No.153938

真・恋姫無双 刀香譚 ~双天王記~ 第十三話

狭乃 狼さん

刀香譚、十三話をお送りします。

洛陽にて、ひと時の安らぎの時を過ごす一刀たち。

その様子を少しだけ、のぞいて見ましょう。

続きを表示

2010-06-28 12:35:06 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:26317   閲覧ユーザー数:22189

 洛陽にて、論功行賞が行われた後。

 

 一刀たちは劉弁の強い薦めもあり、暫しの間この地に滞在することとなった。

 

 とはいえ、新しい任地へ赴くことを考えれば、さほどは長居もできない。

 

 その為、期間は十日とすることにした。劉弁からは、

 

 「も少しゆっくりすればよいのに」

 

 と言われたが、徐州の前牧、陶謙からの引継ぎの事もある。

 

 その日数が限界だった。

 

 そんなわけで、一刀たちはいま、城の中庭でお茶会を開いていた。

 

 参加しているのは、

 

 一刀、桃香、愛紗、鈴々、白蓮、月こと董卓、詠こと賈駆、華雄、霞こと張遼、恋、音々音こと陳宮。本当は華琳も誘ったのであるが、陳留のことを妹の曹仁に任せないといけないので、その為の連絡などで手が離せないということだった。

 

 そう、華琳本人はここ洛陽で警備隊隊長に就任することになったが、父祖よりの領地である陳留まで没収とはならなかったため、一族のものが跡を継ぐ形となった。

 

 華琳の配下である、夏候惇、夏候淵、荀彧の三人は、

 

 「「「華琳さまとともにいます!!」」」

 

 と、同じく洛陽に居残ることを熱望したが、

 

 「あなたたちまでいなくなったら、誰が莉流を補佐するのよ?」

 

 と、華琳に諭され、しぶしぶ陳留への帰還の準備を進めていた。華琳とともに洛陽に残るのは、許緒と典韋の二人となった。

 

 (ちなみに、莉流(りる)とは、華琳の妹である曹仁の真名である)

 

 で、のんびりとお茶をしている一刀たち。

 

 

 

 「けど、恋がいたのにはびっくりだったな。てっきり長安で丁原さんの看護をしてると思ってたのに」

 

 一刀が、隣で肉まんをほおばる恋の頭をなでながら言う。

 

 「?」

 

 りすのように、ほほを膨らませながら、首をかしげる恋。

 

 「こ、これは///」

 

 「か、かわいい・・・///」

 

 その恋を見てほんわかとする一同。

 

 「・・・丁原どのなんだがな、もう普通に立って歩けるまでに回復されているんだ。だが以前のように将として働くことはできないそうだ。なので、恋が櫨植どのの客将として、働いていたんだ」

 

 「・・・(こく)」

 

 すでに慣れているのか、動じずに言う華雄の言葉に頷く恋。

 

 「で、援軍を率いる将としてここに来てもらったわけ」

 

 詠が茶をすすりながら言う。

 

 「まあ正直、最初はこれがあの飛将軍・呂奉先とは信じられへんかったけどな。なんせ」

 

 「わん!!」

 

 恋のそばにいた犬が、軽く吠える。

 

 「・・・セキト、これ、食べる?」

 

 「わん!!」

 

 恋がその犬-セキトに饅頭をわける。にっこり笑顔で。

 

 「・・・これやもん。信じろっちゅうのが無理やで」

 

 肩をすくめる霞。

 

 「あはは」

 

 

 「恋ちゃんって言えば、ねねちゃんはどうやって恋ちゃんと知り合ったの?」

 

 「俺も聞きたいな。・・・ねねの恋へのほれ込みようは、並じゃないし」

 

 虎狼関で再会したとき、一刀に恋が抱きついてきた。一刀はその恋をやさしく抱き返したのだが、その背後から、「ちんきゅーーーー、きーーーーっく!!」と、思い切りとび蹴りを食らわして来たのが、ねねだった。

 

 突然だったので避ける事のできなっかった一刀は、そのまま恋を押し倒す形で倒れこみ、気づいたら、その胸をわしづかみにしていた。

 

 で、そうなれば今度は、当然のごとく、

 

 「アニヴエ!?ナニヲナザッテイルンディスカ?!」

 

