No.161887

機動戦士ガンダム サイド アナライズ ストーリー 第一話ver3.0

星野幸介さん

ファーストガンダムを見ていると、一年戦争後半、驚異的にジオンのモビルスーツの性能が上がってきて、次から次へと新型が登場し、画期的な性能のはずのガンダムに追いついてしまい、ついには追い越してしまいます。 あいにく兵器の性能だけでは戦争の勝敗は決まらず、終戦協定は結ばれたもののジオン公国の敗戦となってしまいますが、この一年間の戦争の中で、追い上げの すさまじさの理由は語られていません。なにがこの巻き返し劇の裏にあったんだろうな、どんな人間のドラマが あったのかなと想像してサイドストーリーを書いてみました。ソーテルヌ少将の話によればコンスコン少将がおじで、過去にグワジン級 大型宇宙戦艦二番鑑《グワメル》の指揮をしていたこともあったそうで(笑)

2010-07-30 17:46:37 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:1346   閲覧ユーザー数:1304

機動戦士ガンダム サイド アナライズ ストーリー

第一話 サイド7にて

 

 

1.プロローグ

 

 宇宙世紀0079。

 この年、僕たちのジオン公国は地球連邦に独立戦争を挑んでいた。

 ミノフスキー粒子という、レーダーを無効にしてしまう物質が発見されて、

それを互いの国同士が戦場で大量に巻き散らすため、レーダーの

広範囲索敵(こうはんいさくてき)が不可能になり、レーダーとコンピューターを

連動させて兵器の命中率をあげることもできなくなり、戦闘は人間の目や耳に

頼るしかなくなってしまった。

 そんな中、僕たちジオン軍は長年研究してきた隠し球の新兵器を投入して、

地球連邦軍を恐怖のどん底につき落としていた。

 隠し球の新兵器は一つ目の鉄の巨人、モビルスーツ〈ザク〉という。

投入開始から数日を待たずに、この全長十七・五メートルの巨大人型決戦兵器〈ザク〉は

三十対一という国力差を覆す、絶大な戦果をあげ始めた。

 なにしろ、連邦の小回りが効かない鈍重で隙だらけな宇宙戦艦マゼランや宇宙巡洋艦

サラミスなどはザクに持たせたバズーカの砲弾を艦橋かエンジンに、ちょいと一発

撃ち込んでやれば、宇宙空間では即致命傷になり、あっという間に沈めることができるし、

やつらが頼みの綱にしている固定銃座をかいくぐるなどザクの機体のあちこちに

取り付けてあるスラスター(推進器)を使った高機動力を使えば造作もないことだ。

 モビルスーツの開発が進んでない地球連邦軍は宇宙戦闘機〈セイバーフィッシュ〉を

何十機と使い、ザクの迎撃をしたけれど、ザクとは装甲厚もスラスターのパワーもまるで

比べものにならない。

 ザク専用マシンガンの銃撃で、文字通りカトンボのように一瞬で撃ち落とせた。

 だてに人型をしているわけじゃない。

人間に似せて作られたザクの厚い装甲に包まれた腕は、ザクの大きさに合わせて

作られた巨大なマシンガンや斧を人間以上に器用に扱ってみせるのだ。

 ジオン軍が作り上げた、この一つ目の鉄の巨人の登場は、宇宙において「ジオンに

敵なし」の状況を作りだし、その余勢を駆ってザクを使った地球圏降下作戦により、

連邦軍の戦闘拠点を虱潰しに潰していき地球圏の掌握もかなりのところまで進んだ。

 ジオンに対し、三十倍の圧倒的な資源・人口を誇る地球連邦だったが、一つ目の

鉄の巨人の出現により実質的な戦況はほぼ五分までジオンの優勢になっていた。

 

 そう、あの〈白いモビルスーツ〉と白い補給艦(苦笑)をシャア少佐たちが発見する

までは……

 

 

2.サイド7 実地回収作業録

 

宇宙世紀0079 9月 18日 未明

 戦争の裏方である僕たち隠密部隊〈決戦兵器開発部・回収分析班〉はその日、宇宙空間に

染み入るような漆黒の塗装がされたムサイ軽巡洋艦に搭乗して、民間人居住用スペース

コロニー〈サイド7〉へ最大戦速で急行していた。

 この回収分析班専用ムサイ〈ハーミット〉は、高速戦艦〈ザンジバル〉のエンジンを

横流しして無理矢理取り付けたキワモノで、非公式だがジオン・連邦合わせても移動

スピードで右に出る艦艇はいない最速の船だ。

 ただし、主力武装の主砲三門を全て外し、空いたスペースに目くらまし用の巨大投光器や

残骸回収アンカーなどの特殊装備を取り付けているので、牽制用のミサイルぐらいしか

武装がなく、万が一戦闘に巻き込まれそうになったらエリマキトカゲのごとく戦場から全力で

逃げだすしかないのが悲しいところだ。

 そんなスピードに特化した高速艇を使ってもサイド7に到着した時には、すでに

事態は終了したあとだった。

 連邦軍がV作戦と名付けたザクに対抗できる新型モビルスーツの開発をこの

スペースコロニー〈サイド7〉で極秘に行っているという情報をつかんだジオンのエース、

シャア少佐が事態を確認するため偵察に向かった。

 ところが情報収集が最優先の偵察のはずなのに、ヘマをやらかして戦闘が起きてしまい、

機密の漏れるのを恐れた連邦軍は、新型モビルスーツの貴重な部品をほとんど高性能

ナパームで焼き溶かしてしまった。

 時すでに遅し!! なんという失点!! 

