No.175541

真・恋姫無双呉ルート(無印関羽エンド後)第三十三話

海皇さん

お待たせいたしました!真恋姫呉ルート33話目に突入しました。諸事情によりこの話で袁術編完結の予定が完結となりませんでした・・・。まあそれはともかくとしてどうぞお楽しみを。

2010-09-30 14:11:46 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:6008   閲覧ユーザー数:5251

 ???side

 

 「・・・やれやれようやく見つけたぜ」

 

 男はそう呟いて小箱の中から純白の印璽を取り出した。

 それこそ袁術が皇帝の証とした、偽物の玉璽であった。

 

 「大切な皇帝の証なのに、随分と無用心なもんだな。ま、おかげで俺は仕事がやりやすかったがな」

 

 そう呟きながら男は懐に玉璽を仕舞い込んだ。

 

 「さてと、あとはあいつを連れて帰るだけか。ま、俺に抑えきれるかどうかわからねえけど・・・」

 

 そう呟いて男は玉璽が置いてあった部屋から出て行った。

 

 

一刀side

 

 あっけなく終わった袁術軍との戦いの後、俺達は軍に命じて袁術の支配していた町の救済に当たった。

町の様子は予想以上に酷く、地面に筵をしいて乞食のような暮らしをしている人達が大勢いた。

さすがの洛陽でもここまで酷くはなかったぞ・・・。

 

「酷いな・・・。愛紗」

 

「はい、正直ここまで酷いとは思いませんでした。

おのれ、袁術め・・・」

 

愛紗は道端でみすぼらしい格好をしている人々を見てぎりりと歯を食いしばった。

 

まあその気持ちは分かるな・・・。こんな酷い状態をみれば誰だって腹が立つ。

現に俺だって今袁術に対して怒りを覚えている所だ。

 

「まあとにかくまずは袁術を見つけてからだ。首を斬るにしてもそれからだ」

 

「・・・ご主人様は、袁術を助けようとは思っておられないので?」

 

「あいにくと見ず知らずの他人、しかも民衆を苦しめるような悪人を助けるほど、俺はお人好しじゃあないんでね。まあ、袁術が誰かに操られていたんなら別だけど、もし張譲みたいな奴だったら愛紗、遠慮なく斬り捨ててもいいよ」

 

「はあ・・・御意・・・」

 

俺の言葉に愛紗は少々戸惑い気味に頷いた。

いや、俺だって誰でも許すほどお人好しじゃないから・・・。

確かに前の世界で華琳や蓮華達に甘いとか言われたけどさ・・・。

 

そして俺達は咲耶、亞莎達に兵の指揮を任せて、袁術の城に乗り込んだ。ちなみに雪蓮達は既に城に入った後だった。

城に入ってすぐ目に飛び込んできたのは袁術軍の兵士達の死体だった。

 

 「なっ!?何だこれは!?」

 

 「こ、これは・・・一体・・・」

 

 俺はその死体を見て、驚愕した。隣で愛紗もショックを受けているのが分かる。

 

 普通の死体だったら俺達は驚かなかっただろう。だが、その死体はあまりにも異様だった。

 

 まずどの死体も両手両足は切り取られており、腹も裂かれている。そして、裂かれた腹から腸や胃といった臓器が切り取られて兵士達の周囲に捨てられていた。そして兵士達の頭蓋骨は切り裂かれており、頭部から脳が剥き出しになっていた。

 そして中には眼球を刳り貫かれたもの、耳や鼻を削ぎ落とされたものと、どの死体の顔面も見るも無残な状態になっていた。

 そして兵士の顔は苦痛のあまり歪んでおり、顔には涙の跡が残っていた。

 

 「誰が一体・・・こんなことを・・・」

 

 「酷い・・・どこの外道が、こんな非道なことを!!!」

 

 あまりの酷さに俺は今にも吐きそうになっていた。隣では愛紗の怒りに震える声が聞こえる。俺は吐き気を押さえ込んで、兵士をここまで切り刻んだ犯人について考えた。

 

この城にいるのは袁術軍と雪蓮達ぐらいだけど間違いなく雪蓮達では無い。

 

雪蓮達はこんな死体を弄ぶような武将なんかじゃあない。第一、わざわざ一兵卒達を切り刻んでこんな所に置いておく理由が無い。雪蓮達は一刻も早く袁術を探し出したいはずだからこんなことをするのははっきり言って時間の無駄だ。

でも、雪蓮じゃないなら一体誰が・・・。

袁術軍同士が仲間割れしたとも考えられるけど、ここまでやる理由にはならない。

まさか俺達以外に他の勢力が入り込んでいるのか?でも一体何処が・・・。

俺が兵士達の死体を見てそんなことを考えていると、突然かすかだけど叫び声が聞こえた。

 

 「!愛紗!」

 

 「はい!ご主人様!」

 

 俺達は声の聞こえた方向に向かって駆け出そうとした。しかし、突然愛紗が足を止めた。

 

 「?どうした愛紗」

 

 「いえ、誰かに見られているような気配がしたような気がして・・・」

 

 そう言って周囲を見渡している。俺も辺りを見渡すけど、さっきの死体以外誰も居ない。

 

 「気のせいじゃないのか?」

 

 「・・・・そうですね」

 

 愛紗はいまだに釈然としない顔をしていたが、俺の言葉に一応納得したらしい。

 そして俺達は叫び声の聞こえた方向に向かって再び走り出した。

 

  ???side

 

 「あは、あははははははは!!!いいなあ~、あの人達!凄く強そうだな~!!

