No.190579

明け空彼方に、君を想う-呉書†思春伝-

月千一夜さん

“悠なるかなさん”リクエストの、思春の空シリーズ作品
その試作版ですw正式な連載は、来年の初め辺りになりますww

上手く書けたかわかりませんが、少しでも楽しんでいただければ幸いですww
次は、呉伝と桔梗さんSSの予定ww

2010-12-19 21:58:53 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:8369   閲覧ユーザー数:6824

明けていく

深い、深い夜が明けていく

 

誰が願ったわけでもなく、誰が望んだわけでもないのに

ゆっくりと、日は昇っていく

 

それが意味するのは・・・“始まり”か

はたまた、“終わり”なのか

 

それは、きっと誰にもわからない

 

 

「ふぅ・・・夜が明けた、か」

 

 

だからこそ、彼女は想う

寝台に身を預けながら、見据えた・・・窓の向こう

明けていく空に、彼女は想うのだ

 

 

「また、あの頃の夢を見ていたみたいだ」

 

 

過ぎていく日々

ゆっくりと流れていく時間

 

そんな中、彼女はいつだって想いつづけていた

 

 

「昨日、娘にお前とのことを聞かれたよ

そのせいかもしれんな・・・あの頃のことを夢に見たのは」

 

 

大切な人との、当たり前の日々が

仲間との、楽しかった日々が

 

そのすべてが、堪らなく愛しい時間だったと

 

 

「相変わらず、自分でも呆れてしまうほどに・・・私は、変わっていないようだ

こうして、ひとりでいる時にしか素直になれないんだ」

 

 

“笑えるだろ?”と、彼女は苦笑する

それから、明けていく空を見つめたまま・・・彼女は言う

 

その想いを、明け空の彼方へとむけて

 

 

 

 

 

 

「“北郷”、私は・・・幸せだったよ」

 

 

すっと、閉じられていく瞳

 

彼女は笑顔のまま、ゆっくりと眠りについた

 

静まる、部屋の中

 

 

“チリン”と、何処からか優しげな鈴の音が響いていった・・・

 

 

 

 

 

 

 

≪明け空彼方に、君を想う-呉書†思春伝-≫

   ~序幕~

 

 

 

 

ある日、私は母に聞いたことがあった

 

 

“母上は、幸せでしたか?”と

 

 

母はその質問に少し目を閉じて考えたあとに、静かにこう言いました

 

 

“最悪だった”と

 

 

私はその答えに一瞬戸惑ってしまいます

母は、幸せではなかったんだと

 

しかし・・・その心配も、すぐに消えてしまいました

 

何故なら、母はその時笑っていたからです

 

本当に幸せじゃなかったなら、こんな風に笑えるはずがない

 

こんな“幸せそうに”、笑えるはずがない

 

そして、思い出したんです

その昔、父がよく言っていたことを

 

 

“お母さんは、素直じゃないだけだよ・・・実はとっても、恥ずかしがり屋さんなんだ”

 

 

思い出し、私はクスリと笑ってしまいました

 

素直じゃない・・・確かに、父の言うとおりです

 

母はよく父にキツイことを言っていました

ですがそれでも、父と一緒にいる時は本当に楽しそうに笑っているのです

そんな母のことを知っていたから、父もまた何を言われても笑っていたのです

 

 

私は、そんな二人のことを“羨ましい”と・・・そう思いました

 

 

“絆”

 

 

言葉には出来ないほどに深く、絶対に切れることのない“強い想い”

 

二人の間にはきっと、そんなものがあったのでしょう

 

 

本当に、羨ましい

 

部屋の窓

 

明けていく空を見つめながら、私はずっとそんなことを考えていました・・・

 

 

 

 

 

 

~ある少女の手記より・・・~

 

 

 

ーーーー†ーーーー

 

「遅い・・・!」

 

「す、すいませんでした」

 

 

それは・・・とある昼下がりのこと

人で賑わう街の中、私は目の前で頭を下げる男を睨み付けていた

 

対して、私に頭を下げる男は・・・申し訳なさそうな表情のまま、私のことを見つめてきた

 

 

「えっと・・・“思春さん”、できれば言い訳てきなことも聞いてほしいなぁ~なんて」

 

「ほぅ、仕方ない

その言い訳とやらを聞いてやろう」

 

 

“しかし”と、私は腰に差してあった剣にそっと触れる

その拍子に“チリン”と、小気味の良い音が響いた

 

 

「その言い訳しだいでは・・・わかるな?」

 

「い、イエスマム!!」

 

 

