No.185359

真・恋姫無双 魏end 凪の伝 27

北山秋三さん

目覚めた一刀だがその左腕が動かない。
人を殺した・・・その思いが一刀に重くのしかかる。
その時明命に告げられた事とは・・・。

2010-11-19 00:03:54 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:5113   閲覧ユーザー数:4022

なぎが泣きながら出て行ったのを暖かい瞳で見送ってから、一刀は左腕を動かそうとしてみるが

 

左手は動かない。

 

寝台に腰掛、何度か動かそうとしてみればかすかに動く事から、折れたり感覚が無くなった

 

というわけではないようで少しホッとする。

 

朝の激痛はもう無い。鈍い痛みがあるだけだった。

 

その左手を見ながら昨日の事を思い出す。

 

(・・・人を・・・殺したんだよな・・・)

 

まるで豆腐を叩き潰すような感覚で人を潰していった。

 

恐ろしい・・・だがそれは人を殺した事が恐ろしいのではない。

 

"何も感じていない"自分が怖かった。

 

でも・・・と思う。

 

悪夢は見なかった。

 

"誰か"に抱かれて眠っていた気がする。

 

それはなぎでは無い。

 

"誰か二人"だったと思いながら、立ち上がった。

 

貂蝉の言葉が思い出される。

 

"毒矢に倒れた乙女と病に倒れた乙女の想い"

 

その二人に護られたような気がしていた。

 

確証は無い。

 

だが、それが正解だと勘が囁く。

 

「ありがとう・・・」

 

ポツリと呟いた言葉に、笑顔が返ってきた気がした。

 

とりあえず一刀は白蓮の様子を見に行こうと思い、右手で『南海覇王』を掴んで扉の所まで行き、

 

ふと立ち止まる。

 

「────やっぱり・・・あんな事をしたオレは、怖いよ・・・な・・・」

 

なんの感情も無く、ただ邪魔だと思っただけで殺した。

 

それは道を塞ぐものをよけただけの感覚。

 

それで次々と人を殺した。

 

何千人だったか・・・もう数える事すら出来ない。

 

今、ここから出れば恐怖の目で見られる・・・一刀の足が前に進むのを拒んだ。

 

どうすれば────

 

 

「あ、大丈夫です。あのくらいの事ができる人は結構いますよ!」

 

「ああ・・・そうなんだ・・・結構いるんだ・・・そして"あのくらい"なんだ・・・」

 

明命の明るい笑顔であっさりと告げられた言葉に一刀は頭を抱える。

 

しばらく扉の前で躊躇していた一刀だったが、様子を見に来た満面の笑顔の明命に戸惑い、

 

「あんな事をしたオレが恐ろしくないか?」

 

と聞いた答えがこれだった。

 

「はは・・・どんな世界だよ・・・」

 

一刀の笑顔が引きつる。

 

「────って!そんな場合じゃない!・・・白蓮は・・・?」

 

「白蓮様でしたら診療所の方にいらっしゃいますが、もう気が付いていらっしゃいますよ?お医者様が

 

おっしゃるには、もう大丈夫だそうです。ただ、傷が傷なので用心の為に一緒に建業へいってしばらく

 

養生していただかなければなりませんが・・・」

 

明命のその言葉に一刀はほっと胸を撫で下ろす。

 

「そうか・・・よかった・・・」

 

思わず笑みがこぼれる。

 

その笑顔が明命の見た幻視と重なり、一気に明命の顔が赤くなってまるでヤカンのお湯が沸騰する

 

ようにピーッ!と茹で上がる。

 

「ああああああああああ、あの、朝ののののの、しょく、しょく、食事の準備がととのっでべます!」

 

噛んだ。

 

その事にへこむ明命だったが、一刀は気付かずに「ありがとう」と言って笑顔で軽く頭をなでる。

 

一刀からすればそこまで他意は無く、ほぼ無意識だったが明命にすればまさにも天にも昇るような

 

気持ちだった。

 

(幻と同じだ・・・)

 

優しい幻視。

 

『武を極め、呉に尽くす』いつしかそれ以外の事が出来なくなっていた自分。

 

だが幻視で見た一刀はそれでも受け入れてくれた。

 

一緒に猫を見た・・・手を握った・・・その暖かさは幻の筈なのに鮮明に思い出せる。

 

今と同じ笑顔で・・・微笑んだ・・・。

 

一刀はぽー・・・っとした顔で自分を見つめる明命の姿に?と疑問符をつけるが、白蓮の様子も

 

気になるので明命の前で「おーい」とパタパタと手を振ると、明命がハッ!とした顔をした途端

 

赤かった顔がさらに耳まで赤くなる。

 

「さ、さぁ!行きましょう!」

 

「ああ、先にぱいれ・・・」

 

「さぁさぁ!行きましょう!行きましょう!」

 

「あれ?ねぇ、聞いてるかな?先に・・・」

 

「みなさんお待ちですよ♪」

 

「あれ?もしかして話聞いてない?」

 

「ふんふんふーん♪」

 

「なんか昨日と同じだよね?やっぱり話聞いてないよね?────って、いてててててて!ちょっ、

 

ちょっと待って!そっちの手は!痛い痛い痛い痛い痛い痛い!」

 

赤くなり、心臓がドキドキと早鐘を打つのを誤魔化す為に一刀の左手を引っ張りながら進む。

 

一刀の悲痛の叫びを残しながら・・・。

 

 

「おはようございますお客さまー。お食事の準備が出来ていますよー」

 

「・・・あら?もう出かけられたのかしら」

 

「・・・ん?あら、まあ。おねしょしたのね」

 

「はっはぁん・・・それであの子が洗濯をしてたのね。ふふふ」

 

「布団を干しておきましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーツを何とか洗い、次は布団の番だと戻って来たなぎが見たものは部屋の窓から干される

 

世界地図のついた布団だった。

 

「あ。あの部屋の子おねしょしたんだ」

 

「こら、見ないの。あんたも小さい頃してたでしょ!」

 

後ろでする親子の会話になぎは崩れ落ちた。orz

 

 

何とか明命を説得して白蓮の様子を見る事が出来た一刀だったが予想以上に白蓮は丈夫だったらしく、

 

「まぁ、運が無いのはいつもの事だしね」

 

とすでに寝台から体を起こして笑って見せた。

 

横になっている寝台の側に一刀が座っても、白蓮が変わった様子は無い。

 

白蓮だけは幻視を見ていなかったのだ。

 

 

 

 

だが────

 

 

 

 

「よかった!助かって本当によかった・・・!」

 

嬉しさのあまり思わず手を握り締め、うっすらと目に涙を浮かべる一刀の姿に一瞬で顔が真っ赤になり、

 

白蓮はまた気を失った。

 

 

その頃、蓮華と思春は────

 

「思春・・・私はやはりこうするしか無いと思うの・・・」

 

「れ、蓮華様!しかしそれは・・・!」

 

蓮華の決意の篭った言葉に思春がうろたえる。

 

まさか、という思いだった。

 

「・・・覚悟を決める時が来たと思うの」

 

「蓮華様・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「覚悟を決めた時は裸えぷろんが最高と衝古見でもあったわ!」

 

「しかしそれは!」

 

「あんたら早く決めてくれんか」

 

服屋の前で朝から2時間は悩んでいた。

 

 

お送りしました第27話。

 

亞莎がくるまでのお話でしたw

 

ではちょこっと予告。

 

建業へと到着した一刀は『南海覇王』に導かれ、ある場所へと向かう。

 

「墓」

 

ではまた。

 

 


 
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