 ああ~、いますぐ切り刻んで壊してみたいよ~!!」

 

 少女は隠れて一刀と愛紗が走り去っていくのをじっくりと見つめていた。

 そしてまるで極上の料理を見ているかのようにべろりと舌なめずりして体を震わせた。

 

 「ああ~~~!!特にあの女の人は凄く強そうだな~~!!あの肌を切り刻んでみたいな~~!!あの人の血の味はどんな味かな~!!?痛がったり怖がったりしたらどんな顔をしてどんな声を上げるんだろうな~~!?ああ~想像しただけで濡れてきちゃうよおおおお~~~!!!」

 

 そう言って少女は歓喜の笑みを浮かべて鉄の爪を舐める。そこには目の前に転がっている兵士達の血がべっとりとこびり付いていた。

 

 「ああ~!!でも今はお仕事中だから駄目だな~~!!また次にお預けにしようっと♪うん、そうしようそうしよう♪」

 

 そう言って少女はその場から歩き去った。

 

 一刀side

 

俺達は、声の聞こえた方角に走っていた。

 

その途中には、先ほどの死体と同じような、若しくはさらに酷い有様の死体が無数に転がっていて、思わず吐きそうになってしまった。

隣では、愛紗が死体を見て相当ぶちギレているのが、雰囲気で分かった。なにしろ俺が他の女の子と一緒に居るのを見たときと同じ、いやそれ以上のオーラを発しているから・・・。

 

しばらく愛紗と走っていると、雪蓮と蓮華達を見つけた。

よくよく見てみると尻餅をついている二人の女の子に剣を向けている。

 

「おーい、雪蓮!」

 

「あ!一刀!遅いわよ~、もう袁術捕らえちゃってるわよ?」

 

ん?袁術捕らえた?なるほど、つまりこの二人の女の子のどちらかが袁術って事か。

 

「ああ、そうなんだ、おめでとう雪蓮。それで、その二人のどれが袁術?」

 

「その無駄に豪華な服を着たおチビちゃんが袁術よ」

 

そういって二人組のうち、無駄に豪華な服を着た、まるで袁紹をそのまま小さくしたかのような幼女を指し示した。

この子が袁術か。なるほど、確かにみるからに我が侭そうだな。

 

「う、うう~、孫策の味方がまた来たのじゃ~。七乃~なんとかしてたも~」

 

「美羽様~、七乃はあの世でも美羽様にお仕え致しますから・・・」

 

「うわ~ん!!嫌じゃ嫌じゃ~!!死ぬのは嫌じゃ~!!」

 

・・・・・。

 

 なんか袁術想像したのとは違うな・・・。

 

 確かに我が侭っぽいけど、なんかどこか憎めないところがあるんだよな、この袁術って。

 「・・・なあ雪蓮、どうするつもりなんだ、袁術」

 

 「う~ん、最初は首を叩き落してやろうかな~、って思ってたんだけどね。今は正直どうしたものか、ってね」

 

 雪蓮は困った顔をしながらそう言った。なるほど、確かに雪蓮が本気になれば一瞬で袁術達の首はとんでるしね。

 

 「お姉さま、何を悩んでいるのです!町の有様を見たでしょう!?この者達の暴政のせいで多くの民が苦しんだのですよ!?ならばそれ相応の罰を与えるべきでしょう!?」

 

 「ちょっと待ってください~!暴政については美羽様は関係ありません~!」

 

 蓮華は雪蓮に対してなおも袁術を処刑するように言うが、それに対して、スチュワーデスに似た服を着た女性が異論を上げる。

 

 「え~と・・・どちら様?」

 

 「袁術の軍師兼教育係の張勲よ。袁術を我が侭に育てた張本人ってとこね」

 

 「そんなこといわれても~。我が侭な方が可愛いじゃないですか~」

 

 ああなるほどこの人が張勲か・・・。なんかどこか腹黒っぽいけど・・・。まあいいか。

 

 「まあまあ、それで張勲さん、暴政に袁術が関係ないってどういうこと?」

 

 「あ、はい~。美羽様は確かに袁家の頭首なのですけれど、実際にはほとんど政をやったことがないんです~」

 

 「・・・それって本当かい?袁術ちゃん」

 

 「本当なのじゃ!わらわは難しいことは分からないから全部文官達に任せていたのじゃ!!」

 

・・・なるほど、つまりその文官達が自分勝手に暴政をしたから、町があんな有様になってしまったってことか・・・。

 

