No.173117

コードギアス 反逆の狂奏愛歌~二人の想いの先に~

ゆーたんさん

アニメを元にしたIF話です。

STAGE03「偽りのクラスメイト」と同時期ですが、
若干ずらしたりしてます。

2010-09-17 23:39:30 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:10501   閲覧ユーザー数:10369

 彼はきっと何も言わない。

 

 すべてを内に秘めて、外には眩しいほどの笑顔という仮面を被る。

 

 本当は守るべき立場の私を…、あなたはいつも守ってくれる。

 

 それはとても居心地が良くて幸せで。

 

 あなたは素直に守らせてくれないでしょう

 

 だから勝手に私はあなたを守る…、もう決めたわ

 

 その事を知ったらあなたはなんて言うかしら?

 

 あきれるかしら?

 

 それとも怒る?かもしれないわね 優しいあなたなら

 

 自分が傷つくことも厭わず、立ち上がり守ろうとする優しいあなた…だから

 

 だから……誰にも渡さない

 

 

 

 

「はーい到着♪」

 

 アッシュフォード学園の裏にある駐車場に停車し、後部座席に乗っていたミレイは車を降りるとまずは大きく伸びをした。高級車とはいえやはり座り続けるのはいささか苦痛を感じる。動くのが好きなミレイと同じように、肉体派?のカレンは同じように伸びをした。

 

「咲世子さん、ありがとう」

 

 手を振って咲世子に別れを告げ、ミレイとカレンは学校の表へと歩き出した。「ふぅ」と気持ちよさそうに伸びをするカレンを見てミレイは笑みを浮かべた。それに気づいたカレンはバツが悪そうに顔をそらし口を尖らせた。

 

「な、なにか?」

「病弱な設定より、活発なカレンさんの方がらしいなって思ってね」

 

 からかうようなそれでいて、本心は一切漏らさないその笑みはカレンは苦手だった。自分の心は筒抜けで相手の掌の上で転がされてる気がして……。

 

「あ、そうだ」

 

 急に振り向かれたミレイはカレンが反応するより早く、ミレイは自分の人差し指の腹をカレンの唇へ添える。

 

「あたしがゲットーに居た事と、病院の事は二人だけの秘密にしておいてね♪」

 

 カレンは自分から言うタイミングを計っていた内容が、ミレイの口から先に出たことで顔には出さないが内心安堵していた。もちろんこちらもばらされたらまずい内容のため、二つ返事でミレイに同意した。よくよく思い返してみると、ミレイはカレンがいいにくそうな事を自ら口に出してくれる。車内での会話も病院でのやり取りも。ブリタニア人は嫌いだがこのミレイに対してはそれ以外の感情が生まれたのを感じた。興味、ミレイという人物に対して純粋な興味がカレンの心に沸き始めていた。

 

「おはようございます、会長」

「ふふ、おはよう」

 

 このアッシュフォード学園において、理事長の孫娘や生徒会長という肩書きだけではなく、美貌とそのおおらかな性格もあり学園内の人気は高く、副会長ルルーシュ・ランペルージと人気を2分している。ミレイは美貌と性格から男女共に人気が高く、ルルーシュは女子からの人気が異常に高い。ルルーシュの場合は声をかけられず遠くから眺めて悦に浸る女子も多いが、ミレイの場合は男女問わず気軽に声をかけられる。

 声をかけた一人一人に笑顔を向ける返事をするミレイは、校舎の玄関まで来ると「それじゃ放課後ね♪」と意味深な言葉を残してミレイはさっさと階段を昇っていった。意味深な言葉に思考をめぐらすカレンだったが、思い当たる言葉がなくうーむと難しい顔をしていると、後ろから声をかけられた友人に心臓が止まるくらいに驚いたが、すぐさま病弱設定仕様カレンになり、弱弱しい笑顔と声色で挨拶をした。

 

