No.164239

一刀の記憶喪失物語~魏√~PART2

戯言使いさん

魏√続編です。
今回は流琉と一刀です。理由は流琉が好きだからです。
出来れば、呉と蜀も書きたいので、次回が最終回になりそうです。もちろん、お相手は・・・・

あと、呉と蜀の記憶喪失物語で、まだ誰を書くか決めていないので、もし希望があれば書いてください。頑張って書きます!

2010-08-08 15:23:54 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:12142   閲覧ユーザー数:9384

とりあえず会議を終え、記憶が元に戻るまで、一刀に休暇を与えることで取りあえず事態の収拾をはかることにした。

 

だが、被害は残っている。

 

桂花は相変わらず部屋にこもりがちになり、時々「あーもぅ!どうすればいいのよ!」と叫び声が上がっている。侍女の話では枕に北郷一刀の似顔絵を張り

 

「あの・・・別にあんたのことそこまで嫌いじゃない・・・て言うか・・・その・・・さっきは・・・・ご、ごめ・・・・・あぁぁぁぁ!」

 

と独りで呟いていた。また、そんな可愛らしい一面を見た侍女たちの間で、密かに桂花の人気が上がっているらしい。

 

北郷隊の三人と言えば、相変わらずと言えば、相変わらずなのだが、沙和と真桜のやる気が凄い。今までは警邏に出ていけばサボるのが当然だったにも関わらず、最近では真面目に働き、そして早く帰って一刀の部屋に行き、そこで警邏について報告しているのだ。

 

そして

 

「そっか。頑張ってるんだね。ありがとね、沙和ちゃん。真桜ちゃん。凪ちゃん」

 

と一刀に頭を撫でて貰うのが、一日の楽しみになっていた。しかも、種馬的な展開はなく、ただ頭

を撫でて貰ったり、会話したりなど、とても健全になっていた。

 

 

 

 

 

 

そして、また一人、堕ちた子が生まれた。

 

 

 

一刀が記憶を失って、三日が過ぎた。その間の一刀は至って静かで、部屋で本を読んだり、侍女たちに混ざって家事を手伝ったりと居たって平穏だった。最初は戸惑っていた侍女たちも、真面目に、しかも一生懸命に家事をしている姿にトキメキ、今では誰が一刀と仕事をするかで揉めるほどだった。

 

そんなある日。

 

「ふんふーん♪」

 

可愛らしい鼻歌が台所から聞こえてきた。歌っているのは流琉。軽やかに食材を切り、そして炒めていく。その姿はまるで新妻。

 

「こんにちは。流琉ちゃん」

 

突然の声にびっくりして振り向くと、そこには一刀がにっこりと微笑みを浮かべていた。

 

「!?あ、兄さま。驚かさないでくださいよー」

 

「ごめんごめん、あんまりにも楽しそうだったからさ」

 

「もぅ・・・」

 

流琉は恥ずかしそうに頬を染め、料理の続きをし始めた。だが内心はドキドキだ。ただでさえ、普通の一刀でも二人っきりだと恥ずかしいのに、今の一刀は爽やかだ。爽やかは怖い、流琉は桂花たちを見て、そう感じ取っていた。

 

「流琉ちゃんはお料理が好きなんだね」

 

「!?は、はい。定食屋で働いていたこともあるんですよ」

 

一瞬、ちゃん付けで呼ばれたことに動揺しそうになったが、ここは堪えた。だが、武将としてではなく、普通の女の子のように、ちゃん付けされたことはかなり嬉しい。

 

「あ、あの・・・よかったら食べます?もう少しで出来ますから」

 

「え、いいの?嬉しいなぁ」

 

「兄さまはよく、私の料理を食べてくださったんですよ。思い出しませんか?」

 

「んー・・・・ごめん。やっぱり駄目かな。あぁ、ホントに嫌だよね。記憶なくすの。何かね、大切なことまで忘れているような気がして・・・・」

 

「いいんですよ。きっと、いつかは思い出しますから、ゆっくりと治していきましょう」

 

「・・・・・流琉ちゃんは優しいね」

 

「と、当然です」

 

「・・・うん。そうだね。でもやっぱり早く思い出したいな。だって、流琉ちゃんとの思い出があるんだから」

 

「も、もぅ。兄さまったら」

 

流琉は今、台所に向かっているので、その表情は一刀からは見えないが、その顔は笑顔・・・というよりも、にやけていた。それはもう、嬉しそうににやけていた。いつもは季衣と三人なのだが、

今は二人きり。しかも今は自分だけを見てくれている。

 

「はい。出来ましたよー」

 

流琉は手慣れたように皿を並べ、そして出来立ての料理を並べていく。そして一刀の前には炊きたての白米をよそって置いた。

 

「あれ?どうして僕が白米食べたいって分かったの?」

 

「そりゃあ、何度も一緒にご飯食べてますからね。自然と分かっちゃいますよ」

 

「そうなんだ。ありがとね、覚えていてくれて」

 

「と、当然です・・・・」

 

言葉だけを聞けば、少し威張っているような感じにも受け取れるが、実は「好きな人の好みぐらい、当然覚えてますよ」が省略されている「当然」なのだ。でも、残念ながら流琉にはすべてを語るその勇気がなかった。

 

「うん!うまい!」

 

「よかった」

 

そこで流琉は予想した。

 

きっと、一刀のことだから、「うまい」の次に「流琉はいいお嫁さんになるね」と言うだろう。以前にも言われたことがある。だから、きっと言われても自然の対応が出来る。うん、頑張れ、私。

