No.189393

薫子さんの野望~前奏曲(プレリュード)~

おとボク2の二次創作です。

2010-12-12 23:25:33 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3096   閲覧ユーザー数:2960

 
 

もう夕方というのに、蝉の声が学内の並木道から聞こえる。

「えーと、先ほど学校の方から連絡がありまして、来週から寮生が増えまーす」

 寮監督生でもあり聖應女学院の生徒会長でもある上岡由佳里はにっこりと笑いながら夕食のお祈りの前に他の寮生の面々に報告をした。

「由佳里ちゃん、この時期に転入生ですか?」

奏が言った「この時期」とは期末試験も終わり、あと3日ほどで夏休みという時期だったからなのだが。

「母子家庭の娘らしいんだけど、お母さんが亡くなってしまって、自宅から通うのが本当なのでしょうけど、ホラこの学校って一人暮らしは禁止じゃない。だから寮に入るんだって」

「由佳里お姉さま。どういう風に接したらいいのでしょう?」

 上岡由佳里の妹である皆瀬初音が心配そうに尋ねた。

「そうね、本人が言うまでは何も聴かない方が良いと思いますよ?」

「うん、奏ちゃんの言うとおりだね」

 由佳里は奏の出自を思い出して、その奏が言う事を尊重しようと思った。

「で、由佳里さんその新寮生は何年生でどんな人なの?」

「えっと、なんかあたしの名前に似てるんだけれど、神近香織理さんって名前で、初音と薫子と同学年だよ」

「あーそういえば、神近さん姉妹になる人間がいないわね。奏ちゃんどうする?」

「どうすると言われても、あぶれてしまうのは仕方がないですね。私も瑞穂お姉さまが来るまで一人だったのですよ?」

「あっ、そうかごめん。あたしはまりやお姉さまと姉妹になってたからね」

「まあ、奏お姉さまが居るから、「エルダーのお姉さま」はみんなのお姉さまだしね」

「あら、薫子ちゃん。周防院奏お姉さまの騎士の君がそんなこと言っても大丈夫なの?」

「うぐっ。初音ったら痛い所をつくわね。不肖七々原薫子はそんなに狭量じゃありませんよー」

そんな強がりを言った薫子のお腹のあたりからぐぅううううと音が聞こえた。

「あらあら、ご飯にしないと薫子が行き倒れそうね。主よ…」

 

***

 

 夏休みに突入しても、寮の面々はクラブ活動や生徒会活動でまだまだ実家に帰る事が出来なかった。もちろん寮が自宅の様な奏も含めて、全員が夏休みに入ってもそのままでいたのであった。

「ごめん下さい」

 玄関で声がした。残っているのは薫子だけだった。タンクトップとホットパンツという外出には向かない格好で食堂のテレビをだらだらと見ていた薫子は玄関へと急いだ。

「はーい、新寮生の人~?」

 大きい声はやめようねと初音に釘を刺されていたはずなのに、ついつい今までの癖で粗雑な感じに返事をしてしまった。玄関には夏の制服を着込んでボストンバッグひとつをもってきた女の子が立っていた。

「はい、神近香織理です。宜しくお願いします。って、あら、他の人は?」

「あ。みんな生徒会の仕事とかエルダーの仕事で出かけちゃってるんだ」

「そういえば、今年の生徒会長もエルダーシスターも寮生でしたね」

「あはは、まわりが大物なので私としては結構プレッシャーを感じてしまうのだよ。ところで神近さん、荷物はそのボストンバッグだけ?」

「ええと、あとで運送業者の方が来て下さるはずです。今はこれだけ」

「そうね、寮長は生徒会長の由佳里お姉さま。そういえば、神近さんって、生徒会長によく似た名前よね?」

「たしか上岡由佳里お姉さま……でしたっけ。そういわれれば、似てますね」

「とりあえず、私が部屋まで案内するから」

「ありがとう。えっと……」

「ああ~、またやっちゃった。七々原薫子。よろしく」

「薫子さんね。よろしく。確か通り名の騎士の君の方が良く知れ渡ってるわね」

 香織理はにやにやすると薫子に握手を求めた。薫子も香織理の手を握った。

「くんくん。くんくん。香織理さん良いにおいがするね」

「これ? 私調香してるから」

「そうなんだ。くんくん、くんくん」

「もうっ」

 香織理は、笑いながらも困惑していたのであった。

 

***

 

コンコン。香織理の部屋のドアをノックする音がした。

「どうぞ」

「おじゃましま……うわー、香織理さん、なまちちだあ」

「やっぱり、まずかったかしら?」

「おしりもかっこいいし、太ももがいい」

「やだ、ちょっと。そんなに見つめないでよ」

 香織理は部屋で普段着に着替えた。普段着。それが問題なのだ。つまり、神近香織理嬢の普段着は男性モノのワイシャツにショーツだけという悩殺スタイルだったわけで、薫子は何故か大興奮していた。

