No.174357

真・恋姫無双 恋姫恋慕~あの日の君に~ No. 0.5

OTIKAさん

うわーい!こんな作品でも見てくれる人がいるんですね!
興奮して続きを書いちゃいましたよ(笑)
かなり強引に書いたんで最後の方が・・・
コメントってマジ活力剤ですね(笑)

2010-09-24 02:03:37 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:5252   閲覧ユーザー数:4287

「あら、一刀はいないの?」

 

「あっ、蓮華様。そうなんですよぉ~。おかしいですよね~いつもなら真っ先に来てるんですけど

ねぇ~。それに~この頃の一刀さんを見かけなくなっちゃいましたね~~。」

 

机の上に彼女の豊満な胸を押しつぶすようにだるー、と机の上に伸びをする穏。

 

今日も朝にいつも通りに集まって会議を開いて終わったときだった。

 

「今日、みんなに渡したいものがあるんだ。」

 

と私たち全員に言った一刀は、自分の仕事はもう終わってるから、と竹簡を出して、そして町のほ

うへ行ってしまった。・・・思春を連れて。

 

そういえば、この頃思春の行動がおかしいのよ。私の側からも一時たりとも離れなかったのに、こ

の頃は居ないし。

 

この前なんか治水の資料を一緒に考えようと思春を呼んだの。いつもなら、「何でしょうか、蓮華

様。」って言ってさっと出てきてくれるのに出てこなかったわ。

 

その夜に思春に昼に何をしていたのかを聞くと、「・・・北郷と資料を作っておりました。」なん

ていうの!

 

あの時はびっくりして思春の額に手を当てて熱を測ってしまったわ!あの思春が一刀と丸一日一緒

だったなんてね。

 

確かに私は思春のコトも応援しているけど・・・。それにこの頃一刀を見かける機会も減ったのよ

ね。

 

・・・考えられないことだけど、まさか思春が一刀を独り占めしているのかしら・・・。・・・い

いエ、思春にカギッテそんナコトは無イワ・・・ヨネ・・・。

 

フフフフフフフフフフフッ・・・・・・・。

 

「・・・ねぇ亞沙。なんだか蓮華様から黒い霧みたいなのが漏れ―――――――」

 

「わわわっ、みちゃダメです、言ってもダメですよ、明命!取り込まれてしまいますよ!!」

 

「・・・うわー、なんていうのかな、アレ。まるで旦那を若い娘に盗られちゃった妻みたいだよ

ね。アレはないなー。そう思わない、祭?」

 

「んー。まぁ権殿がああなってしまうのは、あれはあれでいいのでは?世間では病華(ヤンファ)

として有名ではありますからな。」

 

「・・・いやいや、アレはないでしょ?常識的に考えて。アレが私のお姉ちゃんだなんて・・・。

信じられないわー。」

 

「・・・ねぇ~、みなさん~?なんか黒い霧みたいなのが部屋を覆ってきましたけど~~?」

 

「「「「えっ?」」」」

 

「ていうか~~~、もう逃げ場がないみたいなんですけど~~~・・・。」

 

蓮華は部屋に入ってきてからすぐに一刀のことを考え始めたからまだ部屋のドアの前に立っていた

のだ。

 

そして徐徐に漏れ出していた病華状態特有の黒い霧が部屋を覆い始めたのだ。

 

逃げるためのドアには近づけない亞沙、祭、明命、小蓮、穏の五人。アレが近づいて着たらパニッ

クに陥るわけで・・・。

 

「ちょ、ちょっと!言うのが遅いのよ!穏!!」

 

「ふえぇぇぇぇ、すいませ~~~ん・・・。」

 

「そんなことよりも、どうすればここから逃げれるかを考えなければなりませんぞ!」

 

「そ、そうです!この部屋から出れる所は・・・、!あそこに窓があります、が・・・あの高さと

広さでは精々明命ぐら――――」

 

「皆様!健闘をお祈りして――――」

 

「おおっと!明命、逃がしはせぬよ・・・!」

 

「放してください!あんなのに当たりたくはありません!!」

 

「・・・明命よ。こんな言葉を知っておるか?・・・死なばもろとも、っての!」

 

「嫌ですー!!放してください!一刀様、一刀様ーーー!!」

 

バンッ!

