No.170695

星河天花~願いを星に 君に花火を~

黒助さん

七夕+魏ルートアフター。
久々に描いたせいでかなりくだくだ。
最後まで読んでくれた人に感謝感激感無量の言葉を。

2010-09-05 23:42:35 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:2800   閲覧ユーザー数:2479

 

 

 

 

どこまでも青い空と、果てのない荒野に人影がぽつりとひとつ。

 

さて、どうしようかと人影は思う。

 

思い、考え、悩み。

 

しばらくした後、まぁいいか、と呟いた。

 

目的のほとんどは達成できたのだ。

 

あとは運と時間の問題だ。

 

足を進めれば、いずれたどり着く。

 

 

 

 

 

―――さてさて、それでは始めの一歩を。

 

―――いつかの元へ帰りに行こう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――この数ヵ月後、彼女が賭けの対象になるなんて誰が想像できただろうか。

 

 

 

 

何かを隠していることは明白だった。

誰が、というと、全員が、だ。

蜀呉はもちろん、自分の臣下である魏の武将文官すら、自分に何か隠し事をしている。

問おうとも煙に巻かれ、口を割りそうなものには大抵誰かが付いている。

何とか口を割らせ、色々吐かせたものの、根本的な解決には至らず。

我慢も限界に達しそうだった今日この頃。

目の前にいる愉快主義者をとっ捕まえることに成功したのは僥倖だった。

 

「で、いい加減なにをたくらんでいるのか教えてくれないかしら?」

 

ここ数日の間にたまったいらつきを、鋭い視線と言葉に乗せて投げつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

太陽が日に日に自重をやめ、熱と日差しを強めていく夏の初め頃。

現在ここ建業で開かれている三国会議が中盤に差し掛かった今日、

冥琳の目を掻い潜ることに成功したあたりまではよかった。

そう、そこまではよかったのだ。

問題はその後。

―――城を抜け出そうとしたところを華琳に見つかったのである。

そこから先は語るまでもない。

というか思い出したくない、怖くて。

今も現在進行形で怖い華琳に連れられやってきたのは城の一角にある東屋だ。

雪蓮としてはもっと人眼のつかぬような―――某大都督や妹にみつからないところがよかったが、

そんなことを華琳が聞き入れてくれるはずもなく。

こうして東屋で尋問されているというわけである。

こんなことになるなら仕事抜け出すんじゃなかったと思いながら、雪蓮は口を開いた。

 

「何のことか、さっぱりわからないんだけど」

 

いまの華琳を前に、平静通りに返答できた自分を褒めてほしい。

あとで自分に対するご褒美として酒を飲もう。そうしよう。

口は笑みの形になっているが、目は一切笑っておらず、殺気がにじみ出ている。

どうやらよほどいらついているらしい。

 

(まぁ、気持ちはわかるけど)

 

私ならとっくに切れて誰か脅してるだろうな~、と雪蓮は思った。

何せ自分一人を除けものにして、皆で何かをかくしているのだ。

不愉快にならない筈がない。

 

(ごめんなさいね、華琳)

 

一応、心の中で形だけの謝罪をしておいた。

 

「へぇ、そう。あくまでしらを切るつもりなの」

「しらを切るも何も、知らないっていってるじゃない」

 

疑りぶかいはねぇ。唇を尖らせ、拗ねたように言った。

 

「あなたが計画し、それを無理やり実行。最初は呉だけでやる予定だったけど、人数がおもったように集まらなかったから

魏と蜀も巻き込むことにした」

 

 一息、

 

「そう聞いたのだけど、間違っているのかしら、首謀者さん?」

 

(うわぁ・・・・・・)

 

どうしよう。ほとんどばれてる。雪蓮は表情が変わらないよう、神経を使いながら、これからどうすれば良いのか考える。

―――実を言えば、ばれてしまうのは想定内だった。

あの華琳命でバカな春蘭や、乗り気ではなかった者もいるのだ。

そう長い間、計画の全貌を隠し通せるなどと思ってはいなかった。

しかし、これは早すぎる。

やはり人と金の集まりが悪いからと言って、蜀はともかく、魏までまきこんだのが失敗だったか。

まぁいい。後悔と反省と計画の変更は後にしよう。

掛け金と倍率はいくらか変動するだろうが、すべてが泡になることを考えると遥かにましだ。

現状で最優先すべきは、華琳をどうにかすることで―――

 

(・・・・・あれ?)

