No.151765

真・恋姫†無双~外史を渡る者~「帰還編Ⅲ」

建業を出立した、華琳一行。

その道中華琳は模擬戦の開始を宣言

こうしてさまざまな策略と思いが交錯する模擬戦が始まった!

続きを表示

2010-06-19 22:28:38 投稿 / 全14ページ    総閲覧数:2935   閲覧ユーザー数:2282

~開戦!荒野の模擬戦!!~

 

秋「くっ…」

 

夏侯淵、真名は秋蘭

魏の覇王、曹孟徳の利き腕にして弓の使い。

 

しかし、この戦の最中彼女は苦戦をしいられていた。

 

春「ふふ…覚悟しろ!秋蘭!!」

 

夏侯惇、真名は春蘭

秋蘭の姉にして魏武の大剣の異名を持つ魏の猛将

彼女こそが秋蘭を追い詰めていた相手だった。

 

秋「姉者にここまで圧されるとはな…」

 

春「ふっ!秋蘭の癖は私にはお見通しだ!

ようは矢が放たれる前に抑えてしまえば良いだけのこと!」

 

秋「ふふ…姉者らしい短才な考えだな

しかし、忘れていないか?」

 

春「なにがだ!」

 

北「俺が居るって事を!!」

 

突然、片膝をついた秋蘭を飛び越え一刀が春蘭の前に現れる。

一刀は空中で横なぎの抜刀を放ち春蘭を退かせる。

 

春「ぐっ…!

ここで北郷だと!?」

 

秋「助かったぞ北郷!」

 

北「あぁ…

行け、秋蘭!霞も動いてる

春蘭は任せろ!」

 

秋「承知した!」

 

一刀は刀を正眼に構え春蘭と対峙する。

 

 

事の発端は洛陽に向かう最中のこと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

華「このままじゃ、駄目だわ」

 

何を思ったのか、華琳はそう呟いた。

それは首を繋がれて、華琳の隣に居る一刀にも聞こえた。

 

北「なにがだ?」

 

華「前の戦よ…

偽物とは言えあなたが現れた程度であの様に兵の士気が落ちるなんて言語道断だわ」

 

北「しかたねぇだろ?

俺だっていきなり華琳が現れて敵だったら躊躇するぜ」

 

華「そぅ…?」

 

季「兄ちゃん、それはボクでも同じ~?」

 

華琳の後ろには魏の武官、文官が揃っており一刀の後ろにいる季衣が訪ねてくる。

 

流「兄様…あの…

私も、ですよね…」

 

北「当たり前だろ、季衣や流琉、春蘭、秋蘭、風や稟、凪に真桜に沙和や露、おまけに桂花も俺には大切な人だからな!」

 

華「…っ!」

 

別に深い意味で言った理由はないが一刀のその言葉に華琳は敏感に反応した。

 

桂「なんで私がおまけなのよ!」

 

真「隊長~!ウチも愛してるで~!!」

 

沙「真桜ちゃんズルいの!隊長!沙和もなの~!!」

 

凪「わ、私も隊長を…」

 

などと後ろから聞こえる声に華琳のボルテージは上がっていった。

春「ふ、ふん!」

 

霞「あれ~?惇ちゃん顔真っ赤やないか~どうしたんかな~?」

 

春「べ、べべ、別に赤くない!!

秋蘭の方が赤いぞ!」

 

秋「あぁ言われては嬉しいではないか

姉者も少しは素直になれ」

 

春「う、うるさい!」

 

霞「まぁ、ウチも一刀は好きやしなー」

 

風「風もなんだかうれしいです」

 

稟「華琳様に言われたら…ぶはぁっ!?」

 

稟は妄想し、鼻血を出して馬上で倒れた。

 

華「ぐっ…!

皆の者!これより模擬戦を開始するぞ!!」

 

華琳は身を震わせながら、馬上で高らかに宣言した。

 

北「お、おぃ!

今からか?いくらなんでも無理だろ!」

 

華「黙りなさい!一刀!