 「オニィヂャン!!コンノゼッソウナジーーーーーー!!」

 

 二人の嫉妬神にぼこられる一刀であった。

 

 「・・・ねねはみなしごなのです。長安でその日暮しをしていたねねは、ある日、とうとう食べるものもなくなり、露天の食べ物を盗もうとしたのです。・・・そこに現れたのが恋どのなのです。ねねをお家に連れて行ってくだされ、ご飯も下され、ここに住んで良いとまで言ってくださったのです!!母上様も喜んで迎えてくださったのです!!」

 

 興奮して、早口でまくし立てるねね。

 

 「だからねねは一生懸命、恋どのにお仕えするのです!!空腹をごまかすため読み漁り、身につけた本の知識で、恋どのをお助けするのが、ねねの生きる意味なのです!!」

 

 そんなねねの頭を、優しくなでる恋。

 

 「・・・ありがと、ねね」

 

 「れ、恋どの~~~~」

 

 「・・・いい子だね、ねねちゃん」

 

 「うん。・・・白蓮、どしたの?」

 

 みると、白蓮がうつむいたまま、肩を震わせていた。

 

 そして、突然立ち上がり、

 

 「・・・決めた!!一刀!!私はここに孤児院を作るぞ!!」

 

 「は?」

 

 「もちろん帝の許しは得ねばならんがな。・・・ねねのような子がここ最近の動乱で急激に増えてきている。このまま見過ごすなんて、私には出来ない!!」

 

 力説する白蓮。

 

 「いいですね。帝には私からお話しておきますよ」

 

 月が白蓮に同調して言う。

 

 「ありがとうございます、相国さま!!」

 

 「月(ゆえ)でいいですよ。せっかくみんなで真名を預けあったんですから」

 

 「・・・私も預けられる真名があれば、よかったんだがな」

 

 ぽつりともらす華雄。

 

 

 

 「華雄は記憶が無いんだったっけ」

 

 「ああ。・・・物心ついたときにはすでに一人だった。今の名とて、月さまの父上、先代の董卓さまに付けていただいたものだしな」

 

 一刀の言葉に、そう返す華雄。

 

 「手がかりが無いわけじゃないんだけどね。今華雄が名乗ってる姓は、金剛爆斧に巻かれていた布に書いてあった字なのよ。名前の一部なのかもしれないってことで、先代様が姓として使えば、何がしかの手がかりになるかもって、付けられたそうよ」

 

 腕組みをして言う、詠。

 

 「名の”雄”は?」

 

 愛紗が問う。

 

 「そのままの意味だ。雄雄しく勇敢に育てと、そう付けてくれた」

 

 「・・・良い方だったんですね、先代さんも」

 

 「はい。・・・流行病で命を落とさなかったら、この場にいたのは父だったでしょうね」

 

 寂しそうにいう月。

 

 「月、元気出して。今は僕たちががいるんだから、寂しかったらいつでも言って。ね?」

 

 「ありがと、詠ちゃん」

 

 微笑む月。

 

 

 

 「お。なんじゃ皆。茶会かの?」

 

 「え?」

 

 突如する声。

 

 全員が振り向くと、そこには二人の少女の姿。

 

 『へ、陛下!!それに、協殿下も!!』

 

 全員が慌てて立ち上がり、頭をたれて拱手する。

 

 そこにいたのは漢・十三代帝、劉弁とその妹劉協の二人だった。

 

 「よいよい。みな、頭を上げて楽にせよ。今は公式の場ではないのだ。畏まらずともよい」

 

 そう言ってとことこと歩いてくる二人。

 

 「朕らも混ぜてもらってよいかの?」

 

 「はは!こ、こちらへ」

 

 「ん」

 

 笑顔で一刀の差し出す椅子に腰掛ける劉弁。

 

 「協、そちは座らんのか?」

 

 「私はこのままで。・・・皆も私のことは気にせぬよう」

 

 そういって後は黙りこくる劉協。

 

 「すまんの。妹は口下手なうえに愛想が悪くての」

 

 「陛下、お茶をどうぞ」

 

 「おお、相国手ずからの茶か。有難くいただこう。・・・ふう」

 

 茶をすすり、息をつく劉弁。

 

 「ところで劉北辰」

 

 「は」

 