 「ふざけるな!袁家の頭首であるお前なら文官ぐらい抑えられるであろう!!お前はそれもせず、蜂蜜ばかりなめていたと聞いているぞ!!」

 

 「無茶言わないでくださいよ~!文官達はその気になれば美羽様を殺して袁家を乗っ取ってしまう事だって出来るくらい権力が強かったんですよ~!?私と美羽様だけで対抗できるわけないじゃないですか~」

 

 まあ実際そうだろうな。

 おそらく袁術はその文官達の御輿として使われていたに過ぎないんだろう。

 そしていざ悪事がばれても罪を被せる為のスケープゴートの役割もあったんだろうな。

 今の漢王朝の皇帝と宦官、若しくは外戚との関係のようなものか・・・。

 

 「なるほど、大体分かった。それで雪蓮、どうするんだ、袁術達」

 

 「そうね~、ここまで聞かされたら、もう処刑する気は起きないわね~」

 

 「ではどうするのです?お姉様」

 

 「とりあえず捕虜として連れて帰るわ。処分はその後ね」

 

 雪蓮はそういった後、ちらりと俺の方を見た。・・・なんだその目は。まさかまた俺に押し付けようって言うのか?

 

 「七乃~、どういう話をしておるのじゃ~?」

 

 「はい~、美羽様、どうやら私達助かるみたいですよ~?」

 

 「ま、誠かや~!?うわ~ん、よかったのじゃ~!!」

 

 「うう~、よかったですね~、美羽様~」

 

 なんか向こうでは勝手に盛り上がってるし・・・。まあいいか。

 

 「ご、ご主人様に、また女性が・・・」

 

 おいこら愛紗、なに邪推してるんだ。俺だって女の子なら誰だって手当たりしだい手を出すようなことはしないぞ・・・多分。

 「ところで袁術達に聞きたいことがあるんだけど・・・」

 

 「?何じゃ?」

 

 俺の言葉を聞いた袁術はこっちを振り向く。

 

 「例の皇帝になったときの玉璽なんだけど、どうやって手に入れたの?」

 

 「ん~、貰ったのじゃ!」

 

 は?貰った?

 

 「貰ったって、一体誰からよ」

 

 「はい~、何か銀髪で真っ赤な目をした男の人が、これを使って皇帝になれって言って私達にくれたんですよ~。で、美羽様も皇帝ってかっこよさそうだ~なんて言い出しましたから・・・」

 

 「何言っておるのじゃ!七乃がわらわに皇帝になったら麗羽より偉くなれるとか言ったからわらわはついなってやろうと言ってしまったんじゃ!」

 

 「そうでしたっけ~?」

 

 「そうじゃ!」

 

 なんか喧嘩が始まったけど、つまり袁術の持っている玉璽は、何者かによってわたされた物で、さらにそいつから皇帝になれと唆されたということか。

 でも一体何者がそんなことを・・・。袁術に玉璽を渡した銀髪の男って言うのも分からないし・・・。

 一瞬例の白装束かとも考えたけど、この世界には劉表や孫栄さんのような男の武将も居るから、ひょっとしたらこの世界の武将かもしれないな・・・。

 まあとにかくまずはその玉璽を見せてもらわないと。

「とりあえず袁術、まずはその貰った玉璽っていうのを見せてもらえないかな?」

 

 「うむ!いいのじ・・・「あははははは!!!みい~~つけた!!!」・・だ、誰じゃ!?」

 

 「!袁術!張勲!上よ!!」

 

 突然聞こえた奇声に俺達が辺りを見回していると、雪蓮が天井を指差していたため、俺達もつられて天井を見上げた。

 

 そこにはなんと、鮮血で真っ赤に染まったワンピースをきた少女が、バイオハザードのリッカーの如く天井に張り付いていた。

 その少女は袁術と張勲を見て舌なめずりをした後、天井から地面に飛び降りた。

 

 「あはははははははははは!!!さあーーーーてと、お仕事始めようっと♪」

 

 その少女は狂ったような笑い声を上げながら、鋭い鉄の爪をぺろりと舐めた。

 

 

 あとがき

 

 お待たせいたしました。急いで仕上げました三十三話です。

 

 本当はこの回で終わらせようと思ったんですけど、書いてみたらあまりに長くなってし

 

まったので区切ることにしました。袁術編は次の回で終わりになる予定です。

 

 さて、この作品では袁術は一切政治に関わっておらず、実権は文官達が握っていること

 

になっています。袁術と張勲には生きていてもらうためにこういう設定にしたんですけ

 

ど・・・。ちなみに文官はラストに出てきた少女に惨たらしく皆殺しにされました。この

 

少女の正体も次回明らかになる予定です。

 

 では次回もお楽しみに。

 

 元ネタ

 

 バイオハザードのリッカー・・・CAPCOMの発売したホラーゲーム、バイオハザー

 

ド2に出てくる化け物。全身の皮膚が無い人間のような姿をしており舌を延ばして攻撃し

 

たり、天井を這ったりする。

 

 


 
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