桂花、至急準備なさい!」

 

桂「は、はっ!」

 

桂花は華琳に言われてすぐさま準備に取りかかった。

 

しかし、いきなり荒野のど真ん中で模擬戦をやると言われても準備などはない。

 

華「勝った軍には北郷一刀を1日使わせてやるわ

遊ぶなり、いじるなり、好きになさい!」

 

華琳のその言葉に全員やる気を出し、無理矢理準備に取りかかった。

 

北「あ~ぁ…」

 

一刀は唸っていた。

無理だと思われていた準備も天幕の設置から矢倉まで本格的に作り上がってしまった。

その近くでは華琳と一刀以外のメンバーが軍の編成を決めていた。

 

北「人間、やろうと思えばどこまでもやれるもんだな…」

 

華「当然でしょ?曹魏の力を甘く見ないで欲しいわね」

 

華琳は出来たがった両軍の施設を見て得意気に言った。

 

華「さて…一刀、あなたにも今回は戦って貰うわよ」

 

北「えぇ!?

俺が景品なんだから、俺は観客じゃないの?!」

 

華「違うわよ、あなたにも本気でやってもらうわよ

精々、死なないようにね」

 

北「はぁ…やれやれ」

 

凪「隊長、軍の編成が決まりました」

 

凪が駆け寄ってきて一刀に軍編成を報告する。

 

 

西軍

秋蘭、真桜、流琉、霞、稟、風(セット)

 

東軍

春蘭、季衣、桂花、凪、沙和

 

と言う組み分け。

ちなみに華琳は今回参加なし。

理由

 

「私はいつでも一刀をどうとでもできるわ」

 

らしい。

 

 

北「ってなると、俺は東軍か?」

 

凪「いえ、隊長は西軍になります」

 

北「え?

人数的には東軍じゃないのか?」

 

凪「軍師の風や稟は武にはあまり期待できないので、隊長は西軍になりました」

 

北「俺もお前ら相手に期待出来ないのだが…」

 

凪「あと、桂花様が嫌がりました」

 

北「あいつ…」

 

凪「と言うわけで、隊長は西軍です

…残念です…」

 

北「え?なんか言った?」

 

凪「い、いぇ!

私は東軍ですので!じゃあ!!」

 

凪は顔を真っ赤にして東軍の施設に行ってしまった。

一刀も西軍の施設に行き、軍議をしている天幕に入ると西軍の将軍達は地図とにらめっこをしていた。

 

霞「一刀遅いやん!」

 

北「わるいわるい

それで、なんか策はでたの?」

 

稟「…現在の状況では決め手となる一手が見つかりません」

 

稟は眼鏡をクイッと上げ顎に手をやり、考え込む。

 

風「相手は桂花ちゃんですので恐らく、春蘭様を筆頭に力圧しかと…」

 

霞「せやなぁ~

惇ちゃんの力圧しにはウチも適わんしな~」

 

秋「うむ…さらに向こうには凪もいる、沙和も単身ではそれほどでもないが、隊の連帯では強敵だ」

 

真「沙和の隊はなんや、恐ろしく士気が高いからなぁ」

 

北「なぁ…この模擬戦の勝敗は?」

 

地図を片手に一刀は不意にそんな事を聞く。

 

稟「一応、総大将を撃破した時点で模擬戦は終了です

ちなみに東軍は桂花、西軍は風です」

 

真「なんや隊長?

妙案でも浮かんだか?」

 

北「あぁ…これは模擬戦だろ?

だったらこんな策はどうだ?」

 

一刀は全員に策の内容を話す

それを聞いた稟は素早く地図を見直し、一刀の策の細かい所を修正する。

 

 

北「―ってのはどうだ?」

 

秋「うむ、策事態少々危険だが一番の有効策だな」

 

真「まぁ、えげつない作戦やけど、隊長の策に乗っかるわ」

 

満場一致のもと、西軍の策はまとまる

それを見計らってか、模擬戦開始の銅鑼が鳴る。

桂「始まったわね…

いい!あんた達!!華琳様の前で無様な模擬戦はしないわよ!」

 

凪「はっ!」

 

沙「おぉ!

凪ちゃんが燃えてるの~!」

 

凪「当然だ

隊長が懸かっている

真桜には悪いが勝たせて貰う」

 

東軍の天幕では桂花の指示で凪、沙和が遊撃の為に控えている

春蘭と季衣はいつでも迎撃出来るように待機している。

 

そんな話をしていると天幕に伝令が来て、西軍からの動きを話す。

 

「報告!

西軍より、突撃する軍あり!旗は張、典!」

 

桂「先ずは霞と流琉が来たのね…

春蘭と季衣に迎撃を任せなさい

ただし、深追いはするなと」

 

「はっ!」

 

伝令が春蘭に桂花に言われたことを伝えると春蘭は季衣を引き連れ、迎撃に向かった。

 

霞「おっしゃ!春蘭が食らいついたで!!