 

「いやーごめんみんな!少し遅れちゃったよ。・・・ってあれ?どうしたのみんな?」

 

救世主はここに居た・・・。

 

 

「すごい!想像以上だよ、ありがとう!はい、これはお礼。受け取っといて。」

 

「へい、ありがとうござ・・・って御遣い様!これは多すぎじゃないでしょうか!?」

 

「これは気持ち分が足されているんだよ。本当にありがとう、っていうね。」

 

「・・・いや御遣い様、あっしはただいつも通りに仕事をしただけでさ。それに対しての金はこれ

では多すぎますわ。これだけ返させていただきます。これは職人としての考えでさ。」

 

「・・・解った。それじゃあこの店の宣伝ぐらいはしておこうかな。それぐらいはいいだろう?」

「へい、それならこっちもお願いしたいぐらいでさ。それでは、またのお越しをお待ちしておりま

す。ありがとうございました!」

 

「ああまた来させてもらうよ・・・。また・・ね。」

 

今日のために作ってもらっていた七つの指輪。・・・大好きな彼女たちに送る素敵なプレゼント。

 

「ははっ・・・。」

 

この笑いは何だろうか。彼女たちの笑顔を思い浮かべてのことだろか。それとも、自分のことを考

えてのことだろうか・・・。

 

笑いを吹き飛ばすように一刀は頭をふるふるっ、と強く振って前を見据える。

 

彼の眼前には愛する孫呉の城があった。

 

「ねぇ、思春。ちょっと遅れちゃったかな?」

 

「そうだな・・・。半刻ほど遅れてはいるだろうな。」

 

「あちゃー・・・。それじゃあ急がないとね!いこう、思春。」

 

「・・・あぁ。」

 

「ははっ・・・。大丈夫だよ、思春。・・・まだ大丈夫だよ。ほら、そんな暗い顔なんてしないで

早く行こう。」

 

「・・・解った。」

 

思春の顔をまともに見ることができない。あんな顔にさせているのが俺のせいだというのだから、

こんな自分に腹が立つ。

 

この指輪を渡して、そして、俺は・・・。

 

「おい北郷。早く行かんと蓮華様たちが待っておられるぞ。」

 

「!ああ、ごめんよ思春。そうだね・・・急ごう。」

 

後の事なんか考えても仕方がない。今できることをして、精一杯生きて、彼女たちを悲しませない

ようにしないと・・・。

 

これが今俺のできる最良のことなんだから。

 

と、色々なことを考えているうちに城門を超え、中庭、政務室を過ぎ、彼女たちに待ってもらって

いる部屋の前まで着いた。

 

元気良く扉をあけて・・・。

 

「いやーごめんみんな!少し遅れちゃったよ。・・・ってあれ?どうしたのみんな?」

 

そこには、すごくいい笑顔の蓮華と、祭に吊るし上げを食らっている明命、そして集まって抱き合

っている亞沙、祭、小蓮、穏がいた。

 

・・・どうなってんの?これ。

 

 

やっと一刀が帰ってきたわ!まったくもう、私を待たすなんていい度胸しているわ・・・。

 

あら・・・やっぱり思春が寄り添っている・・・。ふふ・・・朝からニャンニャンでもしてきたの

かしら・・・?あとで思春から詳しく事情を聞かなくちゃね・・・。

 

っとこんなことを考えているところじゃないわ。一刀に話しかけなくちゃ。

 

「・・・遅かったわね、一刀。朝から思春とどこに行ってたの?」

 

「えっ、ああっと・・・まあそれは後でわかるから今は秘密にしとくけど、・・・なんで後ろの五

人はああなってるの?」

 

「後ろの?」

 

一刀に言われて確認するために後ろを振り返る。

 

そこには、祭に吊るし上げられている明命と、隅で体を押し合い縮こまっている穏、亞沙、小蓮の

三人が居た。

 

「・・・何をしているの?あなたたちは。」

 

呆れた・・・。一刀が来ないからって明命を吊るし上げて遊んでるなんて。

 

「祭!早く明命を降ろしてあげなさい!褌が見えそうになってるのを必死に隠そうとして頭に血が

上ってきているわよ。」

 

