?」

 

「……」

 

その答えにわたくしは答えられなかった。わたくしにはそのような人は居なかったのだから……

 

「?まあいいわ、仕事の邪魔をしたわね」

 

「いいえ。なんなら北郷さんの居るところを占って差し上げましょうか?」

 

「やめとくわ。自分の力で力で見つけたいもの」

 

「わかりました。では、頑張ってくださいね」

 

「ええ、ありがとっ」

 

雪蓮さんは笑顔で微笑むと北郷さんを探しに居なくなりました。

 

「……もう、雪蓮さんは行きましたよ」

 

「ぷはぁ!助かったよ管輅さん……」

 

「いえいえ、どういたしまして……?北郷さん、どうかしましたか?」

 

「え?!な、なにがですか?」

 

「お顔が赤いですよ?」

 

「そ、そうですか?」

 

一体どうしたのかしら?……あらあら、北郷さんったら、いけないお人ですね。

 

「ふふふ、もしかしてこんなわたくしに欲情しちゃいましたか?」

 

「なっ!」

 

「図星、ですね」

 

「うぐっ!?」

 

「ふふふ、本当に分かりやすい性格をしておいでなのですね、北郷さんは。ですが、わたくしの様なおばさんに興奮などしなくてもよいのですよ?」

 

「な、なに言ってるんですか。管輅さんは俺から見ても魅力的な女性ですよ。ですから、自分の事を余り悲観しないでください」

 

「~~~っ」

 

北郷さん真っ直ぐな気持ちにわたくしの胸は一際大きく脈を打ちました。

 

「あ、あら、いやですわ北郷さん。そうやって誰にでも言うのでしょ?おからかいにならないでください」

 

「からかうだなんて、俺は本当のことを言っているだけですよ。それにこんなこと誰からかまわず言いませんよ」

 

「そ、そうですか」

 

そのことはわたくしは十分わかっていましたが、いざ、自分に言われると恥ずかしいものですね。

 

このお方たらなら、わたくしの秘密を話しても気味悪がらず居てくれるかもしれない。わたくしはそう思い、話してみることにしようと思いました。

 

「あの北郷さっ……っ!」

 

北郷さんに打ち明けようとしたその時でした。わたくしの頭の中にどす黒い感情が流れ込んできました。

 

(アニキ!あの店。結構儲かってるみたいですぜ)

 

(そうだな。近くに警備している兵もいねぇしな。それに女の方も結構な上玉だぜ。これなら良い値で売れるかもな)

 

(それなら売っちまう前に俺達で楽しみましょうぜ)

 

(そりゃ名案だな)

 

いけない。早く北郷さんに知らせなくては……

 

「管輅さん?どうかしましたか?」

 

「い、いいえ、なんでも、ありません、わ……」

 

反射的に頭の中に流れ込んでくる感情を打ち切ったおかげで大事には至りませんでしたが、それでも久々の感情に体は震え自分を抱きしめていました。

 

「でも、顔色が悪いですよ?」

 

「わたくしは大丈夫です。それより……」

 

北郷さんに伝えようとしたその時でした。

 

『きゃぁぁぁああああっ!』

 

「な、なんだ?!」

 

「遅かったようですね……」

 

「遅かったってどういうことですか、管輅さん!」

 

「この近くの商店に賊が押し入るとお教えしようとしたのですが、どうやら遅かったようです」

 

「なんだって?!と、兎に角、警備兵に!」

 

「この近くには誰も居ません。呼びに行って戻ってきた時には既に襲われた後になってしまうでしょう」

 

「くそっ!管輅さんはここに居てください!」

 

「北郷さん?まさかっ……危険です、一人では!」

 

「でも、黙って見過ごせませんよ!」

 

北郷さんは止めようとするわたくしの手を取り優しく語り掛けてきました。

 

「大丈夫ですから、危険な事はしませんよ。警備兵が来るまで時間を稼ぐだけですから」

 

「ですが、相手は一人ではないのですよ?怪我をしない保障は無いではありませんか」

 

「それでも今、目の前で事件が起きているんです。見て見ぬ振りなんて出来ないですよ」

 

どうしてこのお方はこのような状況でこんなにも優しく笑えるのでしょうか?

