No.174341

真・恋姫†無双【黄巾編】 董卓√ ~風と歩み~ 拠点 月・詠√ ~蛍ノ流星~

GILLさん

GILL(ギル)と名乗る作者です。
……大変、長らくとお待たせ致しました。
皆様、この作品を覚えていますでしょうか?
一ヶ月程の間、この作品を忘れずに更新を待っていたという人が居てくれたら、自分は幸せ者です……。
実は、少しだけ文章の書き方……つまり形式なるものを変えて書いてみました。読み辛かったら申し訳ないです。

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2010-09-24 00:50:03 投稿 / 全12ページ    総閲覧数:4791   閲覧ユーザー数:3991

 はじめに

 

 GILL(ギル)と名乗る作者です。

 

 この作品は、真・恋姫†無双のみプレイした自分が

 

 『俺は、風が大好きなんだ!!』

 

 と、いう感じでタイトル通り【~IF~】『もし、風達と一刀が同行したら・・・』

 

 という妄想がタップリの作品です。

 

 でも、作者は風以外に目が入っていないので、もしかしたらキャラが変わっている可能性も出てきます。

 

 そして、オリジナルのキャラクターも出すかもしれません。

 

 ですから、『あ、そういう系のSSマジ勘弁』という方はお控えください。

 

 それでも、『別に良いよ』という方は是非とも読んでやってください。

 

 それでは、ご覧ください!

 『夏祭り?』

 

 そう、全てはこの一言から始まった。

 

 短くも深い、平和と幸福で起きた、一つの『小さな奇跡』が……。

 青く澄んだ空の下、セミ達の鳴き声が辺り一帯に響き渡る。晴天とも呼べる天気では、自身の体を通り抜けるような風が心地良い。風が木々に当たり、葉が揺れる音がする。

 執務室の中で、一刀と詠が終わらせるべき仕事を黙々と進める最中、それを見守るように月がお茶を淹れて、二人の側に置く。

 コトリ……と、一刀が筆を置く。それが、彼の待ちわびた合図でもあった。

 

 「今日はここまでにしようか。もうすぐお昼だし」

 

 詠が一刀の言葉に反応して、顔上げる。その顔はまるで『もう、そんな時間?』と言っているようだ。詠が少し考えながら自分の作業成果に目を配る、そして少し経った後、小さく頷いた。

 

 「そうね。今日終わらせるべき案件は終わったし、そろそろ休みましょうか。あ、月……お茶、ありがとうね」

 

 うーん、と背伸びをしてお茶を啜る詠。目を休める為に外した眼鏡。そんな彼女の素顔に改めて可愛いと感じてしまう。

 

 「……何よ、そんなにジロジロ見て。ボクに何か付いているの?」

 

 ジッと睨む詠。思わず見惚れてしまった、と素直に言えば良かったのだが、その後の風への対応が大変だ。必死に別の言い訳を探そうと目線をあちこち飛ばす一刀。

 

 「あ、いや……えーっと……。最近、妙に暑くなってボーっとするなぁ……なんて、ハハ」

 

 苦笑いを浮かべながらお茶を啜る一刀。流石にバレたかと内心焦っているが、それは取り越し苦労とうやつだった。

 

 「そうね。お陰で市民達の間では、いざこざが絶えなくて苦労するわよ……」

 

 ふぅ……と、溜息と愚痴を溢しながら椅子に深く腰掛ける。ここ最近、気温が急上昇したのは間違いが無いだろう。そこで問題なのは……人間が住む環境の急激な変化だ。

 やはり人間だけあって、住む環境がガラリと変わればその分ストレスも溜まる。そして……このような問題が起きる。

 

 「急に暑くなって、畑が駄目になってしまったと、街の皆も途方に暮れていました……」

 

 空になった湯呑みを回収しながら、月も街の様子を語ってくれた。何も、環境の変化が人間だけに影響するわけじゃない。かといって、諦めて見過ごすわけにもいかなく……頭を悩ましていると……。

 

 「なら、いっその事……夏祭りでも興してみようか!」

 

