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『舞い踊る季節の中で』 第80話

うたまるさん

『真・恋姫無双』明命√の二次創作のSSです。

訓練の敗北の罰として、
明命と思春は、一刀の要求する姿で三日間過ごさなくてはならなくなった。
そこで広げられる一刀達のドタバタ劇とは…………、

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2010-08-30 20:39:07 投稿 / 全16ページ    総閲覧数:18449   閲覧ユーザー数:11782

真・恋姫無双 二次創作小説 明命√

『 舞い踊る季節の中で 』 -群雄割拠編-

   第80話 ~ 温かな陽光の中、娘猫は踊る ~

 

 

(はじめに)

 キャラ崩壊や、セリフ間違いや、設定の違い、誤字脱字があると思いますが、温かい目で読んで下さると助

 かります。

 この話の一刀はチート性能です。 オリキャラがあります。 どうぞよろしくお願いします。

 

北郷一刀:

     姓 :北郷    名 :一刀   字 :なし    真名:なし(敢えて言うなら"一刀")

     武器:鉄扇(二つの鉄扇には、それぞれ"虚空"、"無風"と書かれている) & 普通の扇

       :鋼線(特殊繊維製)と対刃手袋

     得意:家事全般、舞踊(裏舞踊含む)、意匠を凝らした服の制作、天使の微笑み(本人は無自覚)

        気配り(乙女心以外)、超鈍感(乙女心に対してのみ)

        神の手のマッサージ(若い女性は危険です)、メイクアップアーティスト並みの化粧技術、

  (今後順次公開)

  最近の悩み:まいった。 俺って、こんな節操無しだったのか? 明命に翡翠、魅力的な二人を前に、

        当然と言えば当然なんだが、二人が俺に甘える度、二人に触れる度、そのついついアッチ

        の事を考えてしまう。 前は余裕…とは言えないが十分耐えられたと言うのに、二人の感

        触や匂いを知った今、あの時の感覚や、二人の嬌声がリアルに脳裏に浮かんでしまう。

        うぅ、耐えろ北郷一刀、幾ら二人と結ばれたからと言って、そんな無節操な事をするべき

        ではないっ。 二人が大切なのはこれからも同じだ。 だから明らかにそう言う雰囲気の

        時まで耐えるんだっ。

        とやっていたんだが、……それが裏目に出てしまった。……そのいったん始まると自分が

        制御できない。 その…二人を乱暴なまでに扱ってしまうと言うか、調子に乗ってしまう

        と言うか……押さえていた反動で二人を求めてしまう。 終わった後に、自分のやった事

        を反省し、二人に気を遣うようにしているのだが、何度も同じ過ちを繰り返してしまう。

        今の所、そんな俺を二人は許してくれているけど……これ、どうやったら御せれるのだろ

        うか……、

        

 

一刀視点:

 

 

「きゃーーーっ、可愛いぃぃーーーーっ♪」

「しっ・雪蓮様・ふにゃっ」

「この柔らかさと温かさといい、確かにこれはこれで最高よね♪

 ねぇ一刀、このままお持ち帰りしていいかしら?♪」

「駄ーー目っ、それより窒息させないようにしてくれよ」

「本当こういう時、大きいと邪魔よね。 でも、今はこの可愛さの前には関係ないわ♪」

 

俺の目の前では、もはや半狂乱した孫策が、明命を相手に抱きしめ。頬擦りをしまくっている。

うん、気持ちは分かる。

出来れば俺も混ざりたいが、それはそれで別の問題が出てくるので自重している。

明命が別に新しい服を着てきた訳では無い。

以前俺が服をプレゼントした時も、似たような事があったらしいが、

あいにく服そのものは、何時もの忍者服みたいな服だ。

ただ違うのは、明命の髪の色に合わせた、猫耳、尻尾、そしてデフォルメした肉球手袋をしている事だ。

 

明命達との合同訓練、その敗者である明命達に、墨で落書きする代わりに、明命にはこれを着けてすごしてもらう事にした。 以前及川の持ってきた写真集の中にあったのを、思い出しながら作った割に、中々良い出来だと思っている。 昨日帰ってから、勉強や舞いの稽古をそっちのけで、七乃と一緒に制作した甲斐があったな。

 

「そう言えば翡翠も、以前孫策にあれをやられたって言うけど」

「(つーん)」

「……えーと、いい加減、何で怒っているか教えて欲しいんですが…」

 

朝、明命の姿を見て、恥ずかしがる明命を余所に、

孫策まではいかなくても、それなりに猫耳姿の明命を撫で回していた翡翠だが、

何故か、その後から、俺に対して機嫌が悪い。

とりあえず理由が思い浮かばないので、こうして時折声を掛けているのだが、……今の所、戦果はない。

七乃は理由について気が付いているようだが、『少しは考えてくださいね~♪』と言って、教えてくれない。

何にしろ困った、頬を少し膨らませて拗ねた顔も可愛いけど、放って置く訳にもいかないし一体どうしたら……、

 

「……明命ちゃんばっかり」(ぼそっ)

「ん? なんか言った?」

「何でもありません」

 

プイッ

 

うーん、やっぱ女の娘の心は分からん。

俺が悩んでいると、黄蓋と陸遜がやってきて、

 

