幕間 華雄
「いい天気だなぁ」
燦々と降り注ぐ太陽を浴びながら一人呟く
俺は今、仕事の合間に息抜きがてら中庭に出てきた所だった
気持ちの良い風を浴びつつ思いっきり背伸びを…
「いい加減教えなさいよ!!」
「だから、何度言ったら分かるというのだ!?」
ガキン、ガキン、ガキーン!!
…しようとした所に穏やかな空気に似つかわしくない怒声と金属音が聞こえてきた
「何だ一体?」
その音が気になった俺は音のする方向へと向かって歩いていく…するとそこに居たのは
「仲間になったんだからいいじゃないのー!!」
「だ、か、ら!!何度言ったら分かるんだ、孫策!!」
「貴女こそ何度言ったら分かるのよ!!私の事は雪蓮って呼べって言ってるじゃない!!」
ガッキーーーン!!!
お互い自分の愛用の武器を振り回して喧嘩…というより死闘を演じる華雄と雪蓮だった…一体何やってんだよ
…ていうか二人の会話で喧嘩の理由にも見当が付いたし、二人の喧嘩に巻き込まれるのも御免ではあったが誰かが止めないとこの二人は延々と死闘を続ける事だろう
そんなことを考えつつ、俺は二人の戦いを止めるべく話に割ってはいることにした
「おい二人共!!なにやって…〈ビュゥン!!〉ってうわぁ!!」
声をかけようとした俺の目の前を二人の武器が掠めていく
「む…?なっ、一刀!?大丈夫か!?」
「あら、こんな所に居たら危ないわよ?一刀」
俺の叫び声にやっと反応してくれた二人が戦闘を止め、俺に話しかけてくる
「危ないのはどっちだよ!?こっちはもう少しで死ぬ所だったぞ!?」
「でも、なんともなかったんでしょ?…あ、そんな事より聞いてよ一刀~」
「俺の必死の抗議をそんな事呼ばわりするのはやめてくれませんかねぇ!?」
そういって怒る俺だったがそんなのは何処吹く風と言わんばかりに自分の話題を振ってくる雪蓮…相変わらず自由人だ
「全く…華雄も華雄だぞ?怪我人なんだから無茶するなって」
華雄の方の怪我は大分治ってきてはいるし、傷口も塞がっているもののあまり激しい運動は控えるべきと医者に言われていたはずだ
「このような傷などもう完治したさ。それより体を慣らしていかねば鈍ってしまうからな」
そう答える華雄…まあ、本人が言ってるんだからそうなのかも知れないが本気で打ち合うのはどうかと思う
「それでも無茶は禁物だぞ、まったく…。それで?何で喧嘩してたんだ?雪蓮の聞いて欲しい事、ていうのもその話なんだろ?」
これ以上の抗議は無駄と悟った俺は二人に問いかける
まあ大体見当は付いていたが、もしかしたら重大な話かもしれないからな
「実はね…「おい孫策!!一刀に告げ口するんじゃない!!」なによ、邪魔しないでよ!!」
雪蓮が用件について話そうとした瞬間、華雄が話しに割り込んでくる
そのまま二人はまた口げんかを始めてしまう
「はいはい止めろって。…大方、華雄の真名の話で揉めてたんだろう?」
「なっ…!!」
「あら、良く分かったじゃない一刀」
やはり図星だったのか、華雄は何故分かったと言わんばかりに驚き、雪蓮も感心したような顔をしていた
「二人の会話を聞いてればね。それに、前にもそのことで色々あったし…。で、華雄?何で喧嘩になってるのさ」
「それは、その…」
何とか言おうとする華雄だったが、ばつが悪いのかもごもごと口ごもってしまう
そんな華雄に代わり、雪蓮が答える
「華雄ったら私に真名を教えてくれないのよ。聞いても私の名は華雄だけだとしかいわないし…。仲間になったんだから教えてくれてもいいと思わない?」
そういって頬を膨らませる雪蓮
「だから何度もいっているだろ!!我が名は華雄、それだけだと!!」
「…なるほど。そんな説明しかしてないから誤解されているのか」
華雄のぶっきらぼうな物言いのせいで、雪蓮は自分を認めていないから真名を教えないと思っているのだろう