流琉っち!遅れんなや!」

 

流「はぃ!」

 

霞は並ぶ流琉に威勢よくそう言うと流琉も武器を持つ手に力が入る

そして、春蘭と季衣の部隊と激突する。

 

激しい怒号と斬撃音が辺りには響き渡る。

 

霞「もろうたで春蘭!」

 

春「なめるな!!」

 

神速vs大剣

その二つ名にふさわしい闘いを二人は馬上にて繰り広げる。

 

季「兄ちゃんは貰うよ!!

でりゃあぁぁあっ!!」

 

流「季衣なんかに負けないんだから!!

やぁあぁぁぁっ!!」

 

二人の超重量の武器がぶつかる音はまさに轟音

その場に広く響き渡る。

 

 

 

華「ふむ…先ずは霞と流琉の隊と春蘭と季衣の部隊がぶつかったか…」

 

模擬戦近くの丘に天幕を作った華琳は旗の状況を見て分析を開始する。

 

華「西軍は知略の高い軍、加えて一刀がいる…

しかし、春蘭を始め東軍は圧倒的な戦力を誇る…この状況にどこまで奮戦するか楽しみね」

 

ニヤリと笑みを浮かべる華琳

一方、戦場では西軍がさらなる動きに出ていた。

 

 

霞「そろそろ頃合いやな…

流琉っち!本陣に退くで!!」

 

流「了解しました!

皆さん、反転し本陣に駆け足です!」

 

流琉の大声を上げて兵に指示をすると後ろを気にしながらも西軍は本陣へと退く。

 

春「逃げるのか霞!!」

 

霞「へっへ~ん!

悔しかったら、追いかけてきなや!

春蘭がウチに叶うはずないけどな~」

 

春「な、な、な…なんだとー!!」

 

季「しゅ、春蘭様~

桂花様に言われてるじゃないですか、深追いするなって」

 

流「やぁーい!季衣の弱虫~」

 

と、そこに流琉も露と同じに季衣を煽る。

 

季「な、なんどー!!」

 

流「私が勝ったら兄様と美味しい料理食べるんだもんねーだ!」

 

季「ずるいぞ!

ボクも兄ちゃんと食べるんだ!!」

 

霞「どなんした春蘭?

ビビったんか?」

 

春「ぐぬぬ…

我慢ならん!!

全軍に継ぐ!これより、我らは敵に突撃する!

私に続けー!!」

 

季「流琉のバカー!!」

 

春蘭、季衣の部隊は反転する霞達の部隊を全速で追い掛けた。

 

風「前方に砂塵あり…ですね~」

 

西軍の大将を勤める風が近くに居る一刀と秋蘭に伝える。

 

北「さすがは霞、といったところだな」

 

秋「うむ…上手く姉者と季衣を引っ張ってきたな」

 

北「あぁ、この策の要は霞だからな」

 

秋「しかし、北郷

お前もなかなか悪どい策を思い付いたな」

 

北「それは誉め言葉と受け取るよ

さて、後は真桜と稟に任せて俺たちも行こう

風、後は手はず通りに」

 

風「了解しましたー!」

 

 

 

 

一方、東軍は…

 

「も、申し上げます!

前線の夏侯惇様と許緒様が敵の追撃を開始しました!」

 

桂「何ですって!?」

 

伝令からの報告に桂花は顔を引きつらせる

しかし、これは桂花には予想の範囲内だった。

 

桂「あの猪…

まぁいいわ、一応春蘭達に戻るように伝令を放ちなさい

凪と沙和は本陣の前に守りを固めなさい」

 

「「はっ!」」

 

桂「この程度は予想の範囲内よ…

この戦に勝って、あの汚らわしい北郷一刀に積年の怨みを晴らしてやる」

 

春「全員速さを上げろ!敵は目の前だ!!

待て霞っ!!」

 

霞の後方で怒号を上げ、その怒号で巻き上がっているのでないかと言うほどの激しい追撃を見せる春蘭達

しかし、流石は神速と言われた霞

その追撃にも一定距離を保ちつつ春蘭をいなす。

 

霞(全く、一刀もムチャな要求するで!

一定距離を保ちつつ後退なんてウチにしかできへんで!)

 

そう、この「一定距離」と言うのは一刀が霞に頼んだ策の一つ…

 

北『いいか霞、後退の時は一定距離を保って退くんだ』

 

霞『そんなムチャ言うなや!