「おぉ、これは随分と可愛くなったものじゃのぉ」

「本当ですねぇ~、雪蓮様の後は、私が明命ちゃんを すりすり させていただきましょう♪」

「此れなら、一応晒し者になるだろ?」

「うむ、ちと意味が違うが、今回限りと言うのなら問題は無いのぉ」

「そうですねぇ、明命ちゃんが恥ずかしい思いをする事には違いありませんし、

 でも、猫好きの明命ちゃんも、まさか自分が猫になる日が来るとは、思っていなかったでしょうねぇ」

 

二人の言葉に、どうやら明命はあの恰好をしている間、猫のように すりすり されまくられそうだな。

まぁ、落書きよりはマシと思って諦めて欲しい。

 

 

 

 

「そう言えば思春の方は?」

「ああ、権殿が乗り気でのぉ、今頃、思春の慌てふためいている姿が目に浮かぶわ」

 

黄蓋は、そう言ってその様子を想像したのか、楽しそうに笑いだす。

本当、こう言う事を、素直に楽しめる人だよな。

色々困った所もあるけど、こういう所が兵達に好かれているんだろうなぁ。

 

ドタドタドタッ!

 

地面を響かすような足音、

彼女らしくないあり得ない出来事が、彼女の心中を現しているのがよく分かる。

……分かるんだが、何で怒るんだ?

 

「……貴様、これは、どういうつもりだっ!!」

 

何時もの如く、"鈴の音"を俺に突き付けてくる思春、

だけどその姿は、いつもの服装では無く、襟巻すらしていない。

 

「うん、良く似合っているよ」

 

と、その言葉が嘘でなく心からの言葉だと証明するように、俺は笑顔で"華やかな女官姿"の思春を迎える。

 

「……くっ、貴様は、またそんなへらへらした顔を」

「そんな顔を真っ赤にする程怒る事っ?

 それに、今その剣、何処から出したの?」

 

何故か今の段階で、何故かご立腹の思春に聞いてみるのだが、

 

「……蓮華様より、此れが、この間の訓練の罰だと聞いている。

 武人として敗れた以上、武人として晒されるのなら分かる。

 そ・それを、このような私に似合わぬ服で晒し者にしよう等と・」

「えっ、似合っているよ。 うん、何度見てもよく似合っていると思う。

 さすが蓮華、思春によく似合う服を選んだと思うよ」

「……き・貴様は、その様な事を、よくも恥ずかしげもなく」

「だって、本当の事だし」

 

何故思春が何故ここまで怒っているか分からず、とりあえず思春の問いに応えるように話していたら、

 

「良さぬか思春っ

 敗者は敗者らしく、勝者の言う事を黙って聞くものじゃ、 それでは甘興覇の名が泣くぞ。

 それとも思春、明命のような格好で三日間居たいと申すのかぇ? ワシはそれでも構わぬそぉ」

「……くっ、分かりました」

 

黄蓋の言葉に、思春は突き付けていた剣を納めてくれる。

こういう要所要所を、年長者らしく、良く見ているよな。

じっちゃんと比較するのはあまりにも失礼だけど、

豪快で、楽しくて、面倒見が良くて、いろいろ学ぶところがある人だと思う。

うん、せっかくだし、

 

「祭さん有難う御座います」

「お・おぅ、……ふふっ、これぐらい構わぬ」

 

預かっていた真名を、突然呼ばれた事に、

祭さんは何処かくすぐったそうに、笑みを浮かべてくれる。

 

 

 

 

「思春、着替え終わるなり、いきなり飛び出して行くから、びっくりしたわよ」

「蓮華様、申し訳ございません」

「それは別にいいわ。 一刀、こんな感じで良いわよね」

 

思春から大分遅れて来た蓮華が、自分の子供を自慢するように、

思春の女官姿を自信気に見せるように、思春の両肩に手を置く、

そんな蓮華の態度に、思春はどうしたらいいか分からない感じで、

照れているような、諦めたような、困ったような複雑な表情をしている。

 

「あら、明命も随分可愛い姿になったわね。

 姉様が終わったら、変わってもらおうかしら」

 

……うーん、こんな時だけ女同士の気軽さが羨ましくなる。

 

「それにしてもシャオが居たら、きっと今頃対抗しようとするでしょうね」

「尚香か、そう言えばここ数日見かけないけど、どうしたんだ?」

「一刀が気にする事では無いわ。 ただ張昭から出された課題を貯め込み過ぎてね。

 さすがに冥琳が黙っていられなくなって、終わるまで離れの屋敷から出ることを禁じられただけよ。

 もし抜け出したりしたら、一年間は、お小遣い抜きと言われているから、数日は出てこれないわね」

 

……こう言うのはどの世界でも共通なんだな……、

後で、差し入れ片手に、少し勉強を見てあげるか、なんて思っていると思春が、

 

「……そろそろ説明してもらおうか、

 似合う似合わぬは置いておき、これでは女が女の服を着ているだけ、何の罰にもならぬ」

「ああ、理由聞いてないんだ。

 確かに思春の言う通りなんだけど、罰なのは此処からで……」

 

俺は、思春にこの罰の目的を説明する。

ようは、思春に今日から、三日間女官らしく振舞ってもらう。

思ったのは切っ掛けは、孫呉独立の戦勝祝いの宴での事なんだけど、

 

「思春、ずっと蓮華の後ろで、むっつりしてたろ?」

「護衛の任に就いている以上、それは当たりの事だ」

「それは違うよ。 ああいう公の場では護衛は警備の兵だよ。 少なくても表向きはね。

 思春が蓮華を陰の様に護衛しているのは分かるけど、協力してくれた人達や、外の国の人達にまで、

 ああいう態度でいるのは、蓮華の立場を悪くしかねない」

「……くっ」

 

