No.169043

真・恋姫†無双~御遣いのバーゲンセールだぜ~第四話

おまめさん

この作品は

オリキャラなんてみたくない

一刀さん強すぎ自重

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2010-08-29 18:01:22 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:3154   閲覧ユーザー数:2426

第四話~一刀さん降り立つ~

 

 

 

とある村の宿で食事をしながら周りの男達の話に耳を傾けている少女がいた

 

肩位まで伸びた栗色の髪、温和そうな顔立ち、小柄な体型、それらの容姿よりも頭に被った赤い頭巾が特徴的な少女だった

 

「重税に盗賊・・・俺らの暮らしはどうなっちまうんだ?」

 

「山向こうの村は全滅したらしいぜ」

 

「ここにも賊が来るのも時間の問題か・・・太守様は動いてはいないのだろうか」

 

「大きな声では言えないが当てにならんぞ。官軍も多少動いているとはいえ焼け石に水。戦果もほとんど挙げれていないらしい」

 

「はぁ・・ここにも、なんとかの虎っていう奴きてくれないかな」

 

「なんだ?それ」

 

「お前、知らないのかよ。たった一人で数々の賊の拠点を潰してる奴がいるらしいぜ」

 

「おお!俺も聞いた事ある!たしか江東の虎って奴だよな?」

 

ピクリと静かに聴いていた少女の眉が動く

 

「江東の虎といえば孫堅だよな?でもここは益州だぞ」

 

「孫堅ってのは戦死したってきいたぜ」

 

「馬鹿。黙って最後まで聞けよ。実際、孫堅がここにくるわけないだろ。昔、孫堅が海賊を全滅させた武勇伝と同じように盗賊を駆逐してる奴がいるって事で虎とかいわれてるんだって」

 

「そうそう。噂に尾ひれがついて孫堅の亡霊だ、って聞いた事もあるな」

 

「ははは。亡霊はその人に失礼だろ。まぁ・・でも亡霊でも天の御遣いでもすがりたくもなるよな・・」

 

「あぁ、俺も天の御遣いの噂聞いた事あるぜ」

 

男達は日々の生活の不安からか数々の噂話をしていく。自分達を安心させるかのように

 

少女はそれらの話を一通り聴いた後、宿を出て行った

少女は野を歩いていた。昼間聴いた噂話。その中に自分では無視できない内容があった事を思い出していた

 

自分が守れなかった君主の名を聴き、心中には複雑な思いが渦巻く。守れなかった不甲斐なさと、今の情勢で賊退治は立派であると思う反面、我が君主の名を語ることに対しての憤り

 

最も本人がそう言っている訳ではないのだが。守れなかった自分に帰る場所などあるはずもなく、ただ噂の真相を確かめたい一心で移動しているのである

 

(ここまでくれば明日には目的地につきそうです。今日はここで野営しましょう)

 

少女は適当な場所を見つけ野営の準備に取り掛かった

 

 

 

満天の星空を眺めながら少女は思う。我が君主の事を

 

こと戦となるとあの方以上に苛烈な人物を自分は知らない。だがその苛烈さと同等以上に自分の家族、仲間そして民に対しての優しさがある人であった

 

そんな彼女に惹かれ、いつでも付き従ってきた。時には囮となったり、身代わりになったり。今冷静に考えてみると碌な目にあってないと思うのが普通ではあるが、それでも自分は幸せであった

 

無茶ばかりする我が君主に振り回されながらも、身を呈して守る。それは自分の唯一の誇りでもあった

 

楊州を手中に治め、荊州にその勢力を伸ばし始めた矢先、敵の罠にかかり君主と自分は味方から孤立してしまった。それでも君主だけでも生きてもらおうと必死になった。自らを盾とし降り注ぐ矢や落石からも守りぬこうとした

 

しかし彼女は失敗してしまったのだ。最後の最後で伸ばした手は届かず、空をきり君主を掴む事はできなかった。崖の底に落ちていく我が君主をただ呆然と見るしかできず、自分は落ち延びた

 

君主を守ること、ただそれだけが自分の誇りであったのに、それが崩れた気がした

 

「文台様・・・大栄はなぜ生き延びたのでしょう」

 

少女が涙を零すまいと夜空を見上げた時、流星がみえた

 

次の瞬間、すこし離れた場所にあった川を中心に辺りが光に包まれた

 

少女はその方向を目指して駆け出した

「おい、少年。起きろ」

 

(ん・・・誰かの声が聞こえる)

 

「おい。聞きたい事がある。起きろ」

 

(昨日は爺さんに付き合わされたんだからもう少し寝かせてくれよ・・・)

 

「ふむ。埒があかないな」

 

(五月蝿いなぁ、あ、でも風が気持ち・・・ん?)