後退は迅速かつ適格が支流ちゅうもんやで』

 

北『距離を開けすぎると春蘭達が退いてしまう

だから常に距離を一定に保てば春蘭も後退はしないはずだ』

 

霞『せやかてなぁ…』

 

北『これは神速の張文遠にしかできないんだ

頼むよ霞!勝ったら高い酒おごるから!!(金は無いが)』

 

霞『乗ったで!』

 

と言うのが軍議であったのだ。

 

霞「くそ…真桜はまだかいな!!」

 

流「霞様!来ましたよ!!」

 

苛立ちをあらわにする霞の横で流琉が仲間の旗を見付ける

その旗は春蘭の隊にも分かる。

 

「将軍!

右より敵!旗は…李、郭です!」

 

春「なんだと!?

ここで奇襲とは…!」

 

真「李典隊気張りや!

姉さんを逃がすのがうちらの仕事や!!」

 

春蘭達の隊はスピードを上げて露を追いかけていた為、右側からの奇襲にはもろかった。

 

稟「郭嘉隊!

季衣と春蘭様の隊を分断せよ!」

 

春「ちぃ…小細工をしおって!

夏侯惇隊!脚を緩めるな!このまま本陣になだれ込むぞ!」

 

スピードを緩めない春蘭は真桜と稟の奇襲をかいくぐり、西軍本陣を目指す

しかし、その時近くに居た季衣は稟の部隊の攻撃を受け離れてしまう。

 

季「稟ちゃんなんかボク一人で十分だよ!」

 

稟「私も季衣と戦う気はありません

後は彼女に任せます」

 

季「え?」

 

真「ボクん子の相手はウチやで~」

 

ひょうひょうと季衣と稟の間に自前の螺旋槍を持った真桜が立ちふさがる。

 

季「ふん!

真桜ちゃんにだって負けないよ!!

でりゃあぁぁあっ!」

 

真「ウチかてやるときはやるでぇっ!!」

 

両者は激しいぶつかり合いを見せる。

その間に稟は率いた部隊で季衣の部隊を撃破する

その攻撃をすり抜け、何名かが春蘭隊を追い掛けた行った。

 

春「見えたぞ!

西軍の本陣は目の前だ!

速度を上げろ!!」

 

ついに春蘭が西軍本陣の目の前に到達する

霞は真桜の奇襲さなかに春蘭の追撃を切り離し、すでに本陣に帰還していた。

 

霞「惇ちゃんもやる気満々やな~」

 

本陣で遠目で春蘭の追撃を見る霞は呑気にそんな事を呟いた

その言葉は近くに居た一刀にも聞こえ、ため息を漏らした。

 

北「なに呑気なこと言ってんだよ」

 

霞「惇ちゃんのあの追撃を見事抜けたウチの神速も伊達やないっちゅうことやろ?」

 

北「それは大いに認めるよ…じゃあ霞、風を頼むよ」

 

霞「任しとき!」

 

霞はさらしで巻いた胸をドンと叩き、次の行動に移る。

 

北「さて、こちらもはじめますか…秋蘭!」

 

秋「うむ!

夏侯淵隊弓を構え!

愚かな夏侯惇隊を打ち抜け!!

…今だ!斉射!!」

 

北(愚かって…)

 

本陣からの矢の一斉射撃に春蘭の隊から大多数が倒れる

もちろん矢先は潰してある。

 

春「秋蘭か…

しかし、この程度!」

 

スピードを落とさず降りかかる矢を剣で切り落とし春蘭は、一斉射撃をすり抜けた十数人の兵を引き連れついに西軍本陣に突入した。

 

春「後は風を打ち取れば我が軍の勝ちだ!」

 

「ぐわっ!」

 

「どうした!?」

 

突如飛来した矢に春蘭が連れてきた兵士達は次々に撃たれる。

 

秋「夏侯元譲!

覚悟して貰おうか!」

 

春「秋蘭か…」

 

秋「全く…霞の突撃、真桜の奇襲、それに私の隊の一斉射撃をすり抜けてここまでくるとは…

強運と言うか、馬鹿と言うか…」

 

春「う、うるさいぞ秋蘭!

私には華琳様の加護がある!その力を使ったまでだ!!」

 

秋「ならば姉者は実力でここに来たわけではないのか」

 

春「それは違う!

…いや違わなくない?あれ?どっちだ?

 

秋「ふふふ…可愛いな姉者は」

 

春「えぇーい!?まどろっこしぃ!!

要は勝った奴が強いと言うわけだ!!」

 

秋「意味が分からんぞ姉者…」

 

春「うるさい!