蓮華の立場と言う言葉に、思春は悔しげな顔をする。

でも、それだけじゃ駄目なんだよな、

 

「それに思春は孫呉の主要な将の一人だ。

 此れから公の場に出る事も多くなるだろうし、正装を求められる場合もある。

 だから、そう言う事も、少しは覚えておくべきだと思ってね」

「……だが私には任務がある。このような格好で・」

「それなら、他の者に既に頼んだ」

「め・冥琳様っ」

「調練の方も、今日から三日は禁ずる。

 その格好で出来る仕事しか残しておらぬ故、安心して学ぶが良い」

「し・しかし」

「しかしは無しよ。

 思春がそこまで言うなら最終手段、命令よ、今日から三日間、女官らしく振舞いなさい。

 もちろん厳めしい顔も駄目、笑顔笑顔♪」

「し・雪蓮様っ!? 何故このような事に手を貸されるのですか」

 

思春の抵抗に、冥琳と、明命を開放して孫策がやってきて、命令と言う名の伝家の宝刀を抜く。

もちろん祭さんや穏が、昨日のうちに孫策達に話して手回ししてもらった結果なんだけど、

 

「だって、一刀も言ったけど、思春のそう言う姿も似合うと思うからよ。

 それに、私達は戦うだけの獣になっちゃ駄目なの、一刀が言っているのは、そう言う事」

「……」

「それとも、思春は、蓮華達の立場を悪くするような事をしないと護衛できない?」

 

孫策のの最期の一言が決まりだったらしく、思春は最後には快諾してくれた。

してくれたのは良いんだけど………あの、そのすさまじい殺気を抑え無いといけないって、分かってます?

俺は思春に向けられた怒気と殺気に、冷や汗を垂らしながら、溜息を吐く。

 

 

 

 

細い顎に指を置き、軽く引き上げる。

頬を、首筋を、指先で確かめるように、ゆっくりと、そして優しく、指を這わす。

 

「……くっ、何故私が貴様に良い様にされねばならぬっ」

 

椅子に座り、悔しげに俺を睨みつけてくる思春に、

 

「そりゃ、俺が一番化粧の腕があるからだろ」

「……そもそも、男の貴様にそれがあるのが、おかしいと言っているのだ」

「文句は孫策達に言ってくれ、はい、目を瞑ってて」

 

俺は思春の言葉を無視して、作業を進めて行く。

 

「思春、一刀の言うとおりになさい。

 せっかく一刀の化粧の技を学べる機会なんだから、文句言わないの。 これ命令よ」

「…くっ」

 

孫策の伝家の宝刀に、思春は黙って俺の言う通り大人しくしてくれる。

……まぁ、こめかみが、理不尽な命令に引き攣っているけどね。

ちなみに、周りには孫策を初め、尚香以外の主な重臣や、噂を聞いた一部女官達が俺の化粧の技術を学ぼうと、集まっている。 これだけでも、いい加減晒し者だよな……、しかも俺まで、

 

とりあえず思春お肌の状態や、表情筋の流れとかは分かった。

俺はまず肌の下処理と、ケアをするための作業を、皆に分かるように説明しながら、ゆっくりと始める。

 

 

 

仕上げに唇に朱をひき、化粧のためあげておいた髪を戻して、もう一度形を整え直す。

数歩下がってから、もう一度見回し、問題ない事を確認すると、

思春の首回りから掛けていた布を取り払って、

 

「思春お疲れ様」

「……くっ、何故こんなにも時間を掛かるんだ」

 

俺の言葉に、やっと終わったとばかりに、文句を言ってくるが、それはしょうがない。

あれだけ説明しながら、手元の動きが分かるように気を使っての作業だから、普通の数倍は掛かる。

それでも半刻も掛からず終わったのは、思春の肌が日焼けしているにも拘らず、かなり良い状態だからと言うのと、普段化粧して無い事もあって、化粧のノリが良かったからだ。

もっともそれを説明する前に、

 

「……やるわね」

「はぁ……」

「……ほぉ」

「ふむ……」

「流石ですね」

「……思春様、奇麗です」

「ほぇ~……」

「…凄いです」

 

と言う三者三様の嘆息の声に思春が、

 

「……くっ、貴様何をした」

 

などと、何やら勘違いして睨んできたからだ。

とりあえず、鏡(銅鏡)を思春の前にかざし、

 

「普段用って事で押さえてはあるけど、こんな感じでどうかな」

「…………これが…私…」

 

鏡に映る自分に驚く思春に、

 

「思春は、元々美人だから、あまり手を加えず、それを生かすようにしてみたよ」

「…なっ!…その様な戯言っ」

「嘘じゃないよ。 思春見鼻立ちも整っているし、眉の形も切れ長で綺麗な形していると思うよ

 それに髪も艶があって触り心地が良いし、肌も滑らかで張りもある。 思春が美人だと思うのは本心だよ」

「……なっ、な・な・なっ、何を・」

 

何故か、慌てふためいている思春をどうしようかと思っていると、

 

「「一刀さん(君)」」

「えっ?」

 

ぎゅーーーーーっ!