びしっと、凄まじい勢いで姿勢を正す男

その姿に心の中で、小さく笑いをもらす

 

 

「えっと、実は出かける直前に蓮華に出くわしてさ」

 

「蓮華様に?」

 

「ああ、そんで“何処に行くの?”って聞かれたから“思春とデートの約束をしてたから”って言ったら・・・」

 

「ちょ、ちょっと待て・・・!」

 

「ん、どうかしたの?」

 

 

男が何かを言うが、そのようなことを聞いている暇などない

私は慌てて男から見えないよう後ろを向き、自身の顔に手を当ててみる

 

やっぱり・・・熱い

 

いきなり、その・・・デートなどと言うから、意識してしまったではないか

くそ、絶対に顔が赤い

 

 

「ちょっと、思春?

大丈夫か?」

 

「問題ない、続けろ」

 

 

後ろを向いたまま、男に向かってそう言う

男はそれに、渋々といった様子で話を再開した

 

 

「そしたら蓮華がさ“そう、最近私とはデートしてくれないのに思春とはするんだ”って、拗ねちゃって」

 

「れ、蓮華様・・・」

 

 

そういえば、最近“彼と一緒に過ごしてない”と言っていたな

むぅ、悪いことをしたか?

いや、しかし・・・そんなの、私だって・・・・・・その・・・

 

 

 

「あ、あの思春さん?

俺のお話を聞いていらっしゃいますか?」

 

「き、聞いている!!

いいからさっさと続けんか!!」

 

「ひ、ひぃ!!?

思春さん当たってる!

思春さんの剣の先が、俺の“御遣い様”に当たってる!!?」

 

 

む、しまった・・・つい、いつもの癖で

私がそれに気づき剣を下げると、男は心底安心したように息を吐き出していた

それから、再び話を始める

 

 

「そんでさ、それが聞こえたのか愛紗や桃香や華琳達が集まって来ちゃって

“私もそうだ”って、言い合いが始まっちゃってさ

最終的に、ガチンコの勝負に発展しちゃったんだ」

 

「それは・・・大変だったな」

 

「ああ、特に桃香がかわいそうだったよ

華琳にやられ、蓮華にやられ・・・何故か臣下のはずの愛紗にコテンパンにされて

うん、流石は軍神・・・容赦ないよ」

 

「あぁ・・・桃香殿は弱いからなぁ」

 

 

それでも、その場に参加していたのだから・・・尊敬はするが

少し、無謀すぎるな

 

いや・・・

 

 

 

「違う、か」

 

 

そこまでしてでも、きっと・・・“コイツ”と一緒にいたかったのだろう

 

 

 

「で、俺の言いわけは以上で終了です」

 

 

“どうっすかね?”と、心配そうな目で私を見ながら言う

私は一度ため息を吐き出し、それからスッと手を差し出した

 

それから、なるべく顔を見ないように・・・ゆっくりと口を開く

 

 

 

「許してやる

だがしかしその分、今日はしっかりと私を楽しませろ」

 

 

 

言いながら、顔が赤くなっていくのがわかる

小さく、手が震えてしまう

 

そんな私の手に・・・

 

 

「ぁ・・・」

 

 

重なる、温かな想い

そっと、ずらした視線

 

その先に、まぶしい程の笑顔があった

 

 

「任せてよ

俺、思春の為に頑張るから!」

 

 

そう言って、屈託のない無邪気な笑みを浮かべながら歩き出す

それに引かれ、私の足も前へと進んでいく

 

 

「ま、待て・・・そんなに急がなくてもだな・・・」

 

 

そんな私の言葉は、あいつには聞こえていないようだ

嬉しそうに、鼻歌を歌いながらどんどんと歩いていく

 

その姿に、人知れず頬が緩む

 

相変わらず、コイツと一緒にいると退屈しない

 

 

 

“北郷一刀”

 

 

 

天の御遣いとして、この世界に降り立った男

 

しかし武力も人並み、知も軍師どもには敵わない・・・どこまでも、人並みな人間

 

 

だがしかし・・・それでもコイツは、この乱世に立ち向かった

目を背けることなく、真っ直ぐとこの乱世と向き合った

 

そして結果的に、この乱世を終わらせるに至ったのだ

 

本人はきっと、“皆のおかげだ”と言って笑うだろう

確かに、それもあるだろう

 

しかし、コイツの言う皆が頑張れたのは間違いなく・・・この男の存在があったからだろう

 

 

そして、皆が惹かれていったのだ

 

 

私も・・・

 

 

 

 

「ほら思春、見て見て!

