No.186548

剣帝✝夢想 第十九話

お久しぶりです、へたれ雷電です。一時PCが壊れ、小説のデータが飛びました。
今回は短いですが、決戦前の導入くらいの気持ちで読んでくれたらうれしいです。あと最後にちょっとしたおまけをつけてみました。元ネタ分かる人いるかなぁ。ひとつは有名なネタだけど。

2010-11-25 18:26:39 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:4009   閲覧ユーザー数:3632

ドラギオン入手からしばらくしたのち、桃香たちが遠征から帰ってきた。ドラギオンは一応人目に付かないところ(もっとも、あの巨体だから無理はあるが)に保管している。工兵に命じて一応保管庫のようなものを作らせはしたが、それでも違和感は拭えない。兵たちは、自分たちが出た時にはなかった施設に視線がいっている。

 

 

「ご主人様、あれなんですか?」

 

 

桃香がそう訪ねてくるが、あとでまとめて話したほうが楽だと思い、先に遠征の結果を聞くことにした。

 

 

「ええと、ですね。今回の遠征では戦闘行為は一切なく、無血降伏という形で決着がつきました」

 

 

「戦闘なし?どういうことだ?」

 

 

南蛮との戦闘、像との戦闘も視野に入れて準備をし、周到な用意をしていったはずなのに戦闘がなかった。死者どころか、負傷者もいなかったというのは喜ぶべきことだが、どういうことだか分らなかった。その疑問ももっともだと思ったのか、報告してくれた雛里が説明してくれる。

 

 

「えと、その、向こうの王の方が、その、無邪気というか純真無垢というかそんな人で、星さんがひたすらいじって、たんぽぽちゃんががひたすら罠にかけていたら泣いて降参してきて…」

 

 

正直に言おう。状況が全く理解出来ない。星が相手の王?をさんざん侮辱して、たんぽぽがひたすら罠を仕掛けて降伏させたのはなんとなく分かる。悪い癖が出たのだろう。しかし、そこまでにいきついた経緯が全くわからない。かといって雛里に視線を向けてみても、どう説明したものか、という顔をしている。

ともかく、無血勝利できたのだからよしとしよう。これでひとまず目先に迫っていた問題は解決した。あとは急いで、かつできるだけ民に負担をかけないように国力を高めていくだけだ。曹魏との決戦を前提として。

そのとき、初めて聞く声が耳に届いた。

 

 

「ここがショクの城にゃ?でっかいのにゃ~」

 

「でっかいにゃ~!」

 

「でっかいにょ!」

 

「にゃ~」

 

視線を向けると、そこには猫耳を生やした幼女…もとい少女が四人物珍しそうに蜀の城を眺めていた。

 

 

「彼女たちは?」

 

「彼女たちが、南蛮の王の孟獲さんたちです」

 

桃香の提案でここまでついてきたらしい。そして街の珍しさと食べ物のおいしさにここにいつくことにしたらしいとも。桃香が決めたのだから特に異論はないが、あれが本当に南蛮の王なのだろうか。

すると、自分の名前を呼ぶ声が聞こえたのか、こちらへと近づいてきた。

 

 

「お前がレオンハルトにゃ?みいはみいにゃ!これからお世話になるにゃ!」

 

 

そう言うがはやいか、こちらへとまとわりついてくる。その姿はまさに猫。それを見た部下らしき三人の少女も、真似をしてまとわりついてきた。

 

 

「お、おい?」

 

 

レーヴェは戸惑ったような声をあげるが、四人は離れない。結局レーヴェが解放され、ドラギオンのことを説明できたのは四人が飽きるまでの二十分ほど経ったあとだった。その間、兵たちはなぜか微笑ましいものを見るような、どことなく緩んだ顔をしてこちらを見ながら事後処理を行っていた。

 

 

ちなみに、ドラギオンのことを説明した際、大抵の兵は驚いていたのだが、ある一部署だけはその構造などに興味を示していた。…兵器開発研究部という部署という名だったが。それから十数年後、彼らが木製ドラギオンを完成させてしまうのは余談である。

それからしばらくして、曹操が大兵力を動かすべく、各地に総動員をかけたという情報が影によってもたらされた。曹魏が動員するらしい兵力は約百万という話だった。それを受けて呉と連絡を取り、お互いが総動員して用意できる兵力は呉が約四十五万、蜀が約四十万。合わせても曹魏の百万には足りなかった。

 

 

「戦争…になるんだね」

 

 

「ああ、これが最後の決戦になるだろう。これで負ければすべてが終わり、曹操にすべて支配されることになる」

 

 

呉からの返事が返ってきてから開かれた軍議で、緊張した顔で桃香が呟く。レーヴェは、とうとう来てしまったこのときを前に、これからどうするか、ということに対して思考を巡らせていた。幸い、呉との交渉はずいぶんと前に済んでおり、対曹魏連合というべきか、曹操を迎え撃つための最低限の準備はできている。

 

 

「これで、我々蜀呉連合が勝つか、曹魏が勝つかでこの大陸が決まる、ということか」

 

 

愛紗も緊張しているのか、そう呟く顔と声は固い。

 

 

「…孫策さんとは話がついたけど、曹操さんとも一緒にこの大陸を治めることはできないのかなぁ?」

 

 

桃香がそのぽつりと漏らした言葉に、愛紗たちがまたか、と呆れた顔になる。

 

 

「そんなの無理なのだ。孫策お姉ちゃんはもともと呉だけでの支配にそこまで執着がなかったから何とかなったけど。曹操は無理なのだ」

 