 

「痛いっ痛いっ、あーーーーーーっ」

 

何故か二人に、思いっきり足を踏まれ、俺は悲鳴を上げるしかなかった。

そして痛みから解放され、何故こんな目に合ったか首を傾げていると

 

「馬鹿ね」

「あれは治らぬな」

「…はぁ~」

「……愚か者が」

「此れだから面白いのぉ」

「あらあら~、二人とも大変ですねぇ」

「一刀様…さすがに、それは…」

 

等と、女性陣に溜息を吐かれてしまった。

すみません、理由を教えて貰えると助かるんですが……、

 

 

 

 

結局、明命達が怒った理由を教えてくれる人間は無く、逆に、

 

「一刀、それ二人に聞いたら、もっと不機嫌になるから、自分で考えなさい」

 

と孫策にこっそり注意される始末だった。

そんな訳で、後は各々の仕事に戻っている訳だが、

俺の化粧道具は、孫策達に持っていかれ、明日から思春に化粧を施すと言う名目で、今日俺から学んだ事を思春で試すつもりらしい……、ちょっと思春に気の毒な事したかな……、

何にしろ、今、城では明命と思春の姿に、あちこちで黄色い悲鳴が上がっている。

……まぁ一部本気で悲鳴だったりするが……今日は皆、仕事にならないかもな(汗

 

まぁそれは置いといて、俺はと言うと仕事をさぼって、もとい視察のため街に来ていた。

一応幾つか名目はあり、今は華佗の所に行って、世間話交じりに幾つか相談に乗ってきた帰り道だ。

そんな時、前方の店を出てきた見覚えのある人影を見つけ、

俺はその人影である亞莎の近くまで行って、手を挙げるが、

……あれ? 彼女は俺に気が付かないのか、そのまま行ってしまう。

朝は普通に接してくれてたから、怒っていると言う訳では無いと思うけど、

俺は、今度は彼女の横に行くと、……何故か不審者を見られる様な目で見られ、そして、

 

「あっ、一刀様、どういたしましたか?」

 

と、数テンポ遅れて、そんな事を言ってきた。

ちなみに亞莎の真名は、亞莎と明命が仲が良い事もあって、何度か顔を合わしているうちに呼ぶようになったんだけど、相変わらず亞莎は何故か俺を、崇敬している節がある。

俺としてはもっと、友達感覚で気楽にして欲しいんだけどな……、

 

「城に戻るなら一緒にと思ったんだけど……もしかして眼鏡あっていないの?」

「えっ、あっ、お恥ずかしい話ですが、進行してしまいまして、だいぶ前から合わなくなりまして」

「勉強熱心なのは凄いけど、あまり根を詰めるのは良くないよ。 健康在っての学問だからね」

「は・はい、気を付けます」

 

亞莎は、あの時以来学問だけでなく、いろいろな知識や知恵を身に付けようと頑張っており、

その頑張り具合は、冥琳ですら一目置いているんだけど、ちょっと頑張りすぎ屋さんの所があるんだよな。

たまには息抜きとかも必要だと思うんだけど……今度、城の台所借りて、おやつでも一緒に作ってみるかな。

みんなにおやつを作ると言えば、優しいこの娘の事だから喜んで参加するだろうし、

あっ、そうだ、ついでだから、あそこ寄ってみるか、

 

「亞莎、ちょっと一件だけ寄ってみようか」

「えっ、ええ、構いませんが」

 

何故か俺の言葉に頬を赤らめている亞莎に俺は首を傾げながら、目的の店に足を向ける。

 

 

 

 

「えっ、あの此処は?」

「さぁ、入って入って」

 

俺は、亞莎の背中を押すように肩に手をやり、亞莎と共に店に入ると、

其処は、華やかな服や装飾品が、所狭しと並んでいた。

実際、古代中国だと思うんだけど、そのラインナップは、もはや無茶苦茶だ。

西洋風のもあれば、和風のもあるし、どう見ても時代がおかしいものが並んでいる。

まぁそのおかげで、俺の執事服や美羽達のメイド服が、

目立つものの、あっさり、受け入れられたんだと俺は思っている。

 

「あ・あの、このようなお店と言う事は、そ・その気持ちは嬉しいのですが、服を贈って戴くには

 ……それに明命に悪いですし…」

「え? ああ、違う違う、そっちじゃなくて」

「これはこれは御使い様、あいにくとこの間頼まれたものは、まだ出来上がっておりませぬが」

「御使い様はよしてくれって、今日はそっちじゃなくて、この娘の眼鏡を見せてもらいたくてね」

「そうですか、では少々お待ちくださいませ」

「…ぁぁ、…す・すみません勝手に勘違いして、私ったら、

 ……あっでも、眼鏡にしても、そろそろ買い直さなければと思っているのですが、まだ足りなくて…」

「うん、その辺りは、俺も少しは余裕はあるし、亞莎が頑張っているようだからね」

 

そう亞莎に言い、とりあえず店の主人が奥から品物を用意するまで、亞莎とその辺りの服を眺めている。

……しかし、やっぱりこの時代の服って高いなぁ…、女の娘の服と言う事を差し引いても、高級ブランド物並みのお値段だ。

今は将として、それなりの月給をもらっているから、

亞莎に服の一着くらいプレゼントしても、そう然したる問題は無いけど、

この値段見ると、絶対作った方が手間を考えても、お得だよな。

それにこの辺りのデザインも、もう少し直した方が良いし…、

あっ、この衣装はちょっと変わってて良いな、明命に似合いそうだ。

そうウィンドウショッピングもどきの事を、亞莎と意見を交わしながらしていると、

 