 

「どれ、優しいおねーさんが気付けてやろう」

 

グシャ

 

月明かりの下、川辺で横たわる少年の顔を声をかけていた女性が踏みつけた

 

「風ぇぇぇぇぇ!?」

 

顔を踏みつけられた少年が飛び起き、手元にあった自分の得物を手繰り寄せ構えながら一気にまくしたてる

 

「薙沙!今日という今日は許さん!おしおきだ!もちろん性的な意味でじゃないからなっ!!」

 

「それといつの間に庭に運んだ?まったく毎度毎度手の込んだいたず・・ら・・・・を?」

 

しかし、自分が思っていた状況ではないと理解し声が尻つぼみになった

 

あたりは暗闇で包まれており、月明かりで多少見渡せるくらいだが、すぐ傍で川の流れる音が聞こえ明らかに自分の家の庭ではない事がわかる

 

なにより自分を起こした相手は妹の薙沙ではなく見知らぬ女性だったのだ

 

月光で桃色の髪が淡く光っていて健康そうな褐色の肌とのコントラストが美しい女性だった

 

「はっはっは。少年、今の起き様面白かったぞ」

 

月明かりの美女は心底面白そうに笑う。どこか気品が感じられる顔立ちではあるが人懐っこく笑う姿が印象的であった

 

「だが・・・抜いたな?」

 

この言葉の後に人懐っこい笑顔が獲物を狙うような笑みにシフトした

 

ゾクリ

 

全身の身の毛がよだつ程の殺気。次の瞬間、少年は逆袈裟に迫る斬線を見た

 

(これは・・・受けられない!!)

 

そう判断した少年は体を反らしながら後ろに飛ぶ。飛びながら相手との間合いを仕切りなおそうとする

 

「なっ?近い!」

 

少年はかなり間合いを取った筈なのだが相手はすぐそこまで詰めていて身体をすでに旋回させていた

 

(初撃の身体の流れを利用した連撃がくるッ!左か!!)

 

ギャリィィィィンンンン!

 

金属が擦れる音が響き渡る。少年は左からの横薙ぎの一閃を上に受け流した

 

そして間合いを再度とる。今度は詰められる事もなく十分な間合いをとれた

 

「少年、今の連撃をいなされるとは思わなかったぞ」

 

嬉しそうに言う女性は続ける

 

「だが、二撃目で反撃しなかったのは何故だ?私の体勢が崩れたの見逃したわけではあるまい?」

 

その問いに少年は

 

「体勢を崩してもお姉さんはもう一撃入れるつもりだったでしょ?」

 

「お姉さんの身体能力の凄さは最初に間合い詰められた時に痛感したよ」

 

「例え武器を逆刃に握りなおさなかったとしても、よくて相打ちだと思える程にね」

 

と、苦笑しながら言った

 

「はっはっは!そこまで見通していたか!おねーさんはびっくりしたぞ」

 

「少年。名をなんという?」

 

女性は興味深そうに少年の名を聞いた

 

「俺は・・・俺の名前は北郷 一刀」

一刀は女性から自分がどのような状況にいたのかを聞いた

 

この女性曰く、野営しようと川辺にきたら辺り一面が光に包まれ、収まったかとおもったら少年が倒れていたという

 

妖の類かとおもい尋問しようとして起こした、との事だった

 

「結局の所、少年は何者だ?」

 

女性の質問に一刀は困ったように答える

 

「何者かと聞かれたら聖フランチェスカ学園に通っているただの学生としか答えようがない」

 

「ただ自分がなんでこの場所で寝ていたのか全くわからないんだ」

 

一刀は自分がこの状況になるまでの経過を女性に話した。昨晩は確かに祖父の家で寝た事、起こされたと思ったら知らない場所でしかも野外だった事。そしていきなり斬りかかられてかなり焦った事

 

「それはだな。少年よ。先に剣を抜いたからだ。あ、謝らんぞ」

 

一刀はそこはかとなく理不尽さを感じたが、確かにいきなり光と共に現れた奴が剣を構えたら自分でも身構えるな、と思い

 