 

そこで、雪蓮はようやく気がついた。

いつのまにか、絶対零度の微笑みは、いぶかしげな表情に取って代わられていたのだった。

華琳の視線はすでに自分のほうに向いてない。

視線は自分の右斜め後ろの方向へ。

華琳が見ているのと同じ方向に、雪蓮は視線を走らした。

そこにいたのは、一組の男女。

小さい背にふわりとした金髪。手に飴を、頭に人形を乗せた少女―――風だ。

彼女と共にこちらへ歩いてきたのは―――

 

「あら、郭泉じゃない」

 

雪蓮に追い打ちをかけようと、口を開いた時だった。

 

(あれは・・・・・)

 

こちらに歩いてくる二つの人影が目に入った。

一人は風だ。彼女だけなら、華琳も口を閉ざしはしなかっただろう。

そう、問題なのは風の隣を歩いている男だ。

黒の長衣に、髭を生やした男。

見た瞬間、心がざわめいた。

知っている―――けれど、知らない

見たことがある―――だが、見たことはない。

おかしい。

この男とは、初めて会うはずだ。

郭泉という名前にも聞き覚えはない。

なのに、華琳の中の何かは言う。

知っていると。

見たことがあると。

 

「・・・・・・?」

 

自然、眉間にしわがより、目が細められる。

思考を廻す、廻す、廻す。

けれど、明確な答えは出ず、違和感のみが頭の中に沈殿する。溜まっていく。

――― ふと浮かんだ白い人影。それを、ありえないと否定した。

 

「あら、郭泉じゃない」

 

雪蓮のその声で、華琳は袋小路になっていた思考から抜け出した。

いつの間にか、二人は自分たちからそう離れていない場所まで来ていた。

 

「『あら、郭泉じゃない』じゃないです、雪蓮様。冥琳様が探しておられましたよ。至急、御戻りください」

「え~、面倒くさ―――」

「冥琳様に昼間から酒を飲んでいたとご報告してよろしいのですね」

「じ、冗談よ、じょーだん。さ、行きましょ」

 

慌てて立ち上がる雪蓮。

 

「ちょ、雪蓮!さっきの質問ぐらいは・・・」

 

答えなさい、と華琳が言い終わるより早く、

 

「ごめんね~華琳、またあとでね♪」

 

そう言って、雪蓮は郭泉という男の手を引っ掴み、走り去って行った。

一瞬、追いかけようかとも思ったが、やめる。そうまでして聞きくような事でもないし、何より、

 

「風」

「はいは~い、なんでしょうか、華琳様」

 

別に聞きたいことができた。

こちらを見つめる彼女に華琳は問いかける。

 

「あの男、なんなの」

「そう聞かれましても、風には答えられません」

 

華琳様は、

 

「どういう意味で聞いているんですか?」

 

風は言う。

 

「どういう人柄なのか?能力はどれほどか?雪蓮様たちが真名を許すほどの人なのか?」

 

違いますよね。自分の言葉を自ら否定。

確かに、華琳が聞きたいことはそんなことではない。

風の顔。そこに喜色

 

「華琳様が聞きたいのは――――――」

 

風が吹き、木々がざわめく。木々の喧騒の中、風が告げた言葉に華琳は

 

「私の」

 

一拍の呼吸の後、答えた。

 

「私の考えてることが、よく分かったわね」

「いえいえー。たまたまですよ、たまたま」

 