 

自分が怪我をしてしまうかもしれないのに、下手をすれば死んでしまうかもしれないのに……

 

「兎に角、管輅さんはここに居てください!」

 

北郷さんはわたくしの静止も聞かずに行ってしまいました。

 

「……わたくしも追いかけなくては」

 

震える体を支えながらわたくしは北郷さんを追いかけました。

 

「はぁ、はぁ……ふふふ、情けないものですね」

 

子供の頃はあのような、悪意や憎悪、恐怖と言った感情に晒されていたと言うのに。

 

わたくしの能力は、その人の思想や感情を直接脳で体感する事です。

 

そのせいか、喜び、悲しみ、痛み、憎しみなど直接感じ取ってしまうので相手が傷つき痛いと思えば、わたくしも相手が負った痛みを感じてしまいます。

 

わたくしが先程感じた感情は、人を人と思わない冷ややかな感情に女子供を慰み者にしようとする下衆な感情でした。

 

「とにかく、今は北郷さんを追いかけなくてはいけませんね」

 

……

 

…………

 

………………

 

「はぁ、はぁ……日ごろから運動をしていないせいか直ぐに息切れしてしまいますね」

 

走りながらふと、そんなことを口走っていました。

 

そういえば、なぜわたくしはこんなにも慌てているのでしょうか?

 

確かに、北郷さんが危ない事は確かです。ですが、だからと言ってわたくしが慌てる必要はないではありませんか。

 

そう、今こうして走っていますが、冷静に考えれば現場に行くのではなく警備兵を探した方が断然、北郷さんに危険が及ぶ可能性が減ると言うものです。

 

それなのにわたくしはそれもせず、北郷さんを追いかけています。

 

「わたくしが行ったところで足手まといになるだけですのに……」

 

わたくしの得意分野は占い。ある程度は政務も出来ましょうが、戦いは素人です。

 

「はぁ、はぁ、やっと追いつきましたわ……」

 

目的の商店に着くとそこにはみすぼらしい恰好の男が店の女店員でしょうか、首に刃物を当てて人質を取っていました。

 

おかしいですね。最低でも二人は居たはずですが……一体何処に?

 

「……っ!」

 

周囲を探ろうとしたそのときでした。

 

「おっと、動くなよ。そのまま、両手を後ろで組みな」

 

「……あらあら」

 

あらあら、不覚を取ってしまいました。普段は気をつけているのですが久しぶりに走ったせいか周囲の警戒を疎かにしてしまいました。

 

「申し訳ありません。北郷さん」

 

「なっ!か、管輅さん?!どうしてここに!」

 

「なんでぇ、お前ら知り合いか」

 

店の女店員を人質に取っていた男がニヤリと薄汚い笑みを浮かべて言ってきました。

 

「くっ!」

 

「アニキ、こっちの女も上玉ですぜ!」

 

「はっはー!今日はついてるな。金品以外に女が二人なんてよ!」

 

本当に汚らわしく醜くい人間の皮を被ったケダモノですね。吐き気はします。

 

ですが、少しでも北郷さんの負担を軽くしなくては……

 

「あらあら、そんな小娘で満足できるのですか?」

 

「なに?」

 

「まだ熟れていない娘なんかより、わたくしの様な熟れた果実の方が美味しいと思いませんか?」

 

「か、管輅さんなんて事を言っているんですか!」

 

北郷さんが慌てたようにわたくしを止め様としてきますが、わたくしは北郷さんに『大丈夫ですよ』と言う様に微笑を返しました。

 

「ん~……」

 

「どうしますアニキ?」

 

アニキと呼ばれている、恐らくは頭なのでしょう。その男はわたくしを下から上へと舐める様に見ながら唸り悩んでいるようでした。

 

「それとも、自信がないのですか?わたくしを満足させるだけの自信が」

 

「なんだと!よし、いいだろう。この小娘は解放してやる!おい!こっちにその女を連れて来い!」

 

「へ、へい!」

 

頭は捕らえていた娘を解放するとわたくしの腕を取り無理やり引き寄せた。

 

「あらあら、乱暴ですのね。女性はもっと優しく扱うものですよ」

 

「ふん、その強がりがいつまで続くか見ものだぜ。死んだ方が良かったと思えるほど犯し続けてやるよ」

 

なんて下品な男……ですが、わたくし一人の命で民が救えるのです。でしたら、わたくしの純潔など……

 

「――っ!あらあら?」

 

そんな事を思い、北郷さんに逃げるように伝えようとしたその時でした。不意にわたくしの頬に温かいものが流れ落ちました。

 

これは涙?なぜわたくしは泣いているのかしら?人の命が救えたのですよ?それにいざとなれば空間を渡り逃げる事も出来るのです。

 

それなのに涙が止まらず、北郷さんを見ていると胸の奥が苦しくなってきます。

 

「あん?なにないてるんだこの女?」

 

わかりません。なぜ泣いているのかわたくしにもわからないのです。ですが、兎に角この男から離れなければならないと思い……

 

「そこの男動くなよ?俺達がみえっ!痛てぇぇ!」

 

「ん~~~っ!」

 

「管輅さん!」

 

わたくしは思いっきり男の手に噛み付き抵抗をしました。

 