「ねえ、香織理さん、ちょっと触っていい?」

 香織理の返事を待たずに薫子は香織理の胸をまさぐった。

「ちょっとくすぐったいわ」

「ねぇねぇ、香織理さん。こんなに大きくなるのは一体どんな秘訣があるの!?」

「そんな真剣な目で睨まなくても答えますけど、何もないわ」

「えええええ~」

「そんなに、しょんぼりしないでよ」

「ねえ、ちょっと太ももさわってもいい?」

「はい!?」

「ん。やっぱり香織理さんの生足綺麗だなあ」

「貴女、変態さん?」

「違うよ~。綺麗なモノが好きなだけなんだってば」

「ちょ、いやん。そんななでなでしたらだめだってば」

 香織理は焦った。

 ドンドンドンと階段を上がる音と共に「薫子~。新寮生来てるんでしょ!」と叫ぶ由佳里の声が聞こえてきた。

「入るね~」

 ガチャっというドアノブが廻る音でぱっと薫子は飛び退いた。

「あ。ごめん。着替え中だった?」

「……いえ、これが普段着です」

「ぐぬぬ。ねえ、神近さん、その胸どうやって育てたの?」

「ふぇ?すいません。これは豊胸とか何か特別な事してたわけじゃありません」

「しょぼーん」

 由佳里も落胆の色が激しかった。やがてトントントンとおっとりとした感じの足音が近づいてきた。

「お姉さま、速いですよう。あ。貴女が新寮生ね…… 私、皆瀬初音よろしくね。ところで、あの……ちょっと聞いて良いかなぁ?」

「あー胸は何もしていないから聞いても無駄よ」

「がーん、聞く前に終わっちゃった~」

 

***

 

 まだエルダーの仕事と演劇部の仕事が残っている為に学校にいる奏を除く全員が食堂へ移動して、香織理といろいろ話をしようとしていた。

「とりあえず、この格好はどうにかした方がいいのかしらね」

 寮長としてどうしたものか、由佳里は考えあぐねていた。

「えっと、本当なら私真っ裸なんですけどね」

「裸族って言うの?うーん。それは勘弁して欲しいかなあ」

 寮長以前に女の子としてどうかと考えているようだ。

「わかった、今の格好が限界ぎりぎりね。許可します」

「ありがとうございます」

「ところで、私が上岡由佳里であなたが神近香織理。似てるから、かおりんって呼ぶ事にして良い?」

「はい? かおりんですか?」

「お姉さま、まりやお姉さまに『ゆかりんって呼ぶな~』って仰ってませんでした?」

 初音が由佳里を牽制した。

「そういうのは、あとでこっそり言うんだよ」

「はううう。わかりました。お姉さま」

 初音がしょげかえっていたところに、奏が帰ってきた。

「ただいまです~。新寮生の方が見えてるの?」

「あ。奏ちゃん、おかえり~。みんな食堂に居るよ~」

 由佳里が大きい声で返事をすると奏が食堂に入ってきた。

「はじめまして、かな?周防院奏です」

「お姉さまごきげんよう」

 香織理はエルダーに対する挨拶で奏を迎えた。

「香織理ちゃんとお呼びしてもよろしいかしら」

「はい、お姉さまのお好きなように」

「エルダーシスターとして、香織理ちゃんに尋ねます…… 胸どうしたら育ちます?」

「ええええ、お姉さままでもそんなこと聞かないで下さいよ~」

「……までも?」

 奏は、周りを見回した。そう。悲しいまでに奏の世代と薫子の世代は胸がささやかだったのだ。

「もしかして、全員が同じ質問をしたわけですか?」

「あははは、そうみたい……」

 由佳里は苦笑しながら白状した。

「「「「はうう、胸おっきくなりたいよね~」」」」

 女の子の悩みはいろいろあるんです!

 

***

 

「ねえ、香織理さん。よければお風呂一緒に入らない? ここのお風呂は何人かで入れるくらいの広さはあるんだ」

 薫子が香織理をさそった。

「裸のお付き合いって事? 私だけは、もう半裸みたいなものだけれどね」

「いろいろ聞きたいこともあるしさ~」

「なにか貞操の危機を迎えそうな気もするけど……いいわお付き合いならしますよ」

 カポーン。この擬音って誰が考えたのかわからないけど、実にお風呂チックな音だ。

「ねえ、香織理さん。香織理さんって香水作れるのかな?」

「ええ、作れるわ。薫子さんも自分の香りが欲しいの?」

「というかね、奏お姉さまに作りたいんだ」

「なるほどね。わかったわ。運送屋さんは明日来る予定だから荷物が来たら作りましょうね」

「あとさ、お願いがもう一つあるんだけど」

「なによ?」

「香織理さんの美脚を愛でる愛好会作って……いい?」

「なんじゃそりゃー!?」

「綺麗な美脚を愛でるだけだから…ね?ね?」

「はいはい、もう好きにして」

「やっりー♪」

 

***

 

 次の日。さすがに荷物を持ってきてくれる運送屋さん(おそらく男性)をあられもない姿でお迎えするのは、いかがなものかという事で、香織理は制服で待っていた。ベッドや机は作り置きのようなものがあったが本棚とか実験器具のようなものとかいろいろなモノが搬入された。

 そして、荷物の搬入が終わると、香織理はそそくさと普段着に戻った。

「ふう。やっぱりコレが落ち着くわね」

 そうひとりごちると、荷物を整理し始めた。

「香織理さん居る?」

 薫子が部屋を覗きに来た。

「やりっ!また普段着だっ」

 薫子が小さく呟いたのに香織理は気がつかなかった。

「ねえ、香織理さん、もう一度だけでいいんだけど、やっぱり足触らせて貰って良いかな?」

 そういう間もなく、薫子は香織理の足をなでなでしはじめた。

「くんくん、やっぱり良い香りだあ」

 掌で太ももをすりすりしているかと思いきや、いつの間にか頬ずりになっていた。

「ちょ。薫子さん。おい、薫子!」

 香織理が怒っても薫子はやめなかった。

「ああ、こんな綺麗な生足はじめてだあ」

 そして、香織理は太ももに奇妙な感覚を感じたのであった。あたたかくて湿った感じ。

「ちょっと、いやっ! 薫子ったら、舐めないでよ……はううぅぅぅぅ」

 可哀想な香織理は撃沈してしまったのであった。

 

***

 

以上、美脚倶楽部に関するレポート。

報告者:宮藤陽向

 

 

 
 

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