No.153141

飛天の御遣い~幕間・伍~

eni_meelさん

「恋姫総選挙」応援作品第2弾です。
五胡との戦で兀突骨を失った猪々子。
そこで明かされる新たな真実。
猪々子たちはこれから・・・・・

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2010-06-25 13:42:55 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:2650   閲覧ユーザー数:2441

この作品は

 

「飛天の御使い」のサイドストーリーです。

 

キャラ崩壊、セリフ崩壊の部分があるとは

 

思いますが、そこはご了承ください。

 

 

南蛮

 

五胡の襲撃から一夜明け、南蛮にはいつもと同じような日常が戻ってきた。しかし、文醜のそばには当たり前にあった日常は無くなっていた。一晩中泣きはらした真っ赤な目を擦りながら、文醜は『彼』と別れたあの場所へと足を運んだ。そこには、昨日の惨劇の跡が未だはっきりと残されている。突き刺さった剣、折れた矢、息絶えた南蛮の兵たちの躯と五胡の兵の躯。そんな光景に目もくれず、文醜は『あの場所』へと真っ直ぐ向かっていく。

 

(アタイがもっとしっかりしていれば、兀ちゃんは死なずに済んだかもしれないのに・・・。アタイだけが生き残っちまった。兀ちゃんはアタイを守ってくれたのに、アタイは兀ちゃんを守れなかった・・・・・。)

 

昨日のことを思い出すと、枯れることなく涙は頬を伝い流れ落ちる。

 

(なんでこんなに悲しいんだろう?どうしてこんなに涙が出るんだろう?)

 

そこで改めて気付く。

 

(アタイも兀ちゃんのことが好きだったんだ・・・・。)

 

思えば袁紹軍の中では、ガサツで男勝りだったし袁紹や顔良に比べたら出るところが出てるわけでもない。故に、女性として見られていなかった。袁紹や顔良との百合百合しい関係であったからそうは気にしていなかったが、そんな文醜を『女』として見てくれたのは兀突骨が初めてだった。今までそんな経験がなかったから、恥ずかしさと戸惑いで兀突骨の気持ちに真正面から向き合おうとしていなかった。そんな態度をとっていても兀突骨はいつも優しい笑顔で文醜のそばにいてくれた。文醜は武人として、友として接してきてはいたが、もしかすると無意識の中で『男』として兀突骨を見ていたのかもしれない。そんな兀突骨に心を許していたのかもしれない。そう思うと何故その気持ちに気付かなかったのだろう、と自分を責めた。袁紹や顔良と同じくらい大切な『友』を無くした文醜の瞳から涙は止まることがなかった。

 

そんな文醜の姿を遠目で見つめる袁紹と顔良。2人も兀突骨を失ったことにショックを受けていたが、それ以上に文醜の姿を見ていることのほうが辛かった。そして文醜の力になってやれない自分たちがもどかしかった。そんな袁紹たちの所に、昨夜の五胡の残党なのか一人の兵が襲い掛かってきた。袁紹を狙った剣撃を、顔良は持っていた剣で弾き返し、返しざま斬り伏せる。だが、その時袁紹が

 

「斗詩さん、殺さないで。この者に聞きたいことがあります。」

 

そう指示を出すと、顔良はその兵を捕らえて袁紹のもとへと突き出した。囚われた五胡の兵はブルブル震えている。

 

「どうして、南蛮に来たんですの?どうしてこんなことを・・・・・。」

 

袁紹の目は怒りに燃えていた。その目を見て益々五胡兵はさらに震え上がる。

 

「おれたちだって好きで攻めてきたんじゃねぇ・・。もし攻めるならこんな少数で攻めたりしねぇで大群でくるさ。」

「では何故!」

「おれたちは成都の西側に位置する小さな邑で静かに暮らしてたんだ。ところがある日、蜀の劉璋の遣いとかいう奴らが来て、邑の女、子供を根こそぎ連れて行っちまって・・・・。返して欲しかったら南蛮を攻め滅ぼせって・・・。でもおれたちは南蛮の民とも仲良くやってきていたから、そんなことはしたくねぇって言ったんだけど、それなら邑人は皆殺しだって・・・・。家族を守るために仕方なく・・・。すまねぇとは思ってる。けども、おれたちの家族を救うためにはそれに従うしか・・・・。」

 

その男の言葉に、袁紹も顔良もやり場のない怒りに身を震わせていた。そんな袁紹たちの後ろにはいつの間にか文醜がいた。文醜は五胡兵をずっと見つめながら

 

「あんたらにこんなことさせたのは蜀の劉璋なんだな?」

 