このままでは解決しないと思い、俺は嘆息しつつ言う
「雪蓮。華雄のいってる事は本当なんだ」
「一刀までそんなこと…!!」
「聞けって!!…俺の口から言うのもなんだけど、華雄は真名を付ける風習の無い地域の出身なんだよ」
「え…?」
俺の言葉に呆然とする雪蓮
その反応を見て、華雄は少し寂しそうに言う
「分かっただろう?私にはお前に渡す真名が無いのだ。だから…」
「だからって私の真名を受け取らない理由にはならないでしょう!?」
「…は?」
突然の雪蓮からの切り返しに今度は華雄が呆然とする
「私は、貴女という人物を信頼して真名を預けるって言ってるんだから断られたらこっちの立場が無いじゃない!」
「…私の話を聞いていたのか?私にはお前に渡す名が無いのだから真名を受け取るわけにはいかんといっているだろう孫策」
「あ~!!また孫策って言った!!」
そういってふてくされる雪蓮、その反応に困惑する華雄…そんな二人を見ていたらなんだかおかしくなって噴き出してしまう
「ふふっ。…君の負けだよ華雄。雪蓮も月たちと一緒でそんなこと気にしないってさ」
「そんなの当たり前でしょ!!」
堂々と言い切る雪蓮…その姿を見て、華雄は突然笑い出してしまう
「くっ、ふっ、あっはっはっは」
「なっ!!私は真剣に言ってるのに何で笑うのよ!!」
「いや、すまん。…ふふっ、そんなことを言う物好きは月様達ぐらいのものだと思っていたのだがな」
そういいながら雪蓮に向き直る華雄
「我が名は華雄。字も真名も無いが、この名こそ私が母上より授かった私の大切な名だ。それで良ければ真名としてこの名を呼んで欲しい。…よろしくな、しぇ、雪蓮」
そういって手を差し出す華雄
雪蓮はその言葉に満面の笑みで答える
「こちらこそよろしくね!!華雄!!」
いいながら差し出された手ではなく腕にぎゅーーっと力の限り抱き付く雪蓮…てか、そっちの腕は…!!
「ぎゃぁぁぁぁ!!」
「か、華雄ーーー!!!」
華雄の腕の傷口が開き、ピューっと血が出ていた
「そ、孫策ぅ!!貴様ぁ!!」
「あ~!!せっかく真名で呼ぶようになったんだから元に戻らないでよ!!」
「喧嘩してる場合じゃないだろ!!誰かー!!お医者様をーー!!」
せっかく仲直りしたのだが、結局は大騒ぎになってしまう二人なのだった…
幕間 霞
「月が綺麗だな…」
ある夜、あまり寝付けなかった俺は城壁の上から夜空を眺めていた
「空の広さや星の輝きも、俺のいた時代とはまさに月とすっぽんだよなぁ」
そういってごろんと床に寝転がりつつ、一人呟く
「…いくら寝付けないからって、一人でこんな所に来るんじゃなかった…」
一人で夜空を眺めていると、なんだか急にセンチメンタルな気分になってしまう
お袋や親父、じいちゃんは俺が居なくなって心配して無いだろうか
及川や学校の皆は元気にしているだろうか
俺は今後、…どうなるのだろうか
そんな事ばかり頭に浮かんでくる
「おう、一刀」
ふと頭の方から声がかかる
起き上がってそちらを見る…するとそこに居たのは
「こんなとこで黄昏て、どないしたん?」
酒の徳利と杯を持った霞が立っていた
「…霞こそ、どうしたんだ?こんな時間に」
こんな所で寝転んでいる自分が言うのもなんだが、もう人が出歩くような時間帯ではなかった
「あ~、まあええやん。せっかくやし一刀も一杯付き合わんか?」
そういって徳利を持ち上げる霞
元々寝付けなくて時間を持て余していたわけだし、俺は霞の誘いに応じる事にする
「そうだな、せっかくだしお供させてもらえるかな?」
「よっしゃ!そうこなくっちゃな!」
さっそくといった風に城壁の縁に腰を下ろし、酒盛りを開始した
俺は霞から渡された杯で酒を一気に煽る
「お~、ええ飲みっぷりやん」
そういいながら霞は自分の杯に酒を注ぐ…って、あれ?