何が嬉しいのか、風は笑った―――笑ったまま、

 

「今夜、城の中庭・・・そうですね、笹を置いてあるところに来てください」

 

―――そこに行けば、すべて分かります。皆が何を隠しているのか、華琳様が今抱いている疑問も、すべて。

 

「今教えてくれてもいいのよ、風」

「いやー、風では役不足なんで勘弁してください。大体他の人たちと違って色々お教えしたんですから、いいじゃないですかー」

「・・・確かにそうね。自分から何も言わない子たちと違って、風はとてもいい子ね」

 

そう言って、華琳は風と同じように笑ったのだった。

 

 

 

それから数刻後、空が紅から宵の口に染まろうとする頃。

とある料亭で打ち合わせが行われていた。

 

「とりあえず風はちゃんと華琳様に例の場所に行くように言えましたけど、稟ちゃんのほうは上手くいきましたかー?」

「ええ、必ず行くよう言ったから大丈夫だと思うわ」

「そうですかー」

「人払いに機材の準備も終ったわ。だけど・・・」

 

個室には料理の乗った円卓が一つに椅子が二つ。

本来なら全員で最後の打ち合わせをしたかったのだが、誰かに気付かれては元も子もない。

なので少人数にばらけて最終確認及び前祝いをしているのだ。

 

「・・・本当に良かったんでしょうか?こんなことをして」

「いいんじゃないんですかー。たまたま華琳様がいる場所にお兄さんが通るわけですし」

「そうだぜ嬢ちゃん、偶然だ偶然」

「・・・そう言えばそうですが」

 

しかし、

 

「よく、一目で見破りましたね」

「見破ったというより、重なって見えたといったほうが正しいと思いますよー」

 

その言葉に稟は、

 

「それを、気付いたと解釈するのはどうかと思うのだけど」

「向こうだってずるしてるんだから、これくらいいいんですよ」

 

あれは変装ではなく変身だろう。

やりすぎにもほどがある。

それに、と風は言葉を繋げた。

 

「いい加減にしないと、華琳様が切れそうですし」

 

まぁ、とりあえず、この話はこれくらいにして、

 

「華琳様たちの再会を祝してー」

 

掲げられた杯に、稟も酒の入ったそれを上げ、

 

『乾杯』

 

 

 

 

 

―――場所も時間も違うが、その日、再会を祝う多くの声があった。

 

―――彼女らが敬愛する主と帰ってきた彼が出会うまで、もう少し。

 

 

 

地平に太陽が沈み、星月が夜闇を淡く照らしつける中。

華琳は風に言われた通り、城の中庭―――そこに置かれている笹の前にいた。

それには、以前宴の席で自分が言ったのと同じように、願い事を書いた短冊がくくりつけられている。

 

「・・・・・・」

 

それを、なんとなく見上げる。

あれから、四年経った。

自分が蜀と呉に打ち勝ち、けれど二国を支配しないことを告げ。

そして―――北郷一刀が消えた日から。

あと数か月もすれば、五年になる。

 

「ほんと・・・」

 

私らしくもない。自重気味に呟いた。

薄れてきた姿。

掠れていく声。

全てがゆっくりと、しかし確実に風化していく。

感情は言葉の羅列に。

思い出は記憶に成り下がり。

そうして最後、自分は――― 一刀の事を思い出しても何も思わなくなるのではないか。

―――そんな、いつ起こりうるのかも、起こるかどうかも知れないことがふと脳裏に浮かび、恐怖した。

あの覇王が、曹猛徳が、心の底から。

・・・だから、なのだろう。

いつか一刀から聞いたことを、時折こうして再現するのは。

目に見える形であれば、忘れることはないから。

曖昧になってきたものを、再び刻み込むために。

 

「それにしても・・・」

 

誰もいない。誰も来ない。

ここにはただ静寂のみが降り積もる。

風の言を疑う気はないが、本当に、こんな場所に答えがあるのだろうか。

 