「まぁこのままこんな野外で寝こけてるのも危ないかな、お姉さん、ありがとう」

 

と素直に礼を言った

 

「はっはっは。素直な少年は可愛いな」

 

さっきから言われるほど自分は少年じゃないんだけどな、と一刀は思ったが相手からすれば自分は少年に見えるのであろう。確かに自分よりは歳上なのだろうが雰囲気や言動と容姿の印象の差が大きすぎて実年齢がわからない。が、年齢の話は女性には鬼門であると思い直しその事について質問するのはやめる

 

そこで一刀はある疑問が頭に思い浮かんだ。本来ならば真っ先に出てもいい内容だとは思うが動転していたのか気がつかなかった

 

「そういえば、お姉さん。重要な事聞くの忘れてた」

 

「ん?なんだ?」

 

「ここって何処?」

 

「ここは益州の巴郡だな」

 

「はい?」

 

「だからここは益州だぞ」

 

「・・・・」

 

一刀は聞きなれない単語に困惑する

 

「え・・・っと、ここって日本の東京だよね?」

 

おそるおそる一刀は口にしたが目の前の女性は

 

「にほんのとうきょう?なんだ?それは?」

 

と初めて聞いた言葉の様な反応をする。ここで一刀は日本ではない可能性が頭をよぎり身を震わせる

 

「えっと・・・お姉さん。今この国を治めている人は誰?」

 

「第12代皇帝、霊帝だな」

 

その答えに一刀は目眩がした。もう時代からして違うとは一刀の予想を遥かに超えていた。もちろん冗談かとも思ったが今が後漢の時代であれば、剣を抜いたら斬りかかられるという事も微妙に納得してしまう

 

一刀は詳しく話を聞く事にした。そして知り得た事は、此処は漢王朝が支配する国で今はこの大陸はどこも悪政により荒廃しており賊が増えてきている事。この場所は益州だという事である

 

「お姉さん、聞いてくれる?信じられない話だと思うけどさ・・・・」

 

一刀は女性に自分は1800年ほど未来から来たらしいという事を説明した。こんな莫迦な話あるわけない、と一蹴されるかと思っていたが女性の反応は驚くものだった

 

「はっはっは!それは面白いな!少年は幸運だな。そんな事おねーさんも体験したいぞ!ずるいぞ!」

 

「え?こんな話信じれるの?」

 

その予想外の反応に一刀はつい言ってしまう

 

しかし、この女性は心底楽しそうに

 

「本当かどうかなんて問題じゃない。私は少年が光と共に現れるのを見た。見たことも無い服や荷物を持っていて知らない言葉も使う等と少しは理由もあるが・・・」

 

「なにより面白い!!それだけで信じるに値する話だな!」

 

と言い放った

 

「という事はだ。少年の一番の問題はここで生きる事が出来るか、だな。その術は?」

 

「あるはずもなく」

 

「一応聞くが、当てはあるのか?」

 

「それもあるわけがなく・・・」

 

「では少年。美人なおねーさんが面倒をみてやるぞ。喜べ!」

 

カラカラ笑いながら女性は言う

 

「ありがとうございます・・・?」

 

有り難い提案であったが、何故か自分の心が警鐘を鳴らしているのを感じ疑問系になってしまう一刀であった

少女は走った。胸騒ぎがしたのだ。昼間に我が君主の話以外にも聴いた天の御遣いの噂のせいかもしれない

 

金属のぶつかり合う音が聞こえて誰かが交戦しているのかと思い、一瞬近づくのを躊躇ったが胸騒ぎは消えないのでその感情を押しとどめて進む

 

近くまでいくと、そこで見えたのは二人の人物が話をしている所だった

 

一人は見たことも無い意匠の服を身にまとう少年。もう一人は此処にいるはずも無い、しかしながら見間違えるはずもない女性だった

 

「ぶ、文台様・・・・」

 

少女が驚きに目を見開きながら呟く。次の瞬間、涙で視界が滲む

 

「文台様!文台様ぁ!!」

 

「よくぞ、ご無事で!!茶々は・・・茶々は・・・!!」

 

脇目も振らずに女性に縋り付こうと走る

 

「うわぁぁぁぁぁぁ~ん!よくぞ、よくz・・・・・ゴハァッ!!!!」

 

次の瞬間、一刀は泣き叫びながら女性に縋り付こうとした少女が鼻っ柱を突かれ宙を舞ったのを見た。そしてそのまま地にへばりつくように倒れそのまま動かなくなった

 

