No.161889

『舞い踊る季節の中で』 第69話

うたまるさん

『真・恋姫無双』明命√の二次創作のSSです。

笑顔を取り戻した一刀、
そしてそんな一刀を見守ってきた翡翠は、一刀が引き入れた新たな家族に戸惑いを覚えるも、
一刀のために、二人を認めようと努力するが……、

続きを表示

2010-07-30 17:50:45 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:18015   閲覧ユーザー数:11893

真・恋姫無双 二次創作小説 明命√

『 舞い踊る季節の中で 』 -寿春城編-

   第69話 ~ 羽が舞う空に、輝く宝石は温かな光を放つ ~

 

 

(はじめに)

 キャラ崩壊や、セリフ間違いや、設定の違い、誤字脱字があると思いますが、温かい目で読んで下さると助

 かります。

 この話の一刀はチート性能です。 オリキャラがあります。 どうぞよろしくお願いします。

 

北郷一刀:

     姓 :北郷    名 :一刀   字 :なし    真名:なし(敢えて言うなら"一刀")

     武器:鉄扇(二つの鉄扇には、それぞれ"虚空"、"無風"と書かれている) & 普通の扇

       :鋼線(特殊繊維製)と対刃手袋

     得意:家事全般、舞踊(裏舞踊含む)、意匠を凝らした服の制作、天使の微笑み(本人は無自覚)

        気配り(乙女心以外)、超鈍感(乙女心に対してのみ)

        神の手のマッサージ(若い女性には危険です)、メイクアップアーティスト並みの化粧技術

  (今後順次公開)

 

翡翠視点:

 

 

今まで、自分は異邦人なのだと、何処か私達とは離れた場所で、私達を見ていた一刀君ですが、

袁術との一件で、一刀君が笑顔を取り戻し初めて以降、一刀君は順調に、いいえ急速に回復しています。

楽しい事があれば、何処か辛そうでも笑顔を浮かべ、

悪夢に魘されても、素直に私の手の温もりで、静かな寝息を取り戻して行きます。

それは、一刀君が本当の意味で、この世界の住人で在り続ける事を決意した現れだと思います。

その事は私達にとって、とても喜ばしい事です。

その一刀さんの決意は、一刀さんの心を支えとなってくれる筈です。

辛い事にも耐えうる糧となってくれる筈です。

 

………でも、一刀君の心情を思えば、素直に喜んでばかりにはいきません。

一刀さんの決意、それは、天の世界との精神的な決別をも、意味しているからです。

それはある意味、自分の半身を持って行かれるのと同じ事でしょう。

遠い異国に行くとは、また別の意味で辛い事だと思います。

ましてや、一刀君の家族は健在で、友達も多く居たと言う事です。

平和な世界に見切りをつけ、いつ死ぬか分からない、この世界に身を置く事を決意する。

それは、例え帰る方法が分からないと言っても、決して容易に決意出来る事ではない筈です。

 

だから、あれだけ私達のために頑張ってくれた一刀君は、幸せにならなければいけません。

一刀君が私達に望むように、一刀君も笑顔で居られるような国にしなければいけないのです。

この世界の住人で居る事に、喜べるような国を作らなければいけないのです。

 

だけど、私は、私と明命ちゃんは一刀君にそれを望んでいながら、

私達は一刀君を傷つけるのを恐れてしまい、一刀君にそれを分からせる事が出来ませんでした。

それを一刀君に教えたのは、袁術と張勲の二人でした。

袁術のまっすぐな思いが、張勲の二人の性格を考えた根回しが、一刀君に笑顔を取り戻させたのです。

 

奴隷と言う身分に堕とされた二人にとって、その主である一刀君は絶対的な存在。

だけど、あの時の二人の一刀君を思った思いに、何の嘘も、下心もありませんでした。

ただ純粋に、笑顔を求めての行動で、その純粋な想いが、一刀君の心を解かしたのだと思います。

 

