No.179838

真・恋姫†無双 記憶の旅 8

たくろうさん

真・恋姫†無双 記憶の旅 8です。

今回もコメ返し。
一刀の正体がバレないのは魏√だと一刀って最後の戦いの後以外であまり他の陣営と親しくしてなかった筈だからです。
そして人ってあまり交流がない人相手だと顔とか髪型とか部分的かつ曖昧にしか覚えない生き物ですから。さらに天の御使いを象徴する聖フランチェスカの制服を着てませんし。

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2010-10-23 04:00:59 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:11120   閲覧ユーザー数:8294

俺は今呉の城を走りまわっている。

 

何でこんなことしてるかって? それはな・・・・・・・

 

「孫策ぅ~~~!?」

 

バァン! と俺は政務室の扉を勢い良く開ける。だが孫策はいない。

部屋にいるのは周瑜だけだ。

 

「騒々しいな。 どうかしたのか?」

 

「聞いてくれ! 孫策の奴、俺に仕事全部押し付けて逃げやがったんだ!」

 

そう、一瞬の出来事だった。突然部屋に入って来たかと思ったら「あとよろしく♪」の一言と共に大量の書類をこちらに押し付け逃げてしまった。

俺だけで何とかなる仕事なら渋々引き受けるが王のお目通しを必要とする書類なら話は別だ。

 

「・・・・・・・何?」

 

話を聞いた途端周瑜のこめかみに青筋が浮かんだ。

 

「・・・・・わかった、私が雪蓮を捕まえよう。信長、お前は今日はもう仕事を上がっていい。お前のことだから自分の分の仕事はほとんど済ませてるだろう・・・」

 

幽鬼と化した周瑜がどす黒いオーラを纏って部屋を去っていった。

 

孫策、天を見よ、見える筈だ。 あの死兆星が!!

安心しろ、骨は拾ってやろう。

 

「しかし、こんな早くから仕事を切り上げて・・・どうしようかな?」

 

みんな忙しいだろうしそもそもあまり人と関わるのは避けたい。

いっそのこと長江に釣りにでも行こうか。

そろそろ呉を離れるし思い出作りにも丁度いい。

 

「の~ぶ~ながっ♪」

 

「ぶはっ!?」

 

突然誰かが俺の背後から抱きついてきた。

後ろを確認するとこの娘は確か・・・・・・

 

「えっと・・・・孫尚香だったよね?」

 

「そうだよ~♪」

 

「何か、用かな?」

 

正直言うと早く離れて欲しい。小さいとはいえ感触がモロに来る。何がとは言いませんけど。

 

「む~、何か今失礼なこと考えなかった?」

 

「ナンノコトカナ? 用が無いならもう行くけど」

 

「だーめ♪ さっき冥琳が暇って言ってたしシャオと遊ぶの♪」

 

「いや、俺これから釣りに行こうかと・・・・・」

 

「え~、そんなジジ臭いことを優先させてシャオの誘いを断るって言うの!?」

 

孫尚香が更に強く抱きついてくる。

 

「こ、こら! 抱きつくな! こんなとこ誰かに見られたら・・・・」

 

「ん~? 誰かに、何?」

 

くっ、こいつ分かっててやってるな!?

 

「・・・・・お前たち、何をやっている」

 

・・・・・ええ、分かってましたよ。

だってこんなに騒いでいるんだ、人だって来るさ。

 

振り向いた先にいるのは冷たい目をした孫権と甘寧。甘寧なんて視線で人が殺せそうだよ。

とりあえず言い訳させてもらおう。

 

「いや、君たちが考えてることは恐らく誤解だ。まずは冷静になってこの状況を共に整理しようじゃない・・・・・」

 

「うるさい、少し黙れ」

 

「・・・・・・はい、調子こいてました。ゴメンなさい」

 

最近思うんだけど俺の周りって何で人の話聞いてくれない人ばっかなんだろう・・・。

 

そしてドナドナされた俺が行き着いた先は中庭。そして剣を構えて俺と対峙する孫権。俺も模擬刀を持たされている。

 

「あの孫権さん、これは一体?」

 

「ふん、蓮華様が直々に貴様のその腐った性根を叩き直すと言っているのだ。光栄に思え」

 

甘寧が吐き捨てるように言う。いや、叩き直されて喜ばないよ。

 

「ふん、余所見とは余裕だな!」

 

いきなり孫権が攻撃を仕掛けてくる。

だがそこまで早い攻撃ではないな。 

俺は体を少しだけ傾かせて攻撃から逃れる。

 

「外したか。 ではこれはどうだ!」

 

再び孫権が攻撃を仕掛けてくる。

筋は悪くない。だがまだ完成された動きではないな。

 

また俺は体を傾けて攻撃を避ける。

 

「どうした! 早く剣を構えねばすぐにやられるぞ!」

 

ふむ、孫権は完全に戦いに熱が入ってきてるな。

まあしばらく付き合うとしよう。

 

「仕方ない、僭越ながら戦いというものをご教授しよう」

 