 「「夏祭り?」」

 

 いつしか、セミ達の鳴き声は聞こえなくなって木々が揺れる葉の音しか聞こえなくなった、とある日常の一言。……こうして、俺達の『小さな奇跡』が始まったのだ。

 「―――と、言うわけで……皆に手伝って欲しいんだけど、どうかな?」

 

 先ほどの執務室からは変わり、一刀達は董卓軍の主要メンバーを集める為、軍議室へと移動していた。そこには、呼びつけに集まり華雄、霞、風が来ていた。

 月が淹れたお茶の仄かな香りが立ち昇る中、華雄は顔をしかめていた。

 

 「……祭りをするのは構わん。だが、私が何故『料理専門』なのかを納得がいく説明をしてもらおうか」

 

 月のお茶の香りを少し楽しみ啜った後、一刀の方を少しだけ睨みながら腕を組む華雄。しかし、彼女自身……発する言葉程、そこまで怒ってはいない。

 

 「華雄……その事なんだけど。ごめんね。これは董卓軍全員一致の決定事項なんだ」

 

 再び、湯呑みを手に取ってお茶を啜ろうとした華雄に、一刀が合掌しながら平謝り。その背後には、董卓軍の顔ぶれが頷いている。それを見た華雄は、呆然としながら湯呑みを落とした。

 

 「な、何だ!その、嫌がらせに近い民主主義は!?」

 

 華雄の声が部屋に響く。普通の壁が人の声を反響する事も妙に感慨深い。落ちた湯呑みは手馴れた動きで月が回収していた。

 

 「えー、だって……。皆好きだろ?民主主義は」

 

 何処かの国の反逆者(後の王様)が使う名台詞っぽい事を言ってみたが、華雄には届いていない。若干、勢いに負けて押し倒されそうな一刀は周りに助けを請うようにして見回してみた。しかし、皆他人事のように自分達だけで会話をしていた。

 

 (あるぇー?こういう時って皆で助け合うのが普通だよね?あれ、それとも俺がボケたから悪いの?あー、やっぱり人間は素直が一番だよね。うん、そうしようか)

 

 「華雄。俺は正直言うと、華雄の作る料理が一番好きだ!だからこそ、華雄を信頼して任せたいと思っているんだ!」

 

 一刀の思わぬ発言に一部の者達が『しまった!』と言わんばかりに目をこれでもか、と大きく開きながら華雄を直視する。華雄の顔は案の定、真赤に茹で上がっていた。

 

 『華雄。俺は正直言うと、華雄(の作る料理)が一番好きだ!……』

 

 (なっ!……こんな公衆の面前でよくも大胆な……。だが、そうか……私が一番か……そうか、フフッ。これは、好機だ!)

 

 董卓軍の一番の不安要素。……『華雄の自己解釈』。最早、華雄の頭の中には勘違いが積もりに積もっていた……。

 語り視点

 

 華雄の勘違いが生み出した意気揚々とした行動力は何とも言えぬ、力強いものだった。城下に存在する全ての屋台を虱潰しに捜索し、あるだけ全部を祭りに導入するつもりだったらしい。

 その行動が引き金となったのか、住民達も次第に事の顛末を理解し、やがて夏祭りに向けて一つの団結力を生み出した。しかし、それだけの人数を統率するだけの為に、詠が死にかけたというのは、また別の話。

 

 しかし、全ての事が上手く運べる程世界は優しく出来ているわけでは無い。いつまた起こる争いや、自分達の願いが天に届くか解らない不安に押し潰される人も居る。つまり、団結力を生み出しただけで住民同士の小競り合いが完全に消えたわけじゃない。

 こんな小さな、些細な事で争うなんて馬鹿げているのは誰もが重々承知のはずだった。しかし、攻撃、逃避、退行、抑圧。このような形でしか人々が自分自身の心の安定……適応機制を行えなかった。

 

 それでも、ほんの一時の平和を感じ、生の実感を得たいと、紛いなりにも幸福を実現しようと奮闘する一刀達に微弱ながら希望が照り始めた。

 その希望はやがて、ひとつの光になるようにして人々の心に火を点けた。

 