 

「そうだよ。曹操の望みは魏一国による統治。桃香のそんな言葉に乗ってくるわけないって」

 

 

「そうですぞ。そんな甘い考えはここで捨てて行きなされ。折角呉が譲歩してくれたというのに、これ以上を望んではそれすらもこの手から零れていきますぞ」

 

 

鈴々、翠、桔梗と三人に立て続けに否定され、桃香はシュン、とうつむいた。そこで、レーヴェが口を開いた。

 

 

「…桃香の理想、三人でこの大陸を治めるという理想を叶える手段はある。だが、そのためには、魏を徹底的に叩かなければならない。理由はわかるな?」

 

 

レーヴェの問いに、桃香は首をかしげた。そこで朱里が説明に入った。

 

 

「今のままでは、曹操さんの勢力が大きすぎるんです。もし仮に、今のままで曹操さんが頷いてくれたとしても、必ず近いうちに争いが起こります。それも曹操さんのほうから。だからこそ、魏の国力を削いで、私たちと同じくらいにまで落とす必要があるんです」

 

 

その言葉にようやく桃香は理解したようだった。そして、まだ手遅れではないということに顔を輝かせた。

 

 

「幸い、すでに呉とは以前より手を組んでいたおかげで別のことに人を割く余裕ができている。魏のほうはまさかオレたちが反董卓連合のときから手を組み、それが今でも続いているとは思わないだろう。孫策との決戦地の相談は朱里に任せる。護衛は紫苑と華苑が頼む。紫苑ならばいざというときの判断もできるだろうし、今の華苑ならば恋クラスの相手が出てこない限りはそう後れをとることはないだろう。雛里はいつでも出れるように兵站のほうを頼む。決戦地がまとまり次第すぐに発つことになるぞ。影は引き続き、魏に潜伏し、情報収集を頼む。では各自、為すべきことをなせ。解散!」

 

 

レーヴェの声に文官、武官問わずに慌ただしく広間を出ていく。それを見送ると、レーヴェはある場所へと足を運んだ。

 

 

そしてしばらくしてようやく集合の地が決定する。

その名は夏口。

とうとう決戦へのカウントダウンが始まった。

そして、レーヴェは別の諜報員から不審な知らせも受けていた。

 

 

 

 

『五胡に異人の姿と不審な動きあり』

 

 

 

と。

おまけ

 

とある兵器開発研究部の一日

 

 

蜀の誇る(かどうかはわからないが当人たちはそう思っている)兵器開発研究部の朝は早い。城下の片隅、城に近いそこそこ広い敷地に建設された工場のまえにずらっと開発員(兵士の姿だが)が並ぶ。

 

 

「さて、いつものあれを始める!」

 

 

「「「おお~っ!!」」」

 

 

研究部長が大きく息を吸い込み、そして大声を出した。

 

 

「お前たちの目的はなんだ!?」

 

「「「工作!工作!工作!」」」

 

「お前たちの目的はなんだ!?」

 

「「「工作!工作!工作!」

 

「お前たちは、蜀を、レオンハルト様を、桃香様を愛しているか!?」

 

「「「ガンホー!ガンホー!ガンホー!」」」  「「給料分!給料分!給料分!」」

 

「よ~し、さっき給料分って言ったお前たち!工場の周り十周してこい!!」

 

「「ええぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」」

 

 

命令された兵士たちは泣きながら走って行った。研究者たちはタフネスが命なのである。

 

そして、それが終わると、各自が兵器研究に移っていく。

 

 

「部長!!新式の自動弓発射装置完成しました!」

 

「よし!射程は?」

 

「およそ10アージュ(10メートル)です!」

 

「作りなおしてこい!」

 

「えぇぇぇぇぇぇ!?」

 

とにかく忙しいのである。

 

昼になると、食事をとるのだが、大抵の人がそれを忘れてしまい、家族や恋人などが弁当を持って来るまで続けてしまう。その一例をあげてみよう。

 

 

「…まだ作ってるの?レオンハルト様に進み具合はどうか見てこいって言われたから見に来たけど、もうお昼よ」

 

「む、そんな時間か」

 

ある武官の少女が研究員の男兵士に声をかける。どうやら知り合いのようだ。

 

「ま、これを予想してたからお昼買ってきたんだけどね。それで、なに作ってるの?」

 

「ん?槍を一気に何十本と射出して相手を串刺しにする装置だ。まだ五アージュしか飛ばないけどな」

 

「へぇ~。それでこっちのでっかい装置は?」

 

「ああ?槍を一発ずつ連続して発射する装置だ」

 

「こっちもちょっとしか飛ばないの?」

 

「いや、二百アージュは飛ぶぞ」

 

「連続ってどれぐらいの間隔で?」

 

「一分間に六十本だ。そんなくだらないものは無視してお昼にしよう」

 

「アンタ、絶対にバカでしょ!」

 

「なんで?」

 

とまぁこんな具合です。

 

 

そして夜、各自の進捗を報告し、その日の大発明を発表して一日が終わる。

 

「今日の大発明は彼の高速連続槍発射装置です。なんと、一分間に六十本の槍を二百アージュ飛ばせるようです。名前はあとで募集します」

 

部長が朝とは違い丁寧な声で発表する。表彰された兵士はどこか釈然としない顔をしていた。

 

これで兵器開発研究部の一日は終わり、皆、翌日に向けて英気を養うために就寝する。

そして次の日も彼らの戦いは続く。

 


 
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