No.176621

真・恋姫†無双 頑張れ一刀くん改 その16

「へぅ!」

( ゚∀゚)o彡°

「どうしたの月お姉ちゃん?」

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2010-10-05 21:34:57 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:10102   閲覧ユーザー数:7632

 

 

庶呉同盟が組まれた数日後、両軍は赤壁に集結していた。

 

 

魏軍の兵士は約五十万人と言われている。

それに対して庶呉は三十五万人ほど。

 

 

この人数で野戦を仕掛けるのは不利とみて、水上戦で迎え撃つことにした。

 

 

本来なら魏軍は、このような挑発を受けることなく揚州を制圧すればいいのだが、覇王とう立場上この戦いを避けることはないと予測した。

 

 

それに呼応するかのように魏軍は荊州中から船をかき集め、庶呉に対抗するように陣を張った。

元々荊州には、船が大量に余っていたのでその辺には苦労しなかった。

 

 

「すっげー船の数だねー。広い長江を埋め尽くしてるよ」

 

 

広いとこでは対岸が見えないほどの距離がある長江。

しかし、今は視界には船しか映っていない。

 

 

「へぅ~。お船がたくさんありますね~」

「本当凄いね! 私もこんなの見たことないよ~」

 

 

傍に控えるメイドたちも同じ感想を抱いたようだ。

 

 

「作戦決行は今日の夜か……。本当に風向きが変わるのかな?」

 

 

今は吹いていないが今晩東南の風が吹くと、軍師たちは予想した。

 

 

 

 

「むむむ~、えい!」

「頑張って朱里ちゃん!」

 

 

夜になっても風向きが変わらなかった。

それを見かねた朱里は祈りを捧げる。

雛里もそれを必死で応援する。

 

 

「むむむ~、えい! …………だめですぅ~」

「ど、どうしよう。このままじゃ作戦が台無しになっちゃうよ~」

 

 

一度決めたことを覆すと兵士の士気が下がることは目に見えているのでなんとかして風を吹かせたい。

しかし、そんな朱里たちをあざ笑うかのように風向きは変わらない。

 

 

すでに予定時刻を大幅に過ぎているのだが、張三姉妹のコンサートによりなんとか保っている状態である。

それも長くは続かないであろう。

 

 

そんな中、一人の少女が動いた。

 

 

「時が来たのです」

 

 

風は自分の出番だと一歩前に出る。

 

 

「この宝譿野郎の出番が来たのですよ」

「おう、待ちくたびれたぜ!」

 

 

それに呼応するかのように宝譿も激しく動き出す。

 

 

 

風は宝譿を地面に置き静かに目を瞑る。

 

 

しばらくすると風が凪いだ……気がした。

 

 

「はわわ」

「あわわ」

 

 

二人も風に注目する。

 

 

そして、

 

 

 

 

 

 

 

カッ!

 

 

 

 

 

 

風が目を開くのと同時に…………何も起こらなかった。

 

 

「おお! やっぱりそう上手くはいかないのです。それでは風はこの辺で失礼します~」

 

 

宝譿を頭に設置して風はその場を去っていった。

 

 

 

「はわわ! どうしよ~雛里ちゃん」

「あわわ。あわわ。あわわ。あわわ」

 

 

もうどうしていいか分からなくなってしまった二人。

 

 

この数分後、普通に東南の風が吹き始めたのだった。

 

 

 

 

「よし、風向きが変わった!」

「そうみたいね。それじゃあ一刀、準備はいいかしら?」

「うん!」

「ああん! もう、いちいち可愛いわね! それじゃあ私は一足先に行くわよ!」

「頑張ってね!」

 

 

まずは水上戦に慣れている呉軍が突撃をかける。

思春や祭を中心に敵船にどんどん放火していく。

 

 

「綺麗な赤ね♪」

 

 

雪蓮は感情が高ぶり始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ! 早く消火しろ! 手遅れな船は沈めてしまえ!」

「姉者! ここは火の回りが早い! 一旦退却するぞ!」

 

 

春蘭は工作をしている呉兵を切り捨てながら指示を出すが、この巨大な火の海に正気を保てる兵は少なく思ったように消火が進まない。

そして秋蘭はここを破棄する決断をする。

 

 

「ただではすまさんぞ!」

「ああ。この借りは必ず返すぞ!」

 

 

悔しさを滲ませながらも退却するのだった。

 

 

 

 

「よもやこのようなことになるとはね……」

「申し訳ありません。全ての私の責任です……」

 

 

戦場から少し離れた辺りまで逃げ延びてきた華琳。

そこから見つめる赤壁は、海は燃え、風によって天幕に火が移り、陸も燃えていた。

それはまさに火炎地獄。

 

 

「あなただけのせいではないわ。この戦をなめてかかったこの曹孟徳の責任だわ」

 

 

実際になめていたわけではない。

しかし荊州を制し、大陸のほとんどを掌握したことによって生まれた油断。

その油断が今回の大敗に繋がった。

 

 

「桂花、今の状況は?」

「……はい。主な将は幸い全員が生存。ですが……兵は正確な数は把握できませんが大分少なくなっております」

「そう……」

 

 

死者、行方不明者が大量におり、実質十万人いるかどうかである。

 