さっさと私に倒されろ!!」

 

秋「そうもいかんなこちらも色々と有るので姉者にはしばらくここにいて貰う

参る!!」

 

こうして、秋蘭と春蘭の戦いが始まり、一刀が間に入る形になった。

 

 

 

北「秋蘭!霞も動いてる

春蘭は任せろ!」

 

秋「承知した!」

 

一刀は刀を正眼に構え春蘭と対峙する。

 

春「ほぅ…北郷、貴様ごときが私を止められると思ったのか?」

 

北「さぁ…どうだろうな?」

 

「ふん!貴様を潰して、この戦いに終止符を打ってやるわ!!」

 

春蘭は剣に力と気迫を込め、一撃放つ

しかし、一刀も数年間遊んでいた訳ではない抜刀した刀に力を込め春蘭の一撃を受ける。

 

北「ぐっ…!」

 

春「なに…?!」

 

北「何だ?終わりか春蘭?」

 

春「ほぅ…雪蓮に聞いたとうり腕を上げたな北郷

以前なら避けていた攻撃を真っ正面から受けるとはな…」

 

北「当たり前だ…

俺だって伊達に修行してた訳じゃない

剣は春蘭の型をいつも思い描きながら振り回してたんだ」

 

一刀の修行は型に捕らわれず、何でもありの臨機応変型

しかし、日本の剣道には正式な型でしか対戦相手がいないため、一刀は目を閉じ春蘭の型を思い描きながら修行をしていた。

 

そのため春蘭の一撃を受けて反撃に移るパターンもあらかた頭では理解しているが…

 

北(当たり前だけど、想像と現実じゃこんなに違う…

一撃で手が痺れる…)

 

刀を持つ手には一撃を受けただけで痺れてしまうので次の一手が切り出せずにいた。

 

北(長期戦は不利……やってみるか…)

 

一刀は何を思ったのか、刀を鞘に戻した。

 

春「ん…何のつもりだ北郷?!」

 

北「…」

 

春「答えろ!」

 

北「…」

 

大声を上げる春蘭の目をキッと見つめ、一刀は何も答えなかった。

 

春「貴様…!

闘わずして私が退くと思ったのか!!」

 

北「春蘭、この戦いの景品は?」

 

春「何?」

 

北「俺だろ?つまり…」

 

春「つまらん小細工を!」

 

春蘭は一気に距離を詰め、一刀に切りかかる。

 

北「華琳の相手は誰がすんだ?」

 

春「ッ!?」

 

一刀のその言葉に敏感に反応した春蘭は突撃のスピードを緩めてしまい

さらには剣を構える体に隙を生んでしまった。

春蘭も華琳が一刀に特別な感情を抱いているのは(馬鹿なりに(笑)知っていた。

 

一刀のその一言は一刀が別の者を相手にしていれば、華琳の相手は自分に来ると悟ったのだった。

 

北「もらった!」

 

一刀はその隙を見逃さず、春蘭が詰め寄った距離にさらに近づき、自分の間合いに春蘭を収めて抜刀する。

それは日本刀の技の一つ、居合い斬りである。

 

春「ぐぅ…!」

 

胴に一撃が入り春蘭は一刀に討ち取られた。

 

北「へへっ…夏侯元譲、北郷一刀が討ち取ったり!ってか?」

 

春「なに!?

貴様!私を動揺させただろ!!」

 

北「したよ」

 

春「ならばまだ勝負の最中だ!

剣を構えろ!!」

 

北「おぃおぃ、これは模擬戦

一撃くらったら終わりだろ?」

 

春「ぐっ…ぐぬぅ…」

 

どこか納得のいかない春蘭の前に秋蘭がやって来た。

 

秋「ふふ…姉者の負けだな」

 

春「なんだと!?私はまだ戦えるぞ!」

 

秋「残念だが、姉者の部隊は私の部隊で駆逐した

例え、姉者が北郷を倒しても姉者は私に打たれるだけだぞ」

 

春「まさか…北郷は囮か!?」

 

秋「あぁ…この策は北郷の提案でな

姉者の相手は俺がやると、北郷自らが買って出たのだよ」

 

北「まぁ、策を考えた本人が後ろでノウノウとしてちゃ不味いだろ?」

 

春「くそ…まさか北郷に討ち取られるとは…」

 

いまだに納得のいかない春蘭は肩をがっくりと落とし、嘆いていた。

 

秋「姉者はここで捕虜だな

北郷、次に移ろう

霞が着いてしまう」

 

北「そうだな…

春蘭、大人しくしてろよ」

 

春「分かっている!」

 

西軍の本陣に討ち取った春蘭を残し、一刀と秋蘭は馬に跨り、前線へと走り出した。

 

 

季「でりゃあぁぁぁっ!!」

 

真「うわっ!?

