No.183480

魏√after 久遠の月日の中で 12

ふぉんさん

魏√after 久遠の月日の中で12になります。前作の番外編から見ていただければ幸いです。

それではどうぞ。

2010-11-09 01:14:07 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:21881   閲覧ユーザー数:18406

獰猛な鳴き声と共に熊が突進してくる。

その巨躯では考えられない程の速さだ。

 

俺は張り詰めた空気に意識を溶け込ませていた。

怒りに身を任せながらも、身体の芯は冷静に戦況を把握している。

動きは単調。俺は最小限の動きで突進を避け、その際肩口に一心を打ちつける。

 

が、硬い筋肉か、勢いもあり軽々と跳ね返されてしまった。

 

「ちぃ!!」

 

氣は十分に込めていた。生半可な打撃では通用しないらしい。

腰を据えた一撃でないといけない。

だが、反転し再び向かってくる熊はそれを許さない。

 

突進自体避けることは造作も無い。

だが華雄の事もあり時間をかけてはいられないのだ。

 

再び向かってくる熊。

構える俺を目の前にし、急ブレーキをかけた。

 

意図を理解しその場を離れようとするが、鋭い爪が襲い掛かった。

咄嗟に両手で一心を支え突き出す。

衝突と共に、全身に重圧と痛みが走った。

 

「ぬぉおおおお!!!!!」

 

華雄はこんな一撃を受けていたのか。

受けたままでは華雄の二の舞に成りかねない。

一心を寝かせ爪を流し、その場を離脱する。

 

が、追うように熊が接近し間合いを抜け出せない。

 

側面から襲い掛かる鋭い爪に加え、時折噛み付こうと顔を突き出してくる。

 

単調な攻撃のおかげか、いくら速かろうが避けきれる。

だが、一撃一撃が必殺。

まともに受ければ立ち上がることもできないだろう。

 

隙を見ては一心を振るうが、熊は蚊にでも刺されたかのように気にする素振りもない。

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

息が荒くなる。

いつもであればこんなにすぐに疲れることは無い。

だが、一撃も貰うことができない状況に、精神面での体力消費が多いのだ。

 

こうして場を凌いでいる間にも、華雄が命の危機にさらされている。

 

華雄の安否が頭をちらついたその時。

足を狙った熊の一撃を真上に飛んで交わしてしまった。

 

まずいッ!!

 

続けて襲ってくる鋭い爪。

空中に浮いている俺に避ける手立ては無い。

 

全身の氣を防御に集中した瞬間、その衝撃が身体を跳ね飛ばした。

 

痛みに耐えながら地面を転がる。視界の隅に血潮が舞うのを垣間見る。

 

全身が擦り切れ、鈍い痛みに歯を食いしばりながら立ち上がる。震える足に渇をいれ、熊の方を見る。

熊は俺を殴った自分の腕を不思議そうに見つめていた。恐らく違和感を感じたのだろう。

防御をしてもこの有様だ。

氣を練るのが少しでも遅かったら、俺の命は無かっただろう。

 

熊は再び俺に向け臨戦態勢をとる。

今の俺に熊の攻撃を避け続ける体力も時間も無い。

おまけに氣の使いすぎで全身が錘を着けているかのように重い。

 

「……ふぅーーー」

 

覚悟を決めよう。

ここで俺が熊に殺されれば、残った華雄も同じ道を辿る事になる。

それだけは絶対に回避しなければならない。

最低、俺が死んででも熊を仕留めなければ。

 

丹田に力をいれ、残された氣を練り上げる。

両手で一心を構え、自分から熊へ向かった。

無論熊も黙ってそれを見ている訳ではない。

二足で立ち上がり、俺を迎え撃つように両手を掲げる。

改めてその巨躯に身震いするが、足は止めず間合いに入る。

 

襲い掛かる熊の右腕を、軽く一心を沿え軌道をずらす。

 

遅れて来る左腕を、更に速度を上げ懐に入り避ける。

 

脇腹に掠り激痛と共に激しく血潮が舞うが、ここまで来れた。

 

「はぁ!!!」

 

目一杯の力を込め、熊の足へ一撃を見舞う。

手応えはあった。熊は初めて苦痛に呻き片膝を着く。

 

ここしかない!!