 攻撃。他人を傷つけ、自分の不安や苛立ち、痛みを強要させる者。

 逃避。戦乱という名の辛い現実から目を逸らし、自分の殻に閉じこもる者。

 退行。傷つく事を恐れ、我が身大事のようにして自分の事しか守らぬ者。

 抑圧。傷つく事でさえ、自分の心の中にしまい込み、次第に壊れていく者。

 

 そんな人達でさえ、彼等を視ることで強くなれたのだ。辛くても、共に笑いあえる事があると知った。

 

 そして、小競り合いをしていた者達も少なくなり、やがては居なくなった。その代わりに、祭りの為にと力を注ぐ者達が増えたのだった。

 この時、改めて思い知らされるのは『数の力』だ。たった数十人で祭りを興すのと、数万の人間が興す祭りとは明らかな差が出る。その差は正に、天と地程であろう。

 数々の技術的問題は解決され、屋台も大通りに幾つも並び始めた。

 

 そして、夏の終わりを感じるようにして、夏の終わりの一時を思い出に飾るようにして、祭りは始まったのだった……。

 紅色で飾る空。今日の夕日はいつもより大きく見える頃、城下もかつてない程の人で埋められていた。

 そこには、祭りの象徴とも言える太鼓の音と、笛の音が雰囲気をより一層強めている。通り過ぎていく人通りの殆どは、支給されていた浴衣姿が多い。

 

 手に持たれていた綿菓子や団扇、履かれていた下駄が地面を踏む音が耳に響くのを感じ、あぁ、祭りだ。と、ついつい感動してしまう。

 

 「一刀さん」

 

 聞き慣れた月の声が耳に入り、これから思いっきり遊び楽しもうと胸が高鳴る。自分の世界ならではの遊びが盛り沢山なこの祭りで、自分が皆の楽しい思い出を作ってあげようと気合を入れながら、振り向いた。

 

 「どうでしょう。似合いますか……?」

 

 そこには、いつもの高価そうな衣装で着飾っている月ではなく、平凡な、それでも美しく見えてしまう浴衣姿の月が居た。あの黒い四角帽子の代わりに、月の頭ではニンマリと笑う狐に似せた帽子が被らされていた。

 ……そして。

 

 「まったく……。こういう妙な所には凝り性ね、相変わらず」

 

 普段の伸びた髪を縛り、おさげのようにしている部分を解き霞のような髪型にしていた詠。桜の花びらをモチーフにした髪飾りを髪留めに挿していた。

 普段では、滅多に外さない眼鏡を外している彼女の素顔は、間違いなく通り過ぎていく男性を魅了している。ついさっき通り過ぎた男も、二回や三回振り向いたりしている。

 

 「あの~。やっぱり、どこか変ですか?」

 

 不安げに上目遣いをしながらオロオロとしている月の姿に、思わず固唾を飲む一刀。ヒビが入った硝子のような脆い理性をなんとか保ちながら、それでも頬を朱に染めて慌てて背を向ける。

 

 「いや、そんな事はないよ!とても似合っているよ!よし、思いっきり祭りを満喫しよう!」

 

 目を丸く見開いた詠だが、あの慌てぶりを見て、少しずつ顔を艶やかに笑わせる。そして……。

 

 「そうね、折角の息抜きの機会だし今日は存分に楽しもう。ね、月」

 

 月の方をちらりと覗きながら一刀の左腕と自分の腕を組む詠。一刀がその大胆で、普段は絶対にしない詠の行動にかなり動揺していた。月も、そんな詠を見て目を丸くしていたが、詠の笑顔を見てパァと花が咲くが如く、自分も笑顔を見せながら。

 

 「そうだね!詠ちゃん!」

 

 残った一刀の右腕に自分の腕を絡ませた。悪ノリか天然か、どちらかは解らない月の笑顔。しかし、天使のような微笑を見て一刀は後者だと確信を得られた。

 