なんか美味そうな屋台があるよ!」

 

「そのように叫ばずとも聞こえている」

 

 

温かな日差しを浴びながら、歩く私たち

 

その手は、しっかりと繋がれたまま・・・時間は、ゆっくりと流れていった

 

 

 

 

 

ーーーー†ーーーー

 

「ん・・・」

 

 

寝台の上、小さく声が響く

私の隣に眠る男の口からもれたものだ

 

気持ちよさそうに寝息をたてるその姿に・・・私は、小さく笑った

 

それから、窓から見える外の景色へと目をやった

 

 

 

空は、少しずつ明るくなっていく

 

“夜明け”だ

 

 

「もう“終わり”、か」

 

 

そう、もう終わりだ

北郷は、皆に好かれている

恐らく明日には、他の女のところへと行くだろう

 

それは・・・しばらくの間、こうして北郷と過ごす時間が来ないことを意味していた

 

だから私は・・・夜明けが、嫌いだ

 

 

「ふ・・・我ながら、女々しくなったものだ」

 

 

言いながら、私は寝台から体を起こす

それから、北郷の頭を自身の膝の上に置いた

 

 

「私は、弱くなってしまったのだろうか・・・」

 

 

いつからだろう

このような感情を抱いたのは

 

いつからだろう

この男と一緒にいられる日、眠れなくなってしまったのは

 

いつからだろう

こうして、夜明けの空を見るのが・・・堪らなく、嫌いになってしまったのは

 

 

「ただ一人の男の為に、こんなにも・・・胸が苦しくなるなんて、な」

 

 

ああ、本当に滑稽だ

 

ただ一人の男の為に、私はこのような愚かな願いを持ってしまった

 

絶対に叶うことのない願いを・・・

 

 

“この夜が、明けてしまわなければいいのに”と、愚かな想いを抱いてしまった

 

 

ああ・・・だから、夜明けは嫌いなんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

だが・・・ただ一つ

 

 

「おはよう、思春」

 

「あぁ・・・おはよう、北郷」

 

 

こうして、一番最初に私を見てくれる

 

今日という日が、この男を見つめたまま始まってくれる

 

 

その瞬間だけが、私の心を・・・ほんの少しだけ、軽くしてくれた

 

 

 

 

 

≪嫌いだった・・・夜が明けてしまうのが、堪らなく嫌だった≫

 

 

彼女は想う

 

“夜が、明けてしまわなければいいのに”と

 

 

≪だけど、私の願いは叶わない≫

 

 

そう・・・彼女の願いは、絶対に叶わない

 

どれほど願おうとも、夜は明けてしまう

時間は、確実に過ぎていってしまう

 

それは、逃れられぬことだ

 

 

≪それでも、私は願ってしまった≫

 

 

それでも、彼女は諦めなかった

 

願い、望み、求め続けた

明けない夜を・・・ただひたすらに

 

 

≪一人の男の為に・・・私は、愚かにも願い続けてしまった≫

 

 

彼女はまだ、気づけていない

 

その過ぎていく時間の中にある、大切なものに

 

 

 

 

 

それは、明ける空の彼方

 

ただ一人の男を想いつづけた・・・不器用な“彼女”の物語

 

 

 

 

 

 

≪明け空彼方に、君を想う-呉書†思春伝-≫

   ~開幕~

 

 

 

 

★あとがき★

 

≪悠なるかなさん≫のリクエスト、思春での“空シリーズ”という今作w

やはり5~6話程度の短いお話になってしまいますが、とりあえず書いてみました

というか実は思春は以前にチラッと考えたことがあったので、そこからのプロットの練り直しということに

 

とりあえず、試作版のような形に

正式な連載は、おそらく来年になってしまいます・・・w

 

 

さて、タイトルでもわかるとおり今作は“夜明けの空”がテーマです

夜が終わり、また日が昇っていく

そんな当たり前で、だけどとても大切な時間

そんなものを書いていけたらいいなと思います

 

相変わらず、ゆったりとした作風になっております

緊迫したシーンの方が少ないですw

 

ノンビリと、ゆっくりと過ぎていく時間の流れ

大切な人との、掛け替えのない時間

 

はたして僕なんかが上手く表現できるのか・・・果てしなく疑問ですがww

 

少しでもお楽しみいただければ幸いですw

 

 

 

次回は“呉伝”“桔梗SS”“三太さん後編”の三つを予定しておりますw

そろそろ呉伝も進めないとねww

 

 

リクは、随時受付中ですwwww

 

 

それでは、またお会いしましょう

 

 

 

 

イメージソング♪

そして僕の夜が明ける:松たか子


 
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