「きゃっ!」

 

「こっんのアマ!人の手を噛みやがって!もう容赦しねぇ!死ねぇぇっ!」

 

男はわたくしを突き飛ばし手に持っていた太刀で切りかかろうとしてきました。

 

「やめろぉぉぉおおおっ!」

 

「ふぐぅっ?!」

 

「ほ、北郷さん?」

 

死を覚悟し目を閉じていると北郷さんの叫び声が聞こえ目を開けると、目の前には北郷さんがいました。

 

「何考えているんですか!こんな危ない事して!」

 

「ですが、娘さんは救い出せたのですからよいでは「よくないですよ!」っ!」

 

北郷さんはわたくしを睨みつけるように怒りをあらわにしました、ですが、頭の中に入ってくる想いはそれの表情とはまったく逆でわたくしを心配している事がわかりました。

 

「でも、無事でよかったです」

 

「っ!?……申し訳ありませんでした北郷さん……」

 

北郷さんは優しくわたくしを抱きしめてくださいました。北郷さんの温かさに触れ、わたくしはあることに確信を持ちました。

 

「何二人だけの世界に入っていやがるんだっ!!」

 

そんな時でした、体当たりを受けて倒れていた男が立ち上がり怒鳴り声を上げてきました。

 

「管輅さんは逃げてください!俺はこいつを食い止めます!」

 

「む、無茶です北郷さん。お止めください」

 

北郷さんはわたくしが止めるのも聞かず手に太刀を持ち向って行ってしまいました。

 

「はぁぁああっ!」

 

「しゃらくせぇえ!」

 

「ぐっ!……っ!がはっ!」

 

「北郷さん!」

 

北郷さんは男の剣をなんとか受け止めた様でしたが、お腹に蹴りを入れられてしまい壁に打ち付けられてしまいました。

 

「げほっ!げほっ!」

 

北郷さんはなんとか立ち上がりましたがお腹の痛みで顔をしかめていました。

 

「あのまま、倒れてれば楽に死ねたものによ!」

 

「はぁ、はぁ、俺が死んだから、悲しむ娘が居るからね。そう簡単には死ねないんだよ」

 

「はっ!だけど、お前はここで死ぬんだよ!死ねぇぇぇえええっ!!」

 

男が太刀を振り上げた時でした。

 

「はぁ、やっと見つけたと思ったら何こんな奴にやられてんのよ一刀」

 

「ぁあっ?!誰だ!」

 

「雪、れん……」

 

「雪蓮さん」

 

振り返るとそこに立っていたのは徳利を持った雪蓮さんでした。

 

「なんだてめぇは!」

 

「はぁ、この国に居て私を知らないなんてあなた達、新参者ね」

 

「んだと?!」

 

「あ、アニキ……」

 

「なんだっ!」

 

「あ、あの桃色の髪色に腰まである髪……も、もしかして孫策じゃ……」

 

「ああ?誰だそいつは?」

 

顔を真っ青にする部下に頭はそれでもまだ分からないようですね。やはり、バカはバカなのですね。

 

「はぁ、どうやら、手下の方はわかってるみたいね。でも、逃がすつもりは無いわよ……」

 

「ひっ!」

 

「な、なんでぇ、そ、そんなに睨みつけても怖くねえぞ!」

 

「そういいながらも、足が震えていますね」

 

「うるせぇ!女は黙ってろ!」

 

わたくしが指摘するとすぐさま突っ込んできました。

 

「し、雪蓮……殺しちゃダメ、だ」

 

「なんでよー。アイツは、私の一刀に怪我させたのよ?生かしておけるわけないじゃない」

 

「連れ帰って、こいつらの拠点を吐かせるんだ」

 

「ぶー、わかったわよ。でも、お酒呑んじゃってるから手加減できないかも♪」

 

最初から手加減するつもりは無いみたいですけど、あえて言わないでおきましょう。

 

「ありがとう、雪蓮」

 

「ふふふ……さてと、どちらから切り殺されたいのかしら?」

 

徳利を机に置き、南海覇王に似た剣を手に持ち射殺さんばかりに相手を睨みつける雪蓮さん。

 

「お、お前が行け!」

 

「い、いやですよ!アニキが行って下さいよ!」

 

男達は雪蓮さんの覇気に慌てふためきだしていました。

 

「だらしが無いわね。それでも男なの?まだ、一刀の方が根性あるわよ?」

 

「んだと!?こんな弱い奴より根性がないって言うのか!?」

 

「ええ、実際にそうじゃない?私に挑みに来ないんだから」

 

雪蓮さんは男を挑発して北郷さんから離そうとしているようでした。

 

「いいだろう!この俺様自らがお前を倒してやる!」

 