(暇ね)

 

ああ暇だ、本当に。

時間を潰せる様なものなどここには―――あった。

目の前の短冊。

かなりの量があるから時間を潰すにはもってこいだろう。

それに全員自分に対して隠し事をしているのだ。

仕返しにこれくらいはしてもいいはず。

うまくいけば、からかえるネタも手に入れられる。

思い立ったが吉日。

とりあえず、手近なものを読んでみた。

 

「なになに・・・」

 

―――巨乳人と華琳様に群がる連中が撲滅しますように  筍彧 

 

無言で戻した。さすがに反応に困る。あとで貧乳には貧乳の価値があると教育しよう。

次。

 

―――今年こそ■■■■■■ 郭嘉

 

読めたのはそこまでだった。あとは血で染まっている。

おそらく書いてる途中にでも妄想して鼻血を吹きだしたのだろう。

次。

 

―――蓮華様が幸せになりますよう 甘寧

 

さすが思春。彼女らしいものだ。うちの子たちもこの真面目さを少しは見習ってもいいのではないだろうか。

次。

 

―――胸がもっと大きくなりますように 諸葛亮

 

気持ちはわかるが必要なのは神頼みではなく、努力だろう。

というか、あの年だったら許容範囲だと思うのだが。

次。

 

―――にいちゃんが帰ってきますように。 許緒

 

それはおそらく、一番実現できるかわからない―――真実神頼みするしかないものだった。

そういえば、七夕の短冊にはどんなに無茶苦茶なことでも書いていいんだと、一刀も言っていたのを思い出す。

言った張本人はここに居らず、彼がいたことが名残として残っている。

 

「・・・・・・」

 

上を仰ぎ見た。

空に架かる星の川。

 

「ねぇ、一刀」

 

久々に彼の名前を口にする

彼は今どこにいるのだろうか。

あのまま消えたか。

それとも天へと帰ったのだろうか。

何度も思い考えたことを、また思う。

大局に抗い、歴史を変え、その代償としてここから去って行った天の御使い。

以前、一刀から聞いた―――織姫と彦星の話を思い出した。

結婚してから働くなり、それが天帝を怒らせ、結果二人は離れ離れになってしまったらしい。

少しだけ、似ていると思った。

天帝によって引き裂かれた彼らと、歴史によって引き裂かれた自分たち。

周りを見た。誰もいない。

短冊に書けなかった願い事。

それをそっと、風に聞こえぬように、夜闇に伝わらぬように。

けれど様々なものを乗せ、呟いた。

 

「いい加減―――帰ってきなさいよ、バカ」

 

それは、ずっとずっと思っていたことで。

願おうにも理性が無理だと言い続けた、たった一つの願い事。

心にある大きな空白。決して埋まらないそれを思う。

好きだった。愛していた―――違う、今も、そしてこれからも愛している。

は、と小さく息を吐きだし、心の中で震える何かを抱きしめた。

言いたかった言葉があった。

告げたかった思いがあった。

それらはいつか。いつか、告げればいいと、そう思っていた。

 

―――けれど、そんないつかはもう来ない。

 

全ては、遠いあの日に終わっていて。

全ては、気付いた時にはもう遅くて。

全てはもう―――手の届かない、向こう側へといってしまった。

悲しみも、嘆きも、何もかも―――。

今では色あせ、溢れだすことはなくなったけれど。

それでも、時折、どうしようもないくらいに、

 

―――寂しいと、そう想う。

 

 

 

 

どれくらい時間が過ぎたのだろうか。

短冊はすべて読み終わり、本当に暇になってしまった。

いらだちが積もりに積もる。

ここ数日の間にたまったものを加えると、ちょっとしたことでも爆発しそうだ。

時間を聞かなかった自分も悪いかもしれないが、此処まで待たせる相手も相手だと華琳は思う。

帰ろうか、という言葉が頭に浮かんだ時だった。

 

