董卓軍との共闘が始まって数ヶ月。
一刀たちは破竹の勢いで連戦連勝していた。
北郷軍は董卓軍の将たちに鍛えられ、数ヶ月前とは比べ物にならないほどに逞しくなっていた。
賈駆、郭嘉、程昱というどこかの国が猛烈に欲しがるような軍師三人が策を考えだし、呂布、張遼、華雄、趙雲といった国一つとれてしまいそうな豪傑たちがそれらの策を実行する。
そしてその個性の強い連中を纏めているのが魔王董卓と我らが北郷一刀くんである。
「月お姉ちゃんたちのおかげで被害も少なくなったし、軍も洗練されてとても助かってるよ」
「そんな。私は何もしてませんから」
「ううん。みんな月お姉ちゃんのために頑張ってるんだから」
「へぅ~」
顔を赤らめて決まり文句を口にするのだった。
「申し上げます! 前方に約二十万の黄巾党を発見。おそらく本隊と思われます!」
兵の報告に緊張が走る。
「とうとうこの戦いで全てが終わるね」
「はい。大陸の平和のために頑張りましょう」
気合いは十分にあるトップの二人。
それは将や兵たちも同じ気持であった。
この戦いに勝てば大陸に平和が訪れるので士気が上がらないはずがなかった。
国を憂う気持ちは皆が持ち合わせていた。
「作戦はどうなってるんだ?」
一刀の質問に軍師三人が前に出る。
「相手は二十万と言っても精々戦えるのは三万ほどよ」
「そうですねー。この前敵さんの兵糧を焼いちゃったので、お腹ぺこぺこなのですよー」
「陣内でも小競り合いが絶えないとの報告もあります」
三人が言うには、黄巾党は大軍と言えど兵の練度も低く、兵糧や装備などが十分でなく、烏合の衆と化しているとのこと。
約十七万人は涙目。
「今、霞と星の先行部隊が工作をしているわ」
「もうすぐ報告が来るかと思われますー」
「敵はもはや我々の掌で踊るのみです」
三人は自分たちの策が成功することを確信しているようだった。
やがて報告が入る。
「敵陣から火の手が上がりました!」
それは成功の報せ。
「さあ、月、一刀くん」
一刀と月はお互いを見合って頷く。
『全軍、突撃ーーーー!』
平和を勝ち取るための戦いが終わろうとしていた。
「このあたりまで来れば……平気かな」
両軍が激突している時、敵本陣から逃げ出す者たちが居た。
「もう声も小さくなってるしねー。……でも、みんなには悪いことしちゃったかなぁ」
黄巾党の首謀者である張角、張宝、張梁の三姉妹であった。
もともと旅芸人だった三人はファンからもらった太平妖術という書に記されていた方法を使って、規模を大きくした。最初はただ歌っているだけでよかったのだが、いつしか暴走したファンたちが略奪などをするようになり、後には引けない状況に陥っていたのである。
そしてこの機会に逃げ出すことに成功したのだった。
三人は自由の身になったことで、これからのことについて話し合っていた。
しかし、そこにいるはずのない人物がやってくる。
「……盛り上がっているところ悪いが、お主らが張三姉妹と見受ける」
北郷軍の将、趙子龍だった。
星の登場に驚きを隠せない張三姉妹。
「大人しくついてくれば悪いようにはしない」
その言葉に三人はどうするか考える。
そこに黄巾党の会員が追いついてきて星の前に立ちはだかる。
「ほう。三人を身を挺して守ろうとする心意気は見上げたものだが……。はぁ!」
星がロンギヌスの槍(龍牙)を一閃すると会員が一斉に吹き飛ぶ。
それを見て張三姉妹は大人しく星に捕まった。
「えっと、君たちが張三姉妹?」
星に連れられてやって来たのは北郷軍・董卓軍が集まる天幕。
「あの子可愛いー!」
「なんでこんなちっさいのがここにいるわけ!? ……でも確かに可愛いわね」
「姉さんたち……この子が天の御遣いよ」
『ええー!?』
噂で天の御遣いは可愛らしい子供だと知っていた張梁――人和が何も分かっていない姉二人を呆れた表情で諭す。
そしてその事実を知った張角――天和と張宝――地和は思わず叫んでしまう。
「北郷一刀です。一応天の御遣いとして義勇軍を率いている者です。今は董卓軍と共闘させてもらってるんだ」
簡単に自己紹介を済ます一刀。
「みんな大好き、天和ちゃんでーす♪」
「みんなの妹、地和ちゃんだよ♪ ……でもあんたの姉になってあげるわ!」
「最初のが長女張角、次に次女張宝、そして私は張梁です」
唯一しっかりしている人和が姉の自己紹介を補う。
張角たちまで女の子だったことに多少驚いたが、一刀は本題に入ることにした。
「どうしてこんなことを起こしたの?」
一刀の直球に三人の表情に陰りが見える。
「ちぃたちだって好きでこんなことしてたんじゃないわよ……」
最初に口を開いたのは地和だった。