「ちょっと!お姉さん!これはないよ!!」

 

「そんな鼻水だらけの顔で抱きつかれたら服がべとべとになるじゃないか」

 

少女に駆け寄りながら言う一刀に返す女性

 

「文台って言いながら来たけど、知り合いじゃないの?」

 

一刀は慌てて倒れた少女を介抱しながら女性に言う

 

「え?私って文台っていうのか?」

 

女性から返ってきたのは驚きの言葉だった

 

 

 

 

気がついた少女を交えて話をしてわかった事をあげてみる

 

お姉さんの姓と名は孫堅。字を文台。真名を珂蓮(かれん)という

 

赤い頭巾の少女(といっても見た目がそう見えるだけで一刀より年上なのがわかった)の姓と名は祖茂。字を大栄。真名を茶々(ちゃちゃ)という

 

祖茂曰く、勢力を伸ばす際の戦で敵の罠にかかり自分は君主である孫堅を救えなかった事。その後、孫家にあわせる顔がなく居場所を失い放浪していた事

 

孫堅曰く、気がついた時は赤髪の華陀と名乗る医師に治療してもらっている所で傷は治ったが記憶が自分の名も含めて全く無かった事。華陀曰く、きっかけさえあれば戻るとの事。傷が癒えた後は各地を放浪しながら記憶をさぐり、ついでに賊退治をしながら路銀をかせぎ益州に至る

 

 

 

ここまで一刀は話を聞いて自分が知っている三国志の歴史との違う点がいくつかあった。英傑達の性別が逆である、真名という風習などなかったはず、そして孫堅達は荊州に勢力を伸ばしたらしいがこの時期は孫堅が飛躍する機会となる黄巾の乱はもちろん反董卓連合も起こってはいない

 

たしか孫堅が戦死するのは史実でも演義でも反董卓連合の後だったはずだ。実際戦死していなかったのだからこれは史実通りなのか?と思いもしたが孫堅から孫策に代が移り本人が益州にいる。この事は三国志の歴史や三国志演義の内容にも当てはまらない。唯一つだけ当てはまるものといえば、漢王朝の悪政により民が苦しみ賊が増え始め大陸全土に暗雲が立ち込めているという点であった

 

この自分が知識として知っている事と違う展開だという事を二人に話し、今後どうするかを話し合った

 

「少年の言うとおり今後、賊共が組織化して黄巾の乱がおき王朝の衰退が露見し群雄割拠の時代がきたら大変なことになるな」

 

「でも色々知ってる事とかなり違ってきてるから役に立たないかもしれないよ」

 

「いいえ、悪政により民が苦しめられ大陸が荒廃していくのは自明の理でしょう。賊だけでなく民による反乱などもこれからおきてくると思います」

 

「民も生活に困って賊となる輩もでてくるだろうな」

 

「考えたくも無いですが・・・この益州の村々を渡り歩いて民の様子を見てその可能性もあると思いました・・・」

 

「ところで少年、先ほど増えた賊が組織化するとか言っていたがそれはなぜだ?」

 

「あぁ、張角、張宝、張梁とかいう人達が扇動するんだよ。蒼天已に死す 黄天當に立つべし 歳は甲子に在りて 天下大吉とか言って」

 

「数十万人、酷いところなんか百万もの人がこれに同意し各地で反乱が起きるんだよ」

 

一刀の最後の言葉に二人は絶句する。内容に驚いたというのもあるが、一刀がその人物の名前、掲げた言葉などよどみなく言い放ったからである

 

「ここまでとはな・・・。おねーさんはかなり驚いたぞ」

 

「これが天の御遣いなのですね・・・!」

 

一刀はこの二人の反応に困りながら言う

 

「いや、まだおきてもないし起こらないかもしれないんだ」

 

「それに、俺はまだ実感がわかないんだよな・・・」

 

確かに一刀にしてみれば、この世界にきてからまだ僅かな時間しか経っていない。出会った人はこの二人だけ。天の御遣いだという自覚はおろか、後漢の時代にいるという実感すらわかないのも当然である

 

そんな一刀の様子を孫堅は察する

 

「はっはっは!少年よ。すまなかったな。確かに色々飛ばしすぎた」

 

「心配するな。おねーさんが嫌というほどこの大陸の情勢を体感させてやるぞ。約束は守らないとな」

 