そしてその事が、私達に二人のその姿が、本当の二人の姿なのだと、

袁家の老人から解放された、本当の二人の想いなのだと理解しました。

ただ純粋に、民の笑顔を求め、まっすぐに行動する。

まぁ張勲に関しては、苦笑せざる得ない所が幾つかありますが、

多少屈折してはいても、その想いは確かなものだと分かりました。

 

 

 

 

「七乃ー、七乃ーっ、助けてたもれーーーっ」

「あ~~、はいはい、今行きますから、動いては駄目ですよ~~」

 

部屋の外から、そんな二人の騒がしい声が、今日も響き渡ります。

 

「ぷるぷる体を震わせながら、涙を浮かべて踏ん張る美羽様、とても可愛いですよぉ~」

「ぬぉぉ~、七乃ーっ、そんな事言っておらんで、早く助けてたもれーーっ、妾はもう限界なのじゃ」

「何処まで耐えらるか見物ですねぇ~、と言いたいところですが、そろそろ本当に限界のようですね」

「ふぅ~、助かったのじゃ」

 

………本当、よく毎日飽きませんねぇ。

想像はしていましたが、張勲はともかく、袁術の家事の駄目ぶりは、目を覆うばかりです。

確かに余計な知識を身につけさせないために、袁家の老人達が教育を施すのを禁じてきた以上、

出来て当たり前の事が出来なくても当然なのですが、あの駄目ぶりは想像以上でした。

悪意が無く、一生懸命なだけに、怒る訳にもいきません。

張勲もそんな袁術をからかうも、きちんと教えていっていますし、袁術も言われた事を気をつけようとしているのは分かります。

一刀君曰く、経験が足りていないだけで、気をつけながら多くの経験を積んでいけば、ああいった事も無くなって行く、と言う事でしたが…………減りはしても、無くならない気がするのは気のせいでしょうか?

 

何にしろ、あんな状態では、為政者としてならともかく、一民としては『民の笑顔のために尽くす』なんて事は出来そうもありません。 と言うか、危なくて屋敷の外にもやれません。

とにかく当分は、最低でもこの屋敷の家事が満足に出来るようになるまで、民へ償うための行動など、させる訳には行きません。 どんな問題を引き起こすか、分かったものでは無いからです。

 

まぁ、そう言う訳で、張勲に教わりながらも、一生懸命にやっているようですが、まだまだ先は長そうです。

ちなみに、一刀君の願いもあって、食事とお茶に関しては、今まで通り一刀君がやってくれています。

茶館を辞めた一刀君にとって、数少ない日常との繋がりを手放したくないと言うのもあるのでしょう。

ですが、いつまでもそう言う訳にもいきませんし、袁術の修行の件もあります。 そんな訳で、袁術の様子を見て、料理も少しづつ教えていこうと言う事になっています。

そして私的には、将来、交代でやっていきたいと考えています。

袁術もそうですが、この際、明命ちゃんも、もう少し料理が出来るようになっておくべきだと思いますし、

私も、より腕を磨きたいとも思っています。

 

ちなみに、張勲ですが、城の侍女以上に大抵の事はこなせるようですが、やはり一刀君に家事全敗は衝撃だったらしく、半日程、袁術を放っておいて、壁と向き合って、何か ぶつぶつ と独り言を言っていました。

………その気持ちは痛い程よく分かります。

 

話が逸れました。

何にしろ、一刀君は、二人を新たな家族として迎え入れているようです。

その事に不満はありません。

二人が本当に憎むべき相手でないと、二人の本当の姿を知った今、

一刀君がそれを望んでいるのなら、それも仕方ない事だと思います。

問題は………そろそろ、答えを出すべき時なのかもしれませんね。

 

 

 

そんなある日の事でした。

重い目蓋を何とか無理矢理上に抉じ開けて、何時もの様に朝を迎えていると

 

「ぬぉーーっ、主様、凄いのじゃ。 これを本当に妾に?」

「ああ、一応そのつもりで作ったんだけど気に入らなかったかな」

「そんな事無いのじゃ、七乃さっそく着替えてみるのじゃ」

「え……えーと、私もでしょうか……」

「当たり前なのじゃ」

 

騒がしい声が朝から聞こえてきます。

いったい朝早くから、何なのでしょうか?

