No.159383

真恋姫無双~風の行くまま雲は流れて~第43話

第43話です。

ガリガリ君が毎日のエネル元

2010-07-20 23:34:33 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:5639   閲覧ユーザー数:5221

はじめに

 

この作品はオリジナルキャラが主役の恋姫もどきな作品です。

 

原作重視、歴史改変反対の方、ご注意ください。

 

秋の空

 

先日までの夏の暑苦しさは何処へやらに息を吸えば清々しい空気が肺を満たし、鼻孔を擽るのはこれまた夏のそれとは別の乾いた草木の匂い

 

 

熱を纏った夏の風はいつしか心地よい涼しげなものに変わり、耳元を撫でるそれはその風自身のように今がすぐに通り過ぎることを物語る

 

天高く舞う鳥も、森を駆ける動物も来るべき季節に備え腹を満たしその体に蓄える、本能がそう告げるのだろう

 

厳しい冬の前の静かな一時

 

しかし、夏の吸い込まれるような青さとは違った透通った秋晴れの空を見上げていると

 

………

 

こう…

 

…なんというか

 

「ていっ」

 

 

後頭部にピシャンと受けた友人からのそれに彼女は頭を擦りながら自身の横に立つ友人に目をみやる

 

「…稟ちゃんはせっかちだと思うのですよ」

 

非難の視線を向けられた相手は眼鏡の淵を指先で押し上げながら

 

「まだ質問の最中でしたよね?だというのに寝る風がいけないのです」

 

トントンと眼鏡の淵を指で叩く稟と呼ばれた少女

 

さらにつま先で地面も叩きながら今しがた叩いた友人からの解答を急かす

 

「うーん、そうですねえ」

 

風と呼ばれた少女の頭に乗っている人形がササっと差し出した飴をぺろぺろと舌を出して舐め、考えに老け…

 

「稟ちゃんはどう見ますか~?」

 

返ってきた返事は彼女が期待したものとは別のものだった

 

「それは先ほど私が風にした質問ですが?」

 

キラリと眼鏡が光り、その奥の瞳が此方を見据える

彼女の様相に風はというと眠たげな瞼の下から彼女を見つめ返し

 

「稟ちゃんの質問の答えが風の発言ですよ~」

 

やはりマイペースにぺろぺろと飴を舐め続ける

一瞬先ほどの質問が何か忘れたわけではないだろうかとも考えるが

 

彼女に限ってはやはりそれはないだろうと思いなおす

 

胸の前で組んだ腕の肘をトントンと何度か叩いた後

 

「…これが袁家…ですか」

 

二人の視線の先

 

曹魏正面に布陣する一団の姿にフンと鼻を鳴らす

 

 

曹操軍4万の軍勢に対し袁昭軍6万

 

「各地に檄文は飛ばしたようですが…集まりは悪かったようですね」

 

今や冀州・青州・并州・幽州の四州を統一し、その兵力は各諸侯が鬩ぎ合う戦国乱世においても随一と見られていた…しかし

 

「やはり先の戦いで天の御使い有する我が軍の功績、ましてそれが相手となれば…袁家に賛同するものは以前程ではないといったところでしょう」

 

事実先の戦い…董卓の乱においては天の御使いの力を持ってして帝を救い、曹操軍が連合においてもその功績の殆んどを担ったと周囲は認知している

 

「将にしても兵にしても我らが魏に対して寡兵…多少数で上回ったところで我らに敵うものではありますまい」

 

それは自惚れではなく客観的にして紛れもない事実

彼女の分析は実の的を獲ている

 

「ならば…稟ちゃんならどうしますか?」

 

遠くを見つめる友人は風に靡く金色の髪を押さえながら上目遣いに彼女を見やる

 

「横に広げた無様な布陣…中央奥に居座る大将首までの一点を付けばいいのでは?…中央に対する誘いとも見受けられなくもないですが、これだけ広げては両翼が中央に入り込んだ我が方を囲うにしても緩慢なものでしょう」

 

二人が立つ城壁を半月に囲うようにして敷かれたそれを無策なものと切り捨てる稟

 

「曹操殿も短期決着を…とのことですし」

 

国境付近の城を先に抑えたのは曹操軍

とはいえ

 

「大規模な遠征、兵糧、南で虎視眈眈と我らに牙を研ぎ澄ます孫策…この戦いに時間をかけるつもりではないでしょう」

 

もっとも

 

「遠征、兵糧という意味では向こう同じではありますけどね」

 

あえて国境付近に留まったのは向こうの状況も見越してのこと

いくら自領地内とはいえここまで都から離れた地であれば戦に必要なもの、とりわけ兵糧の面では双方に優位性は生まれない

 

「ならば…稟ちゃんならどうしますか?」

 

先ほど自身が答えたそれと同じ質問

 

視線をやれば深緑色の瞳…やはりどこか眠たげではあるが

彼女の視線は真直ぐに此方を見据えていた

 

(ああ…そういうことか)

 

友人の質問の意図をようやく理解した稟はこめかみを指先で二度、円を描くように揉んだ後

 

「狙うのであれば兵糧…『敵側』の物資を断ちこの地に孤立させる」

 

実は我らはまんまと城という名の袋小路に追いやられていたわけだ

 

これでいいですか?と視線を向ければ

 

………

 

……

 

「ていっ」

 

 

さて、餌は撒いた

 

大将である姫の元へはこれ見よがしに薄い布陣の幕を張った

 

曹操軍の物資搬入の道も塞いだ

 

長期戦を見越したような陣構えも敷いた

 

城を囲う布陣にもあえて穴を開けた

 

…あとは

 

「旦那~新しい兵糧届いたってよ~♪」

 

「そうですか…じゃあ手筈通り全てあそこに」

 

「わかった~♪ぜ~んぶ鳥巣に送れば良いんだろう?」

 

「そうです♪ぜ~んぶ烏巣に送っちゃってください♪」

 

…あとはこの餌に食らいついてくれるか

 

大物が食らいついてくれるか

 

何匹食らいついてくれるか

 

 

官渡の地で

 

最初の夜が更けていく

 

あとがき

 

ここまでお読みいただきありがとうございます

 

ねこじゃらしです

 

というわけで官渡の戦いの初日でした

 

というか戦いの前段階ですね

 

開戦は二日目以降で

 

最近めっきりペース落ちてますが大丈夫生きてます(笑)

 

それでは次回の講釈で


 
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