危ないで~少しは手ぇ抜いてな~」

 

前線の真桜はまだ季衣との戦闘を繰り広げていた。

 

力技で来る季衣に真桜は苦戦を強いられていた

真桜は本来、北郷隊として沙和、凪の両名との連携攻撃型のため一人では力の発揮が出来ないでいた。

 

しかし、やはり稟との合同部隊、数では圧倒的の為、季衣の隊は全滅したが季衣一人だけが抵抗を続けていた。

 

季「真桜ちゃん!これでおしまいだよ!

でぇりゃあぁぁぁっ!!」

 

季衣はその小さな体に力を込め、真桜に強力な一撃を放つ。

 

真(隊長…すまん!!)

 

流「はぁあぁぁぁっ!!」

 

凄まじい轟音が真桜の前で響き渡る

討ち取られるのを覚悟していた真桜は目を閉じていたが体に痛みが無いことから恐る恐る目を開けると目の前に流琉の武器が転がっていた。

 

流「真桜さん!大丈夫ですか!!」

 

真「流琉っち!

来るのが遅いで!!」

 

流「すみません!

露様の護衛が長引いてしまって」

 

真「えぇよ♪気にしてへんし~

しかし、ここはこぅ…隊長に助けてもらいたかったわ~」

 

流「兄様にですか?」

 

真「大丈夫か!?

あぁ…隊長!

真桜は俺が守る

隊長…好き!

的な会話が欲しかったなぁ」

 

流「ごめんなさい…」

 

真「いやいや、流琉っちが悪いんやないからな

後は頼むで、うちはさらに前に出るからな」

 

流「はぃ!季衣の相手は任せて下さい!!」

 

真「おうっ!!

李典隊!前に出んで!

遅れんようにしっかりついて来いや!」

 

真桜は季衣を流琉に預け、隊を連れて前に出て行った。

 

「も、申し上げます!

西軍本陣にて夏侯惇将軍が…」

 

桂「春蘭が風を討ち取ったの?!」

 

期待に胸膨らませる桂花だったが

 

「討ち取られました!」

 

桂「何やってんのよ!!」

 

怒りをあらわにする桂花は次の策を練ること。

 

 

一方、本陣を出た一刀と秋蘭の隊は前線で戦う流琉と稟の隊と合流した。

 

稟「一刀殿!

春蘭様はいかがなさましたか?」

 

北「俺が討ち取った

稟もご苦労だな、あの奇襲の速さは稟あっての策だったよ」

 

稟「当然です

しかし…いまだに季衣を討ち取れずにいます」

 

季「でぇりゃあぁぁあっ!!」

 

流「はぁあぁぁぁっ!」

 

そこではまだ、小さな巨人季衣と流琉が激しい戦いを繰り広げていた。

 

北「ま、季衣は流琉に任せるよ

稟、俺と秋蘭は前に出るよ」

 

稟「承知しました

真桜はすでに敵本陣に行きましたのでうまくすれば途中で合流出来ると思います」

 

北「了解したよ

秋蘭、行こう!」

 

秋「うむ」

 

二人はさらに前へと脚を進めた。

「楽進隊長、干禁隊長!

前方に砂塵、旗は李!

さらに後方には十文字、夏の旗が見えます」

 

東軍本陣の前方に構える凪、沙和の隊に知らせが入る。

季衣との戦闘を抜けた真桜隊が東軍本陣に迫ってきたのだ。

 

凪「真桜が来たのか…

沙和、ここは本陣の守りを固めよう

真桜とは言え、後方には隊長と秋蘭様がいる」

 

沙「了解なの~!

伝令さん、兵士のみんなにそう伝えておいてなの~」

 

「了解しました!」

 

沙和の指示により伝令は走り連絡に向かった。

 

 

一方、真桜はいまだに動かない東軍本陣を見て不適な笑みを浮かべていた。

 

真「隊長の思惑通りやな…凪達はまだ動かへんな」

 

北「真桜!」

 

後方から一刀、秋蘭隊が真桜の隊と合流する。

 

真「隊長、間に合ったみたいやな」

 

北「あぁ…季衣は稟と流琉に任せたきたし、後は敵本陣だけだしな」

 

真「おっしゃ

ならそろそろ始めよか」

 

北「そうだな…

秋蘭は援護を!