「かーずーとっ、亞莎と浮気なんて、二人が知ったらどう思うかしら」

「し・雪蓮様っ・ち・違いますこ・これはその」

「はぁー、孫策あんまり亞莎をからかうなよ。 この娘は孫策と違って真面目なんだから」

「あら、浮気じゃないの?」

「当たり前だろ。 どっからそう言う話が出てくるんだよ」

「どっからって一刀、どう見ても・」

「北郷様、お待たせいたしました」

 

突然現れて、人を浮気者扱いする孫策に呆れていると、

店の主人が、幾つかの箱に入った眼鏡と言うかモノクルを持って、店の奥から姿を現した。

この世界の眼鏡は、その人に合わせて眼鏡を作るのではなく、数ある眼鏡の中から自分に合う眼鏡を選ぶと言う形らしい、 ちなみにこの世界のと言ったのは、本来三国志の時代には眼鏡など無い。 だけどこの世界は、水晶を磨いて眼鏡を作ると言う技術が合ったりと、相変わらず無茶苦茶ぶりだ。

そんな訳で亞莎は、数多くある眼鏡の中から、自分の物に合うものを選び出す作業をしている。

その様子を離れた所で、眺めていると、……げっ、あんなにするのか!?

俺が眼鏡の予想以上の金額に驚いていると、

 

 

 

 

「一刀、亞莎に良い所見せようと思って、眼鏡の金額甘く見てたでしょ」

「良い所って、亞莎が頑張っているから、何とかしたいと思っただけだけど、

 ……すみません甘く見てました」

 

孫策の言葉に、俺は素直に、この世界の高級品の金額を甘く見ていた事を認める。

所詮、庶民の生活をしていた俺には、縁のない話と思って、今まで見て来なかったツケが回ったな。

まぁ、確かに水晶とは言え一応宝石の類だから、高いとは思っていたけど、

……あれ、俺の月給の一ヵ月分だぞ(汗

 

「孫策、頑張っている亞莎のために何とかならんか?」

「私も何とかしてあげたいけど、私がお金出すと、報償って事になってしまうから、話しがややこしくなるし、

 あの娘になら、経費で落としても冥琳達は文句は言わないだろうけど、あの娘の方が気にするわよ」

「そうだよなー、余計無理しかねないし」

 

俺はそう思ってどうしようかと、考えながら周りを見渡していると、

 

「うわぁー、水晶製の眼鏡があの値段なら、ダイヤいや、金剛石は桁が幾つも違うなぁ」

「当たり前でしょ、加工するのが大変なのよ。

 見なさい見本に置いてある原石だったら、あの程度なんだから」

 

孫策に言われて、見ると確かに、原石の黒っぽい塊と言うか、石にしか見えないはそれは、

俺の今の手持ちでも、余裕で手が届く値段だった。

ようは、原石はあってもそれを簡単に磨く技術が無いから、あの値段なわけだ。

確かに、簡単に磨けなければ、金剛石の原石なんて石ころと一緒だもんな。

ふむ……、

俺は店主を呼びその原石を、手持ちの金で買うと、

 

「一刀そんな物買ってどうするつもり、磨くのに何年も掛かるって知らないの?」

 

俺はそう忠告して来る孫策に、

 

「ちょっと剣借りるよ」

「えっ、いつの間に!? って、勝手に人の剣を・えっ」

 

俺は勝手に借りた孫策の剣を宙に向かって振るう。

宙に放られたの原石に剣の刃は、音もなく通り、

剣が完全に通り抜ける一瞬に俺は剣をわずかに捻り、

原石を再び宙に上げる。

斬り取られた原石の欠片は地面に落ちるが、それに構う事なく、

俺はその作業を何度となく繰り返し、

最期に高く上げられたそれは、俺の掌に収まり、その輝きを放っていた。

大きさ的には小石程度だが、十分目的を果たしてくれるだろう。

こんな直刀で、しかも金剛石相手にやるのは初めてだけど、

上手く行って良かったと思いつつ、今の出来事に呆然としている孫策に剣を返す。

剣を受け取った事で、我を戻した孫策は、

 

「人の家の家宝でなんて事してくれるのよっ!

 刃こぼれなんてしてたら、母さんに……嘘、少しも刃こぼれしてない」

「うん、いい剣だと思うよ。 さすが孫家に伝わる宝剣なだけあるね」

 

刃こぼれ一つしていない事に驚きつつ、安堵の息を吐いた孫策は、今度は俺に詰め寄り、

(コロコロと、よく表情が変わるなぁ、そう言う意味では見ていて飽きないな)

 

「いったいどうやったのよ!? と言うか、金剛石が斬れるなんて、聞いた事もないわよ」

「まぁ確かに普通にやったら斬る所じゃないだろうけど、

 石の呼吸に合わせてやれば、今ぐらいの芸当はできるようになるよ」

「……ごめん意味、分かんないわ」

「分からなくても良いよ、所詮は大道芸程度の技だからね」

 

俺の説明に孫策は早々にお手上げをし、

不思議そうな顔でもう一度剣を確認したり、俺の手に持つ金剛石を交互に見比べている。

見れば、店主も亞莎も呆然としているが……まぁ店内で剣を振り回せばそうなるかな、

その辺りは、きちんと謝っておかないとな。

 

 

 

 