 

両足と一心の先端に最後の氣を込める。

 

「うぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

 

足の氣を爆発させ、熊の顎へ一心を突き刺す。

形容し難い音と共に、熊の脳天から一心の先端が突き出た。

 

地鳴りと共に、熊が後ろへと倒れこむ。

 

「はっ、はっ、はっ、はっ」

 

腕にこびり付く突き刺した感触。が、首を振り気持ちを切り替える。

勝利の喜びや、殺してしまった罪悪感を感じている暇は無い。

すぐに華雄の手当てをしなければ。

 

今すぐにでも休みたいと主張する身体に鞭を打ち、華雄を抱き洞窟に戻った。

「終わった……か?」

 

救急箱に包帯を仕舞い息をつく。

野生の動物につけられた傷なので、念入りに消毒をし包帯で処置をした。

血が足りないらしく華雄の顔は少し青いが、脈や呼吸は安定している。これならば大丈夫だろう。

 

と、安心したせいか視界が暗転する。

身体の稼動限界をとっくに超えていたのだろう。

 

鉛のように重い身体を横にし、襲い掛かる睡魔に身をゆだねた。

 

 

 

 

 

「……痛ッ……あれ……」

 

全身の痛みに目が覚める。

 

「おぉ、起きたか」

 

木の葉を焼べていた華雄がこちらに気付いた。

身動きをとろうとするが、なにやら動きにくい。

と、自分の身体そこかしこに包帯が巻いてあった。

 

「これは……」

 

「一刀が持っている道具は奇怪なものばかりだな。用途は何となく分かったから使ってみたんだが……いらん世話だったか」

 

不安げに俺を見つめる華雄に、俺は可笑しくなり軽く噴出す。

 

「いや、ありがとう。助かった」

 

消毒もちゃんとしてくれたらしい。少し不恰好だが、効果は十分あるはずだ。

そうか。と嬉しそうに言う華雄。その肩を見て、俺は慌てて口を開く。

 

「ごめん華雄。あそこで俺が出てこなければ華雄は……」

 

「ん?何を言っている。どんな理由があろうとも、戦いの最中に注意を逸らしてしまった私が悪いんだ。一刀が気を病むことではない」

 

心底不思議そうに返す華雄に、俺の罪悪感が幾分和らいでいく。

それよりも、と華雄が続ける。

 

「外の、見たぞ。随分と苦戦したようだな」

 

「うん、何とかね……」

 

蘇る、肉を貫く感触。

初めて摘み取った命の感触に言い知れぬ感情が湧き出るが、悔いは無い。

あそこで殺さなければ、自分達がやられていた。

これだけは、割り切らなければいけないのだ。

何故華雄が俺を起こさず一人で熊へ向かったかは聞きはしない。

付き合いは短いが、華雄の人となりはかなり理解していると思う。

そこから考えれば、理由なんて簡単に分かるからだ。

 

だが、俺としては当然そんな無茶はしてほしくないわけで……

 

「華雄」

 

「なんだ?」

 

俺の方を向く彼女を見つめる。

細い身体。それでいてあの金剛爆斧を振り回すのだから、信じられない。

 

「……守るから」

 

俺なんかが痴がましいのかもしれないが、それでも今日は彼女を守る事ができた。

 

「華雄は俺が、守るから」

 

彼女より弱い俺がこんな事を言うのも可笑しいかもしれないが、この気持ちは伝えたかった。

華雄はきょとんとして俺を見ている。

 

「…………背中くらいなら……守らせてやる」

 

どうせ突っぱねられ、いらん。と言われると思ったが、帰ってきた言葉は嬉しいものだった。

何故か頬を赤くして顔を背ける華雄。

 

「はは、ありがとう」

 

俺の意思を汲み取ってくれた事が嬉しくて、顔には自然と笑顔が浮かんでいた。

あとがき

 

 

どうもふぉんです。

ちょっとした言い訳を……

前作執筆中に熊の大きさをwikiで調べたのですが、3mで最大と書いてあったのでどうするかと考えていたのですが、恋姫ユニットであれば、3mくらいの熊とか余裕だろ。とか思って5mにしたのですが……

正直大きすぎでしたかね……あまりにも反響があれば編集も考えます。

 

一刀さんは自分を過小評価しています。そこらへんは原作通りの設定です。

 

戦闘シーンがうまくかけてるか心配です。おかしい点があればご指摘をお願いします。

 

リアルが落ち着いたので、通常のupペースに戻れそうです。わーい。

 

それでは次回作で会いましょう。ではまたー。


 
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