「なら、早く来なさい?もう待ちくたびれたわよ」

 

「あとで吠え面かくなよ!」

 

いまですね……

 

「北郷さん、大丈夫ですか?」

 

「これくらい、俺は大丈夫ですよ。いつも祭さんや愛紗に鍛えられていますから。それより管輅さんは何処にも怪我はしていませんか?」

 

「わたくしも平気です。兎に角、ここから離れましょう。立てますか?」

 

北郷さんを立たせて雪蓮さんの後ろに回った時でした。

 

「はぁ、ホント弱いわね。こんなやつが一刀を傷つけたなんて許せないわね」

 

「はぁ、はぁ。うるせぇ!そんな弱い男の何処がいいんだ!」

 

「黙れっ……」

 

「っ!」

 

「ひっ!」

 

雪蓮さんはさらに目を吊り上げて男達を睨み付けました。

 

「あんた達が一刀の何を知っていると言うの……いいえ、知らないわよね。知っていたらそんな事いえないものね」

 

雪蓮さんは先程以上の殺気を相手にぶつけていました。流石は小覇王と言ったところですね。王位を妹君に譲り渡してもその殺気は現役のまま、と言う事ですか。

 

「それに、人質まで取るなんてホント人間のクズね。いいえ、クズにも失礼だわ。人間以下よ」

 

「う、ううううるせぇ!だ、誰が好き好んであんなババァを人質に取るかよ!」

 

――ブチッ!

 

あらー?あらあら、今。言ってはいけない言葉を聞いたような気がしたのですが気のせいでしょうか?

 

「管輅さん?どうかしまし、た……か?」

 

「ふふふ、北郷さん。少しの間、目を瞑っていた下さらないかしら?出きれば耳も押えていて欲しいのですが?」

 

「え?え?」

 

「ささ。これで目隠しをして耳を塞いでくださいね。わたくしが目隠しを取るまで耳を塞いでいないとだめですよ?」

 

「は、はい……」

 

北郷さんはわけも判らなかったようですがわたくしに従ってくださいました。

 

「雪蓮さん、少々よろしいでしょうか?」

 

「なに?私、今ものすごく機嫌が悪いんだけど?」

 

「あらあら、それは困りましたね。わたくしもあの筋肉達磨に少々躾をしないといけないのですが譲っていただけませんか?」

 

「はぁ?なんでよ」

 

雪蓮さんは納得がいかないようでしたが、わたくしも引くわけには参りませんので。

 

「女としてのプライド、自信を傷つけられたと申しましょうか」

 

「……なるほどね。はぁ、わかったわ。でも、殺しちゃだめよ?」

 

「わかっております。少し、オハナシするだけですから、ふふふふふ……」

 

雪蓮さんは剣を下げて後ろに下がってくれました。

 

「な、なんでぇ、また人質になとうってか?」

 

まったく、その薄汚い笑みを止めて貰いたいものですね……

 

「そんなことあるわけが無いでは有りませんかこの豚猿」

 

「ぶ、豚猿?!」

 

「ええ、あなたの事ですよ豚猿。ああ、これでは豚と猿に失礼ですね。クズ」

 

「なっ!」

 

男は驚きの顔から次第に顔を赤くして怒り震えていきました。

 

「まったく、なんでこんな無能なクズが生きているのでしょうね。死んで詫びたらどうですか?いいえ、詫びなどいりません。今すぐ死んでください。それがこの大陸の為です。誰とも知られずに死んでください。生きている価値の無い無能でクズなカス男なのですから。聞いていますか?あなたの事ですよ女を犯すことしか考えていない無能変態性犯罪クズ男」

 

「な、なな……」

 

「なにが、『な、なな』ですか、喋らないで頂けますか、無能変態早漏クズ男。空気が腐りますわ。そうですわね、空気も吸わないでいただけます?無能変態早漏汚物男には勿体無いですわ。早く死んでいただけませんか?もちろんわたくしの目の前でなんて死なないでくださいね目が腐りますわ。もちろんこの国で死ぬ事も許しませんよ、国が穢れます。ああ、そうですね、五胡あたりで死んでいただけますか?ほら、なにをしているのです早く五胡に行って死んできてください」

 

「う、うぅぅ……」

 

「あは、あはははは……管輅を怒らせるとたちが悪いわね……」

 

横では雪蓮さんが苦笑いを浮かべていましたが気にすることなく男を貶し続けました。

 

……

 

…………

 

………………

 

――一刻半後

 

「聞いているのですか?このゴミ」

 

「い、生きていてすいませんでした……で、ですから、早く牢獄に連れて行ってください!」

 

「はぁ?何を言っているのですか?まだ許すわけありませんわよ?」

 