 「……ええい!こうなったらやけだ!」

 

 両手に花という言葉の意味を存分に理解、満喫しながら一刀達は歩き出した。しかし、こんな思いが出来たなら祭りを起こして良かったと思える。達成感が感じる中、自然と顔を緩ませながら、人混みの中に入っていった……。

 月視点

 

 「そういえば、他の皆はどうしたの?」

 

 思い出したかのように口を開いた一刀さん。手には、綿菓子と林檎飴がそれぞれあって、頭には蝶を模した仮面を被っていました。

 他の皆というのは多分、風さん達の事だと思いました。

 

 「さぁ?恋と風は、二人同士で笑いあいながら何処かへ行っちゃったし。華雄と霞も、興奮した霞が華雄を引っ張っちゃって勢いよく何処かへ行ったわ。……ペロッ」

 

 本当に興味無さげに語り、綿菓子をジッと見つめながらペロリと舐める詠ちゃん。舐めた後の至福に満ちた顔を見ると、こっちまで幸せになるようでした。

 

 「皆さんは皆さんなりに、思いっ切り楽しんでいると思います」

 

 腕に抱き込んだ数々の景品に目を向けると、ついつい笑ってしまいます。先ほどの、『射的屋』という所で私は、私自身の隠された能力を見つけてしまいました。

 

 「それにしても、月って射的が上手かったなんて、本当びっくりだよ」

 

 それは、私が実は『弓を扱うのが凄く上手かった』という事です。あの『射的屋』という所では、墨で数字か書かれた木の板を打ち落として景品をもらうという仕組みでした。最初は、ほんの遊び心でやってみただけだったのですが、難しくなる毎に何だか私も本気になってしまって……気づいたら、一番難しい板を打ち落としていました♪

 

 「本当。一瞬、月が別人だって思っちゃったじゃない」

 

 ……詠ちゃん。普段の私って、そんなに控えめなの?で、でも……今日は、普段の駄目な私でも少しだけ、一刀さんの目を惹く事が出来ただけで、胸が高鳴ってしまいそうです。

 

 いつも側に居る一刀さんをずっと遠くから見守る事しか出来なかったけど、今日なら……もっと近づけると思って履いてきた『勝負下着』。風さんに教えてもらって履いてきましたけど……どうか、私の願いが届きますように。

 

 そう心の内に呟きつつ、月は腕を組む力を少しだけ、力を込めていた。

 詠視点

 

  「本当。一瞬、月が別人だって思っちゃったじゃない」

 

 今の言葉はちょっとした皮肉。普段ならどこか抜けている月では、絶対に有り得ないと隠しながらも、ちょっとだけ月をからかった。

 予想通りに、『うぅ、詠ちゃんのイジワル~』と言っているような目でボクの方を睨んできた。だけど、別に月が嫌いなわけじゃない。寧ろ、月はボクが守ってあげたい存在。それに変わりはないもの。

 

 だけど、ボクは知っている。

 

 チラッと見えた、月が組む腕を少し引き寄せるところ。多分、というか絶対、月は一刀に好意を寄せているに違いない。勿論、ボクだって月と変わらない。

 ボクだって……一刀の事が好きだもん。でも、素直になれない……恥ずかしいから。

 

 だからこそ、もしも月が一刀に近付くなら……ボクだって負けない。確かに、月はボクが守ると誓った人。でも、そんな月だからこそ……女として、負けたくないのかもしれない。……だから。

 

 「月。この綿菓子美味しいよ、食べてみて!……それと、ボク今回ばっかりは負けないからね」

 

 一瞬、何のことかと戸惑う月。しかし、詠の揺らがない瞳を覗き込んだ月は、パァっと笑った。

 

 「私も……詠ちゃんだからって、負けないから。お互いに、頑張ろう」

 

 決して、互いが憎いわけでも、忌み嫌っているわけでもない。お互いがお互いに大切な人同士。だからこそ、いつまでも二人同士寄り掛かって甘えているわけにはいかない。

 

 微笑みながら、手を差し出す月。その手をギュッと握り締める詠。

 