私は、まだ半分眠っている体を無理矢理起こして、身支度をして、何時もの様に食堂に向かうと、そこには、

 

「ぴったりなのじゃ、さすが主様なのじゃ」

 

そう袁術は、私以上に無い胸を張って、自慢げに見た事もない服を、一刀君に見てもらっていました。

一方、張勲と言えば、反対側の出入り口で、体を隠す様にして顔を覗かせていましたが、

 

「七乃も恥ずかしがっていないで、主様に見てもらうのじゃ」

 

そう言って、袁術に腕を引っ張られて、部屋の中に強引に連れ込まれて来ました。

張勲の着ている服も、下半身の布の長さに違いはあるものの、袁術と意匠は殆ど同じ服でした。

 

「スカートじゃなくて、下の布の長さは、普段着ているものと、そう差は無いはずだったけど、美羽みたいに

 膝下まであった方が良かったかな?」

「いえ、そう言う事じゃなくて、 こう言う『ひらひら』したのは、私に似合わないというか・」

「えっ? よく似合っていると思うけど。 うん、可愛いと思うよ」

 

一刀君は、そう言って、ひらひらした服に、恥ずかしげにしている張勲に、例の笑顔をしてみせます。

 

「……うぅぅっ」

 

その一刀君の暖かな笑顔に、張勲は顔を赤くしながら呻る事しかできず。

そこへ、

 

「妾も七乃に、その服はよく似合っていると思うのじゃ」

 

袁術も張勲の心境などお構いなしに、一刀君に賛同して、張勲の新しい服を褒めちぎります。

 

「おはようございます。 朝から騒がしいと思ったら、何をやっているのですか?」

「子瑜見てたもう。 主様が妾達のために作ってくれたのじゃ」

「よく似合っていますよ」

 

私は、纏わり付いてくる袁術に、素直に一刀君の服を褒めながら、一刀君を見ます。

 

(どう言う事ですか?)

(二人には大切な事を気づかせてもらったお礼も含めて、作業服をと思って、………なんか怒ってない?)

(そう見えますか? なら、どうしてでしょうね?)

(えーと、……とにかく、美羽は、あの君主の時の服で作業してたろ?

 あれでは、動きにくいだろうと思って、と言うのが発端だから、変な意味はないよ)

(で、わざわざ時間と手間を掛けてまでですか? 服屋に仕立てさせる事だって出来たはずですよ)

(いや、俺あまり金ないし)

 

ぴくっ

 

(以前、将になるために、支度金を貰っている筈ですが、それはどうしたんですか?)

(いやあれは借金の返済に充てたり、残りは使う予定が)

(………それについては、後で詳しい話を聞いてもよろしでしょうか?)

(………か・勘弁してくれ。 誓って無駄遣いしていないから)

(あの~、だったら、別に私まで用意してくださらなくても良かったのでは?)

 

 

 

 

私と一刀君が袁術に聞こえない様に話していると、張勲がそう割って入ってきました。

張勲としては、新しい服はどうにも気恥ずかしいらしいです。

まぁ、どちらかと言えば、可愛い系の服ですから、普段ああいった服を好んで着ている張勲としては、着心地が悪いのかもしれません。 でも、張勲はそう言っていますが、実際よく似合っていると思います。

張勲が着ている服は基本的に袁術と同じですが、微妙に飾り布等の意匠が、袁術のものと違い、可愛さと格好良さを同時に含んでいます。 まぁ、後は好みの問題なのでしょうね。

 

実際の処、二人へのヤキモチを置いておけば、一刀君の用意した侍女服(?)は良くできていますし、その本当の意図も分かります。 張勲もその辺りの事は、分かっていると思います。

そして、その意図が分かっているからこそ、好みではなくても、こうして一刀君の用意した服を着ているのでしょう。

問題はこの娘です。

 