「ひっー!お、お願いだ!もう無理だ!お、俺を早くつれて言ってくれ!何でも話す!だからこの女から遠ざけてくれ!」

 

男は雪蓮さんにすがる様に懇願していました。なんて醜いのでしょう。

 

「誰が『この女』ですか?」

 

「ひーーーっ!」

 

「まあまあ、管輅もういいんじゃない?」

 

「いいえ。この下衆は言ってはいけない事を言ったのですまだ許すつもりはありませんわ」

 

「でも、一刀も一刻半近くあのままなのよ?そろそろ可哀相じゃない?」

 

「……」

 

一刀さんはあれから一刻半ほどわたくしの言った事を守って目隠しをして手を耳に当てていました。

 

「そうですわね。これくらいにしておきましょうか」

 

なんだか北郷さんを見ていると怒りが静まって行き先程の事はどうでも良くなっていました。ふふふ、本当に不思議な方ですね北郷さんは。

 

「それじゃ管輅は一刀の方をお願いね。私は警備兵とこいつ等を城に連れて行くわ」

 

「わかりました……もうよろしいですよ北郷さん」

 

わたくしは北郷さんの目隠しを外し伝えた。

 

「えっと、何がどうなってるんだ?」

 

まあ、目隠しをし、耳を塞いでいたのですから、この状況に首を傾げるのは当然ですわね。

 

「一刀は気にしなくてもいい事よ」

 

「なんだか気になる言い方だな。まあ、無事ならそれでいいんだけどさ」

 

「はぁ、私がこんな雑魚相手に手傷を負わされるわけ無いでしょ?」

 

「それでも心配なものは仕方が無いだろ?雪蓮は女の子なんだから」

 

「だっ!誰が女の子よ。これでも私は前王なのよ」

 

「俺にはそんなの関係ないよ。雪蓮は俺にとってとても大事な女の子だよ」

 

「~~~っ!もういいわよ。それじゃ私は城に戻るわよ!」

 

雪蓮さんは顔を赤くして恥ずかしくなり北郷さんから顔を背けました。ふふふ、

 

「長々と申し訳有りませんでしたね雪蓮さん……それと、この事は北郷さんには」

 

「わかってるわよ。あなたは恩人だからね。それに、恩人でもあるけど私は友人とも思っているんだから秘密くらい守るわよ」

 

「ありがとうございます。わたくしの様な者を友人と呼んで頂き」

 

雪蓮さんは手をヒラヒラと振り警備へと共にその場を後にしました。

 

「あ、あの俺、雪蓮が怒る様な事言っちゃったかな?」

 

「北郷さんは相変わらずですね」

 

「?」

 

本当に見当違いもいいところですね。雪蓮さんの顔を見れば一目瞭然なのですが。

 

「いいえ、なんでもありませんわ。雪蓮さんならきっと怒っていませんよ」

 

「だといいんですけどね」

 

「あら、占い師のわたくしを信用できないのですか?」

 

「え?いや!信用してないとかじゃなくてですね?!……うん、そうですよね管輅さんの事、信じます」

 

「ふふふ、ではここは警備兵の人たちに任せてわたくし達もここから離れましょう。実はお店をそのままにしてきてしまいまして」

 

「それは大変だ!早く戻らないと!」

 

「え?」

 

北郷さんはわたくしの手を取り慌てて走り出してしまいました。

 

あまりに突然でしたのでわたくしは呆気に取られてしまいました。

 

「はぁ、はぁ……どうやら無事みたいですね」

 

「は、はい……はぁ、はぁ。ほ、北郷さんは走るのがお早いのですね」

 

「え?ああ、す、すいません。早すぎましたか?」

 

「い、いえ。日ごろ運動をしていないわたくしがいけないのでお気になさらずに。とりあえず、商売道具は無事でしたので荷物を持ってお城へ向いましょう」

 

「わかりました。でも、少し休んでからの方がよくないですか?」

 

「わたくしなら気にしなくてもよいのですよ」

 

「えっと、俺が喉渇いちゃって」

 

苦笑いを浮かべながら照れる素振りを見せていますがわたくしの事を気遣っての事だと言う事は直ぐにわかりました。

 

「あらあら。では、お茶を飲んでから向う事にいたしましょうか」

 

わたくしがそう言うと北郷さんは安心したように微笑んでいました。

 

こうして、わたくしと北郷さんは近くのお店に入り一服した後、お城へと向いました。

 

「……」

 

城へと続く道すがら、わたくしは考え事をしていました。

 

北郷さんに対するわたくしの気持ちを……

 

最初は観察対象に過ぎませんでした。それは確かです。

 

それがいつしか北郷さんを目で探すようになっていました。

 