 

「江陵まで退くわ。まずはそこで体制を整えましょう」

 

 

すでに疲労困憊の魏軍だった。

 

 

 

 

「ようやく来たわね」

 

 

暗闇の中で、ある軍勢を眼鏡の奥の双眸が捉える。

 

 

「船上じゃウチの部隊は役にたたんからなー。やっとおもいっきし戦えるで!」

「ああ。まあ私はどこであろうがかまわないのだがな!」

「猪が何を言ってるのですか」

「…………なつかしい」

 

 

そこにいたのは旧董卓軍で構成された部隊。

 

 

もちろんこの部隊を指揮するのはこの人。

 

 

「へぅ~。私なんかでいいんですか?」

 

 

自信無さげな表情で加護欲をそそる少女、董卓であった。

 

 

「何言っとるんや月っち。この部隊を率いることが出来るんわ一刀くんか月しかおらんのや」

「まあ私は一人でも大丈夫だがな」

「だからどの口がそんなことを言うのですか」

「…………月強い」

「月にかつて忠誠を誓った者たちなんだから自信持ちなさい」

「皆さん……」

 

 

思わず感動する月。

 

 

「それにこれで曹操倒したら一刀くんが喜ぶやろうしな」

 

 

この一言が引き金になった。

 

 

「…………へっへっへぅ。皆さん、逝きますよ?」

『ぎょ、御意」

 

 

思わず身震いする霞たちだった。

 

 

 

 

どこからともなく銅鑼の音が響き渡る。

 

 

月夜に照らされ翻るは『董』の旗。

 

 

ところどころ『へぅ』があるのは君主の遊び心故か。

 

 

かつて洛陽で魔王と呼ばれた少女。

 

 

今は癒しの特級メイド。

 

 

その名も、董仲穎。

 

 

「へぅ来々! へぅ来々!」

『へぅ来々! へぅ来々!』

 

 

掛け声とともに魏軍の前に現れる。

 

 

 

 

 

 

 

「こ、これは董卓軍!?」

 

 

汜水関でみたあの苛烈な軍が今ここにいると言うのか。

そうなってはただでさえ弱っている我が軍の敗北は必至。

華琳はどうするか考える。

しかし敵が待つはずもなく、春蘭たちも戦闘態勢に入る。

 

 

 

そして開戦する。

 

 

 

 

月の明るさで敵味方を判断し交戦する両軍。

 

 

「へぅ来々! ウチとしては遼来々! ってとこやな」

 

 

合肥城ではないが力がみなぎる霞。

 

 

「こんなところで終ってたまるかぁ!」

 

 

魏軍も必死で抵抗するものの、次々と倒れていく。

 

 

 

「へぅ! へぅ! へっへっへぅ!」

『ひぇぇぇぇぇ!』

 

 

中でも月の働きは素晴らしいものだった。

 

 

そして華琳は決断する。

 

 

「桂花、牙門旗を降ろしなさい」

「し、しかし!」

「早くしなさい! これ以上無駄に命を散らすことは許さないわ」

「……はい」

 

 

そして魏の牙門旗が降ろされる。

 

 

一人、また一人そのことに気がついて戦闘をやめる。

 

 

魏兵は涙を流し天を仰ぐ。

 

 

「月」

「うん! 勝鬨をあげてください!」

『へぅ~~~~~~~~~!』

 

 

しばらく月の下で鬨の声が響き渡った。

 

 

 

 

赤壁の戦いの最中、もう一つの戦いがあった。

 

 

「そろそろ頃合いだな……」

 

 

文官の男は決断をする。

 

 

「公孫賛様!」

「どうした?」

「天子様がぜひ公孫賛様にお会いしたいという旨の書簡が届いております」

「て、天子様が!?」

 

 

漢に生きる者にとって天子とは最大の敬意をはらう相手だ。

 

 

「ど、どうして私なんかに!?」

「公孫賛様の徳の賜ですよ」

 

 

決まり文句だった。

 

 

「と、とにかく断るわけにもいかないしすぐに準備をしよう」

 

 

そう言って白蓮は執務室を出ていく。

 

 

白蓮が出て行った事を確認して、文官の男はそこに残っている者たちを見渡す。

 

 

「そろそろか……」

「ああ」

「我らが伯珪様が天下を手中に収める時が来た」

「それでは皆の者、準備はいいか」

『はい!』

「それではこれより、魏領の全領土奪取と共に天子様の奉戴を行う! 直ちに決行にかかれ!」

『御意!』

 

 

準備ではなく結構ということは、すでに手筈は整っているということだ。

 

 

こうして普軍の侵攻は進むのだった。

 

 

 

 

<おまけ>

 

 

「そなたが新しく丞相に就任したものか?」

「えっ? 私が――」

「その通りでございます献帝様」

「そうか。朕はこのとおりまだ幼いが故丞相に頼ることも多いと思うがよろしく頼むぞ」

「え、あ、謹んでお受けします?」

「それでは丞相様は忙しいのでこれにて失礼仕ります」

「うむ。これから頼んだぞよ」

「ぎょ、御意?」

 

 

こうして白蓮は大陸一の領土と地位を得るのだった。

 

 

 

どうしてこうなったんだろう。


 
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