No.155436

理樹ちゃんですのよ

イツミンさん

理樹ちゃんですのよ。
小ネタをたくさん仕込んでたんだけど、容量の都合上カットせざるを得なかったんですのよ。

理樹ちゃんですのよ。

2010-07-05 07:18:27 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:2259   閲覧ユーザー数:2200

 放課後人気のない教室で、恭介は一人、自分の席で

漫画雑誌を読みふけっている。そこにガララと音を立

て、謙吾が理樹を引っ張って入ってきた。

「恭介大変だ!理樹が変なんだ!」

「理樹が……?どこが?」

「ちょっと見てくれ」

「理樹ちゃんですのよ!」

「……元気そうじゃないか。なぁ、理樹」

「本当にそう思うか?この格好をよく見ろ!」

 理樹はスカートを軽く持ち上げ、恭介に向かってお

姫様のように頭を下げて見せた。そう、理樹は女子の

制服を着ているのだ。

「可愛いじゃないか。すごく似合ってるぞ」

「理樹ちゃんですのよ!」

 恭介にほめられ、理樹は胸の前で手を合わせ、飛び

跳ねて喜んでいる。

「はっはっは、無邪気に喜んでるな。なんだよ謙吾、

どこがおかしいんだ?」

「……いいか、恭介。理樹は女子の制服を着ているんだぞ?ニーソックスまでしっかり

とはきこなし、おまけにパンツは縞パンだ!」

「見たのか?」

「理樹ちゃんですのよ!」

「見・え・た!んだ!誰が好き好んで女装した男の下着を見るか!」

「女なら、見るんだな」

「理樹ちゃんですのよ~」

「ま、どうせ来ヶ谷のいたずらだろ。似合っているし、本人も満足そうだし、別に構わ

ないだろ」

「他にもある!お前気がつかないのか?理樹はさっきから、理樹ちゃんですのよ、とし

か言ってないんだぞ?」

「どうやら謙吾はおかしくなったみたいだな」

「おかしいのはお前たちだろう!」

「……理樹ちゃんですのよ?」

「さぁな。どうして急に怒り出したのか、俺にもわからん」

「どうなってるんだこいつらは……」

 その時だ。がららと音を立ててドアを開け、教室に鈴が入ってきた。

「鈴!いいところに来た!二人の様子が変なんだ!」

「鈴ちゃんですのよ?」

「お前もか!最早どうなっているんだこの学校は!」

「うっ!」

 と、突然恭介は呻き、胸を押さえた。

「どうした恭介!」

「きょ……恭ちゃんですのよ!」

 三人が心配そうに近寄ると、胸を押さえた恭介は苦しそうにそう声を発した。

「かっ、感染した!」

 謙吾は驚き、小さく跳びのくと、不意に教室のドアが開きわらわらとたくさんの人間

が入ってきた。「はるちゃんですのよ」「唯ちゃんですのよ」「こまりまっくすなのだわ」

「真人ちゃんですのよ」。口々に「~ですのよ」と言いながら、教室中を埋め尽くす勢い

で生徒たちが入ってくる。教室の中で一人正気を保った謙吾は、あっという間に「です

のよ」集団に囲まれてしまった。

「うわあああ!く、くるなぁぁぁああ!」

 ですのよ~ですのよ~と、まるでうーうー呻くゲームの中のゾンビのように、彼らは

生者(?)である謙吾をめがけてにじり寄ってきていた。抵抗もむなしく、謙吾はです

のよたちに飲み込まれ、その姿は見えなくなった。

人類はこうして、謎の「ですのよウィルス」に侵され、近代文明は滅亡した。

 

 

「というのを思いついたんだが、どうだ?鈴」

「……面白くない」

 自慢げな顔で言う恭介を、鈴はばっさりと切って捨てた。そりゃそーである。そんな

こと、あるはずがないのである。

 がららとドアが開いて、理樹が室内に入ってきた。

「お、理樹。いいところに来た。ちょっと聞いてくれないか?」

「理樹ちゃんですのよ?」

「……は?」

 

人類は謎の「ですのよウィルス」に侵され、近代文明は滅亡する……。

 

かもしれないんですのよ。

 


 
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