No.172112

Phantasy Star Universe-L・O・V・E EP04

萌神さん

EP04【Mortal Combat】
SEGAのネトゲ、ファンタシースター・ユニバースの二次創作小説です(゚∀゚)

【前回の粗筋】

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2010-09-12 22:01:21 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:433   閲覧ユーザー数:430

グラール太陽系に存在する惑星の成層圏内を、旅客・貨物運送目的で使用される飛行機械『Gフライヤー』

パルムの東地区には民間や、ガーディアンズが所有するGフライヤーの発着場、フライヤーベースがある。

フライヤーベースのターミナルでアリアと合流したヘイゼル達は、ガーディアンズ隊員移送用のGフライヤーに搭乗し、目的のレリクス近くにある野営基地へと出発した。

移送先の野営基地は、以前ラフォン草原で大規模なSEED汚染があった際に、遂行された浄化作戦で、前線基地として同盟軍が設置した物を、作戦終了後に撤退した軍からガーディアンズが買い上げ、ミッションへ赴く際の中継地として使用されている物だ。

今回、ヘイゼル達が受諾したミッションはラフォン草原にある、先史文明の遺跡群『レリクス』へ赴き、調査隊の障害となる原生生物、及び『スタティリア』を排除する物である。

野営基地で一夜を過ごした四人は、翌朝日の出と共に借り受けたジープに乗り込むと野営基地を後にした。悪路を進む事、約二時間あまり、一行は目的のレリクスへ到着した。

森林地帯の最奥、悠久の時の中、生い茂る樹林に埋もれ、その遺跡は存在した。

「これが……『レリクス』……ッスか」

ユエルが樹木に溶け込んだ、巨大なピラミッド状の構造物を眺め、感慨深そうに呟いた。

 

『レリクス』

 

人類がグラール太陽系に移住する以前、およそ一万年前に存在した先住民の文明の跡。

非常に高度な技術力を持ち、その力は先のSEEDとの大戦末期に利用されSEEDを封印した、三惑星に跨る巨大な封印装置を建造した事実を見ても明らかだ。

だが、その高度な化学力を持った文明は、SEEDによって滅んだとされている。現代の人類より遥かに進んだ文明を持っていた彼等も、SEEDの脅威には勝てなかったのだ。

それでも彼等の遺跡は、グラールに移り住んだ人類にとって、研究資料の宝庫とも言える貴重な物である。

ユエルはピラミッド状の構造物にそっと手を触れてみた。風化して表面は磨耗している部分もあるが、それは非常に頑丈な物質で、石で出来ているのか金属なのか、それすら彼女には理解できなかった。

「おーい! あったんだぜ!」

遺跡を調べていたビリーの声が上がる。三人がビリーの声があった場所へ集まると、彼は入り口と思われる場所に密生した植物の蔦を小剣(ダガー)で切り払っていた。

「―――と、こんな物か」

人が侵入できる位に蔦を取り去ると、ビリーは一息付き、額にうっすらと浮かんだ汗を拭う仕草を見せた。蔦に覆われていた内部へ続くトンネル状の通路が露となっている。地上にある建造物は古代人の遺跡の一部にしか過ぎない。本当に重要な彼等の遺跡は地下に拡がっているのだ。

四人はレリクス内部へと侵入した。

内部は温度・湿度共に快適な状況に保たれている。数千年の経過を経ても、遺跡内部の空調設備は生きて稼動しているのだ。内部の壁や天井を無尽に走る、基板の配線を思わせる物の上をフォトン粒子が走り、明滅する淡い光源が生物の鼓動のように脈動している。

同盟締結百周年記念式典の当日に起こった、外宇宙生命体 SEEDの襲来による一連の騒乱……。

その最中、只の『遺跡』であると考えられていた『レリクス』が突然稼動を始めたのだ。

一説にはSEED飛来が原因であると言われているが、本当の原因は解明されてはいない。

しかし、断言できる事がある。

レリクスは古代人が残した営為の跡などではなく、現在も生きて稼動している何らかの『施設』なのだ。

「相変わらず不気味よねえ……」

異様なレリクス内部の様子に、アリアはぶつぶつと不満を漏らしている。

「だが来た以上、仕事はして貰うぞ? それが嫌なら邪魔だ。野営基地まで帰れ」

ヘイゼルが冷たく言い放ち、レリクスの奥へ歩き始めた。

「嫌なんて言ってないじゃない! もう、待ってよ!」

アリアは慌ててヘイゼルの後を追った。

「さ、ユエルちゃん、俺達も行こうぜぇ!」

「は、はいッス!」

先に進む二人の後を追って、ビリーとユエルも歩き出した。

今回、彼等がやって来たレリクスは、数年前に一度大規模な調査が行われている。

その際に大掛かりな内部の掃討作戦が行われた経緯がある為、大きな危険は少ないと判断したビリーの読み通り、敵する原生生物も出現せず、一行は至って順調に奥へと進んでいた。