「とりあえず、明日は人が多いところにでもよってみよう。色々みてみるといい」

 

孫堅の言葉に祖茂は疑問をぶつける

 

「孫家にはお戻りにならないので?皆さん喜ぶと思いますし、聞いた話によればいま孫呉の勢力は袁術に吸収されたとか・・・」

 

「私に娘達がいた事にも驚きだが、私の娘達はその袁術とやらの下でおさまるような人間なのか?」

 

祖茂は孫堅の目を見ながら力強く言う

 

「いいえ。策様を袁術などが御することなど考えられません。必ずや文台様の悲願にむけて動くでしょう」

 

「というわけだ、少年。私も記憶が戻るまでは戻るつもりも無い。戻らなかったらそれはそれでその時決めようと思う」

 

「少年がこの大陸に来た意味を。何を為すために来たのかを。考えて好きに動くといい」

 

「さしあたり私のことは孫堅でも文台でも好きによぶといい。真名は少年がこの大陸でどう動くか決めたときに預けるか決める。というか真名自体の大切さすら覚えていないのにこの状態で預けるのもなんだしな」

 

孫堅に続き祖茂も言う

 

「では私の事も祖茂、もしくは大栄とお呼びください、御遣い様」

 

「あぁ。そうさせてもらうよ。あと祖茂さん、俺の事は御遣い様とかじゃなくて北郷でも一刀でも好きな方をよんでほしいな」

 

一刀は二人にそう言うと、さきほどの孫堅の言葉と祖父の言葉を重ねる

 

(何を為すために此処にいる・・・か・・・・)

 

翌日、三人は巴郡の臨江を訪れた。臨江は製塩地としてこの辺りでは有名であり豊かではあるらしい

 

それ故、盗賊に狙われやすくこの地の豪族は手を焼いていた。そこに孫堅こと珂蓮は目をつけ賊を討伐するかわりに路銀を得ていたという

 

珂蓮のような素性の知れない流れ者でもきちんと報酬を払ってくれる豪族も確かに存在し、特に厳顔という人物は気風も良く珂蓮は懇意にしていた

 

三人は厳顔に会うため屋敷を訪れた

 

 

 

「これはこれは、臨江の虎殿。よくぞ参られた」

 

「厳顔殿、息災でしたかな」

 

二人はにこやかに挨拶を交わしている。一刀は厳顔という英傑も女性なのかと思い特大の胸に釘付けになった

 

孫堅もかなりの物をもっているが、それに勝るとも劣らない物の持ち主である。まさに小宇宙(コスモ)と呼ぶに相応しい

 

自分がビックバンを起こすのではないかと思い隣の祖茂こと茶々をみやる。そして落ち着く

 

(北郷様!なにやらものすっごく不快です!)

 

(ぜんぶすきだから大丈夫!!!)

 

(何が大丈夫なのですか!!)

 

小声でやりとりしながら怒りが頂点に達した茶々が一刀の脛を蹴る

 

そんな二人をみながら厳顔は笑みを浮かべながら珂蓮にたずねた

 

「本日はずいぶんと元気な方々をお連れのようですな」

 

「あぁ、この二人は昨晩出会った。女の方はどうやら私の家臣だったようだ」

 

私の家臣、という言葉に厳顔はやはりという顔をする

 

「虎殿の武勇、立ち振る舞いなどからただの旅人ではないと感じてはいましたがやはりどこかの雄であられましたか」

 

「記憶が戻ったわけではないが以前の私は孫堅という名だったらしい」

 

顔厳は驚き押し黙るが、次の瞬間大声で笑い出した

 

「ははははは!これはずいぶんと数奇な運命ですな。臨江の虎殿が江東の虎殿であったとは!!」

 

「だがこれで虎殿・・いや孫堅殿のこれまでの武勇も納得がいくというもの」

 

「それでは今後は楊州の方にお戻りに?それでこの厳顔めに挨拶に伺ってくださったので?しかし今は楊州は豪族が反乱をおこし孫堅殿が治めていた時とはかわっておりますぞ?」

 

「いや、厳顔殿に対しての感謝の念はもちあわせておるのでこの地を去る時は挨拶に伺うつもりだが、今はまだその時ではない」

 

「厳顔殿、私は面白いものを拾ったのだ」

 

珂蓮はニヤリと笑いながら厳顔に話し始めた

 

 