「おお!これはすまんかった明命。降ろしてやろう。」

 

「他のみんなもどうしたの?そんなに縮こまっちゃって。一刀が来たんだからこっちにいらっしゃ

い。」

 

「「「はい!」」」

 

・・・何故かしら、みんなの反応が大げさなのだけれど?・・・まあ、いいわ。

 

「それで一刀。今日は何故私たちを集めたのかしら?」

 

「ああそれはね・・・みんなにプレゼントを用意したんだ。」

 

「ぷれぜんと?」

 

「ごめんごめん、贈り物の事だよ。」

 

「あらそうなの!・・・でもみんなに贈り物っていうのはどうして?」

 

「それをいまから発表するからみんな一列に並んで欲しいんだ。」

 

「解ったわ。」

 

一刀に促がされて一列に並ぶ私たち。右から順に私、小蓮、祭、穏、亞沙、明命、思春の順番だ。

 

「こほんっ。・・・えー、今日は集まってくれてありがとう。様々な困難を乗り越えて孫呉をここ

まで大きくできたのは、俺たちのがんばりだと思う。ここで大きな一区切りとしてみんなに贈り物

がしたいんだ。まずは蓮華、こっちに来て。」

 

「ええ。」

 

一刀が持ってきた箱を丁寧に開封していく。出てきたのは何の変哲もないただの箱。その箱を開け

ると・・・。

 

「わぁ・・・。これはきれいな指輪ね、一刀。これが贈り物なの?」

 

「そうだよ蓮華。蓮華には・・・これだ。」

 

と言って一刀が渡してきたのは、シンプルに作られたリングに、楕円形に切り取られた赤い石をは

め込まれた簡素ではあるが何かが篭った一品だった。

 

「その石はね、俺の世界だったら「ルビー」って言うんだ。」

 

「るびー?」

 

「そう。その石には籠められた意味があってね?その意味が「深い愛情」って言う意味なんだ。」

 

「まぁ・・・!ありがとう一刀!」

 

「どういたしまして。」

 

カリカリっと鼻頭を掻いて恥ずかしそうに意味を告げてくれた一刀。「深い愛情」だなん

て・・・!ふふっ、愛されていると感じるのは即物的ではないだろう。

 

この私の髪の色に似ている石が付いた指輪を右の人差し指に嵌めようとして・・・。

 

「ちょっとストーーーーップ!」

 

「?なあに一刀?」

 

「その指輪は・・・左手の薬指に着けて欲しいんだ。」

 

「どうして?」

 

「それは後で説明するよ。だから薬指につけて欲しいんだ。」

 

「解ったわ。」

 

ときちんとつけたことを確認して一刀はシャオを呼んだ。

 

シャオにはトルマリン。意味は「希望・無邪気」だそうね。これもシャオの髪の色に似ていて映え

ていると思う。

 

祭にはエメラルド。意味は「慈愛・幸福・恩恵」だそうね。一番の古株として呉に使えてくれてい

る彼女こそ「慈愛」は似合っているわ。

 

穏にはムーンストーン。意味は「知性・物思い」だそうね。赤と白を基調とした穏の服に良く合っ

ているわね。

 

亞沙にはダイヤモンド。意味は「清浄無垢・永遠の絆」だそうね。一刀しか見えていない亞沙には

ぴったりね。・・・一刀のことを好きな度合いでは負けてないわよ?

 

明命にはサファイア。意味は「誠実・信仰・高潔」だそうね。呉に一番尽くしてくれている明命に

は似合っているわ。

 

思春にはアクアマリン。意味は「沈着・勇敢」だそうね。海を連想させる青い色と意味は思春にぴ

ったり合っているわ。

 

「で、よ。一刀。」

 

「?どうしたの蓮華?」

 

「どうしたの?じゃ、なくてどうして左の薬指に着けなくちゃならないの?」

 

「ああ、それはね・・・。」

 

カリカリと鼻頭を掻いて恥ずかしそうに告げる一刀。

 

「天の国では左の薬指に着ける指輪のことを結婚指輪って言ってね、意味はそのままで結婚してい

る人は左の薬指に指輪をつけるんだ。」

 

