No.178520

私のことを、夢の中へと 第六話

みかどさん

『私のことを、夢の中へと 第五話』の続きです。

予定していた日から1日ほど投稿が遅れてしまい申し訳ありませんでした。

仕事でトラブルが発生した為、対応してたらこんな時間に……

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2010-10-16 02:47:24 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:3120   閲覧ユーザー数:2633

 

曹孟徳が治める魏の都、許昌。

 

城の中心にある王の間では魏の忠臣と文官が一堂に介し、朝議が粛々と行われていた。

 

ある議題が上がるまでは――――

 

 

 

 

『私のことを、夢の中へと 第六話』

 

 

 

 

魏の政り事は他国とは異なり、各担当者の状況を王自らが判断し、

問題や不足があれば指摘するという体制を取っている。

 

 

「……を優先して進める予定となっております。治水灌漑工事に関しての報告は以上です」

 

「順調のようね。ただし、北部にて霜害の被害が出ているようだから早急に対処するように」

 

「はいっ」

 

 

統治に関しての報告が終わり、問題がなかったというよりは華琳と会話出来たことが嬉しかったのか、

高揚したようにも思える表情で後ろに下がる桂花。

 

 

「次は……同盟国の動向を司馬懿。報告なさい。」

 

「……はい」

 

 

華琳からの命を受けて、紫色のやや癖のある長髪の女性が前に出る。

 

外見だけ見れば誰もが美しいと言うであろう美貌をもつ彼女ではあるが、

着崩すした女官服やあまり手入れが行き届いていない髪を見るからに、少々変わり者という印象を受ける。

 

 

「呉については、漸く国内の情勢が落ち着いたようです。元々閉鎖的な国であったためか、

同盟に関して批判的だった豪族達もやっと納得したということでしょう」

 

 

しかし、その印象とは裏腹に力強い発言から有能な人物であることが伺える。

 

 

「続きまして蜀ですが……」

 

「どうした!早く報告せぬか!」

 

 

先ほどまで軽快だった口ぶりが蜀について触れた所で詰まったことにイラついたのか、

春蘭の怒声が王の間に響き渡る。

 

 

「……申し訳ありません。蜀についてですが建寧にて乱の兆しありとの報告が上がっております」

 

「乱の兆しとはどういうことかしら?」

 

 

建寧とは成都から真南に位置し、五胡との小競り合いが絶えない地域でもある。

 

その建寧に不審な動きがあるということは蜀延いては三国に影響がでる可能性がある、

と考えた華琳の表情が若干険しくなる。

 

 

「……どうやら天の御使いと名乗る男が現体制に不満をもつ者たちとともに、村々を襲っているとか」

 

 

天の御使い、という司馬懿の口から発された言葉に反応してか場の空気が重くなっていく。

 

 

「また天の御使いか……」

 

 

そんな空気の中、ため息をこぼしながら秋蘭が怪訝そうに言葉を漏らす。

 

その口ぶりから分かるだろうが、天の御使いを騙る虚言者が起こす騒動は今までにもあったのだ。

 

それは、一刀がこの世界を去って1年が過ぎようとした頃のことだった。

 

 

ある町に天の御使いなる男が現れたとの情報が華琳たちに知らせられた。

 

まだ一刀への想いに区切りがついていない彼女達にとって、それはまさに天から舞い込んだ朗報のはずだった。

 

しかし、実際には天の御使いだと口にしただけで、

衣食や金品、はたまた女までも献上されることに味をしめてしまった浮浪者がいただけで――――

 

 

彼女達がどれほど落胆したことだろうか。

 

天の御使いという存在が魏にとって如何に掛け替えのないものなのか。

 

そのことを喧伝する為、その哀れな男は市中引き回しの上、晒し首という極刑が執行されることになった。

 

そのこともあって、今回も……と思っている者ばかりであろう。

 

 

「……どうなされますか?華琳様」

 

「どうもこうもないわ。蜀で起こった出来事であろうと乱の首謀者は天の御使いと名乗っている。

魏から使者を送るのは当然でしょう」

 

 

秋蘭の問いかけに覇王たる少女が堂々と言を述べる。

 

 

「司馬懿。蜀からは誰が出るのかしら?」

 

「蜀からは趙雲将軍が乱鎮圧の任に当たるそうです」

 