前線には俺と真桜が行く」

 

秋「承知した

夏侯淵隊はここに弓隊を広げろ!!」

 

ただ今の配列は敵本陣を前に真桜、一刀が前局、秋蘭が後局となっている。

 

北「よし、真桜

後はお前に任せるぞ」

 

真「任しとき隊長!

う、うん!

凪ー!沙和ー!

聞こえたら前に出て来んかいー!!」

 

東軍本陣の前で口戦を始める為、凪と沙和をおびき出す

しかし、二人は本陣からは出ず真桜が目に捉えられる距離にしか出てこない。

 

 

凪「真桜!

お前と舌戦をやる気はない!さっさと攻めてくるがいい!!」

 

沙「そうなの!そうなの!

さっさとかかってくるのー!」

 

真「まぁそう言わんとちょいと付き合ってくれや~

うちなぁ、隊長の嫁さんになることにしたんや」

 

凪「なっ!?」

沙「えーなの!?」

 

北「ちょ!真桜!!」

 

真「ここは任せときな…

せやけど、親友のあんたらに言っとかなあかんと思うて来たんや」

 

凪「真桜…お前!!」

 

真「ふふん…

凪ー!この際や!

どっちが隊長の隣に相応しいか白黒付けよやないか!」

凪「望むところだ!!

楽進隊、前へ!

李典隊を滅殺するぞっ!!」

 

拳を振り上げ、隊に指示を出す凪

これが模擬戦であるのも忘れ、「滅殺」と言う言葉を上げる。

兵士達も雄叫びを上げ前進を開始する。

 

沙「沙和も行くのー!

真桜ちゃんに隊長は渡さないの!!

干禁隊!

遅れてくる奴は○○○をちょんぎって○○○を掃き溜めに捨ててやるから覚悟するの!!」

 

「サー!イエッサー!!」

 

一刀が教えたアメリカ海軍式訓練用語をいまだに駆使する沙和の隊はこの時代では独特の返事を上げて前進を開始する。

 

桂「ちょっと待ちなさい!!」

 

怒りに我を忘れた二人を止めたのは桂花だった

本陣天幕からわざわざ出向いて来たようだ。

 

桂「あんた達が出たら誰が本陣を守るのよ!」

 

凪「桂花様、そう言いますが…これは我々北郷隊にとって天下を取るに値する戦い!」

 

沙「そうなのそうなの!」

 

桂「あんな獣くれてやりなさいよ!

華琳様に無用な虫が着かなくていいじゃない」

 

凪「相手が華琳様なら…その…致し方ないです…

ですが!真桜なら話は別!!」

 

沙「そうなの!

抜け駆けはだめなの!!」

 

凪「沙和!

私の後局に付け、我々が死ぬ気で真桜の隊を潰す

後は沙和が一気に蹴散らすんだ」

 

沙「了解したなの!」

 

桂「ちょっと待ちなさーい!!」

 

桂花の必死な説得も怒りの二人には通じず、二つの部隊は前進していく。

 

凪「真桜ー!覚悟!!」

 

一方、遠目で凪達の前進を確認した真桜はケラケラと笑っていた隣にいる一刀は真桜とは逆に呆れ顔をしている。

 

真「にしし…

見事に釣れたで、やっぱ凪も乙女やな」

 

北「ったく…

お前はやり方が乱雑なんだよ」

 

真「えぇやん、ウチの仕事は凪と沙和をひっぱり出すことやろ?

ちゃーんとお役目果たしたんやし」

 

北「まぁな…

さて、あとは霞だけか

よし!これより後進する!

敵に気取られぬように距離を取れ!」

 

一刀の指示で部隊は後進を始める。

 

 

 

 

 

真「ところで隊長、ウチを嫁にもらう?」

 

北「アホ」

 

真「あぁん!

隊長のイケず~!」

凪「進め!進め進め!!

我が隊は前進あるのみ!!」

 

沙「沙和も行くのー!

前局の凪ちゃんに遅れちゃ駄目だよ!!」

 

砂塵を巻き上げ、凪と沙和の隊がやって来る。

 

秋「うまく釣れたようだな

夏侯淵隊!一斉斉射用意……放て!!」

 

一刀達の後ろに控えた秋蘭の隊が凪達に向け、矢を放つ

一刀の遙か頭上を飛び越え、矢は豪雨のごとく、凪達に降りかかる。

 

「ぐわっ!」

 

「ぎゃっ!?」

 

凪「くっ…秋蘭様か…!