「袁術、その服を着るという意味が、どう言う事なのか分かっているのですか?」

 

私は、袁術の前に行き、真っ直ぐと彼女の目を見ながら聞きます。

そんな私の真剣な目と口調に、袁術は自分の来ている服の左胸の所に一度目をやると、

 

「もちろんじゃ、主様の名を汚さぬ様、頑張ってみせるのじゃ」

 

そう真っ直ぐ、元気よく答えます。

袁術が見た左胸、そして両肩の所と、背中の上の方、其処には十文字の紋が、一刀君の牙門旗と同じ紋が小さく、だけど確かに目に付く様に刺繍されています。

派手で一風変わった侍女服、そして紋、それは二人が、天の御遣いの庇護下にいる事を示していると同時に、

二人の行動が、そのまま天の御遣いの評判に影響する事を、意味しています。

一刀君は、二人を守るために服を用意したのでしょうが、実際の所、それは一刀君の思っている以上の影響があります。

袁術が、何処までその意味を理解しているか分かりませんが、

先程の返事からして、多少なりとも理解しているようです。

なら、今はそれで構わないでしょう。

後はその身をもって学んでいくだけです。

 

「そう、なら頑張ってくださいね」

「うむ、分かっておるのじゃ」

 

そうして、二人は、本当の意味で一刀君の、『天の御遣い』の庇護下に入る事になりました。

 

 

そして、その次の日の夜

 

 

「何か良い考えが無いでしょうか?」

 

自室で、持ち帰った竹簡を目の前に、私は自答自問を繰り返します。

限られた時間と予算の中で、出来る事は自ずと限られています。

だけどそれを如何に有効に使い、より良い結果を出す事が、文官としての腕の見せ所です。

今の状態でも十分問題はないのですが、最近、今までにない良い案を出す人間が居るおかげで、私としては、負けてられないと頑張って居るのですが、目の前の案件に頭を悩ませてしまいます。

もう少し、何とかなりそうな気がするのに、その方法が思いつかないのです。

こう言うのは、どちらかと言えば朱里の方が得意なんですよね……、

 

「仕方在りません。 勉強も兼ねて一刀君に相談してみましょう」

 

夜の廊下を、私は鼻歌交じりに、足を進めます。

一刀君との夜の勉強会、久しぶりな気がしますが、少し楽しみです。

………もし以前の様な気分になっても、もう我慢する理由もありません。

それにもしかしたら、一刀君の方から…………下着だけでも、替えてきた方が良かったでしょうか?

そんな事を考えていると、

 

『ん、ぅ、む・無理なのじゃ。 こんなの入らないのじゃ』

 

え?

 

『大丈夫ですよぉ~、ほら、ゆっくりで良いですから、入れてみてください』

 

ゆっくりっ!? それに、入れるって!?

一刀君の部屋から聞こえてくる袁術と張勲の声に、聞こえてくる内容に、私は体を強張らせます。

 

『こんな太いの、入らないのじゃ』

 

ふ・太いですか!?

 

『大丈夫ですよ。 一度入ったではないですか、あの時の同じ要領でやれば良いんですよ』

『あの時は夢中だったので、よく覚えていないのじゃ』

 

い・一度入れた!?

 

『ん、ぅんっ・・・は、入ったのじゃ』

『入っちゃう時は、簡単に入っちゃうものなんですよ。

 さぁ、美羽様後はこうして、入れて抜いてを繰り返してください』

 

入れて抜いてって、………えっ、えっ!?

いったい。いつの間にそんな関係に?

 

『いっ…痛いのじゃ』

『ほらほらっ、駄目ですよ。

 慣れない内は、ゆっくりと、優しく繰り返してください』

『う、うむっ、分かったのじゃ』

『ご主人様、美羽様上手くやれていますよね』

『ああ、上手くやれているよ。 その調子で・』

 

限界でした。

二人を一刀君のただの家族として受け入れる事には、納得していましたし、私も二人を認めようと考えていました。

だけど、此処まで私は認める気はありません。

 

ばんっ!