もしかしたら、あのような人気の無い場所で占い業をしているのも北郷さんに見つけて頂きたいからなのかも知れません。

 

そして、見つけて頂くたびに胸の奥から喜びが湧き出てくるのです。

 

ですが、わたくしは管理者、一個人にこのような感情を持つことは許されないのです。

 

『あんら、私がご主人様を好きなことがそんなにいけないことなのかしらん?』

 

そんな貂蝉の声が聞こえてきた気がしました。

 

……

 

…………

 

………………

 

『あんら、私がご主人様を好きなことがそんなにいけないことなのかしらん?』

 

『そう言うわけにはゆきません。わたくし達は管理者なのですよ?』

 

『そんな事、関係無いのよん。人を好きになる事に理屈なんて必要ないの。あなただって管理者になる前はそうだったでしょ?』

 

『……あんな連中、好きになることなんてありえませんわ。私利私欲の為に人を家畜のようにしか見ていない連中なぞ』

 

『酷いいいようね。まあ、あなたの生い立ちを考えれば仕方の無いことなのかもしれないけれど』

 

『……』

 

『でもね管輅ちゃん』

 

『なんでしょうか』

 

『あなたにもきっと判るときが来るわ。人を愛するということがどんなに素敵なことなのかがね』

 

『そうならないことを祈る限りですね』

 

『うんもぅ、つれないわね管輅ちゃんは』

 

『つれなくて結構ですわ』

 

……

 

…………

 

………………

 

まさか、わたくしが人に恋するようになるなんて思いもしませんでしたわ。

 

前を歩く北郷さんを見る。

 

この方になら……

 

「あの、北郷さん」

 

「はい?どうかしましたか」

 

「っ!」

 

北郷さんが振り向き微笑む。それだけでわたくしの胸は高鳴り頬が赤くなる。

 

「あれ?管輅さん。顔赤くないですか?」

 

「そ、そうですか?気のせいですわ」

 

いけません。顔に出ていたようですわ。

 

「それで俺に何か?」

 

「え?あ、はい。北郷さんにお伝えしたいことがあります」

 

「なんですか?」

 

「ここではちょっと……」

 

「?なら、森の方へ行きましょうか。あそこなら人も居ないでしょうから」

 

「ええ。ですが、雪蓮さんへの報告はよろしいのですか?」

 

「ん~。少しくらい大丈夫ですよ。あの場に雪蓮も居たんだし」

 

大丈夫じゃないと思うのですが、まあ北郷さんが良いと言っているので従うことにしましょう。

 

「ここならいいかな」

 

北郷さんに連れられて近くの森まで来ました。その間、わたくしの鼓動は静まるどころか段々と早くなり胸が苦しくなるほどです。

 

「それで話ってなんっ!管輅さん?」

 

「こちらを向かないでください……」

 

「え?あ、は、はい……」

 

北郷さんが振り向きそうになったので背中から抱きしめ振り向かせないようにしました。

 

「……北郷さんに伝えたいことがあります」

 

「はい……」

 

「その前にお聞きしたいことがあります」

 

「なんですか?」

 

「北郷さんはわたくしのことをどう思っておいでなのでしょうか?」

 

「どうって言われましても……」

 

「わたくしの様なおばさんはお嫌いですか?」

 

「お、おばさんだなんて!管輅さんはとても綺麗で優しいですし嫌いじゃないですよ」

 

「では、好き、なのですね?」

 

「ええ?!……ま、まあ、好きか嫌いかと聞かれれば好きですけど」

 

「では、雪蓮さんや優未さんとわたくしとどちらがお好きですか?」

 

「そんなの決められませんよ。俺にとってはみんな大事な人で優劣なんて付けられませんよ」

 

「……そうですか。では、これを聞いても同じことが言えますか?」

 

「え?」

 

わたくしは思い切って自分の事を話し始めました。

 

「北郷さんには伝えていませんでしたが、わたくしの能力は人の心を読むのです」

 

「人の心を読む?読心術ってことですか?」

 

「見たいなものとお考えください。ですが、読心術と違うところはここに居ない人の考えていることや感情も感じ取ることが出来るのです」

 

「それって……」

 

「ええ、北郷さんがお考えのようにあのお店に賊が来るのがわかったのです。ですが、その感情に体が震えてしまい結果的にお伝えするのが遅れてしまいましたが……」

 

「そうだったんですか……」

 

この時、北郷さんの顔は暗く陰りを見せました。

 

やっぱり気持ちが悪いですよね。こんなわたくしでは……

 

わたくしは北郷さんの気持ちを知るのが怖く、北郷さんの心を読む事は出来ませんでした。

 

「そっか、でもよかったぁ」

 