そうして、俺は臨時収入があったにも拘らず、少し疲れた顔でお店を後にした。

原因は孫策だ。 まぁ、更に原因を言うなら、俺が悪いと言うのは分かる。

孫策の剣、"南海覇王"は孫呉の宝剣で王が所持するもの、それを勝手に使った挙句に、道具代わりに使われたのだから、今思えば、怒られて当然だ。

そんな訳で、とにかく可愛い部下のためと、何とか誤魔化したんだが、その代り武の指南を約束させられた。

やっぱりこの間、手も足も出ず、地面に寝転がされ続けたのを気にしてるのかなぁ、と思えば俺に断われるわけもなく、その結果、孫策は楽しげな笑みを浮かべて、亞莎と一緒に前を歩いている次第だ。

……俺のは舞であって武ではないって、最近みんな忘れてないかなぁ………、

 

結局、店に在った物に比べ小さいとはいえ、俺が斬りだした金剛石は、俺が思ってた以上に高く売れた。

実際あそこから更に研磨しないと、確かな輝きは出ないのだが、あそこまで出来ていれば、そう手間も要らないらしく、亞莎の眼鏡代と原石代を差し引いても、かなりの金額が手元に残ったんだけど、……この世界だと、俺自身あまり金を使う宛てが無いんだよなぁ……、通常の生活費は、明命と翡翠が相変わらず出しており、俺には出させてくれない、 翡翠曰く、

 

『一刀君のお気持ちは嬉しいのですが、一刀君はお屋敷の事を色々やってくれています。

 …それに、この家で一番低いお給金の人から出して貰うほど、私も明命ちゃんも落ちぶれていませんので』

『ぐはっ!……』

 

うん、分かっている。 翡翠がハッキリ断るため、わざと俺が傷つく言い方をしたと言うのはね。

まぁ、元々丹陽の街から、紐みたいな生活していたから、今更と言えば今更なんだけど、

……うん、これくらいでは泣かないもん。 クスンッ、

 

まぁ、それはさておき、実際明命にしろ翡翠にしろ、古参の重臣、ポッと出の俺の稼ぎとは違うのは分かる。

分かるんだが、……別に俺は、二人みたいに密偵を抱えていたり、個人的な情報網を持っている訳では無いので、普通に暮らしている分には、そうお金要らないんだよな。

この間みたいに、お風呂の釜やポンプとか、向こうの道具を此方で勝手に再現させるのは、この間翡翠に怒られたしなぁ。 ちなみに美羽と七乃は、本来主である俺が二人に御給金を与えねばいけないのだが、生活費は翡翠から貰っているし、奴隷とは言え『天の御遣い』の世話をしていると言う名目で、公費から小遣い程度の金を貰っているらしい。 冥琳曰く、

 

『 ほう、女が何を必要とし、幾ら使うか知りたいと言うのだな? 』

『 何でそうなるのっ? 』

『 お前が聞いているのはそう言う事だ。 いい加減その辺りは少しは学べ 』

『 じゃあ冥琳教えて欲し……あの冥琳、何で"白虎九尾"を取り出したのかな? 』

『 そう言う所がいかんと言っておるのだ。 自分で学べっ! 自分でっ! 』

『 ひぃーーっ 』

 

と言う訳で、慌てて部屋から逃げる羽目になってしまった。

……まぁお金は在るにこした事は無いから、とりあえず翡翠に預けておくかな。

 

ちなみに、自分の懐から出すつもりでいた亞莎は、何度も頭を下げてお礼を言ってきたけど、

普段頑張っている亞莎に対する、俺からの御褒美と言う事で、納得してもらった。

ついでに、原石を買おうとする孫策を止めたのは言うまでも無い事だ。

……これで刃が欠けようものなら、絶対俺のせいにされそうだもんな。

 

 

 

翡翠視点:

 

 

朝食の後、明命ちゃんが、七乃ちゃんに連れて行かれて戻ってきた時は、

何とも可愛らしい格好になっており、恥ずかしさで、やや瞳を潤ませていた事もあり、

私は、抱きしめたり、頭を撫でたりと明命ちゃんを猫可愛がりしました。

先日の訓練で負けたための罰らしいのですが、これでは罰には成らないのでは? と思いつつ、

何度も明命ちゃんの可愛らしい姿を、撫で回しました。

 

一通り、明命ちゃんを可愛がっった後、

改めて明命ちゃんの姿を落ち着いてみると、大きな猫耳としっぽ、そして猫の手を大げさに大きくした手袋が何とも愛らしいのですが、確かにこれを来て、街や城を歩くのは、勇気が要りますね。

そう言えば南蛮の方に、こう言う姿の民族が居ると言う話しですが、

みんなこんな可愛らしい姿なのでしょうか?

それはさておき、一刀君の意匠のおかげと言うのもありますが、とてもよく似合っています。

一刀君も、そんな明命ちゃんを見て、顔をもの凄く緩めています。

私もあれを着けたら、一刀君こう言う顔をしてくれるのでしょうか?

……そう言えば、以前同じように服を作ってくれた事はありましたが、今回は私の分はないのでしょうか?