珂蓮は厳顔にこの少年が天の御遣いかもしれないと話した。最も一刀が言ったような未来の出来事を元とした可能性の話はしていないが。

 

自分達とはまったく違う環境から来たこの少年が此処でどのように生きるのか、それをまじかで見届けたいという事も話した

 

「ははは。ずいぶんと気に入っておるようですな!孫堅殿」

 

「あぁ。武の方も私と互角ではあった」

 

「ほぅ」

 

厳顔の目が鋭くなり一刀を興味深げにみる

 

「ただな。あれほどの武をもちながら未だ人を斬った事がないそうだ。私と立ち合った時も斬りかかれる好機にわざわざ剣を逆刃にしていた」

 

「ふむ・・・」

 

「このままではこの大陸で生きていくには不都合があるだろう?」

 

「その気構えで剣を今後も振るうのであれば死ぬであろうな」

 

「だから私は少年にまずは見せてやろうかとおもっている。厳顔殿。この付近の賊、やってもいいか?」

 

厳顔はその提案を承諾した

それから数日、一刀達は厳顔の屋敷に居候させてもらいながら臨江に滞在していた。一刀は町並みや文化などを見聞きし自分がいた世界では無いことを自覚する

 

厳顔曰く、まだ臨江は活気があるほうらしい。酷いところなど日中でも人の行き来がほとんどないらしい

 

自分は元いた世界でこんなにも生にすがるように必死に生きていただろうか。元の世界に帰れる保障はどこにもない。これから此処で生きていく事になるかもしれない。その時自分のこの心構えでいいのだろうか。そんな事を考えていた

 

昼過ぎにこれから昼食でも摂ろうかと思っていた矢先に茶々につかまった。どうやら珂蓮が呼んでいるらしい。厳顔の屋敷で待っているとの事だった

 

屋敷に戻ると

 

「少年。働かざるもの食うべからず、だ。これからちょっと仕事にいくぞ」

 

「少年は初めての仕事だから私の後ろでしっかりとつかまって見ているだけでいい。簡単だろ?」

 

いきなり珂蓮がそういってきた。どこか釈然としない一刀だったが、たしかにこのまま何もせずに居候させてもらうのは気が引ける。一刀は黙ってついていく事にした

 

珂蓮は馬に跨ると一刀を呼んでその後ろに座らせた。そしてそのまま自分の身体と一刀の身体を紐で括り付ける

 

「ちょっと!孫堅さん!こんな事しなくても逃げないってば!俺だってちゃんと働くよ」

 

「はっはっは。少年、照れているのか。どさくさに紛れて触れても怒らないぞ」

 

「からかってないで解いてよ。ちゃんとするからさ。で、今日は何の仕事?手ぶらだけど道具とかいらないの?」

 

「言っただろう?ただ見ているだけでいい、と。あまり下手に動かれると邪魔だからしっかりおねーさんの柔肌にしがみついているんだぞ」

 

一刀が今日の仕事内容について聞いてもはぐらかされてしまう。どうせいつものいたずらだと思い一刀は追求をやめた

 

 

 

臨江から馬で半刻ほど進んだ所でみたものは、荒廃した村であった。以前は村人が住んでいたが今では盗賊が巣くっているらしい

 

一刀は嫌な予感がして珂蓮に問うが

 

「黙っていろ。舌を噛むぞ。しっかり掴まっていろよ」

 

と一蹴された。その次の瞬間、珂蓮は武器を抜き放ち賊が巣くう村へと突進していった

 

 

 

一刀はただただ見ていた。珂蓮が笑いながら賊を蹂躙していくのを。人だった者がただの肉塊となって物になっていく。響き渡る断末魔。一刀の顔や身体には賊の返り血がべっとりついていた

 

自分が育った世界での倫理など微塵も感じられない。今こうやって蹂躙されている人達はかつて同じように力の無い人々を蹂躙していたのだろう。人の道をはずれ獣に堕ちた者達の末路をただ見つめる

 

(なんなんだ・・・)

 

(なんだよ・・・これは・・・)

 

「は、ははは」

 

一刀の口から乾いた笑いが漏れた

 

 

珂蓮が賊の集団を斬りながら一通り駆け抜けた後、伏せていた厳顔の私兵と茶々が挟撃する。間もなく賊は全滅した

 

厳顔と茶々が事後処理に負われているのを横目に一刀は木によりかかる

 

珂蓮が近づいてきて語りかけた

 