「え?」

 

「だってそうだろ?管輅さんが教えてくれたから大事に至らなかったんですから」

 

「き、気持ち悪くは無いのですか?人の考えていることが分かってしまうのですよ?」

 

「全然」

 

「ぜ、全然って……」

 

「そりゃ、知られたくないこともあるけどさ。そんな能力が有っても無くても管輅さんは管輅さんでしょ?。そんなことで差別するなんておかしいよ」

 

北郷さんは笑顔で答えてくれました。

 

ああ、やっぱりこのお方はわたくしの思った通りのお人です。この方なら良いかも知れません……

 

「北郷さん、あなたにお預かりしていただきたいものがあります」

 

「なんですか?」

 

「それは――です」

 

「え!そ、それって……」

 

「はい」

 

「で、でもいいんですか?俺なんかに」

 

「種馬と呼ばれているのに良いのか?ですか?」

 

「うっ……は、はい」

 

「ええ。北郷さんになら」

 

「わかりました。確かに預かりますよ」

 

北郷さんは微笑み快く承諾してくださいました。

 

「ありがとうございます。では、戻るとしましょう。これ以上遅くなるとみなさんが心配してしまいます」

 

「そうですね。大分日も落ちてきましたし」

 

そう言うと北郷さんは右手を差し出してきました。

 

「夜道は危ないですから」

 

何気ない気遣いですが、それは北郷さんの良いところなのでしょうね。

 

「ありがとうございます」

 

北郷さんの手を取るとそこから北郷さんの手の温もりが伝わってきました。

 

「温かいですね」

 

「そうですか?俺は冷たくて気持ちがいいですけどね。それにスベスベですし」

 

「あらあら、さっそく口説くのですね?」

 

「べ、別にそう言うわけではっ……」

 

「ふふふ、分かっていますよ」

 

「おっそ~い!何してたのよ一刀!」

 

「ごめんごめん。ちょっと寄り道してたんだ」

 

「まったくもう、私に事後処理をやらせるなんてどういうことよ」

 

「もともと、お前が抜け出したのがいけないのだろ雪蓮」

 

「だって~、最近、一刀と一緒にいれなんだもん」

 

「はぁ、毎日ちゃんと政務をしていればそんなことにはならないだろう。溜め込むからこんなことになるのだ」

 

「冥琳のいけず~」

 

「いけずで結構だ。それで一刀。雪蓮から聞いたのだが雪蓮が現場に着いたときには既に居たそうだな。なぜわかったのだ?」

 

「そ、それは……」

 

北郷さんは伝えるか躊躇っているようでした。

 

「……それについては、わたくしからお話しますわ」

 

北郷さんは慌てたようにわたくしを心配してくださいました。

 

「いいのですよ」

 

こうしてわたくしは事件現場に居たことをみなさんにお話しました。

 

「それって本当なの?優未」

 

「え?あ、うん。本当だよ~。私もよく管輅様にからかわれていたから」

 

「あらあら、優未さん?」

 

「っ!あは、あははははは……一刀君助けて~♪」

 

「ちょっと!なに一刀に抱きついてるのよ優未!」

 

「だって~、管輅様が怖いんだも~ん♪」

 

「と、永久。優未をあまりからかわないでくれ」

 

「「「……え?」」」

 

「あらあら、一刀さん。別にからかってなんていませんわよ?」

 

「「「え~~~~っ?!」」」

 

「ちょ、ちょっと一刀?今、なんて言ったの?」

 

「え?優未をあまりからかわないでくれ?」

 

「違うわよ。その前!」

 

「永久?」

 

「そう、それ!それってまさか……」

 

「え?ああ、雪蓮たちはまだ知らなかったんだ。永久は管輅さんの真名だよ」

 

「ゆ、優未知ってた?」

 

「ううん。管輅様、全然教えてくれなかったよ」

 

「それに管輅も一刀の事を『一刀さん』って……」

 

「ええ、真名を授けたので北郷さんではよそよそしいかと思いまして」

 

「「「……一刀(君)(様)っ!」」」

 

「は、はい!」

 

あらあら、ちょっとからかいすぎましたかしら?