 その後部活の予算申請の事を忘れていたミレイは、慌てて生徒会メンバーを招集しなんとか予算申請を終わらせた。その際の生徒会メンバーは妙にぐったりと背後に黒い影を背負っていたという。

 

 

 

放課後……

 

「ふんふっふっふーん♪」

 

 ほぼ生徒会専用のクラブハウスのキッチンで、ぐつぐつ煮込まれている鍋の中身をお玉で丁寧にかき混ぜる。色とりどりの野菜にお肉、そして食欲そそる香りを漂わせるデミグラス色のスープ。適度に鍋のそこを焦がさないようにしつつ、お肉や野菜にクラッカーをお皿へそれぞれ盛り合わせる。まるでどこかのレストランに来たかのような見栄えに、鮮やかな緑のソースがお皿の上を舞い踊る。

 おたまで掬ったスープを味見用の小皿へ注ぎ、それをゆっくりと口の中へと進入させる。

 

「うん♪でーきたっと」

 

 味に満足したミレイはブラウスにミニスカートという姿にエプロンを纏い、普段とは違う魅力を醸し出す。厚手のタオルで鍋の取っ手を持ち三段式のワゴンの上段へ乗せる。それをゆっくりと押しながらクラブハウス内の大きな一室…、立食やダンスパーティが開けるくらいのルームの扉を開けた。

 

「おまたせぇ♪」

 

 ワゴンに乗せられた料理をみて、2階で明るい栗色の長い髪を揺らしながら下を覗き込んだ生徒会メンバー兼水泳部のシャーリー・フェネットは「さすがミレイさん」といいながら、1階のミレイのところまで駆け下りる。後を続くようにルルーシュの悪友リヴァルに、濃緑色の髪を双方で三つ編みにしたニーナ・アインシュタインもミレイの所へと降りていった。

 

「もっと褒めるがよい♪」

 

 ミレイは楽しそうに手際よくテーブルへ料理を綺麗に並べて行く。

 

「会長、一体?」

 

 ミレイと他のメンバーの会話についていけないルルーシュとカレンの二人。ルルーシュがミレイへと疑問を投げかけた。

 

「あれ?知っててつれてきてくれたんじゃなかったの?」

 

 ミレイは少し困ったような表情でルルーシュとカレンを見た。そんなミレイを見て、カレンは今朝言われた言葉がこの事だったとやっと気づいたように、誰にも聞こえないように「あ」とだけもらした。

 

「カレンさん生徒会に入れるから♪おじいちゃんに頼まれてね~」

「理事長が?」

「ええ。カレンさん、|はじめまして《・・・・・・》。生徒会長のミレイよ♪よろしくね」

 

 とんとんとんと自己紹介が進んでいると、この部屋のドアが開きピザの箱を膝においたまま車椅子に乗った少女が入ってきたのをカレンは確認した。

 

「彼女、ルルーシュの妹なの」

「…妹……」

「カレンさん、ナナリーです。よろしくお願いします」

 

 目も見えない足の不自由な少女、それでも優しく心を暖められるその笑顔につられ、カレンも穏やかな笑顔で少女へ挨拶をした。

 

 その後リヴァルがシャンパンを取り出し、なんやかんやでカレンがシャンパンを頭から被りシャワーを浴びたりなど話題に事欠かないカレンの生徒会歓迎パーティーはあっという間に時間が経ち、ミレイが食器をキッチンで洗っていた。

 シューっというスライド音と共にキッチンのドアが開いた音を聞いたミレイは、振り返らずとも誰が入ってきたのかだいたい察しが付いていた。

 

「ミレイさん、何かお手伝いしましょうか」

 

 ずっと変わらず優しい心を持つ愛しい人の妹、それは自分にとっても大切な存在で共犯者で。

 

「ありがとうナナリー。でももう終わるから……ルルーシュは?」

「今みなさんを門までお見送りに」

「そう…」

 

 水道の蛇口を閉めて流れ出ていた水を止めて、手近においておいたタオルでそのぬれた手を拭いた。

 