「まぁ!そうなの?それはとても素敵なことね!!」

 

俺もそう思うよ、と言って一刀は微笑んだ。

 

「?ねえ一刀。どうして急に指輪を作ったりしたの?」

 

「それは・・・。」

 

急に一刀の雰囲気が一変した。今までは嬉しさが買っていたから気がつかなったけど、指輪を渡し

終えたときぐらいからなんだか苦しそうだ。

 

言い及んでいる一刀に思春が声をかけた。

 

「北郷・・・私が代わりに言ってやろうか?」

 

「いや・・・俺が言うよ思春。ありがとう。」

 

「・・・・・・。」

 

「みんな、聞いて欲しいことがあるんだ。」

 

「な~に、一刀。早く言っちゃいなさいよ。」

 

「解った解った、まあ、シャオにはこれは関係ないんだけどね。・・・それじゃあ言うよ。この前

警邏に出かけたときのことなんだけど、俺がこの世界に来ることを予言した管略って言う占い師が

居るだろう?そいつに出会ったんだ。」

 

「それでそれで?」

 

「うん、管略が言うにはね、その・・・みんなのお腹の中にね・・・。」

 

「はい!」

 

「あの・・・その・・・。」

 

「なんじゃ、男ならはっきりいわんかい!」

 

「うっ・・・。だからお腹の中には・・・。」

 

「中には・・・?」

 

 

 

「・・・俺との子供が居るそうなんだ。」

 

 

 

「・・・子供・・・ですか?」

 

「うん・・・子供・・・。」

 

「そうですか・・・って子供~~~!!!」

 

「「「「「えぇ~~~!!!」」」」」

 

・・・びっくりしちゃったわ・・・。一刀との子が私のお腹の中に居るなんて・・・。

 

ホントのホントかしら!でも一刀が来ることを予言した管略の言ったことなんでしょう!?なら間

違いないわね!!

 

ああ~・・・一刀との子供ができているなんて・・・。なんて幸せなのかしら!!いろいろ考えち

ゃうわ~。名前とか一緒に何をするとか・・・。

 

「はぁー・・・。この歳で子を孕むとはの~。・・・長生きはしてみるもんじゃの。」

 

「ああ~。母親になっちゃうんですね、私。子供は御猫様みたいなんでしょうかね~~。ああ~モ

フモフしたいです~~。」

 

「あう~。一刀様との子どもが私のお腹に・・・。ああ・・・幸せです。」

 

「ふえ~不思議ですね~~。私のお腹の中に赤ちゃんが・・・。御本を読んで赤ちゃんについて

色々調べなければ~~。」

 

「えぇ~~。何で私には出来てないのよ~~~。不公平よ、一刀!私にもちゃんと種付けしなさ~

い!!」

 

「こらシャオ!そんな下品な言葉は使わないの!」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 

「ははっ・・・。俺も嬉しいよ、とっても・・・ね。」

 

「・・・?」

 

なんだか一刀の様子がおかしい。笑顔なんだけどいつもと様子が違う風に見える・・・。

 

「・・・一刀、どうしたの?なんだか疲れているみたいだわ。」

 

びくっ、と体を震わせ下を向く一刀。そのままチラッ、と思春の方を見る。思春もその視線に対し

て唇を噛んで下を向く。

 

決心が付いたといわんばかりに顔を思いっきり顔を上げて私たちを見つめる一刀。

 

「みんな!・・・もう一つ言わなくちゃいけない事があるんだ・・・。」

 

「なによ一刀~。早く言いなさいよ。ねぇねぇ、今度は何くれるの?」

 

「小蓮様・・・!ご静聴よろしくお願いいたいます・・・!!」

 

「む~、なによ~。一刀がはっきりしないのが悪いんじゃない。ね、ほら早く言いなさいよ。」

 

「それが・・・。」

 

何を迷うことがあるのだろうか、と思ってしまうほど一刀は考え込んでいる。

 

・・・何か悪いことなのだろうか?

 

だが、次に一刀から告げられた言葉に何も考えることが出来なくなってしまった・・・。

 

 

 

「俺・・・そろそろ天の国に帰らなくちゃいけないんだ・・・。」

 

 

 

「「「「「「・・・えっ?」」」」」」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

一刀が何を言ったのか理解できない。・・・帰る?・・・どこに?・・・天の国?