それを皮切りに三姉妹が代わる代わる話し始める。
天和はほとんど喋ってはいなかったが。
「なるほどね。つまりは暴走したファンがメーカーの本社を襲うようなものか」
一刀の結論は合っているようで間違っていた。
「一刀くんが何言ってるか分からないけどあんたたちに責任がないってわけじゃないのよね」
その言葉に三人は俯いてしまう。
「まっ、どうするかは月と一刀くんに任せるけどね」
全てをこの連合軍を率いる二人に委ねる詠。
他の者も同様に頷く。
「分かった。それじゃあちょっと月お姉ちゃんと二人で話し合うよ」
「へぅっ!?」
二人という言葉に激しく反応する月。
そんな月を余所に他の者はぞろぞろと天幕から出て行った。
千載一遇の好機。
そんな言葉が月の脳裏によぎった。
「へっへっへぅ」
獰猛な笑みを浮かべながら一刀に焦点を合わせる月。
その様子は、宛ら捕食者と獲物のような関係に見えた。
「どうしようか月お姉ちゃん」
「へぅ!」
しかし一刀を襲うすんでのところで一刀の声によって正気にもどった月。
「えええええっとですね、私としては助けたいと思っています」
「俺も出来れば助けたいと思ってる」
意図してやったことではないので生きて罪を償うことを願う二人だった。
「ということで三人は俺たちの方で保護しようと思うんだけどいいかな?」
月としばらく話しあって一刀たちが引き取ることになった。
その理由は月たちは官軍であるので張三姉妹の正体がばれる可能性が高かったからである。
もちろん北郷軍でもその可能性はあるのだが、董卓軍よりは可能性が低いだろうということでこういう結果になった。
「うむ。一刀くんが決めたことなら私は反対しない」
「そうですねー。これを機に風も歌うのです」
「ちょっ、それは私の役目です」
なんやかんやで反対されることはなかった。
「私たち生きてもいいんですか?」
その様子を見ていた張三姉妹は唖然としていた。
下手すれば死刑もありえると考えていたからだ。
人和の一言は張三姉妹の気持ちを代弁していた。
「うん。確かに君たちがしたことは大陸を混乱の渦に巻き込んだ。でもそれは切欠に過ぎないと思うんだ」
一刀は遅かれ早かれ何らかの形で民の不満が爆発すると考えた。
短期間ではあるが一刀が見た後漢王朝はそこまでひどいものであった。
「それに君たちの歌は人を幸せにすることができる。だからこれからは人の幸せのために歌い続けて欲しいんだ」
その言葉で三人は気付かないうちに涙を流していた。
「ちぃたちの歌でも人を幸せにできるの?」
「もちろん。黄巾党のなかにだって三人の歌に救われた人がたくさんいたんだ」
確かにそういうことを言われたこともあった。
「だからその歌を大陸中に広めることができるように頑張ろうね」
『プハッ』
最後に一刀くんスマイルをいただいた三人。
他の者と違って耐性が全くない三人にはヘビー過ぎたのだった。
こうして黄巾の乱は終結し、大陸に平和が訪れた。
しかしこれは始まりに過ぎなかった。
後漢王朝崩壊の足跡はすぐそこまで迫っていた。
<次回予告>
「月初号機、アンビリカルケーブル切断! 活動限界まであと五分です」
「へぅ!?」
反董卓連合殲滅の命を受けた一刀くんと月初号機。
「…………へぅ」
しかし圧倒的な戦力差を前についに月初号機は活動限界をむかえてしまう。
なす術なく沈黙する月初号機。
パイロットである北郷一刀は仲間を守るために必死に訴えかける。
「動け動け動け動け動け動け動け動け動け、動いてよーーーー!」
一刀の必死の呼びかけに応えるかのように月初号機は動きだす。
「へぅーーーーーーーーーーーーーーーー!」
次回、真・恋姫†無双 頑張れ一刀くん改 「暴走する月初号機」お楽しみに!
この次もサービス、サービス!
Coming Soon!
<おまけ>
「それじゃあみんなまたね」
「へぅ~、一刀くん……」
「ほら月、泣いてないでちゃんと見送りなさい」
「………………詠も泣いてる」
「なっ、泣いてなんかいないわよ!」
「そりゃしゃーないわ。ウチかて涙がとまらんもん」
「一刀くん、さらばだ。次こそは我が真名を…………すまん」
「風たちには何もないようですねー」
「眼中にありませんね」
「確かに至高のメンマを前にするとそれ以外目に入らなくなると聞くが……」
こうして北郷軍と董卓軍は別れた。
最近エヴァにはまりました(´・ω・)
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夏バテです(´・ω・)
だんだん内容が混沌としていく希ガス(´・ω・)
気にしないでね(´・ω・)