 「よい機会じゃから一つ尋ねたい。・・・そなたも朕と同じ漢王室のものと聞いた。差し支えなくば、そちの祖先が何処の者か聞かせてくれぬか」

 

 劉弁の質問に、一刀は一瞬躊躇した。

 

 なぜなら、それをはっきりと口にすることは、今後、良くも悪くも、注目を集めることになるからだ。

 

 「お兄ちゃん・・・」

 

 全員の視線が一刀に集まる。

 

 皇帝から直接聞かれた事に答えないのは、下手をすれば不敬罪にも問われかねない。

 

 一刀は意を決し、

 

 「・・・臣の祖先は、漢の六代・景帝、中山靖王が末孫、劉勝にございます」

 

 ・・・・・・・・・・・・

 

 沈黙が流れた。

 

 「漢の景帝・・・。ならば朕の一族ではないか。協、すぐに系譜をこれへ」

 

 「はい」

 

 それからしばらくして、劉協が戻ってくる。

 

 そして、それを読み上げる。

 

 高祖より始まる漢の系譜。その読み上げられていく名を静かに聴く、一刀と桃香。

 

 二人の脳裏には、祖先より代々継がれてきた、北方における苦悩の歴史がよぎっていく。

 

 苛酷な環境と、異民族に悩まされながら、それでも、北方の地を愛し、生きてきた祖先。

 

 自分たちは今後、その地を離れ、新たな土地で生きることになる。

 

 二人の目には、いつしか涙が浮かんでいた。

 

 「間違いありません。劉北辰、劉玄徳は中山靖王の末裔にあたります」

 

 「そうか。・・・朕らにかような親族がおったとは。・・・北辰、玄徳、今後二人には、朕を『命』(みこと)と呼ぶことを許そう」

 

 「「!!」」

 

 「そ、そんな!陛下の真名を預かるなど、我々にはあまりにも恐れ多きこと!!なにとぞご勘弁のほどを」

 

 「だめじゃ。よいな、今後は公式の場以外では真名で呼ぶこと。わかったの?」

 

 「諦めなさい、ふたりとも。こうなった姉上は止められません」

 

 「「・・・御意」」

 

 「よし!!今日は良き日じゃ!!協!酒(ぎろり)・・・は駄目じゃな。食事をここに運ばせよ!!酒抜きは不本意じゃが、このまま宴とまいろうぞ!!」

 

 「はい」

 

 そして、その日は日が暮れるまで、中庭で宴会が続けられた。

 

 

 

 楽しい日々は瞬く間に過ぎるもの。

 

 洛陽滞在の十日間はあっという間に過ぎ、一刀たちは徐州へと発った。

 

 白蓮も幽州へと戻り、恋とねねは長安へ。

 

 それを見送る月、詠、霞、華雄、そして華琳。

 

 さすがに皇帝とその妹は見送りには来れなかったようだが、餞別にと、馬騰が命から預かってきた贈り物に一刀たちは驚いた。

 

 それは、見事なまでの立派な体躯の馬。

 

 純白の体に、紅いたてがみ。

 

 蒼い瞳の駿馬。

 

 名を「蒼炎」と言う。

 

 一刀は蒼炎にまたがり、見送る皆に別れを告げ、まだ見ぬ地、徐州へと出発した。

 

 そこに一刀たちを待ち受けるのは、どんな運命か。

 

 時に、漢の黄平二年。

 

 時代の波は静かに、そして確実に動いていた・・・・。

 

 

 あとがき

 

 いくつか注意書きを。

 

 まず、曹仁ですが、史実では曹操の従兄弟ですが、ここでは妹という事になってます。

 

 

 

 次に華雄の設定は私の勝手な妄想です。

 

 怒んないでくださいね^^。

 

 いずれ素性のわかる話をかくつもりです。

 

 

 それと、一刀と桃香について。

 

 史実の劉備は、本当に漢室の一門だったかどうか怪しいそうですが、

 

 ここの外史においては、正真正銘、漢の一族です。

 

 中山靖王の末裔です。

 

 そういうことでお願いします。

 

 

 

 では、また次回。

 

 本編の続きになるか、拠点になるかわかりませんが、

 

 近いうちにアップしたいと思ってます。

 

 コメントお待ちしております。

 

 (出来れば支援も^^)

 

 それでは~。


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
144
13

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択