 ムサイからサイド7に上陸したのはいいが、あまりの現場の惨状に思わず、回収分析班一同、

声も出ず立ち尽くしてしまった。

 放棄されて無人のサイド7の静けさが余計に際立つ。

(※この件に関しては、白いモビルスーツのパイロットが使用不能になると装備品の

シールドやメガ粒子砲ライフルをポイポイ捨ててくれるおかげでのちに我々回収分析班は

失点を挽回することができた。会ったこともないパイロットを悪く言うのもなんだけど、

ガンダムのパイロットは凄腕だが、未熟というか粗忽者(そこつもの)だというのが

分析班全員の統一見解だ(笑))

 

<illust=187409>

 

 これからの作業の難航が目に浮かび、がっくりと肩を落とした僕に、

「ナガイ!! なんなのよ、このザマは!? あのシャアの馬鹿、なんて真似してくれるのよ!!

部下の監督不行届きよ!! 貴重な分析サンプルが黒焦げでメッチャクチャじゃない!!

うちらのザクも鹵獲(ろかく)されて、こんなパチもん作られちゃってるのよ、無傷で

鹵獲し返すぐらいしないでどーすんのよ。あのクソガキ、後で呼び出して

とっちめてやるから!!」

 一気にまくし立てて、やつあたりで人の肩や頭をポカポカどついてくるのは、

ハルカ・ソーテルヌ少将だ。

 二十四歳の若さで少将という、ジオンの支配者一族であるザビ家の者以外で、

例外的に少将の地位にまで昇り詰めることができたただ一人の女性。

 そのやんちゃな性格さえなければ喜んで部下に迎え入れたいと

ギレン大将(総帥(そうすい))に言わしめた人だ。

 現在は部下の採用には比較的寛容で面白みのある者を好むドズル・ザビ中将の配下にいる。

 軍位としてはドズル・ザビ中将の姉君であるキシリア・ザビ様と少将で、同格なのだけど、

ジオン公国ではザビ家と同格の者は事実上存在しない。

 ソーテルヌ少将の桁外れな天才的才能と、役職柄表だてないが、輝かしい戦歴を積み重ねてきた

その実力の凄さは長い間付き合ってきた僕たちも敬服している。

 フレンドリーで陽気なロングヘアーのメガネっ娘(口が滑ってオバさんなどと言おうものなら

飯抜き半殺しだが(笑))、その上美人で力持ち、じゃじゃ馬なのが玉にキズ。

 いくら才能があっても上層部に近づくほど規律が厳しいジオン軍の中でよくこんな人が政治的に

生き延びられたと不思議なところもあるが運もいいんだろう。

 

 

「現在の我々の非破壊検査能力や分析技術なら、この黒焦げの残骸や宇宙空間に流失した破片や

部品からでも使用材質やどの程度の戦力を持つ機体なのか割り出すことはなんとか可能です。

怒りを沈めて下さいソーテルヌ少将、どうどう!」

「うぅ~~っ、し、しょうがないわね、じゃあハーミットに引っ込んで頭冷やしてくるから

あとお願いね、イチロー中佐」

 ひどい現場の有様を見て、ショックでズレ落ちた丸メガネをひきあげてソーテルヌ少将は

すごすご立ち去っていった。

「やれやれ、しかしほんとハデに散らかしてくれたよな。なんとか緊急隔壁で気密保ってるけど

地面に大穴開けちゃってるし、資材はかなり宇宙空間に吸い込まれて散らばってるし、こりゃあ

中より外の回収作業の方がいろいろ見つかるかもなあ。骨折れるぞ。ったく」

「イチロー中佐、急ぎましょう。連邦の艦艇が事後調査に訪れる前に速やかに撤収させませんと」

「そうだなフルヤ伍長。おい、みんな悪いけど馬力かけて大急ぎで回収分析頼む!!」

「了解!!」

「全く、敵もクソなら、シャア少佐もクソ野郎だぜ、ったく……!!」

「おいおい、うちの少将ならいいがそんな暴言、少佐に知られたら営倉行きだぞ」

 ぶつくさ文句を言いながらも仲間達の回収作業の手際は猛烈に早い。

 さすがみんな歴戦のプロだ。

 

 鹵獲、回収、分析、開発……

 僕たちは戦わない。

 手を汚さない。

 けれど確実に戦争をしている。   

 やはり手を汚している。

 人を殺している。

 

 呼吸する空気にまで税をかけて、僕たちスペースノイドを長年虐げてきた地球連邦から独立する

ための、これは名誉ある聖戦なのだと上官たちは言うけれど、そんなことは社会の上級クラスの

人間たちの欲望の小競り合いに僕たち下層民衆を利用しているだけだと知っている。

 利用されたその先に、明るい未来なんておそらくないだろうことも。

 けれど、それでも生き延びたい。

 こんな馬鹿な戦争を一日も早く終わらせたい。

 それにつながることを祈って、たとえ道のりが遠くても少しでも今できることに、僕たちは

全力を尽くすんだ……。 

 

 

 第二話予告

 ルナツー寄港後、地球に進路をとるシャアと〈木馬〉。

 その後を追う前に士気を高めるためソーテルヌ少将は

 各地に散らばる三百名の回収分析班をソロモンに非常招集する。

 危険な大気圏での追跡を断念したソーテルヌはルナツーの

 開発基地でザク後継機を視察するが、噴出する問題に頭を痛める。

 その様子をみかねたミラン・アギ操舵長は自分の姪を紹介するのだった。

 次回、「ゲルググプロジェクト」 

 きみは回収の果てに何を見るか?!

 


 
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