 そして、二人は走り出し……最愛の男性の懐へと飛び込んだ……。

 『もうすぐ祭りも終わるし、ちょっとここで待っていて』

 

 他の皆も連れてくるから……と、付け加えて小走りに来た道を逆走していった一刀。その横顔は、まるで子供が新しい玩具を買ってもらえる時にするような笑顔で、待ち遠しくて堪らないようだった。

 

 今回の祭りは、夕暮れ時に始まったのにも関わらず、カラスの声が響く夕暮れの終わりを告げる合図がいつもより遅く感じた。

 しかし、今日くらい一日中祭りという名の娯楽にも浸ったって別に良いではないか……と、思わせる程、天界での祭りは依存性が高かったのだ。

 お陰で、どの屋台も終盤まで客の足取りが一向に絶えるのに時間が掛かった。

 

 ……川原の水が流れ、虫達の鳴き声が心地よく響く頃、陽は地平線へと沈み満天の星がいつもより大きな夕日に代わって空を飾る。

 

 月と詠が待っていた場所へ、次々に集まる董卓軍の顔ぶれ達。順に、月と詠、華雄と霞、風と恋が来る。全員が集まる頃には、大通りにあった祭りの面影が、嘘のようにして無くなっていたのも、妙に呆気ないと感じてしまう

 

 虫達の鳴き声を聞くだけ、黙々と時間が過ぎるのも忘れそうになる頃合に、一刀が全力疾走で駆けつけてきた。

 

 「ごめん、皆!お待たせ!」

 

 ゼェゼェと息を切らして、肩で呼吸する一刀。俯く顔からは汗が一粒ずつ落ちるのが見えた。手に袋を持っていた一刀。その袋の中からチラリと見えたのは、棒状に出来た小道具と、四角い箱が3個程入っていた。

 

 「随分と遅かったわね……。一体、何をするの?もう、祭りも終わったのよ?」

 

 少しだけ眉間を寄せる詠。これほどまでの時間、寒い夜道に立たされていたのだ。無理もないだろう。しかし、袋の中を見るからに、綺麗な月を肴に酒を飲む……という事では無い。一刀が持っている袋も酒を入れるような大きさでは無かった。

 

 「祭りの最後に、もう一つだけ……思い出を作ろうかなってね。この『線香花火』で」

 

 「「「線香……花火?」」」

 

 皆で興した祭りも、もう……終わりが近付いていた。

 「なんや、その『せんこうはなび』って」

 

 興味津々で若干興奮している霞が目をキラキラと輝かせて、一刀に言い寄り袋の中に期待の眼差しを向けていた。

 

 「……おいしいの?」

 

 天界の美味しい料理と勘違いして、涎を口の端から少し垂らす恋。……しかし、良い子は絶対に食べないように。

 

 「……ぐー」

 

 相変わらずのテンションで、何か楽しそうな事が起きようとしているのにも関わらず、立って寝ている風。

 月、詠、華雄も若干の興味はあるが、これから何が起こるのか理解できず、少しだけ戸惑っている。

 

 「『百聞は一見に如かず』ってね。聞くより、見たほうが解りやすいよ」

 

 そう言いながら、3個あった四角い箱の1個を取り出し、その箱の中にあった小さな棒を取り出した。……そして、その棒が瞬く間に火を灯した。これには、流石の皆も驚いて目を見開いた。そして、その火を線香花火に……点けた。

 

 『……綺麗』

 

 意外にも、最初に口を開いたのは恋だった。と、いうのも他の皆は自分の目の前に起きている『神秘』とも言える光景に言葉を失っていたのだ。

 線香花火が火花をバチバチと散らしながら、輝いているのは確かに何処となく目を釘付けにしてしまうが、皆の反応はその比では無かった。

 

 「……どう?面白いでしょう?」

 

 無邪気に笑う一刀。その笑顔は、幼い子供が自慢するかのような明るさだった。

 

 「……凄く、綺麗です」

 

 「面白い……っていうより、何もかも凄いわ……」

 