 

しかし、この一刀は違う。

 

「流琉と結婚したいなぁ」

 

「もぅ、兄さまったら・・・ってえぇ!?」

 

「え・・・どうしたの?」

 

「あ、あの・・・その・・・てっきり・・・・「いいお嫁さんになるね」って言うと思ってて・・・あの・・・・以前にも言われたことがあったから・・・その・・・・もぅ、何言ってるんだろ。私は・・・・」

 

「あ、そうなんだ。それはもちろん、流流ちゃんは可愛いし優しいし、よく気が付くから、いいお嫁さんになると思うよ。だから流琉ちゃんと結婚したいなぁって思ったんだよ」

 

一枚、一刀の方が上手だった。

 

だが、その一枚の厚さはとてつもなく厚い。

 

「も、もぅ!冗談ばかり言ってないで、ご飯食べましょう。冷めちゃいますよ」

 

流琉は普通に接しているつもりだったが、顔がにやけていることに気が付いていない。

 

「別に冗談じゃないよ。もし流琉ちゃんの気に入る男が現れなかったら、僕をお婿さんにしてよ。僕はそれまで待ってるからさ」

 

あはは、と一刀は笑いながら、食事を再開した。

 

しかし、流琉は違った。

 

からん、と箸を落とした。顔がどうなっているかは、今更語る必要はない。

 

一刀は武将の全員から好かれている。結婚なんて出来るはずがない。そんなのは流琉にも分かっていた。

 

でも、だからこそ嬉しかった。今だけは私だけを見てくれている。私と本気で結婚したいと思っている。けして叶わぬ夢だからこそ、その結婚の憧れは強かった。

 

「あ、あの!・・・・私なんかと結婚したいんですか・・・・?ちびだし、胸だって小さいし・・・・」

 

「別に見た目で判断していたわけじゃないし、それに小さくて可愛いよ」

 

時代が時代なら、犯罪チックな言葉だが、この時代ではセーフ。

 

「あ、あの・・・・・実は夢があるんです!あのあの・・・小さくてもいいから定食屋を作りたいんです!」

 

「へぇ。いいね。流琉ちゃん料理上手だからうまくいくよ」

 

「はい!それでですね、兄さまと私の二人で営んで、それで子供が出来たら料理を教えて、今度は子供と三人で定食屋をするんです!」

 

「あはは、それだったら、子供をいっぱい作って、それでもっと大きな定食屋にしようよ」

 

「は、はい!いっぱい頑張ります!それでそれで・・・・・ずっと・・・・兄さまと一緒に・・・・」

 

「流琉ちゃん・・・・ありがとね。僕も流琉ちゃんとなら、そんな未来もいいなって思うよ」

 

「本当ですか!?」

 

「うん。でも、今はやっぱり記憶を治さないと。だから今すぐとかはさすがに無理かな」

 

「あ・・・・そ、そうですよね・・・・」

 

そうだ。今の会話だって、記憶を失っているからこそ出来る会話なのだ。もし、思い出したら、きっとこんな話は出来ない。・・・・分かってる。別にいいんだ。

 

「でもね?夢を見るのは自由だと思わない?」

 

「えっ・・・・」

 

「どうせ作るなら、この国の大通りに作ろうよ。まずは屋台でお金を稼いで、そしてお金がたまったら家を買おう」

 

どや顔を浮かべた一刀に、流琉は嬉しそうに身を乗り出して

 

「はい!でも、妥協はしませんよ!おっきな家を買って、子供もいっぱい作って、それで大きくて幸せな家族にするんです!」

 

 

 

 

 

それからずっと、一刀と流琉は未来予想図を思い浮かべては話し、そしてお互いに幸せそうに笑いあっていた。

 

その時の一刀はそんな未来があってもいい、と本気で思っていた。だが、流琉は魏の武将。所詮、夢だろうと思っていた。

 

だが、流琉は違った。「夢みるだけなら自由」と言われていたにも関わらず、流琉の頭の中では、完全に結婚することが決定していた。普段の流琉ならあり得ない勘違いなのだが、この時の流琉は、幸せの絶頂にいたため、どこか回路が切れていた。

 

それからの流琉は、料理の勉強に更に力を入れ、そして安い物件を探しまわり、そして挙句の果てには、子供の名前までも考えていた。そしてたまに、部屋の前を通り過ぎると「えへへへー」と幸せそうな声が聞こえるという。

 

 

 

その時の一刀は幸せだった。幸いにも、このやり取りを他の誰にも見つかっていなかったからよかったが、それがもし華琳の耳にでも入っていたら・・・・想像するのも恐ろしい。

 

だが、一刀は華琳がどういう人物かを知らなかった。

だからこそ、一刀は強い。無知とは時に強いのだ。

 

そしてその強さにより、華琳の仮面が崩れさる。

 

 

 

 

続く

 

 

 

 

 

読んでくださってありがとうございます。

次回を魏√最終回にして、その次の作品として、蜀と呉を書きたいと思います。まだ、誰とのことを書くかは決めていませんが、もし希望があったらコメントください。出来る限り、頑張って書いていきたいと思います。

 

2次制作は初めてなので、うまく書けているかは分かりませんが、これからも頑張っていきたいと思っておりますので、どうぞお付き合いお願いします。

 

 

ここをこうした方がいいよーなど、意見があったら、コメントください。参考にさせてもらいます

 


 
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