「なあ霞。霞は酒盛りする為にここに来たんだよな?」
「ん?そ~やけど?」
「じゃあ、何で杯を二つ持ってるんだ?」
「!!」
俺の言葉に固まる霞
「霞?」
「あ~、それは、なんや…」
俺の問いにばつが悪そうに答える…そんな彼女の態度から俺の頭にある仮説が思い浮かぶ
「もしかして、一人で居る俺を気遣って誘ってくれたのか?」
俺がそういうとぴくっと反応する霞…どうやらそういうことらしい
「…いやな、なんや寂しそうに夜空を眺めとる奴が居ったから元気付けてやろか思てな」
顔を真っ赤にしつつそう答える霞
その様子が可愛くて俺は笑みを零す
「なっ、なんや!笑うことないやろ!」
「御免御免。…ありがとな、霞」
そんな風に怒る彼女に謝罪と感謝の気持ちを伝える
そんな俺を見つつ、霞は切り出す
「…それで?何を悩んでたん?」
「心配してくれるのは嬉しいけど、大丈夫だよ」
そういって彼女に向かって微笑む…だが霞は真剣な顔でこちらを睨んでいた
「あんな寂しそうな顔しといて大丈夫なわけあらへんやろ?それともウチはそんなに信頼できんか?」
そんなことはない、と言おうとしたのだが彼女の真剣な眼差しに負けた俺はぽつぽつと喋りだす
「…なんか、一人で夜空を眺めてたら、元の世界のことを思い出しちゃってな」
「元の世界、っちゅーと天の世界の事か?」
「そうだ。それを思い出したら急に家族や友達のことが気になっちゃってな…」
俺がそういうと霞が少し聞きずらそうに聞いてくる
「…一刀は、もし天に帰ることができるんやったら…帰りたいんか?」
「そうだな、帰りたい」
「そうか…。そりゃそうやろな」
俺の言葉に寂しそうに言う霞
「戻って、両親と爺さんに謝らなきゃいけないから。親孝行、家族孝行できなくて御免って」
「…え?」
「俺はこの世界で、月を支えるって誓った。詠やねね、華雄に恋、それに霞に出会えて、皆とこれからも一緒にいたいと思った。だから元の世界の家族に、友達に今までの感謝とお別れをしたい。最初こそ成り行きとはいえ、この世界で生きていきたいからね」
俺がそういうと霞が目を潤ませてこちらを見ていた
「え!?どうしたんだ霞!!俺何か不味い事でも…」
慌ててしどろもどろになりながら俺が言う
「なっ、なんでもない!!ちょっと酒が効いてもうてな」
そういって顔を逸らしてしまう霞…その顔は耳まで真っ赤だった
「霞、飲みすぎじゃないか?顔が真っ赤だぞ?」
「そうや無いわ!!全く…」
俺の言葉に突っ込みを入れる霞…まだその瞳は潤んだままだったがこちらを真っ直ぐ見つめつつ言った
「せやったら…これからも、よろしゅうな。一刀」
「何だよ、急に改まって」
「別にええやん。…よっしゃ!!今夜は飲むでぇ!!」
そういって酒を注いでくる霞
彼女のそんな明るさに微笑みつつ、酒盛りを再会するのだった…
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董卓√幕間六話中編です
本当は前後編で分ける予定でしたが、少し長くなった事と更新の間が開いてしまった事により中編を作る事にしました
誤字脱字、おかしな表現等ありましたら報告頂けるとありがたいです
追記 前作はTINAMI登録ユーザー限定になっていましたがやはり大勢の方に読んで頂きたいと思い、解除いたしました
もし、自分の作品のために登録した方が居ましたらすみません&ありがとうございました