「少年。よくぞ最後まで見ていた」

 

「私は嫌なものをみせたのだろうな」

 

「だがな、少年。目をそらすな。この世界の理から」

 

「力なき者達がみまわれる理不尽な暴力をみただろう」

 

「力の使い方を誤った者共の末路をみただろう」

 

「少年。潰れるなよ」

 

そう言い珂蓮は一刀の傍を離れる

 

それを見計らい茶々が珂蓮に近づく

 

「祖茂か・・・私は頭痛が酷くてな・・・すまないが少年を頼む。私は屋敷に帰って休む」

 

「私は伝え方が上手くない。しかし伝える方法はこれしか知らん」

 

「わかりました。文台様。北郷様のことはおまかせを」

 

茶々と言葉を交わした珂蓮は一人、厳顔の屋敷に戻っていった

一刀は夜眠れずに星を眺めていた

 

そんな一刀に近づく一人の影。赤い頭巾を被った少女、茶々であった

 

「北郷様、眠れないのですか?」

 

一刀の顔を覗き込み、茶々は驚いた

 

「泣いて・・いたのですか」

 

「はは・・見っとも無い所みせてしまったね、祖茂さん」

 

苦笑しながら目を拭う一刀

 

「文台様を恨んでいますか?」

 

「違うよ。孫堅さんには感謝しているよ。恨むだなんてとんでもない」

 

星をみながらぽつぽつと語り始めた

 

「自分の知らない世界に放り込まれて故郷をなつかしんでいたからかもしれない」

 

「この世界にきて辛い生活にもめげずに必死に生きている人達をみて」

 

「俺のいた世界ではあたりまえの生活すらここでは贅沢な事に気がついて」

 

「必死に生きている人達の生活が賊に散らされた後もみた」

 

「その賊の末路もみた。でも賊の中にも生きる為に獣になりはてた人もいるかもしれない」

 

「力の無い人々を救うにはどうすればいい?賊となり人の道を外れた人々にも家族がいたはず。別の方法で救えなかっただろうか?」

 

「そんな身の丈以上の事を考えていたりして。俺はただの学生なのにね」

 

「討伐の後、孫堅さんが俺の事を気にかけてくれたよ」

 

「祖茂さんもこうして様子を見に来てくれている。厳顔さんも夕餉の時すごく気を遣ってくれてた」

 

「この世界に来たとき、みんなに拾われなかったらすぐ死んでいたかもね」

 

「そんな事を考えていたら・・・悲しいやら悔しいやら情けないやらで泣けてきてしまってね」

 

ふぅ、と語り終えた一刀がため息をもらす。最後の言葉を言った時の一刀の表情がすごく儚げで茶々は息をのんだ

 

「北郷様は、お優しいのですね」

 

「優しいんじゃないよ、甘いんだよ」

 

「でも!そのように考えられるという事は容易い事ではありません!」

 

茶々は自分の気持ちが伝わってほしいと思い声を荒げてしまう

 

「祖茂さん、ありがとう」

 

そんな祖茂の気持ちが伝わり一刀は微笑む

 

そして祖茂の目を見据えて力強く言う

 

「ただの学生の俺になにが出来るかわからない」

 

「だけど、俺は北郷家の一員として自分の出来る事からやって行こうと思う」

 

一刀は刀を抜き放ち天に掲げる

 

「この刀に誓って」

 

 

 

二人から少し離れた所で一刀を見守っていた人物がいた

 

「孫堅殿、これはなかなかの人物ですな」

 

厳顔が嬉しそうに言う

 

「あぁ、もう少年、などと呼べんな」

 

珂蓮が満足そうに言う

 

「孫堅殿、お体の調子がなんともなければこれから一献どうですかな?」

 

「頭痛はもう治まった。賊を討伐した後、同じようなことを昔したような気がして。それからだな頭が痛くなったのは」

 

「ほぅ・・・では記憶がお戻りになったので?」

 

「いや、まだだな。さぁ厳顔殿、北郷を肴に酒を飲もう」

 

「ははは。今日は上手い酒になりそうですな」

 

その夜の星は輝きが増し光を放っていた

                     あとがきっぽいもの

 

私の駄文を読んでくださっている方々、大変おそくなりました事をお詫びします。

 

そしてオリキャラ出しすぎ自重しろ、と仰る方も多数いるかとおもいます。

 

ただ一つ、言い訳を言わせてください。

 

 

呉は 武将が少なすぎる!!!!!!!