 

「一刀君っ! いったい何をっ」

 

 

 

 

「え?」

「うひゃぁーっ・・・・・・・あっ、せっかく入ったのが、抜けてしもうたのじゃ」

 

一刀君の部屋に押し入った私の目に映ったのは、

私の突然の乱入と言うか大声と剣幕に驚いた一刀君と、

自分の手元を見て、情けない顔をしている袁術、

そして、面白げに笑みを浮かべている張勲でした。

部屋の中は、私の想像していたような事など何一つなく、

袁術は、張勲に教えられるように、手に持った裁縫針と、綺麗な色で染められた布の端切れを握っており、

一刀君は、少し離れた所で椅子に座って、書物片手に袁術達を見守っていました。

 

………つまりそう言う事ですか、袁術の裁縫の勉強を、一番腕のある一刀君の部屋で行い。

袁術と張勲のやり取りを、私が勘違いしたと………、いいえ、勘違いさせられたと言う訳ですね。

 

「おやおや、子瑜さん、そんな血相変えてどうしたんですかぁ~?」

 

私がその元凶を睨み付けるなり、彼女は笑みを浮かべながら、からかう様に言ってきます。

間違いありません。 ……確信犯です。

一方一刀君は、ぽかーんとしており、袁術は苦労して針の穴に通した糸が、私の乱入に驚いてしまったあまりに、抜けてしまった事に、悲しげな表情をしていました。

袁術はともかく、一刀君は相変わらずのようですね。

私は一刀君の袁術の様子を見ながら溜息を吐くと、

 

「ぬぁぁーーーっ! 見るなっ、まだ見ちゃ駄目なのじゃ」

 

えっ?

私の溜息に、我に返った袁術が、そう叫びながら、自分の手に持った物と、目の前に置かれた、おそらく見本と思われる物をその小さな体で、覆い隠します。

ですが、私の目にはそれはしっかりと映っていました。 ………今のは、髪飾りですよね。

そして、そんな袁術の様子に、一刀君は少し困ったように苦笑を浮かべながら、頬を掻いています。

今の髪飾りの色的に、どちらかと言えば明るい髪に似合う色でした。

そう袁術や私の髪のように、金色の髪に一番生える色でした。

そして、袁術本人の物であれば隠す必要はなく、一刀君も困った顔はしないでしょう。

 

……そう、そう言う事ですか。

 

張勲は私が部屋に近づいている事に気づいて、私が勘違いするような言葉を、袁術を誘導して聞こえるように言ったのでしょう。

整理整頓が上手くない袁術が、裁縫の練習のために広げ放題にした部屋の現状です。

慌てて隠した所で、間に合わないと判断したのでしょう。

だから私が、引き返せば……は多分考えていませんね。 なら隠しても無駄ならと、遊んだのでしょう。

むろんそれだけではなく、袁術のしようとしている事が、私に受け入れやすくなるように、敢えてあんな事をしたのでしょう。 まぁ構いません。 それは、袁術の気持ちに免じて受け入れましょう。

だけど……、

 

「一刀君、ちなみに先程の袁術と張勲の会話を、目を瞑って、頭の中で反復してみてください」

「えっ? 何でそんな事を、…………………ちょっ、まてっ、誤解、誤解だからっ」

 

私の言葉に、頭を傾げながらも、やってみた一刀君は、顔を赤くして慌てます。

どうやら、私の行動を理解してくれたようです。

問題は、

 

「張勲、……ちょっとお話があります」

「えっ………あ・あの・なんでしょうか……あっ、美羽様、今日はそろそろお休み・」

「袁術、少しばかり張勲をお借りしますね」

「わ・分かったのじゃ」

 

私の笑みに何故か、いきなり逃げ腰になる張勲と、小動物のように震えだす袁術、

一刀君は何故か張勲に対して合掌していますが、まぁ今はいいです。

私は袁術に断りを入れてから、張勲を強引に部屋の外に連れ出します。

 