「こりゃ、何事も無く終わっちまいそうだ……読み通りとは言え、張り合いがないんだぜ」

ビリーがつまらなそうに鼻を鳴らした。既にブロックは二つ程経過しているが、敵性の姿は見受けられない。長い通路を抜け、区画を仕切る自動扉を潜ると、かなり広い空間に出た。

「……楽な仕事にこした事は無いが、そう甘くはなさそうだぞ、ビリー」

「あはーん?」

ヘイゼルが顎で広間の奥を指し示したので、ビリーは視線をそちらへ向けた。広間の隅の暗がりで、小さな黒い影が群れを成し蠢いていた。

大きさは人の半分ほどで腕は無いが、後脚が大きく発達している。人類の起源となる惑星にかつて存在していた、小型の肉食恐竜を思わせる姿のそれは、こちらの存在に気付いたらしく、奇妙な鳴き声を上げると迫って来た。

「バジラか!」

ヘイゼルが叫んだ。

『バジラ』と言うのが生物の個体名である。パルムに住む原生生物で通常地表に群棲しているが、稀に何処からかレリクス内部へ進入し繁殖しているケースもある。個体としては脅威ではないが、群棲し縄張り意識の強い習性があり、生活圏に侵入した他の生物には非常に攻撃的になる為、やっかいな生物だ。

「仕方ないが迎え撃つぜ。ヘイゼルは前へ出ろ! ユエルちゃんはヘイゼルの討ち漏らしを頼むぜ! アリアは二人のバックアップとテクニックの支援攻撃を!」

『了解!』ッスよ~!」

「OK! Let's Rock!」

ビリーの指示に従い、それぞれが行動を開始する。意外な事かもしれないが、このパーティーの司令塔は彼なのだ。

「発動!」

アリアから肉体機能を高め、シールドラインのフォトン反発力を上げる効果を持つ補助テクニックの支援を受け、ヘイゼルがバジラの群れに突っ込んで行く。ヘイゼルの両手にフォトン粒子が輝くと、ナノトランサーから転移した片手持ち剣が出現する。刃幅が厚いフォトンの片刃を持つ、GRM社製の『デスダンサー』と呼ばれる双片手剣(ツインセイバー)だ。

「おおおぉぉっ!」

右手の剣を突き出すとリアクターからフォトン粒子がほとばしった。噴出す粒子を推進力にして敵陣に斬り込む。密集していたバジラに囲まれる形で足を止めたヘイゼルにバジラは襲い掛かった。デスダンサーのリアクターが再びフォトン粒子を噴き出す。フォトンの力で通常では有り得ない程の跳躍で空中へ逃れたヘイゼルは、空中で身体を反転させ、両手の剣を頭上に掲げるとフォトン粒子の推進力で身体を回転させながら降下し、ヘイゼルを襲撃する為、真下に集まっていたバジラの群れを一掃した。

ヘイゼルの攻撃を逃れていた数体のバジラがユエルに迫る。

「あ、あんまり近づいて来ないで欲しいッスよ~!」

ユエルは弱気な叫び声を上げながら鞭(フォトンウィップ)を振るっている。攻撃に精彩は欠くが、バジラは不規則な鞭の軌道に阻まれユエルに近づけないでいた。しかし、その内の一匹が鞭の攻撃を掻い潜り、ユエルに襲い掛かる。

「ひっ!」

悲鳴を上げるユエルの目の前で、飛び掛ろうとしていたバジラの頭部に風穴が開けられた。驚いて振り向くと、後方でビリーが銃身の黒いGRM社製の狙撃銃(ライフル)『バースト』を構えていた。