 

なんで孫堅死んでるの?太史慈でてこないの?なんで雪蓮すぐ死んでしまうん?軍師は3名ということで蜀や魏にまけていませんが、蜀のスーパースター集団に恋姫では呂布というチートを加入させ、魏は武将がそもそも多い。こんなんでよく戦えましたな、と思うわけです。

 

とはいえ、なんで祖茂なんだよ(笑)と皆さん思いますよね。よりによって祖茂(笑)

 

ほかのSSでは有名どころオリキャラで出てそうじゃないですか。

 

いや、祖茂さんは孫堅が実は生きていた、という設定のために史実のように身代わりになって死んでいたということで名前だけにしようと思ってはいたんです

 

でもちょっとまってください、と頭の中の祖茂さんが言いました

 

私は初代、赤頭巾ちゃんですよ?と

 

恋姫は英傑が女性ということで、この設定は、からたち(キャラ立ち)していませんか?と

 

なので出しちゃいました。

 

というわけで祖茂さんについて少々説明をします

 

祖茂(そも)

 

正史での活躍は以下のとおりです

 

孫堅が董卓討伐の義勇軍にいた頃、董卓軍は大軍で孫堅に応戦。包囲された孫堅は数十騎と共に突破します。しかし孫堅は赤い頭巾をいつも被っていたのでどこにいるかバレバレでした。

 

そこで孫堅は祖茂に自分の頭巾をかぶらせデコイにします。その策が的中。無事孫堅は逃げ延びる事ができたのでした。めでたしめでたし。あ、祖茂さんも追い詰められると頭巾を焼けた柱に被せて身を隠し事なきを得ました。

 

 

演義では、字は大栄、二刀流の使い手、孫堅配下の武将でしかも、黄蓋、程普、韓当につぐ四番目の大将に格上げされる等、設定が加わります。

 

正史と同じように華雄率いる董卓軍に襲われ、祖茂は孫堅に殿の愛用の頭巾がほしいと言い、祖茂のその発言の意図に気がついた孫堅はしぶしぶ渡します。そして自ら囮となり孫堅を逃がします

 

そして孫堅が逃げたのを確認した後、華雄と交戦。しかしながら多勢に無勢、祖茂は奮闘むなしく華雄に討ち取られてしまいます。

 

 

 

こういった活躍を元にオリキャラとして参戦させました。実力うんぬんよりもデコイとして戦で活躍させる予定です

 

今回はほとんど空気な祖茂さんでしたが、次回以降設定をいかしつつ多少は活躍させるつもりです

 

 

今回をもちまして、天の御遣いはすべて降り立ち、人とコンタクトをとりました

 

今の所、弓音さん→降り立ってから数日。現在、白蓮さんの居城がある遼西郡に移動中

    薙沙さん→降り立ってから二日目。現在、華琳さん達と共に陳留に帰還中

    一刀さん→降り立ってから一週間弱。現在、益州の臨江に滞在中

 

となります。

 

今後、各地の太守や豪族など史実や演義とも違う事がでてきます。魏呉蜀などの大本は真恋姫本編の初期設定通りですが、それ以外の土地では完全オリジナルとなります。史実・演義などと恋姫本編の設定とをうまく融合させる事は実力不足でできませんでした。ご了承ください

 

 

 

話は変わりますが、今回あらたなこころみを試していました。ペンタブ買ってみたのです。オリキャラだす以上、少しでも皆さんのイメージの足しに慣れればと思い挿絵的な物を作る事ができたら素敵ではないですか!

 

とおもったんですが、線を描くこと自体難しく、涙目であります。こんな事ならスキャナー買えばよかった!とはいえ、この文章に負けず劣らずのクオリティなんで皆さんの目に入らなくて正解だったかもしれません。

 

tinami以外のサイトは全くしらないのですが、皆さんすごく上手ですね。見ていて楽しいです。自分はひっそりと個人の趣味でやっているものばかりなので、tinamiで同じ趣味の方々と交流できたらいいなぁと思ってます。

 

今後、もっとこうしたらいいんじゃないか、とかご意見などありましたらご教授ください。

 

最も、完全に趣味の領域で、そこからでるつもりはないのですが、皆さんの目に止まる可能性がある以上、助言は受け止めたいとおもっております。

 

少しでも皆さんの暇つぶしになれれば幸いです。それではまた次回お会いしましょう

 

 


 
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