 

嘘よ!!信じられるわけがないわ!!!一刀が帰ってくる場所はここだけよ!!

 

「・・・一刀。私の耳がおかしかったのか良く聞こえなかったわ・・・。もう一度言ってくれ

る?」

 

「蓮華様!ですから北郷は―――――――」

 

「黙りなさい思春!私は一刀に聞いているのよ!!・・・さあ、もう一度言ってよ、一刀。」

 

ぐっ、と下唇をかみ締めまた下を向く一刀。彼の顔には様々苦悩が浮かんでいるように見える。

 

対して私の顔はどうだろうか。怒っているのだろうか、それとも笑っているのだろうか・・・。

 

解らない・・・。何も解らないのよ、一刀・・・。

 

「・・・もう一回言うよ。・・・俺は天の国に帰らな――――」

 

「嘘よ!解らない!解らないわ!あなたが何を言っているのか!」

 

「蓮華様・・・。」

 

「ああ・・・思春。あなた・・・知っていたのね・・・?」

 

「・・・・・・はっ。」

 

「思春!」

 

がっ、と思春の肩を強く掴み思いっきり揺さぶる。思春はされるがまま、私に目を合わせたまま揺

さぶられている。

 

「どうして・・・!どうして教えてくれなかったの!こんなことが・・・こんなことを!」

 

「・・・申し訳ありません。北郷からは言わぬよう念を押されておりましたから。」

 

「違う!念を押されていたから言わなかったなんて理由にならないの!なに?思春は一刀が好きで

はないの?居なくなったほうがいいと思っているの!?」

 

「そんな訳ありません!」

 

ばっ、と私を突き飛ばして叫ぶ思春。そんなこと・・・そんなこと解ってるわよ!

 

「なら何故私たちに言わなかった!?治せる者を探すにしても私たちの方が早く見つけられたし、

解消させられたかもしれないじゃないの!」

 

「もう・・・無理なのです。この「病」は治ることはありません。・・・後は、北郷と話

を。・・・残された時間は多くはありませんので。」

 

私から目をそらし、一刀の方を見る思春。彼女はどう思っているのだろうか、どう感じていたのだ

ろうか。一刀が居なくなってしまうのを・・・。

 

思春は私の方に向き直り、一礼し壁の方へと歩いていく。

 

「蓮華・・・。」

 

「一刀・・・。」

 

「・・・ごめん。」

 

「!一刀ぉぉぉぉぉぉ!!」

 

抱きついて泣きじゃくる。・・・こんなことはねぇさまが亡くなってしまってからは一度も無かっ

た。

 

強く、もう離さないと訴えるように強く抱きしめる。

 

その時、私の上から覆いかぶさるように一刀に抱きつく者たちがいた。・・・明命、亞沙、穏そし

てシャオの四人だった。

 

「一刀様!どうして行かれてしまうのですか!?私を、亞沙を置いていかないでください!」

 

「そうです!私たちを置いていくなんて~!私は~・・・私は!」

 

「行かないで一刀!何だってするよ?いいこにだってなる!だからぁ・・・だからぁ!」

 

「一刀様言ってはダメです!もっと一刀様と一緒に御猫様をモフモフするんです!他の国にも行け

るようになって知らない御猫様が増えたのに!一緒に・・・!」

 

「この・・・泣きやまんか!この小童どもが!!」

 

ワンワン泣きじゃくる私たちに瞳に涙を浮かべた祭が鼓膜がビリビリと震えるほどの大きな声で怒

鳴りつける。

 

「一刀は帰らなければならぬと決意を持ってわしらにこのことを喋ったのじゃぞ。この指輪を渡し

てな。愛されているわしらが一刀の覚悟を揺るがせてはならんのじゃ!」

 

「でも・・・。」

 

「でも、ではない!・・・それに一刀のことじゃ、天の国に帰ったらこっちに来る方法を見つける

つもりであろう?のう、一刀?」

 

「ああ・・・。俺は絶対にこっちの世界に戻ってくる。だから・・・そのときまで待っていて欲し

いんだ。」

 