「ふん、余裕だな。だがその余裕も今の内だ!」

 

「まあその言葉に期待させてもらうよ」

 

今度は避けず孫権の攻撃を真正面から受け止める。

 

「孫権、体に力が入り過ぎてる。力み過ぎると剣の振りが遅くなってしまうし、一撃の重みも弱くなる」

 

「・・・・・くっ!?」

 

孫権がさらに攻撃の密度を上げてきた。

だがただがむしゃらに攻撃すればいいというものではない。

 

「どうした、何故攻めてこない!!」

 

こちらのやり方が気に食わないのか孫権は声を荒げる。

 

「・・・・・どうも似ているんだよなぁ」

 

「・・・・・何?」

 

「いや、なんでもない。 続けようか」

 

俺はこの光景に見覚えがある。

 

孫権は昔の俺にそっくりだ。

孫権は爺ちゃんに剣術を教えてもらい始めた時の俺そのものだ。

 

「ほらほら、反撃して欲しければもっと本気で打ち込みなよ」

 

「・・・・!! 言われずとも分かっている!!」

 

うわぁ・・・・・。反応も昔の俺そのものじゃないか。

 

実力に伴わない精神。

上を見過ぎて今の自分をちゃんと見ていない。

 

若造が偉そうなこと言うな・・・・か。今も充分若造だけど爺ちゃんが言ってたことがよくわかる。

生き急ぐって言うのかな?

たくさん時間があるのに焦って焦って遠くばかり見ようとして一歩先を見ようとしない。

本当に、日本にいた時の俺そのものだな。

まあ俺はそれでも成功例であったが

だが今の孫権ではそうはならない。俺とは決定的に違う部分があるから。

 

「孫権、もっと対峙してる相手を見て打ち込め。今の打ち込み方では余所見して打ち込んでるのと変わらないぞ」

 

「・・・・バカにして!!」

 

・・・・訂正。

孫権は俺以上に頑固者だ。それに見ている場所も俺以上に高い所だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かれこれもう数十分孫権の相手をしている。

孫権はかなり息が上がってるがそれでも攻撃をやめない。

 

「ほら、心をもっと落ち着かせて。もっと余裕をもって」

 

「・・・・・・・・くっ、 ハァァ!!」

 

駄目だ、こうなってはもう人の話を聞かないな。似ている分次の行動パターンがよくわかる。

 

「最後に。 剣に意識が向き過ぎてる。 だから・・・・!」

 

俺は孫権に足払いを仕掛ける。そして孫権は見事なまでに尻餅をついた。

 

「・・・・剣に集中が行き過ぎてる。相手は剣だけで攻撃してくるとは限らないぞ」

 

「・・・・・もう一回だ!」

 

「いや、少し休憩にしよう」

 

このままだと孫権は倒れるまでやりかねん。

 

「私はまだ出来る!」

 

「蓮華様、私もこやつの意見には賛成です。まずは休憩をとってください」

 

意外にも甘寧も加勢してくれた。

 

「・・・・思春まで」

 

「行き過ぎた鍛錬は為にはなりません」

 

「はぁ、分かったわ・・・」

 

「ご理解頂きありがとうございます。蓮華様」

俺達は今ベンチ(?)に座って休憩をとっている。

 

「性根を叩き直そうとしたのに逆に私が叩き直されてしまったわね」

 

孫権がションボリという効果音が出そうな空気を纏いながら言う。

ただの旅人の俺にこうも軽くあしらわれたのが相当堪えてるみたいだ。

 

「いや、そんなに気負うことないよ」

 

「だが私は民を守る為に強くなければならない。こんなところで負けてはいられんのだ」

 

流石国を支える者だけあって掲げる志のスケールが違うな。

さっき俺と孫権は似ていると言ったけど多分、見ている先は全然違う、もっと高い所だ。

だがそれではいずれ重圧で潰れてしまう。掲げた志で潰れてしまっては本末転倒だ。

 

「まあ、無責任極まりない発言だとは思うけど、もう少し自分の為に動いたほうがいいんじゃないかな?」

 

「それは国を支えるものとしてあまりにも無責任だろう」

 

まあ当然の返答だな。

 

「多分、孫権が自分の為に動いても結局それは国の為に繋がるだろうし、孫権の周りには沢山の支える人がいる。だから気負うのはもっと強くなった後でもいいんじゃないかな?」

 

自分でも言ってることがよくわからなくなってきたな。だけどそれでも放っておけない。見ている場所は違えど俺達は似ているんだから。

似ている俺達が決定的に違うところ・・・・。それは孫権が国のために意固地になっていたのに対して俺は自分の為に意固地になっていたことだ。

それでも俺は人の役に立てている。だから最初は自分勝手でいいんだ。

 

「それに孫権を支える人達は自分達を心の拠り所と思われないのは寂しいと思うよ? そう思うだろう、甘寧?」

 

「・・・・・この男の言葉を肯定するのはいささか不服ですがその通りです」

 

甘寧はこちらを一回一睨みして孫権に向けて喋る。

 