 

 

 

再び一刀君の部屋に戻った私は、なぜか私の姿を見るなり、また震えだす袁術の傍により、

先程抜けてしまった糸に、針の穴を通します。

そして、袁術にそっと手渡してから、袁術の後ろにまわって、彼女の両手を優しく包み込むように持ちます。

 

「ほら、こうやって左手で布をしっかりと固定して、ゆっくりでいいから、右手を動かせばいいの」

「う・うむ、でも主様や七乃は、両手を使って速くやっておったのじゃ」

「それは、もっと上手くなってから、覚えれば良い事よ。

 今はゆっくりでも、丁寧にやる事の方が大切です」

「そ・そうなのか?」

「そうですよ、いくら速くても、仕事が丁寧でなければ何の意味もないわ

 それとも、貴女の血で汚れた髪飾りを、私にさせるつもりですか?」

「ぬぉっ、これはその、違・」

「ほらっ、手元から目を離さないの。 これ、私に贈ってくれないの?」

「うぅぅ、してくれるのか?」

 

袁術は、私の言葉に、今度は手を止めてから、私の答えを心配げに見上げてくる。

だから私は、安心するように笑みを浮かべながら、

 

「あら、人の気持ちは分かるつもりよ。

 美羽ちゃんが、家族が心を込めて作った物を、拒絶する気はないわ」

「あっ……」

「預かっていた美羽ちゃんの真名、今日から呼ばせてもらうわ。

 美羽ちゃんもこれから、真名で呼んでくれても構わないわよ」

「よ・よいのか?」

「えぇ、それと、それが完成するの、心待ちにしているわ」

 

私は、少し涙ぐんでいる美羽ちゃんから離れると、

これ以上此処に居ても、美羽ちゃんの気が散ると判断し、一刀君の部屋を後にしかけましたが、

私は、ふと思い出して、入口で足を止め、

 

「一刀君、そこで真っ白になっている人に伝えといて下さい。

 明日から真名で呼んでもらっても構いませんと、それと次からは、相手と方法を選んだ方が良いですよと、

 お願いいたしますね」

「…あ・あぁ……分かった」

 

 

 

 

部屋に戻るなり、私は椅子に深く腰掛け、目を瞑ります。

二人に自分の真名を許した事に後悔はありません。

一刀君が二人を家族に引き入れた時より、そんな日が来るとは思っていました。

二人に罪が無いとは言いませんが、それも仕方なかった事だと言う事は、今なら理解できます。

ただ、こうも早く許す事になるとは、正直予想外でした。

まぁ構いません。 それだけあの二人が良い娘だと言う事です。

 

問題は、二人と一刀君の距離です。

お互い、心に深い傷を持つ者同士、

共鳴し合う所もあるのでしょうね。

……二人の行動、今まで以上に気を付けておかねばいけませんね。

二人を家族と認めても、二人に一刀君を譲る気などありません。

 

 

 

 

……一刀君、もしかして、本当に美羽ちゃんくらいの、小さな外見の娘が好みなのでしょうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 

あとがき みたいなもの

 

 

こんにちは、うたまるです。

 第69話 ~ 羽が舞う空に、輝く宝石は温かな光を放つ ~を此処にお送りしました。

 

今回は、翡翠視点のお話となりましたが、如何でしたでしょうか?

テーマは前回に続き、美羽と七乃がどう認められていくかです。

一刀だけではなく翡翠までからかう、ある意味勇者王な七乃、

むろん、そこには美羽の為と言う計算が合ったのでしょうが、………その後の事まで計算していなかったんでしょうねぇ(w まぁ、なんにしろ、あの屋敷におけるヒエラルキーが、あの二人の心にしっかりと刻み込まれた一話になりました。

 

さて、次回は明命視点の予定です。

テーマのお題は同じ、さて、美羽達は明命の信頼を得る事が出来るのでしょうか

 

では、頑張って書きますので、どうか最期までお付き合いの程、お願いいたします。


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
172
17

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択