よう、戦友。
遅くなってすまないな。
お前の好物を持ってきたから許してくれ。
なかなか手に入れるのに苦労した。
よく味わって飲んでくれよ。
なあ、戦友。
覚えているか。
馬鹿な上官を持つことは、人間の一番の不幸だと笑った事を。
笑い事じゃなくなっちまったよ。
まったく笑えない状況だ。
ああ、戦友。
おれはお前が羨ましい。
何の疑問も持たないままいってしまったお前が。
あの頃が一番良かったんだ。
神も勝利も正義でさえも素直に信じていた。
だが、戦友。
おれたちが信じていたものは何だったんだろう。
当たり前だと思っていたものは全て崩れ去ってしまった。
この恐怖が分かるか?
この苦しみが分かるか?
さて、戦友。
そろそろ行くよ。
なに、悲しむことはない。
どうせまた近く会うことになるさ。
あの世でな。
だから、戦友。
待っていてくれ。
また一緒に酒を飲もう。
そして昔を語り合おう。
あの頃のように。
荒野にて。
粗末な枝十字架の前に、ウィスキーボトルがひとつ。
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受付中 09/07/22 18:33
世界観を共通させた短編連作「死者物語」です。 この世界を、未だ数匹の亀と象が支えていた時代。 霧は濃く、森は暗く、神秘と信仰と迷信は絶えず、ただ空だけはどこまでも高かった頃。 忘れられた、彼らの物?
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この世界を、未だ数匹の亀と象が支えていた時代。
霧は濃く、森は暗く、神秘と信仰と迷信は絶えず、ただ空だけはどこまでも高かった頃。
忘れられた、彼らの物語。
世界観を共通させた短編連作「死者物語」です。