 

「と、永久!た、助けて!」

 

「ふふふ、一刀さん」

 

「永久っ!」

 

「お元気で♪」

 

「と、永久~~~~~~~~っ!!!」

 

「一刀!ほら行くわよ!」

 

「一刀君の体にたっぷりと聞くんだから!」

 

「ふむ、それも面白そうだ。よし、私もそれに参加しよう」

 

「あっ~!お姉ちゃん達だけずっる~い!シャオもシャオも~♪」

 

「シャ、シャオ!シャオにはまだ早いわ!」

 

「も~、お姉ちゃんだって一刀と一緒に一刀の体に興味があるくせに~」

 

「か、かか、一刀の体にきょ、興味だなんて……っ」

 

「じゃ、お姉ちゃんは参加しないってことで」

 

「なっ!す、するわよ!私だって一刀と最近寝てないんだからっ!!」

 

「……お姉ちゃん。誰もそんな事聞いてないよ」

 

「えっ……っ!~~~~?!?!あ、ああああっ!」

 

「はいはい、蓮華は放って置いて参加する人、挙手!」

 

「シェ、雪蓮!なに仕切ってるんだよ!」

 

「はいはい、一刀君は黙って先に部屋に行こうね~」

 

優未さんも随分と乗り気ですね。

 

「それで管輅?」

 

「なんでしょうか。雪蓮さん」

 

「あなただけ真名を呼ばれるのって不公平だと思わない?」

 

「それもそうですね。わたくしの真名は『永久』これをお預けいたしますわ」

 

「ええ、確かに預かったわ。もう知ってるでしょうけどもう一度言うわ。私の真名は『雪蓮』よ」

 

「私は『優未』!」

 

「『冥琳』だ」

 

「シャオは『小蓮』!シャオって呼んでね!」

 

この場には愛紗さんたちは居ませんでしたが呉のみなさんとは真名の交換をしました。

 

あとで他の皆さんとも真名の交換をしておきましょうか。

 

「それで、かん、永久は一刀とどこまで行ったのかしら?」

 

「気になりますか?」

 

「まあね。一刀の事を一番に思ってる私としては」

 

「え~、一刀君を一番思ってるのは私だよ!」

 

「シャオだよ!」

 

「はいはい、それはあとでゆっくりと決めましょうか。それで永久?」

 

「ふふふ、まだわたくしが抱きしめただけですので安心してください」

 

「まだ、ね……まあ、そう言うことにしておこうかしら。それじゃ行くわよ」

 

「はい?」

 

「あなたも一刀の体に聞きたいことがあるでしょ♪」

 

「……ふふふ、それではわたくしも参加させていただきましょうか」

 

こんなに楽しい時間は初めてですね。この時間がいつまでも続いて欲しいと願うばかりです。

 

葉月「ども~。風邪や、仕事の忙しさで執筆が進まなかった葉月です」

 

永久「大変みたいですわね」

 

葉月「ええ、まあ。ですが、なんとか第5話まで書く事が出来ました」

 

永久「あとは、愛紗さんと雪蓮さんだけですね。今年中に書き上げることは出来るのですか?」

 

葉月「正直、無理です。仕事も忙しくて書く暇が無いんです」

 

雪蓮「軟弱者ね」

 

永久「あらあら、雪蓮さん、ちょっと厳しすぎませんか?」

 

雪蓮「いいのよ。永久はまだいいわよ。私なんてまだ書かれてないんだから」

 

葉月「い、言い返せない……」

 

永久「あらあら。それで葉月さん?」

 

葉月「ぐすん……なんですか?」

 

永久「わたくしの真名はなぜ『永久』なのですか?」

 

葉月「え?ああ、それはですね。管理者ってことで長い時間、外史を見てきたって事と、永遠に守り続けるという意味で『とわ』、漢字で書いて『永久』ってことにしました」

 

永久「そういうことでしたか。わたくしは手っきり『おばさん』だからかと思いましたわ」

 

葉月「そ、そんな訳無いじゃないですか」

 

永久「……ふふふふふ。わたくしに隠し事は通じませんわよ」

 

葉月「ひっ!」

 

永久「どうやら、葉月さんもわたくしと『オハナシ』がしたいようですわね」

 

葉月「い、いいえ、そんなことは!」

 

永久「ふふふ、遠慮なさらなくてもいいのですよ?」

 

葉月「べ、別に遠慮なんてしていませんってば!」

 

雪蓮「がんばれ~葉月」

 

葉月「ひ、人事だと思って!」

 

雪蓮「だって人事だもん♪」

 

永久「さあ、行きますわよ下衆」

 

葉月「ひええええええぇぇぇぇっ!!」

 

雪蓮「……言っちゃったわね。仕方ないから私が〆ますか。それじゃ、みんな!次回は愛紗のお話よ!あの娘も大変よね~。天の世界だったら当主が居なかったから結構、一刀に甘えてたみたいだけど、この世界じゃ桃香が愛紗の当主だもんね。あの娘の事だから控えてるんじゃないかしら?その想いが爆発しなければいいけどね」

 

雪蓮「それじゃ、みんなまたね~~~♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

葉月「永久様、もう止めて~~~~~~~~~~っ!」

 

永久「ふふふ、まだまだですわよ♪」


 
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