「三国が平定したのに蓮華様は以前と変わらず意固地になっておられます。蓮華様、もっと周りの皆を見てやってください。蓮華様は安心出来るよう私達が全力で支えます。だからもっと肩の力を抜いてください」

 

「・・・・・思春」

 

二人共かたい表情が多かった気がするが今は笑い合っている。

うん、これが好ましい主従の関係だろう。 

互い支えあって生きていく。

 

「お前は大切なことを気付かせてくれた。礼を言うぞ」

 

孫権が俺にも笑いかけてくれた。

なんか小っ恥ずかしいな。

 

「まあ、最後の思い出としては悪くない結果だったかな?」

 

「もう呉を去るのか?まだ居てもいいだろうに」

 

「いや、あまり長居しても自分の目的には辿り着けないからね」

 

今まではあまり気にしてなかったが着実に満月の夜まで刻一刻と近付いていってる。

もうのんびりはしてられない。

 

「私も自分の目的に向かって頑張る。だからお前も頑張れ」

 

「ああ、俺も自分勝手に頑張るよ」

 

「次はやはり魏に行くのか?」

 

「ああ、そうだよ」

 

「魏はもう少しで三国総出の祭りがある。時期がよかったな。私達も近いうちに赴くことになる」

 

「じゃあその時にまた会おう」

 

「ああ」

 

 

 

 

 

この後、孫尚香に明日去ることを聞かれて街中を引っ張りまわされた。

その時に孫策が周瑜に連行されていくところを見た。

まるで閻魔大王の裁きを待つ人のような顔だったな・・・・・・・。まあ自業自得だけど。

 

その後みんなが俺に真名を預けてくれると言ったが、まあ蜀の時と同じ刀に預けて貰った。

 

・・・・・・どんどん刀に人の思いが溜まって重くなっていく。

早く、早くみんなの真名を堂々と預かれるように、北郷一刀に戻りたい・・・・・・。

 

次はついに魏だ。曹操にはなるべく遭遇しないようにしたいが・・・・・・・。

とにかく、心を開かない・・・。このルールだけは守っていかなければ。

 

失敗は絶対に許されない。

 

~一方その頃の魏~

 

「華琳様、織田信長から返事がきました」

 

そう言って秋蘭が私の部屋に入って来た。

 

「そう、それでどうなの?」

 

「返事の内容ですが・・・・・魏の下で働く気はないとのことです。何でも自分にはやるべきことがあると」

 

「私を納得させるに値しない返事ね」

 

やはり私自ら説得したほうが早そうね。それに使える人材は自分で品定めしたい。

 

「そういえば愛紗何処かしら?」

 

愛紗には織田信長の人となりについて聞くために魏に来てもらっている。それに三国の祭りも近いからこのまま滞在してもらっている。

 

「愛紗なら姉者と鍛錬する為に部屋に向かっていると聞いてます」

 

「そう。 もうすぐ会議の時間だから二人共呼んで頂戴」

 

「はっ」

 

 

 

会議は何の問題もなく終了した。

 

しかしさっきから春蘭の表情がおかしい気がする。

 

「姉者、さっきから難しい顔をしているがどうかしたのか?」

 

秋蘭も春蘭の異変に気がついてるようね。

 

「うむ・・・・・・いやしかし・・・・・・そんなはずが・・・・・」

 

「春蘭、言いたいことがあるならはっきり言いなさい」

 

「華琳様・・・・・・・・」

 

ここまで渋る春蘭なんて初めて見る。気になるわね。

 

「それとも何? 私にも言えないことがあるのかしら?」

 

「いえ!そのようなことは決してこの夏侯元譲にあろう筈がございません!」

 

「なら言ってみなさい」

 

「・・・・・・はい」

 

春蘭は言う準備が整ったみたいね。しかし何故だろう、胸騒ぎがする。

 

「さっき愛紗が私の部屋に入って来た時不覚にもその・・・・・・北郷人形を見られたんです」

 

北郷人形ってあの一刀にそっくりの人形のことよね。あんなもの魏のみんなならとっくに知ってるし今更見られてどうと言うものではないと思うのだけれど。

 

「そんなことでそんな難しい顔をしてたの?」

 

「いえ、そうじゃないんです・・・・・・・」

 

「どういうこと?」

 

本当に今回の春蘭は渋りに渋るわね。

 

「・・・・・・似てるらしいです」

 

「・・・・・・何?」

 

 

 

 

「愛紗が言うには、今話題に上がっている織田信長なる男と北郷人形の顔は瓜二つなんだそうです・・・・・・」

 

「・・・・・・・何ですって?」

 

「それは・・・・・本当なのか、姉者?」

 

「私も何度も愛紗に聞いた。だけど返って来る答えは一緒だった・・・・」

 

私達の間にしばらくの沈黙が訪れる。

 

 

 

「・・・・・二人共、このことはみんなには内緒にして頂戴。愛紗にも同じように言っておいて」

 

まさか・・・・・・そんな筈はない。

 

だが今はっきり言えることは・・・・・・会わなければ分からない。 それだけだ。

 

~続く~


 
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