そう思って一刀君の方を見つめると、

 

「ん? 何?」

 

一刀君は、明命ちゃんの猫耳姿を見ながら、

顔をだらしなく緩めながら、私の方を見ずにそんな事を言ってきます。

 

……ぷちっ

 

「何でもありませんっ!」

「えっ? ひ・翡翠?」

 

私は、一刀君の言葉も聞かずに、出かける準備をするために部屋に戻るなり。

 

「……一刀君の馬鹿」

 

そう呟いてしまいます。

 

 

 

 

「きゃーーーっ、可愛いぃぃーーーーっ♪」

「しっ・雪蓮様・ふにゃっ」

 

何時かの私のように、明命ちゃんが雪蓮様の大きな胸に顔を埋められ、思いっきり抱きしめられています。

そんな様子を、冥琳様達を交えて見守っていると、一刀君がまた私を気にして声を掛けて来ますが、

私は、つい

 

「(つーん)」

 

と無視してしまいます。

分かっています。 明命ちゃんのアレが、罰である以上、用意してあるのは一つだけです。

現に城に来るまで、明命ちゃんは奇異の目に晒され、恥ずかしげにしていましたから、そう言う意味では、確かに罰にはなっているでしょう。

もし、アレがもう一つあっても、アレを着けて街に出る勇気は、私にはありません。

でも、たとえ罰であっても、アレは一刀君が明命ちゃんのために、明命ちゃんに合うよう、用意した物です。

それを、一刀君はあんなに褒めちぎって………、

 

「……明命ちゃんばっかり」(ぼそっ)

「ん? なんか言った?」

「何でもありません」

 

プイッ

 

分かっています。

これがただの我が儘で、一刀君にとって理不尽な事だと言うのは、

でも、やっぱり面白くありません。

 

 

 

 

あの後一刀君の化粧の腕を、思春ちゃんをダシに皆で学びましたが、一刀君は相変わらずです。

私達という者があると言うのに、誰彼構わず褒めちぎります。

しかも、それが無自覚で、心のままに言っているから性質が悪いです。

一刀君にとっては、何気ない本当の出来事でも、言われた方からしては、飾り気のない心からの言葉は、

それが一刀君の本音だと分かってしまうからこそ、何の抵抗もなく心に入り込んでくる物なんです。

私と明命ちゃんで、足を踏んであげましたが、少しも分かっていないようです。

 

一刀君の事は置いておいて、一刀君が何を考えて、思春ちゃんにあんな事をさせているかは分かります。

それが必要だというのも理解できますし、協力したいと思います。

ですが、

 

『子瑜様っ、見知らぬ女官姿の女が城内に紛れ込んでおりますっ。

 もの凄い美人なのですが、凄まじい目付きで、周りの者を威圧して回っており、

 中には腰を抜かす者も出ておるとの事』

『……心配在りません。 それは甘将軍ですので、他の者達にも連絡をしてください』

 

『諸葛様、うぐっ…知らない方がおりまして…グスッ…声を掛けたら…私…殺されるかと…』

『大丈夫ですよ。

 それは甘将軍で、ただ慣れない事をしているため、機嫌が悪いだけですから、泣き止んでください』

 

『諸葛様っ、また甘寧様と知らずに、不埒な事をしようとした者が重傷を』

『自業自得です。 その者は今日付で解雇しておいて下さい。 治療費も出さなくて結構です』

 

『諸葛様、甘寧様の化粧を施したのは何方でしょうか? ぜひ私も学びたいです』

『すみません、次の予定はありません。

 ですが明日の朝、蓮華様達と、その復習をするので、良かったら見に来てください』

 

と、前途多難な様子です……、

その上、

 

『きゃーーーっ、周将軍、何なんですかその格好、可愛いぃーーー、少し撫でさせて下さい♪』

『ちょ、あ・あの私これから任務が・』

『周将軍、お願いですから『にゃ~』と言ってみて下さい』

『え・あの……にゃ~』

『『『『 きゃーーーーっ♪ 可愛いぃぃーーーっ♪ 』』』』

 

と、明命ちゃんが何処かに行く度に、城の彼方此方で黄色い悲鳴が聞こえてきます。

明命ちゃんも人が良いので、ああ言う風に好意を向けられての相手には、きつく言えないので、玩具にされています。

 

「…………今日は仕事になりませんね……」

 

 

 

 

やがて、想像以上に進まなかった今日の執務を何とか終え、

いろいろな意味で疲れた心と体を引きずって家に帰ると、

 

「あっ、お帰りなさい」

「七乃ちゃんただいま帰りました。 一刀君は?」

「御主人様ならもう帰ってきています。 今お風呂に入っていますよ。

 明命さんも、今日はえらくお疲れのようですねぇ。 まぁあれだけ騒がれたら仕方ありませんね~」

「そう」

 

私は、聞きたい事は聞けたので、そのまま着替えるために部屋に足を進めようとした時、

七乃ちゃんが、何か差し出してきました。

 

「これは?」

「あいにく私の独断ですけど、きっと似合うと思いますよ♪」

 

私は、七乃ちゃんの言葉に、渡された布袋の中を覗き込むと、

 

「こ・これは」

「あっ、私と美羽様は、今夜は城の騒ぎに巻き込まれて疲れたので、早く寝ますね♪

 と言いつつも、お嬢様にも同じ物を作って差し上げたので、そんなお嬢様を、少しでも早く可愛がって、

 涙目になるほど撫で回してから、ぎゅっと抱きしめながら寝むりたいだけなんですけどね~♪」

 

そう言って、何時もの明るい調子で、七乃ちゃんは立ち去って行きます。

言葉通り、美羽ちゃんは今夜七乃ちゃんに猫可愛がりされながら、疲れて寝てしまうんでしょうね。

まぁそれは良いです。 七乃ちゃんの言わんとする事は分かりました。

こう言うのも面白いかもしれませんね。

 

「ふふふっ♪」

 