「あ、ありがとうッスよ~」

助けられた礼を言うユエルにビリーはウィンクして答えた。

「良いって事なんだぜ。バックアップは俺達に任せて、ユエルちゃんはもっと前に出ちゃうと良いんだぜ」

のんびりと話している間にも、ビリーのライフルは次々とバジラを捉えていく。簡単に作業をこなしている様に見えるが、彼の射撃センスは半端ではない。

「さあ、ヘイゼルの援護を」

ビリーの言葉にハッとなり、ユエルはヘイゼルに目を向けると、彼は多数のバジラに囲まれ苦戦していた。

「うわわっ! 今、援護に行くッスよ~!」

慌ててユエルはヘイゼルの元へ向かって行った。

「遅いわよ! 前衛(フォワード)なんだから、ちゃんと仕事しなさいよ!」

「す、すみませんッスよ~」

ヘイゼルの危機に、フォーメーションのセンターまで上がって来ていたアリアから叱責が飛ぶ。

アリアはテクニック発動デバイス。優美なフォルムを持つ、ヨウメイ社製の長杖(ロッド)『ハウジロドウ』を手に、バジラの反属性『氷』系の単体攻撃用法撃術『バータ』を発動しバジラを牽制していた。

『アリア・イサリビ』

苗字が表すように彼女はニューデイズ出身で、ニューマンの父とヒューマンの母から生まれた混血児である。容姿はヒューマンであるが、ニューマンの資質を受け継いでおり、法術を行使する上で重要な彼女の精神力は、一般のヒューマンより高い数値を示していた。

「アリア! 突出しすぎなんだぜ!」

「解ってる!」

ビリーの指示がアリアの耳に飛び込んでくる。

(解ってはいる……けど……)