 

趙子龍。五虎大将軍の一人であり、勇猛果敢さだけでなく冷静沈着な性格である優れた武将だ。

 

 

「彼女であれば問題はなさそうね。それならば魏からは……」

 

「ちょっと宜しいでしょうか。華琳さまー」

 

 

華琳の言葉を遮るように発言するのは三軍師の一人である程昱こと風である。

 

ただでさえ機嫌の悪い華琳が、発言を許していない彼女の乱入で更に機嫌を悪くしているようだが、

風の性格のせいなのか、そんなことを気にしないとでも言うような面持のまま、のほほんとしている。

 

 

「……なにかしら?風」

 

「あのですねぇ。その使者の役目を風に任せてほしいのですよー」

 

「……理由を聞いても?」

 

「はい。星ちゃんとは稟ちゃんと一緒に昔旅をしたことがあるのです。

そんな、つーかーな仲である風が行くことが適任かなーと思いまして」

 

 

理由になっているような、なっていないような――――

聞く人によればだからなんだと言いたくなるようなことを然も当たり前のような述べる。

 

 

「まぁ良いでしょう。軍師の中から出そうと思っていたのだし、

自分から名乗り出るのであれば任せるとしましょう」

 

「どうもー」

 

「では、蜀への使者は風を立てることとする。

明日にでも出立できるよう準備をしておくように……秋蘭、他になにかあるかしら?」

 

「一通り報告は終っておりますゆえ、問題はないかと」

 

そう、と呟き春蘭の方に視線を向ける華琳、

その行動について察しているようで声を張り上げ言葉を発する。

 

 

「以上をもって朝議を終了する。解散!」

 

 

重い空気を切り裂くような言葉とともに華琳と夏侯姉妹がその場を退出していく。

 

それに続くように官たちも移動する中、ある人物が皆とは別方向へと歩みを進める。

 

紫色の髪をしたその乙女は――――

 

 

 

 

中庭よりも少々狭いが人が近寄ればすぐに分かる広場にて数人の官が話をしている。

 

場の中心にいるのは魏の内部でそこそこの発言力を持ち始めた高官でもある司馬懿だ。

 

 

「では手はず通り進めておきます。仲達様もよろしいでしょうか?」

 

「構いません。彼にもそのように伝えておいてください」

 

 

高官に助言を請う、というよりは王に勅命を授かるような面持で司馬懿を見つめる官たち――――

 

 

「この醜き時代も、もう時期終わりを迎えることでしょう。

彼女が消えることによって新たな歴史が始まるのです」

 

 

まるで演説でもするように、薄い笑みを浮かべて語る彼女――――

 

誰も知らぬその広場にて新たな騒乱の幕が上がろうとしていた。

 

 

 

 

『あとがき』

 

 

初めにも書いていましたが、投稿が遅れてしまったこと大変申し訳ございませんでした。

 

投稿日は指定するものじゃないですね……今後、気をつけます。

 

 

小説についてですが、漸く華琳たちの世界を書けるようになりました。

 

今回登場している司馬懿ですが、この人物像を考えるのに相当時間が掛かっちゃいました。

 

いろいろお話を読んだり調べたりして、こんな人物なのかな、とかなにを考えていたんだろうとか

色々構想していたことがまとまった感じです。

 

あまり話してしまうとネタばれになってしまうので司馬懿についてはこれくらいで!

 

 

話を変えまして、

当初は魏のメンバー全員の話も書く予定だったのですが、物語の性質上難しくなってしまったので

番外編という形で作ろうと思います。

 

人気のないキャラクターもいるのかなとは思いますが全員書くつもりです。

 

ひょっとしたらまとめたりしちゃうかも……張三姉妹とか、

よければ楽しみにしていてください。

 

 

あと言いたいことがあるのでした。

 

私の好きな恋姫のキャラクターについてですが、

まず当然といってもいい、一刀と華琳以外に星や風も好きなんです。

 

六話でもかなり風が話してるのはそのせいです。

 

なので、星や風に関しては今後もどんどん登場していくと思いますので、

好きな人がいれば嬉しいかな、と思います。

 

 

それじゃこのくらいで、

また『私のことを、夢の中へと 第七話』でお会いしましょう!

 

 


 
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