No.189382

「好き」のキモチ☆

穂高真帆さん

2人のエルダーから、千早と初音をピックアップ☆
いつもニコニコ、優しい初音さん。彼女が「恋」を意識したらどうなる…という感じです。

2010-12-12 22:16:32 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:2718   閲覧ユーザー数:2604

 

…千早ちゃん。

入学式の前に、薫子ちゃんが街に出かけたときに、偶然助けたと聞いた女のコ。

ウェーブのかかった長い銀色の髪がとても綺麗で、物腰もとても柔らかで、そう、「お嬢さま」というのを表現するなら、いちばんお似合いな女のコ。

お料理も、お菓子作りも、お茶も、とても上手で。

そして―。

柏木、優雨ちゃん。

寮の慣例で、私の妹になった、女のコ。

病気がちで、体力的にもそれほど強くなくて、でも、生きる目的を見出すことができたら―という親御さんたちの願いから、入学してきた1年生の女のコ、優雨ちゃん。

私なりに、ガンバっていたと思う。

けれど、優雨ちゃんは違っていて、意思の疎通もままならなくなってきたとき―。

千早ちゃんが、手助けしてくれた。

窓の外でした、天使とウサギの人形劇。

優雨ちゃんが窓の外をいつも見ている理由も、寂しい過去も、千早ちゃんがそれを知るきっかけを作ってくれた。

優雨ちゃんが、千早ちゃんを「天使さん」という理由、何となく、分かった気がする…。

優雨ちゃんの心に芽生えた、生きる理由と好奇心。

私も、何となく…千早ちゃんのことが…。

薫子ちゃんの千早ちゃんを見つめる視線が、いつも熱っぽい感じがする理由。何となく、分かってきた気がする。

妃宮、千早ちゃん。

私の中で、千早ちゃんの存在が大きくなってきていることを、まだ、このときの私は意識していなかった…。

 

いつもの日常の、ありふれた景色。

朝、みんなが集まる朝食の場所。

私と、千早ちゃんと、史ちゃんが早くて、いつも遅いのが薫子ちゃん。

そして、学校の門を潜って、校舎までの通り道にこだまする、みんなの明るい声。

「おはようございます、お姉さま―」

元気な声、優しい声。色んな声が心地よく、私の傍を通り過ぎてゆく。

もちろん、千早ちゃんも薫子ちゃんも挨拶のお返し。

薫子ちゃんは、明るく元気。千早ちゃんは、優美に―。

対称的な2人の声が逆に気持ちよくて、私も楽しい気持ちになる。

特に、千早ちゃん。

薫子ちゃんは1年のときに同じく寮に入ったから、こういう朝の挨拶も馴染んでいるけど、千早ちゃんはまだ今年転入してきたばかりだから、その優美な声は、とても気持ちがいい。

校舎までの短い道程を、私と、寮のみんなで歩く。当たり前のことなんだけど、そんなことも楽しくなれるくらい、千早ちゃんは素敵だと思う。

そのさりげない仕草や、気づかいに、つい目で追ってしまう。

―そして。

少しずつ、私の中で「千早ちゃん」の存在が大きくなってきていることに、気付いたときでもあった。

 

―きっかけは、唐突にやってきた。

華道部の部長の、哘雅楽乃さん。

まわりから、「御前」という二つ名でも呼ばれている、雅楽乃さん。

華道の名門家系の生まれで、大人びた淑女のような落ち着きがあって、そこから着いた二つ名が、前述の「御前」。

最初は、その二つ名が示す通り、所作が静々としていて、そう呼ばれる由縁が分かるような気がしていた。

でも、千早ちゃんと、雅楽乃さんが2人でいるところを偶然見かけて、もう1つの雅楽乃さんの顔を知ってしまった。

「御前」という二つ名。華道の名門家系という厳格な家庭で育てられて、淑女の鑑のような女性と、実は歳相応な、かわいい女のコ。

千早ちゃんの前で、あんなにもストレートな愛情表現。見かけた方としては気恥ずかしさもあるけれど、あんなにも「好き」という気持ちがはっきりと言える―は羨ましくもあった……。

 

―同性を好きになる気持ち。

私の中の、薫子ちゃんの好きと、優雨ちゃんの好き。もちろん、生徒会のみんなも好き。

じゃあ、いちばんの「好き」は?

薫子ちゃんや生徒会のみんなは、一緒にいると楽しい。優雨ちゃんは、いろいろと一生懸命なところも可愛くて、優しい気持ちになる。例えるなら、家族のような気持ち…なのかな。

『千早ちゃんは?』

千早ちゃんのことを考えると、実はよく分からなくなってしまう。

その優美な仕草や気遣いに、つい目で追ってしまったりするし、話しかけられると嬉しいし、楽しくなる。

そして、雅楽乃さんの千早ちゃんへの「好き」という意思表現には、羨ましく思う。

でも、そこに気付いてしまった。

(あっ……)

答えは、本当はすぐ傍にあったのだ。

(私…、千早ちゃんのこと、好きだったんだ……)

思わず、苦笑いしてしまうくらい。

最初から、答えは出ていたけれど、気付かないフリをしていた。

みんなが憧れるお姉さま―だから。

私だけで独占していい―なんて、思ってはいけない。

そう、最初から答えは出ていたのに、気付かないフリで気持ちをごまかしていた。

寮のみんなも好き。

生徒会のみんなも好き。

そんな優しい気持ちでいられる世界を壊したくなかったから、自分の気持ちに鍵をかけた。

でも、本当は……。

 

変化に対する周囲の反応は、いつも敏感なもの。

自分の気持ちに鍵をかけたつもりだったけれど、まわりはそうは見ていなかった。

「初音、何かいつもと様子が違うように見えるけど…、大丈夫?」

と薫子ちゃんから心配の弁。

「初音さんは、いつも自分ことを後回しにしてしまう感がありますから、私も心配になります」

と千早ちゃん。

平静を取り繕うとしているはずなのに、ままならなくなっている現実。

「ありがとう…。でも、ホントに大丈夫だから」

こう告げるのが精一杯。

けれど、みんなの理解も嬉しかった。

「ホント、初音は頑張りすぎるきらいがあるから、手伝えることがあったら、遠慮なく言ってね」

「同じ寮の大切な友人ですから、約束ですよ、初音さん」

「はい―」

薫子ちゃんと千早ちゃん。2人の気遣いが嬉しかった。

大切な友人。大好きな、薫子ちゃんと千早ちゃん。

「ホント、ありがとう。薫子ちゃん、千早ちゃん。大好き☆」

2人の真ん中に飛び込む形で、抱きついた。

「は、初音―」

「初音さん…」

少しどもる薫子ちゃんに、少し照れた千早ちゃん。

私は、皆瀬初音は、薫子ちゃんが好き。優雨ちゃんも寮のみんなも好き。生徒会のみんなも好き。

そして、千早ちゃんも好き……。

同性を好きになる気持ち―というのは、まだよく分からない。

けれど、「好き」という気持ちだけは変わらないし、変わることもない。

よくテレビや小説とかで言われる、性的なものなのかはよく分からない。でも、こうして触れ合う気持ちよさや心地よさは実感として残る。

そう、「好き」の気持ち。

『人って、言葉にしないと伝えられないことって……すごく多いんだよ』

前に、そんな話をしたことがあった。

だから、私はこう伝える。

 

「みんな、大好き☆。 これが、私のこころ」

 

fin

 

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