その問いかける言葉には静かな怒りが篭っていた。そんな文醜の問いかけに男はコクリと頷く。

 

それを聞いて文醜は斬山刀をもって歩いていく。その姿に袁紹と顔良は慌てて声を掛ける。

 

「猪々子さん、何処へ行くんですの?」「文ちゃん?」

「麗羽様、斗詩、アタイは兀ちゃんを殺した五胡の行いを許すことは出来ない。だけど、自分たちは手を汚さずに人質とって戦をけしかけるような下種はもっと許せない!アタイは蜀へ行きます。兀ちゃんの仇を討つために。でもこれはアタイの我侭です。だから麗羽様や斗詩を巻き込むつもりはありません。アタイ一人で行きます。」

 

文醜はそういうと黙ってその場を後にしようとした。しかし、

 

 

 

パァーーーン

 

 

 

そんな文醜の頬を袁紹の平手が打ち抜いた。

 

「何を馬鹿なことを言ってますの!」

 

そういって袁紹は文醜を睨みつけたかと思ったら、そっと文醜を抱き寄せる。

 

「猪々子さん、兀突骨さんが殺されて悲しいのは、悔しいのはあなただけじゃありませんのよ。わたくしだって斗詩さんだって、美以さんたちだってそう思ってます。なのにどうして自分ひとりで抱え込もうとするんですの?私たちは『仲間』でしょう?『友』でしょう?『家族』でしょう?仲間の苦しみは自分の苦しみ、友の苦しみは自分の苦しみ、家族の苦しみは自分の苦しみ。あなたが苦しんでいるのなら、それは私たちも同じなのですよ。だから・・・・。」

 

袁紹は周りを見回し、皆に向けて高らかに宣言した。

 

「兀突骨さんを、私たちの『仲間』を、『友』を、『家族』を殺した蜀の劉璋をみんなで打ち倒しますわよ!」

 

その袁紹の言葉に後方からやってきた美以たちも続く。

 

「麗羽、よく言ったにゃ!美以たちの大切な『仲間』であり『友人』であり『家族』である兀突骨を殺した奴らに、南蛮軍の怒りを思い知らせてやるのにゃ!ミケ、トラ、シャム、南蛮兵総動員にゃ。あと南西にいる妹の孟優にも連絡するにゃ。南蛮の全てを結集して劉璋をコテンパンにブチのめしてやるにゃぁ!」

「「「にゃぁ~!」」」

 

そんな美以たちの姿に文醜は俯いて涙を流す。そんな姿を見た五胡兵の男は文醜に話しかける。

 

「なぁあんた。おれたちも協力させてくれないか?」

 

男のその言葉に文醜は顔を上げる。男は続けて

 

「おれは、劉豹という。蜀との戦、おれたちもあんたたちと一緒に戦う。手を拱いてるだけじゃ誰も救えない。それにおれたちはあんたたちの大切な者を奪ってしまった。だから、おれたちはあんたたちに償わなければならない。それにこれからも南蛮の民と仲良くやったいくためにも・・・・。だから頼む、協力させてくれ。」

 

頭を下げる劉豹に文醜はそっと手を差し伸べて

 

「ありがとう。アタイの名は文醜だ。劉豹、共に劉璋を倒そう・・・。」

「あぁ。」

 

文醜と劉豹は固く握手した。その姿を見ていた顔良は文醜に飛びつく。

 

「文ちゃん、一緒に頑張ろう。兀ちゃんの仇、みんなで取ろうね。」

 

そんな顔良を抱きしめながら、文醜は遠い空を見上げていた。

 

(兀ちゃん、きっとアタイたちが仇、とってみせるから。だから、見守っててな・・・・。兀ちゃん・・・)

 

瞳から零れる涙を拭って文醜は前へ向かって歩き出す。

 

『友』のために・・・・・。

 

『仲間』のために・・・・・。

 

『家族』のために・・・・・。

 

そして・・・・・・

 

 

 

 

『愛してくれた男』のために・・・・・・。

 

 

 

 

あとがき

 

飛天の御遣い~幕間・伍~を読んでいただきありがとうございます。

 

今回も恋姫総選挙の応援作品です。

 

猪々子、猛プッシュ作品です。

 

が、今回で南蛮編はおしまいです。

 

もはやこれはサイドストーリーとは言えなくなってきたような気がしますが・・・・。

 

拙い文章ではありますが

 

少しでも楽しんでいただければ幸いです。

 

感想やコメントもいただけると嬉しいです。

 

よろしくお願いします。

 

 

 

 

 

 


 
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