「あの子……病弱設定のわりにシャーリーより引き締まった体」

「カレンさん…ですか?」

「そうよ、ブリタニア支配に抵抗するテロ。いやレジスタンスの紅月カレンさん…ふふ」

「ミレイさん」

 

 ナナリーの言葉にミレイは振り返り、ナナリーの視線と絡め合わせる。飲み込まれそうな兄よりも薄い青に近い紫の瞳。今は誰もが盲目と信じて疑わない彼女の目は、今は完全に見開かれている。

 

 

 

 

 お兄様は何も言わない。

 

 いつだって笑ってすべての闇を飲み込み、私に光を与えてくれる。

 

 このまま光も体の自由もなければ、お兄様を独り占めできるのね

 

 だけど守られるお姫様のままなんてイヤ

 

 だから私は立ち上がる。

 

 自分の足で…自分の意思で…

 

 お兄様、お兄様以外でも私の笑顔を守ろうとしてくれる人がたくさん居ます。

 

 でも一番はやはりお兄様じゃなきゃだめで

 

 だけど傷ついて弱って…だけど人にはそんな部分を微塵も見せない

 

 光を失って見えるモノが見えるようになると、こんなにもお兄様の心は素直に応えてくれる

 

 自分ではなく私の幸せを願ってくれるお兄様…だから

 

 だから……お兄様を誰にも渡しません

 

 

 ミレイが迎えにきて数年。今まで自分や日本人唯一の親友以外トゲトゲしく無関心だった兄が、周りに対して少しずつ柔らかくなってきている事を感じていた。少なくともこの生徒会のメンバーに対しては、優しさが零れている。いつだって自分に対して与えてくれる愛情が最大で、誰よりも1番に思われているのは常に感じている。それでも兄が唯一自分と同じくらいに愛情を注ぐ相手、それが目の前のミレイ・アッシュフォードであり、ルルーシュの婚約者。

 幼き日の約束とはいえ皇族ではなくなったたルルーシュ、落ちぶれた名家のアッシュフォード。一度は破棄しようとしていた約束を、ルルーシュはミレイと共に歩むことを決めた。ミレイの明るさと優しさに惹かれ、またミレイもルルーシュ個人に一目ぼれしており、不器用な内面もすべてを受け入れている。

 

「ミレイ…やはり」

「ルルーシュ!!あたしはあんたがいいの!!あんたじゃなきゃだめなの」

「ミレイ……」

「皇族とか家柄とかどうだっていいの。あたしは」

「ありがとう、ミレイ」

 

 そういって口付けを交わす二人を見てしまった事を思い出す。嫉妬はなく、自分も姉としてミレイを慕っているから、ルルーシュが幸福に満たされる姿を感じれたことは凄くよかったと思っている。それでも誰にも一番を譲る気はない。

 

「お兄様には私がいれば大丈夫です」

 

 瞳に強い光を宿しミレイに微笑む。兄としてのルルーシュにはナナリーが。

 

「あ~抜け駆け禁止!!ルルーシュにはあたしもついてるんだから♪」

 

 その瞳をまっすぐに捉え、ミレイはナナリーに微笑む。一人の男としてのルルーシュにはミレイが。

 

「そろそろラクシャータの姉さんからも連絡くるだろうし、ナナリーの足の事…ルルーシュにはまだ言わなくていいの?」

「そうですね、そろそろ驚かせてもいいかもしれませんね」

 

 そこでナナリーは少しだけ意地悪く微笑む。

 

「でも、もう少しだけ……独り占めしたいのかも」

「ふふふ、そうはさせないわ♪…覚悟してね」

「まあ怖い」

 

 そういってナナリーはキッチンを背にドアを開けた。ナナリーを追うように、キッチンに掛けていた腰をあげた。

 

 

 

エリア11総督のクロヴィスが殺害されたと報道されたのは、その翌日の事であった……。


 
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