生まれのアドバンテージで高いテクターの資質を持つ筈のアリアの法撃は、バジラに致命傷を与えられていなかった。

回復テクニックの『レスタ』も後方からでは対象に届かない事もある。

経験不足による法術制御の未熟さ……彼女は発展途上のテクターなのだ。

四人の連携でバジラは次々と数を減らして行く。

「こいつらで……終わり……か?」

動いている二匹のバジラを見てヘイゼルが問う。流石の彼も息が上がっていた。

「ハァハァ……リアクターの……PP……もう無いわよ……」

アリアがロッドのPP残量(テクニック発動の際に消費される、デバイスのリアクターに装填されたフォトンエネルギーの事)を確認して泣き言を言う。

「ヘ、ヘイゼルさん! あ……あれを見て下さいッスよ!」

突然のユエルの声に彼女が指し示す方向に目を向けると、広間の奥にある別の階層へ繋がる階段から、戦闘の騒ぎを聞きつけたのか別のバジラの群れが降りて来ていた。

「そん……な!?」

その様子を見たアリアが呆然とする。そんな彼女とは対照的に、ビリーが不敵な笑みを浮かべて言った。

「良いねぇ、どうせ殲滅が目的だ。派手にいこうぜぇぇぇぇ!」

大挙として迫るバジラの群れに混じり、突然大きな影がヘイゼル目掛けて飛び掛かって来た。

「な……ッ!? このっ!」

ヘイゼルは辛うじて、その攻撃を交したが、気を取り直し攻撃に転じようとした時には、その影は後方に跳躍し間合いから逃れていた。

砂色の外皮を持ち、昆虫の『蚤』を酷く擬人化したような姿をした生物は、身体を小刻みに上下させ、襲い掛かるタイミングを伺っている。

「ゴルモロも混じってるぞ! ヘイゼル、ユエルちゃん気を付けろ!」

ビリーが大声で二人に注意を促す。

ゴルモロは二足で歩く人型をしており、蟹に似た爪を武器とし、長いクチバシ状の口で他生物の体液を吸い糧とするパルムの原生生物だ。

「やっかいな奴等がッ!」

ヘイゼルが舌打ちする。

トリッキーで敏捷な動きと、一気に間合いを詰めてくる跳躍力が手強い相手である。ユエルが相手にするには荷が重い。

「ユエル!」

「は、はいッス!?」

突然、ヘイゼルに名を呼ばれ、ユエルは思わず肩を竦めた。

「バジラの相手は任せた。牽制で良い、後はビリーがやってくれる!」 

「ヘ、ヘイゼルさんはどうするッスか!?」

「ゴルモロは俺が殺る!」

「そんな、手強そうッスよ? 一人じゃ無茶ッスってば!?」

「足手まといは黙って従っていれば良い! やるぞッ!」

「ヘイゼルさーん!」

ユエルの制止に耳を貸さず、ヘイゼルはゴルモロに向かって行く。

「ちょっと、ヘイゼル!? 私はどうすれば……」

アリアもヘイゼルの身を案じたが、悔しい事に彼女のロッドのPPは尽きかけており、援護も思うようにならない状況だ。

「アリア、これを使え!」

ビリーの声に反応し、アリアが顔を向けると、ビリーがアリアに向けて何かを投げてよこした。アリアは突然投げ渡された、それを何とか右手でキャッチする。片手に収まる位の大きさの物体。右手を開き中身を確認すると、それはフォトンリアクターのPPを再充填する為のカートリッジ、『フォトンチャージ』のシリンダーパックだった。

「有り難う、ビリー!」

アリアはビリーに感謝すると、急ぎロッドのシリンダーパックを交換を行う。

これでヘイゼルの援護に行ける!

「ユエルちゃん、奴が心配なのは解るが、バジラの数を減らす事が重要なんだぜ。ここは奴に任せようぜ!」

ユエルはビリーの言葉に僅かに迷った後、心を決めた。

「解ったッス。急いでバジラをやっつけて、ヘイゼルさんを助けに行くッスよ!」

ユエルの言葉にビリーはニヤリと笑みを浮かべた。

「上等、じゃあ始めようぜ!」

 

ヘイゼルは単身でゴルモロに斬りつけたが、正直すぎる剣の軌道は、ゴルモロに難なく避けられた。

カウンターで返された大きな爪の突きを交差した剣で受け止め、鍔迫り合いとなるが、横から別のゴルモロが飛び掛かって来た。

「無粋な、所詮は下等な獣かよッ!」

ヘイゼルが無茶な文句をつける。所詮動物並みの知能しかない原生生物である。一対一(タイマン)の心意気を理解できる筈も無い。

ヘイゼルは闖入者の攻撃を転がって避けるが、そこへ最初のゴルモロが飛び掛って来る。更に床を転がって避けるが、今度は二体目のゴルモロが飛び掛る。更に床を転がって避けると、またゴルモロが……。

(切りがない! このままではいずれ追いつかれる!?)

焦り始めるヘイゼルだったが、追撃するゴルモロの足を、床に着弾したフォトンの光弾が止めた。

「このーっ!」

ソプラノの高い声を上げ、アリアが追撃のテクニック、バータを放つ。床を這うように直進する氷結のエネルギーを二体のゴルモロはサイドステップで交わしていた。

その隙にヘイゼルは起き上がり、剣を構える。好機を逃したゴルモロは、それ以上追撃をせず、睨みあいとなった。

「無理するなヘイゼル! 一人で何が出来る!」

ゴルモロの足を止める光弾を放ったビリーがヘイゼルに向かって叫ぶ。

「くっ!」

ヘイゼルは歯噛みした。

ビリーはユエルを守り、バジラを相手にしながら戦っていると言うのに、俺は……ッ!

ヘイゼルの苦悩をよそにゴルモロが攻撃を仕掛ける。やはりゴルモロの動きは速く、跳躍し飛び掛ってくる攻撃に対し、反応して避ける事が困難だ。

(ならば、一旦受け止める!)

ヘイゼルは剣で受け止め防御し、反撃に転じようとしたが、ゴルモロが尖った口先を突き出して来る方が早かった。

「なっ!?」

ヘイゼルは直前で顔を反らし避けたが、左頬を鋭いクチバシが掠め浅い傷が走る。

原生生物を相手に遅れを取る……。

(この程度か……俺の力は……ッ!)

繊細さにおいてキャスト並み、大胆さにおいてキャスト以上と言われた射撃センスを持つビリー・G・フォーム……。

成長途上にあるが、生まれついて高い法撃力を持ち、いずれ優秀なガーディアンに成長するであろうアリア・イサリビ……。

そんな仲間達に比べて、ヘイゼルには優れた面が無かった。

訓練生時代、天才(技術は)と言われたビリーに比べ、戦技評価も中の上と高くはなかったヘイゼル。

特別才能がある訳じゃない……俺だけが何も無い……だから俺は……俺には!