 

「華琳」

 

声。

男の、声だ。

嘘ともありえない、とも思った。

それは、彼の声で。

それは、失われたはずのもので。

それは、聞きたくて、聞きたくて聞きたくて、たまらなかったもので―――。

華琳は、ゆっくりと、後ろを向いた。

 

「かず・・・と」

 

そこにいたのは、黒衣に身を包んだ一人の青年だった。

見間違えるはずはない。絶対に。

ずっとずっと、想っていたのだから。

微笑みながらこちらを見ている彼に華琳は駆け寄り、

 

「一刀・・・・・・っ!」

「華琳・・・・・・っ!」

 

とりあえず、殴っておいた。

 

 

 

 

 

 

人生何が起こるか分からないというが、まさしくその通りである。

感動の再会をまさかグーパンチで砕かれるとは。さすがは華琳とでも言えばいいのだろうか。

一刀としてはあのまま抱きしめあうと思っていたため、ダメージは2倍だ、いろんな意味で。

クロスカウンター気味にこちらの頬を貫いた本人は現在、泣きながら尻餅をついている自分に抱きついている。

「あの、華琳」

おそるおそる名前を呼ぶと、涙を流しながらこちらを睨んできた。

 

「・・・・何よ」

「いや、離してくれないかな~、と」

「嫌よ」

 

却下されてしまった。

「嫌って・・・・・・」

「何よ、文句ある?」

「文句はないけどさ・・・・」

 

耳に届いた音に、一刀はいったん言葉を切り、夜空を見た。

 

「花火、見にくいだろ」

 

一刀には見なれた夏の風物詩、華琳には見たことのない、空に咲く光の花がそこにあった。

咲き誇り、しかしわずかな時間で散ってしまう花々。

 

「前に話したろ、お祭りの時打ち上げるって」

「・・・・ああ、そう言えば言ってたわね」

 

だけど、

 

「こんなに綺麗なものだとは思わなかったわ」

「そう思ったなら、後で真桜を褒めてやってくれ。

あいつ、今日のために徹夜で作ってたからさ」

 

今朝花火が完成してから寝続けている真桜を思い、一刀は小さく笑った。

本当に俺は人に恵まれてるなと、そう思いながら。

華琳は、そうね、と返事をした後、無言で花火を見続ける。

花火の量はそう多くない。

時間が無かったのもあるが、火薬は高価なものだからだ。

六発目。最後の花火が終わり、夜空は静寂を取り戻す。

静かだった。

華琳は相変わらず上を向いたままで、一刀はそんな華琳を見続けている。

自分に抱きついている少女。

最後に見たときよりも、当たり前だが、成長している。

 

(四年、か)

 

以前よりも近くなった距離と、より綺麗になった顔立ちを見て、再び思う。

帰りたくて、だけど帰れなくて。

夢を見るたびに涙した。

だから―――何もかも全力で頑張った。

深い眠りなら、夢を見ることもなかったから。

そうして過ごした四年間。

高校を出て、大学に入り、そして、

 

―――本当にいいの、ご主人様。この世界にはもう・・・・

 

思いだした言葉と選択。

帰れば、もう帰れない。

帰らなければ、もう帰ることはできない。

未練は、確かにある。

それは家族のことだったり、友人たちのことだったりする。

けれどそれはどちらを選んでも同じことだ。

考えて、悩んで、選んで、ここにいる。

今は今。

いつかするかもしれない後悔を思うより、目の前にある当たり前(幸せ)を喜ぼう。

皆がいて、触れられ、話すことができる―――そんな、ありふれた特別を。

 

 

 

 

 

星だけになった夜空。

それをしばらく見つめた後、華琳は口を開いた。

 

「いつ・・・・」

「うん?」

「いつ、帰ってきたの?」

「・・・二か月前。ここの近くに落ちてさ、その後雪蓮たちに拾われて」

一息

 

