No.152435

真・恋姫無双 刀香譚 ~双天王記~ 第十話

狭乃 狼さん

第十話、汜水関戦です。

いやもう、疲れました。

書き直してはまた書き直しの繰り返し。

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2010-06-22 10:49:29 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:28365   閲覧ユーザー数:23528

 一刀の旗が汜水関に挙がった翌日。

 

 反西涼連合は汜水関を攻めるべく、進軍を開始した。

 

 その陣容は、

 

 先陣に孫堅。

 

 その右翼に孔融。

 

 左翼に陶謙。

 

 中軍に曹操。

 

 そして袁紹率いる本隊、

 

 後曲に輜重隊の袁術軍。

 

 といった具合である。

 

 そして関の一里(五百m)ほど手前に来たときだった。

 

 関の門が開き、中から軍勢が出てきた。

 

 その数、一万五千。

 

 それを率いるは、

 

 董卓軍所属、張遼、華雄。

 

 馬騰軍所属、馬超、馬岱。

 

 そして幽州軍、一刀と愛紗。

 

 関の前にて対峙する両軍。

 

 場に緊張が満ちる中、張遼が一歩踏み出す。

 

 

 「よお聞けや、叛軍ども!!うちは張文遠!!畏れ多くも帝に弓引くアホたれどもに天誅を与えるものや!!」

 

 張遼の名乗りに、反西涼軍の孫堅が前に出る。

 

 「我こそは孫文台!我らは帝に弓引くにあらず!帝の名を借り、暴政を働く董卓・馬騰に対し、我らこそが天誅を与えるのだ!!」

 

 孫堅の反論に、今度は華雄が一歩を踏み出す。

 

 「笑止!かような流言に踊らされるものに、天はけして味方せぬわ!!」

 

 さらに、馬超もそれに続く。

 

 「華雄将軍の言うとおり!ただ己の名声のために、董相国や母上を利用するやつは、この西涼の錦馬超が粉砕してやる!!」

 

 「小娘どもがよくも吠える。ならば我ら孫呉の兵の力、とくと味わうがよい!!全軍、抜刀せよ!!」

 

  おおーーーーーーー!!!

 

 孫堅軍の兵たちが、意気高く声を上げる。

 

 「うちらも行くで!!華雄隊はうちと正面の孫軍にあたる!翠、蒲公英は右翼の孔融軍に!一刀と愛紗は左翼の陶謙軍や!!全軍・・・突撃ぃーーー!!!」

 

  おおーーーーーーー!!!

 

 激闘の火蓋が、切って落とされた。

 

 

 「・・・解せないわね」

 

 「華琳さま?」

 

 曹操が漏らした一言に、フードをかぶった少女が反応する。

 

 「前曲も左翼も右翼も、それぞれ二万近い兵を率いているのに、向こうは少ない兵をさらに分断して当たってる。・・・桂花、あなたはどう見るかしら?」

 

 曹操に問われた少女、曹軍一の軍師である荀彧は、少し思考を巡らせた後、

 

 「・・・陽動ではないかと。幽州軍を率いるはずの公孫賛の旗が見当たりませんから、どこかしらに伏しているかと」

 

 「そうね。だとすれば、麗羽の本陣狙いかしら」

 

 「おそらく」

 

 「・・・秋蘭!」

 

 「は」

 

 弓を携えた女性、夏候淵が、曹操の傍による。

 

 「聞くかどうかわからないけど、麗羽に伝達を。伏兵が付近にいるかもしれない。斥候を放って調べるようにと。桂花、念のためこちらでも斥候を放って頂戴」

 

 「「御意」」

 

 曹操の命を受けて、駆け出す二人。

 

 (・・・策を練ったとしたら、一刀・・・いえ、桃香かしら。・・・でも、私に一度も勝てなかったあなたたちでは、勝負は目に見えてるわよ?)

 

 

 クスリ、と笑う曹操であった。

 

 

 

 その頃前曲では。

 

 「うおらーーーー!!」

 

 「なんのぉ!!」

 

 ガキイッ!!

 

 何十合めかの剣戟音。

 

 華雄と孫堅が、一騎打ちの真っ最中であった。

 

 「やるではないか、孫堅!江東の虎の名は伊達ではないな!!」

 

 「貴様もな、華雄。・・・うわさでは唯の猪だと聞いていたが、どうしてどうして、噂は当てにならんものだ」

 

 「ならばなぜ、その当てにならん噂に乗った!!」

 

 「それを貴様に話す必要はない!!」

 

 再び激突する両者。

 

 同じころ、右翼では。

 

 「せいりゃー!!」

 

 「なめるな!!」

 

 翠-馬超の槍を紙一重でかわす、黒髪の女性。

 

 「くっ!今のをよけやがるとはな!!名前ぐらいは聞いといてやる、何者だ!」

 

 「あたしの名は太史子義。孫文台が配下だ」

 

 「はあ?何で孫堅の部下が孔融軍にいるんだよ?」

 

 「主命だ。それに、以前少しだけ世話になったことがあるのでな。義理返しといったところだ」

 