「ほれ見ろ、やはり一刀はわしらのことを一番に考えてくれ取るじゃろ?だから泣き止むんじゃ権

殿。貴方は王で在らされるのですからそのような顔をしていては行けませぬぞ。」

 

「・・・ええ、解ったわ祭。見苦しいところを見せてしまってごめんなさい。一刀、私たちに誓っ

て?・・・絶対にこの世界に、私たちのところに戻ってきてくれるっていうことを。」

 

ぐっ、と涙をこらえて一刀を見据える。そして誓いを立てる。

 

「絶対に・・・絶対にこの世界に戻ってくる。みんなに誓おう!この世界に返ってくることを!」

 

と一刀が誓いを立てた。だがその次の瞬間。

 

「クッ――――――――――ハァッ!!」

 

一刀が頭を押さえながら前に倒れた。危ない!と思ったときには一瞬の間で近づいた思春の腕の中

にいた。

 

「一刀!大丈夫なの、一刀!?」

 

「ハァハァ・・・これはマズいかもね・・・。いつもと比べ物にならない虚脱感だ・・・。・・・

蓮華、思春。俺を孫堅と雪蓮のお墓に運んでくれないか・・・?」

 

「!・・・解ったわ。みんな行くわよ!」

 

「「「「はい!」」」」

 

 

 

母様とねぇ様が眠っているお墓に着いた。けど、そのときの一刀は・・・。

 

「あぁ!一刀様が・・・一刀様の体が!」

 

そう、向こうの景色が見えてしまうほどに透き通っていたのだ。

 

「心配しないで亞沙。・・・まだ大丈夫だから、ね?思春、買っておいたお酒を貸してくれない

か?」

 

「ほら、これだ北郷。」

 

思春から小さな壷を受け取った一刀はねぇ様のお墓の前に座り込んで話しかけた。

 

「ありがとう。・・・さて雪蓮、久しぶりだね。先ずはごめん。君の愛していたみんなを泣かして

しまったよ。怒ってるかな?・・・怒っているだろうね。でも俺は絶対に帰ってくるから。そして

みんなを笑顔にしてみせるから、今はこれで許して欲しい。昔俺と一緒によく飲んだ飲食街三番目

の店のお酒だよ。ゆっくり出来る時間もないし、酒に関してはザルだったからね、君は。・・・ま

たこの世界に返ってきたならこの酒をまたここで君に渡そう。これが君に対しての誓いだよ雪蓮。

だからこれからもみんなを見守って―――――――クハァ!」

 

「一刀!」

 

「見・・・守って・・・あげてね・・・?雪・・・蓮・・・。」

 

一刀の体からキラキラと光る雪のようなものが零れ落ちてくる。綺麗だった・・・。だが見た途端

に解ったことがある。・・・アレは一刀そのものだということが。

 

「あぁ、ダメよ・・・!ダメよ一刀!やっぱり行っちゃだめぇ・・・。」

 

先ほど纏った「王」はなんだったのだろうか。そんなものは邪魔だと言わんばかりに剥ぎ取って泣

きじゃくる一人の「女の子」。

 

私を一人の「女の子」にしたのは貴方なんだから・・・!責任ぐらい取ってよね・・・?

 

「大丈夫だよ・・・蓮華・・・。」

 

「一刀・・・!」

 

私の腕から抜け出して立ち上がった一刀は言葉をつなげる。

 

「俺は・・・俺は絶対戻ってくる!さっきも言ったろ?・・・だから少しの間我慢しておいて欲し

いんだ。」

 

「一刀・・・」

 

手を広げて私たちに笑いかけてくる一刀。

 

「だから・・・もうお別れかな?・・・ごめんよ、蓮華、みんな。そして・・・愛しているよ、み

んな。」

 

「一刀・・・!」

 

だがその手には「存在」というものが無くて・・・。

 

「絶対に合える!・・・だから待ってて。」

 

「一刀!」

 

愛しい彼の顔が見えなくなって・・・。

 

「それじゃあ、また会おうみんな!またね!!」

 

「一刀~~~~~!!」

 

その日、天の御使いとして「呉」にやって来た一刀は、天の国に帰ってしまった・・・。


 
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