しかし…この程度!!」

 

沙「うりゃりゃりゃーなのー!」

 

降りかかる矢を凪は気功で振り払い、沙和は切り払う

そしてついに二人は真桜と一刀の前に到着する。

 

凪「追い詰めたぞ!真桜!!」

 

真「ご苦労やな~凪」

 

北「本当にご苦労さん」

 

凪「はい隊長!お疲れさまです!!

って違う!

真桜!抜け駆けは許さんぞ!!」

 

北「そんな事より凪、本陣はいいのか?」

 

凪「え?」

 

霞「東軍大将桂花!

西軍が神速の武人!張文遠が討ち取ったでぇ!!」

 

東軍本陣にて霞が荀の旗を持っていた。

 

 

 

 

 

 

凪「進め!進め進め!!

我が隊は前進あるのみ!!」

 

沙「沙和も行くのー!

前局の凪ちゃんに遅れちゃ駄目だよ!!」

 

砂塵を巻き上げて前進していく二人を桂花は眉間にシワを寄せ愕然とした表情で見つめていた。

 

桂「なんなのよこの隊は!!」

 

結局、桂花の策を聞く者は誰一人として居なかった。

突起の将ばかりで策に準ずる将が彼女の下に居なかったのがこの戦闘での敗因なのかもしれない。

いや、将を選んだ時点で負けは確定していたのかもしれない。

どちらにしても後の祭りだった。

 

桂「この私が敗北なんて…!」

 

?「そら悔しいわな~」

 

桂「当たり前よ!

なんでこの私が敗北なんて無様な真似をしなければいけないのよ!!」

 

?「それは桂花ちゃんがみんなをまとめきれなかったせいですね~」

 

桂「うるさいわよ風!

だいたい…

え?…風!?」

 

桂花が後ろを振り返るとどこから来たのか霞と風が立っていた。

風「はぃ~呼ばれなくても、飛び出さなくても、ジャジャジャーン、風は参上しますよ~」

 

霞「悪いな~桂花

この戦、うちらの勝ちや!」

 

桂「そ、そんなー!!」

 

その後、霞が桂花を討ち取り

東軍本陣にて盛大に名乗りを上げたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

季「ぶー!」

 

片付けも終わり、再び洛陽に向かい始めた魏の一行

その中で季衣は馬に乗りながら膨れていた。

いや、季衣だけではない。

東軍だった将、すべてはこの結末に不満を抱いていた。

 

桂「まさか、霞に単独行動をさせるなんて…」

 

風「桂花ちゃん、お兄さんの策なんで風や稟ちゃんを睨まないで下さい」

 

桂「わかってるわよ!」

 

季「ボクなんて流琉とばっかり戦ってたから疲れたよ」

 

流「兄様の頼みだからね~」

 

春「私なんか、北郷に負けるなんて…」

 

秋「良いではないか、姉者

それだけ北郷も腕を上げたと言うことだ」

 

凪「くっ…真桜の口車に乗せられるなんて…不覚だ!」

 

沙「沙和もなの~」

 

真「まぁしゃあないやろ、相手は魏の種馬北郷一刀やで?

みんなの行動パターンぐらいお見通しやで」

 

華「今回の模擬戦、皆にはいい勉強になったようね」

 

先頭を行く華琳は後ろから聞こえる不満や戦の流れを聞いてそう呟いた。

 

北「まぁな…今回は霞が居たから勝てようなもんだよ

大回りして敵陣の背後から潜入なんて霞にしか出来ないからな」

 

華「まぁ、策自体は誉められた物ではないけど一刀はよく皆をまとめて戦ったわよ」

 

北「そうだろ?

って事でこれをいい加減外してくれよ」

 

一刀が指差したのは首

模擬戦が終わって、馬に乗る前に華琳が再び首に縄を巻いたのである。

 

華「ダメに決まってるじゃない

あなたその形で洛陽に入ってもらい、街中に知らしめてやるのよ」

 

北「くっ…このSめ…!」

 

華「えす?

なにそれ?天界の言葉かしら?」

 

北「いや…深く聞かないでくれ、あまり深く話すとこの小説が、また強制くらうから」

 

華「何を言ってるのかさっぱり分からないけど、まぁいいわ

ほら、見えてきたわよ」

 

こうして華琳率いる魏軍は洛陽へと帰還したのだった。


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
41
2

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択