私は疲れも吹き飛んだような足取りで、部屋に戻り、七乃ちゃんから渡された物を寝台の上に広げます。

鏡を片手に、明命ちゃんのとは色違いのそれを軽く当ててみた私は、明命ちゃん程ではなくても、十分に似合うと確認できた私は、もう昼間の疲れなど欠片も残っておらず。

これから起きる事に、笑がついついこぼれ落ちてしまいます。

 

「一刀君、今夜は御仕置きして、あ・げ・ま・す♪」

 

 

 

 

夜も更け、一刀君の舞いの稽古の終わった頃を見計らって、私は一刀君の部屋の前に行きます。

 

「一刀君、起きてますか?」

「ああ、って、翡翠、その格好は」

 

一刀君は入ってきた私を見るなり驚きます。

今着ているのは、黒を基調にした服で、

 

「変ですか? 前に一刀君に戴いた服ですよ。

 たしか"ごしっくろりぃた"とか言う意匠の」

 

私は惚けながら、寝台近くの一刀君に近づきます。

 

「いや良く似合うよ。 俺が言いたいのは、その付けている猫耳と・」

「ああ、これですか?

 一刀君が私の分を作ってくれないので、七乃ちゃんが気を利かせて作ってくれたんです」

「あっ」

 

私の言葉に、一刀君はやっと、私が朝拗ねていた理由が分かったようです。

でも、もう遅いです。 御仕置きは決定です。

私の言葉に驚き呆然としている一刀君を、

私の今の姿に顔を赤くしている一刀君を、

寝台に押し倒します。

 

ぼさっ

 

一刀君、もう今更、私が何を求めているか分からないなんて、言いませんよね?

そんな思いが通じたのか一刀君は、

 

「翡翠」

 

そう私の名前を呼んで、手を伸ばしてきます。

でも駄目ですよ。 これは御仕置きなんですから、まだ おあずけ です。

私は伸ばされた一刀君の手を抑えるように、一刀君の手を下にやり、一刀君に伸し掛かる様にすると、

 

「翡翠?」

 

私の行動に戸惑う一刀君の顔を眺め、

ふふっ、こういう一刀君も可愛いです♪

私はゆっくり、まずは一刀君の唇を啄ばむ様に軽く数度触れ、

 

「ん…んん」

 

首筋を子猫のように、小さく何度も舐めながら、

一刀君の上半身を、ゆっくりとはだけさせて行きます。

そして、そのまま下に下りて行き、

 

「ひ、翡翠っ、…んっ」

 

可愛い声です。 ふふっ♪

男の人も此処が敏感だと言うのは、知ってますよ。 本で読んだ事があります。

それにこの間、此処を散々苛められましたから、お返しです。

 

ぴちゃぴちゃ

 

子猫が舐めるように、何度も何度も、

我慢するような一刀君の声を無視して、

首筋や胸を往復しながら、優しく舐めて行きます。

そうして、すっかりと一刀君の息が荒くなった頃を見計らい、

もう一度一刀君の唇を小さく数回舐めてから、

ゆっくりと一刀君の耳元に口を近づけ、

 

 

ぺろりっ

 

     ……はむっ

 

          ……ぴちゃぴちゃ

 

 

軽く、だけど執拗に耳に受ける感触に、

小いさな舌で、くすぐる様に舐められている音に、

挑発するように聞こえる、私の悩ましげな吐息に、

 

くすくすっ♪ 一刀君、もう我慢の限界のようです♪

一刀君、私を放って置くと、どうなるか分かりましたか?

とりあえず今回は警告ですので、これくらいにしてあげます。

だから、仕上げに、

 

「にゃ~♪」

 

そう、一刀君が我慢していたように、私も我慢していた想いを込めて、

一刀君の手を抑えていた手から力を抜き、小さく耳元で鳴いてあげます。

熱い吐息と共に、甘えるように、求めるように、鳴いてあげます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

あとがき みたいなもの

 

 

こんにちは、うたまるです。

 第80話 ~ 温かな陽光の中、娘猫は踊る ~ を此処にお送りしました。

 

まずは初めに、おかげさまをもちまして、前作で投稿数百話になりました。

アボリア様が教えて下さるまで気が付きませんでした。

これも皆々様のご声援のおかげだと思っています。

これからもどうか温かい目で御声援の程よろしくお願いします。

 

さて、今作の話になりますが、最後の方のシーンやりすぎですかねぇ?

朱里の姉らしさと、小悪魔らしさと、炉なのに姉と言う翡翠らしさを出してみたかったのですが、皆様にはどう映ったでしょうか、とりあえず、次回はあのシーンの続きと言う訳では無いのであしからず。

どっちにしろ最後の方はおまけ的な物なので、置いておいて、

 

訓練の罰は如何でしたでしょうか?

明命の猫耳は、皆さん想像されていた通りです。

思春に関してはすみません、皆様の期待を外して普通の女官姿です。

冥途だと、一晩しか時間が無いと、七乃の服を借りる事になりますし、

あの服は『天の御遣い』の庇護下にあるものを意味していますので、思春に着せる訳には行きませんでした。

どちらにしろ着せた甲斐も無く、騒動になっているようですが、次回はその辺りの続きの話となります。

金剛石の加工に関してはワンピースでゾロの石の呼吸で残鉄する話から取って来ています。

もっとも、独立時の決戦時、一刀は敵兵を鎧事輪切りしているので、問題ないかなぁと思って書きました。

 

では、頑張って書きますので、どうか最期までお付き合いの程、お願いいたします。


 
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