 「そうかよ。なら、その義理堅さを後悔させてやる!!」

 

 「やれるものなら!!」

 

 

 

 さらに、こちらは左翼。

 

 「そらそらそらーーー!!」

 

 「・・・あたらないよ、そんな腕じゃね」

 

 褐色の肌の女性の連撃を、こともなげにかわす一刀。

 

 「くっ!・・・まるで母様とやってるみたい。・・・強いわね、あなた」

 

 「あの孫文台と同格扱いとは光栄だね。確か、蓮華のお姉さん、だっけ」

 

 「ええ、孫伯符よ。・・・さ、続けましょうか」

 

 再び剣を構える孫策。

 

 「いいよ。たっぷりと付き合ってあげる。・・・そう、たっぷりと、ね」

 

 

 その戦場を関からみつめる人物がいた。

 

 桃香である。

 

 「・・・そろそろ限界かな?ねねちゃん、こっちのほうは?」

 

 横に立つ少女に問いかける桃香。

 

 「こちらはすべて終わりましたのです。後は合図を送るだけなのです」

 

 答える少女。

 

 「じゃあ、撤退の合図を。・・・わたしたちも、ね」

 

 「はいなのです!!」

 

 

 

 じゃーーーん!じゃーーーーん!じゃーーーーん!!

 

 戦場に響く銅鑼の音。

 

 「!合図や!!退くで、華雄!!」

 

 「応!!勝負は預けるぞ、孫堅!!」

 

 「逃げるか、華雄!!貴様、それでも武人か!?」

 

 「ふ。・・・武人である前に、私は将なのでな!!」

 

 同じく左軍。

 

 「おねえさま、合図だよ!!」

 

 「よっしゃ!!退くぞ、蒲公英!!」

 

 「おのれ、逃がすか!!」

 

 翠に掴みかかろうとする太史慈。

 

 「へへっ!!あ-ばよ!!」

 

 だが、一瞬早く、馬首を返し、馬を走らせる翠。

 

 「くそっ!・・・大笑いする雪蓮の顔が目にみえてくる・・・。あ~~、もう!!」

 

 地団駄を踏む太史慈であった。

 

 そして左軍でも。

 

 「義兄上!!」

 

 「というわけだ。またね、伯符さん」

 

 きびすを返し、駆け出す一刀。

 

 孫策は追わなかった。いや、追えなかった。すでに疲労が足に来ていたから。

 

 「・・・蓮華、あなたの幼馴染君は、とんでもない化け物ね。・・・ちょっとほしいかも」

 

 

 

 「そう、撤退したの」

 

 「はい」

 

 (伏兵もなかったし、いったい何を考えてるの、一刀、桃香)

 

 歯噛みする曹操。

 

 一刀のことも、桃香のことも、よく知っている。そのつもりだった。けど今回は全く読めない。

 

 (・・・あるとすれば、あとは時間稼ぎ?だとしても何のために・・・)

 

 「華琳さま」

 

 「・・・なに?秋蘭」

 

 夏候淵が、思考中の曹操に寄ってくる。

 

 「孫堅軍が関への攻撃を開始したようです」

 

 「・・・そう」

 

 気のない返事をする曹操。

 

 「ただ、関からの反撃が全く無いそうです」

 

 「!!・・・まさか。春蘭!秋蘭!桂花!今すぐ全軍に関への総攻撃を命じなさい!!」

 

 夏候淵の報告を聞き、何かに気づいたように、命令を出す曹操。

 

 「「「ぎ、御意!!」」」

 

 曹操の命令を受け、走り出す三人。

 

 (・・・もう、遅いかもしれないけど)

 

 そして、それから数刻もしないうちに、孫堅軍が関の門を突破。内部に突入した。

 

 だが。

 

 

 「そう。・・・もぬけの空だったのね」

 

 「はい。糧食もすべて空。水源もすべて潰されていたそうです」

 

 「・・・やられたわね」

 

 (最初から汜水は捨てる気だったわけ。・・・やってくれるじゃない、桃香のくせに)

 

 「袁紹さまからは、今後は汜水を拠点に虎狼関攻めを行うと、通達が来ています。糧食と水はすべて、汜水に運び込ませるそうです」

 

 「・・・それしかないわね」

 

 (そう、私たちはそうするしかない。・・・それが狙いだとすれば)

 

 曹操はおもむろに立ち上がり、天幕の外へ出る。

 

 「華琳さま?どちらへ?」

 

 荀彧が曹操に声をかける。

 

 「少し夜風に当たってくるわ。・・・一人にしておいて」

 

 「はあ」

 

 天幕の外はすっかり夜の帳が降りていた。辺りは篝火に照らされている。

 

 「・・・あなたの狙いは解ったわよ、桃香。さあ、来るがいいわ、一刀。私はここであなたを待っててあげる。あなたたちの思惑通り、ね」

 

 曹操は天を見上げる。

 

 その顔は、満面の笑み。

 

 「フフ、ウフフ、アハハハハハハハハ!!」

 

 


 
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