「・・・・・・何をみんなで隠してたか、知ってる?」

「いいえ」

「 賭けしてたんだよ。みんなで変装した俺に華琳が気付くかどうかで」

 

だけど、

 

「何がどうなったのか、賭けの内容を知ったうちのほぼ全員が、

いつの間にか、俺と華琳を感動的に再会させようの会なんてものを作っててさ」

 

名前そのまますぎだよなと、苦笑と言うには苦味の少ない笑みを浮かべ、

 

「途中から呉と蜀の人たちも協力してくれてさ」

 

純粋に賭けをしてたのはたったの数人で、その数人もある程度のことは知っていて。

何も知らなかったのは、雪蓮と演技ができない数人だけということらしい。

 

「昼間の男、貴方よね」

「・・・ああ」

「そう」

「怒らないんだな」

「何言ってるの。後で全員怒るに決まってるでしょ」

ただ今は、

 

「こうしていたいの」

 

そう言って、華琳は温もりにより身を寄せる。

もう感じれないと思っていた温もりを、もっと感じるために。

 

「・・・・・・」

「何よ、その眼は」

「いや、その・・・・」

 

言い淀む一刀に華琳は言った。

「別に、たまには素直になろうって思っただけよ」

 

離れてから、分かったこと。

失ってから、気付いたこと。

言いたかった言葉と告げたかった思い。

それを全て口にするのは無理だから―――。

少しだけ、彼に対して素直になろう。甘えてみようと、そう思った。

言葉にしてみれば、それだけのことである。

 

「・・・・そっか」

 

一刀は一言、そう言った後で、

 

「あのさ華琳」

「何なの 、今度は」

「また 、一緒にいっても―――」

「駄目よ」

 

一刀が言い終わる前に、華琳は返事を返した。

拒絶の言葉で眼に涙を浮かべた一刀に、華琳は、

 

「だって、また居なくなられたら嫌だもの」

 

くすりと笑い、

 

「何があっても、離さないわ、一刀。だからずっと、私の傍にいなさい」

そう言って、顔を寄せ、

 

「―――愛してるわ、一刀」

 

四年ぶりの、口づけを交わした。

 

 

オ・マ・ケ

 

華琳と一刀が再会している頃。

雪蓮の自室にて。

 

「雪蓮さん、はいどうぞ」

 

差し出された一枚の紙。

それを受け取り、読んだ雪蓮の表情が凍った。

 

「・・・ねぇ、風?これって冗談・・・・・・」

「本当に決まってるじゃないですかー。安心してください、冥琳さんたちからも許可をもらっているんで」

 

雪蓮が受け取った紙。

そこにはこう書かれていた

 

『雪蓮様捕獲大作戦

   参加者  二名

   規定 武器は基本的に使用禁止

      中庭には立ち入り禁止

      騒ぐのも禁止

      雪蓮様は捕まった場合、華琳様に引き渡し

      万が一、雪蓮様が勝った場合は、賭け金独り占め、冥琳さんの説教なし』

    

「じゃあ、どういうことよこれ・・・・。風!説明しなさい!!」

「簡単ですよー。華琳様とお兄さんが今中庭にいるんで・・・」

「ちょ、ちょっと!なんで華琳と一刀が一緒に・・・」

「えーと、雪蓮さん。風はそこから説明してもいいんですが」

 

その時、扉の向こうから、大きな足音と

 

「雪蓮―――!!どこにいる!!」

 

「参加者、春蘭さまと秋蘭さまですよ?」

 

雪蓮は、窓から飛び下りた。

 

 

 

 

説教なしと賭け金総取りを目指して逃げる雪蓮。

追うのは、華琳に褒めてもらうのが目的の春蘭と、スットパー役の秋蘭。

勝利するのは、雪蓮か、それとも夏候姉妹か。

 

 

 

 

 

 

当然だが、続かない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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