 

勝つ為の手段は選べないッ!

 

「おおおおぉぉっ!」

ヘイゼルは右手に握ったデスダンサーの柄尻で、組み合うゴルモロの顔面を殴りつけた。骨を砕く感触。左目を潰されたゴルモロが甲高い絶叫を上げる。ナノトランサーから左手にGRM社製ハンドガン『レイガン』を転送すると、右手の剣を放り投げ、逃れようと後退りしかけたゴルモロの首を押さえつけた。レイガンの銃口をゴルモロの腹部に押し当て、引き金を引く。ゴルモロが苦悶の悲鳴を上げるが無理矢理に押さえつけ、四度目の引き金を引くと、ゴルモロの身体から抵抗する力が抜けた。察したヘイゼルが全体重を乗せて身体を捻ると、ゴキリと言う鈍い音がする。そのままゴルモロの身体を仰向けに倒すと、痙攣しているゴルモロの喉元に渾身の力をこめた踵を落とし踏み付けた。果実を踏み潰したような水っぽい感触が足に伝わり、ゴルモロの身体が一瞬大きく跳ねて、動かなくなった。

ヘイゼルの鬼気迫る戦い方に本能的な恐れを感じたのか、もう一匹のゴルモロが躊躇している。

だが―――。

「その躊躇いは命取りなんだぜ!」

「命取りッス!」

ビリーが手にするバレル長い双短銃(ツインハンドガン)『アルブ・ボア』の速射と、ユエルの操るウィップの連撃が残る一体に止めを刺し、戦闘は終了した。

「ヘイゼルさ……ん……?」

ヘイゼルに駆け寄ろうとしたユエルは違和感に足を止めた。彼は釣りあがった凶暴な双眸で周囲を油断無く見渡している。どこか近寄り難い怖ろしい印象を受けた。

「ヘイゼル」

穏やかに呼びかけるビリーの声に、ヘイゼルはハッと我に返る。ヘイゼルは肩から力を抜き大きく息を吐く。全身から凶暴性が消えていくのをユエルは感じていた。

「相変わらず無茶苦茶だな……ハンターが武器を捨ててどうすんだぜ?」

ビリーはヘイゼルが投げ捨てたデスダンサーの片方を拾い、彼に手渡した。

「……言われなくても解ってる」

ビリーから手渡された剣をヘイゼルは乱暴に受け取ると、ナノトランサーに収めた。いつもの調子のヘイゼルに安心したのか、ユエルとアリアも二人に近づいて行く。

「とりあえず危険は無くなったな。情報が合ってれば、コイツ等が降りてきた上の階層に、フォトンチャージャーがある筈だ。補給と休憩にするとしようぜ」

ビリーがビジフォンのレーダーに動体反応が無い事を確認すると、事前に入手していたレリクス内部のマップと照らし合わせて指示を出す。

「解ったわ……ん? ヘイゼル、頬に傷が……」

ビリーの言葉に頷き、ヘイゼルの顔に目を向けたアリアが、彼が先程の戦闘で負った頬の傷に気付き、そっと触れようとする、その手をヘイゼルは乱暴に払い除けた。

「あ……」

「触るな! ……掠り傷だ」

背中を向け歩き出すヘイゼルの後姿を、寂しそうに見送るアリアの肩に、ビリーはそっと手を置き「気にするな、いつもの事何だぜ」と声を掛ける。

「解ってる……うん、解ってるよ……」

アリアはビリーの気遣いに感謝しながら、消え入りそうな声で呟いた。

「ヘイゼルさん……」

三人の様子を見ていたユエルは、ヘイゼルの背中に視線を移し、見つめながら改めて感じていた。

それは、助けてくれた礼を言った時に、彼の背中に感じた孤独と拒絶。

(私は……ヘイゼルさんの心を全然解ってはいないッスね……。まだ、何も……)

だからこそユエルは知りたいと感じ始めていた。

(貴方の事を―――)

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

ヘイゼルはアリアの好意的な態度を拒絶し、冷たく返した事を後悔しながらも謝る事は出来なかった。

(望んでガーディアンズになった訳じゃない筈なのに……何故、こんなにも苛立つのか……いや、解っている)

才能と言う力に対する劣等感。

それを嫉妬と呼ぶ事に、ヘイゼルは気付いていた。


 
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