 「ええやん!ええやん!何だか知らんけど、背中がゾクゾクしてきたわぁ!」

 

 「……相変わらず、お兄さんは風を悉く驚かせてくれます」

 

 「……恋も、やりたい」

 

 「……思わず、自分の目を疑ってしまったぞ」

 

 反応はそれぞれで、それでも……皆の心を引くのには、充分だった。

 何処か満足気な顔を浮かべる一刀は、線香花火を均等に分けて、皆に配った。そして、この四角い箱の正体……所謂『マッチ』を二人一組に配った。

 線香花火とマッチを配り終えた一刀達は、近くに流れていた川原に移動していた。理由は至って簡単、警備の兵達や住民達に『何かが燃えている』と、誤認させるわけにはいかなかったからだ。

 線香花火の火花があちこちで散る中、水面に揺らいで映るこの光景はカメラで撮った写真とは、また違う味わいがあって『思い出に残せないけど、こういうのも良いかな』と思わせる。

 しかし、人間とは楽しければ楽しい程、過ぎていく時間が刹那に感じてしまう。

 

 「これで……最後の一本ね」

 

 少しだけ呟く詠。その言葉に、ちょっとだけ名残惜しさを感じる皆。その中でも、恋は極めてガッカリしていた。……触覚が後ろではなく、前に垂れているのがその証拠だろう。

 

 「ま、まぁ……線香花火やマッチは頼めば職人さんに作ってもらえるから、そんなに落ち込まないでよ」

 

 苦笑いを浮かべ、若干慌てながら手を振り回す一刀。しかし、本人が一番良く理解しているとも言えるのだ、祭りの時でやる線香花火と普段でやる線香花火の違いを。

 そんな一刀も、次第にどうしようもない……と、顔を伏せてしまう……そんな時だった。

 

 「……これは」

 

 突然、茂みの中からポツポツと光の粒が照り始めた。……蛍だ。

 しかし、蛍だけならそれほどまでに驚かない……それが、至極普通のものなら……。しかし、茂みに居る蛍の数は尋常では無かった。ザッと見て、数百は絶対に居るだろうと予想できるものだった。

 

 『……綺麗』

 

 最早、誰が言った言葉なのかも解らない位、その光景に見惚れてしまった一刀達。次第に、蛍達は突然飛び立った一匹を先頭に、次々に飛び去っていった。

 その姿はまるで、『光る龍が天へと登り、流星となって夜天を切り裂くキセキ』のようだった。

 その姿は、皆のポッカリと空いた心の穴を塞ぐのに、充分過ぎる奇跡だったのだ。

 

 ……こうして、『小さな奇跡』と共に、一刀達の祭りは……終わりを告げた。

 あとがき

 

 最後まで読んで頂き、ありがとうございました!!

 

 確実に更新ペースが落ちている……。

 これを書くのに一ヶ月もの時間を使ってしまった作者です。

 今回も、見苦しい言い訳をば……実は、少し前から某所で文章の書き方を勉強していたのですが……どうでしょうか?少し、形式が変わったと思いますが……。

 どんな感想でも欲しい作者です。何らかの突っ込みを待っています。

 

 さて、今回の話ですが……時期を完全に逃した『夏祭りのネタ』です、ハイ。

 そんなの関係無しに、このネタが書けて自己満足している作者を腹の底から笑ってやってください……。 (・ω・`)ショボーン・・・。

 

 今回の拠点では、董卓軍メンバー全員が同じネタの『夏祭り』です、ハイ。

 拠点では、題名に書かれているキャラの可愛さを最大限出そうと張り切っていた作者ですが、文章の関係でそれが伝わらないor描かれていない可能性がある為、若干不安げな作者です。

 今回、読者の皆様の反応次第ですが……自分的にはもう少し改良の必要があると思っていますが……どうでしょうか? それも含めて、コメントして頂ければ幸いです。

 

 ではでは、最後に一言……。

 

 『……読者の皆様に見捨てられていなければ良いなぁー……』

 

 それでは、次の投稿まで

 See you again!!


 
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