No.147339

恋姫のなにか 16 前編

くらげさん

ありのまま起こった事を話すぜ・・・
俺は五月中に更新しようと思っていたら六月に(ry

2010-06-02 23:21:35 投稿 / 全15ページ    総閲覧数:14775   閲覧ユーザー数:8252

一週間刻みで投稿しようと決めた途端この体たらくです。情けない。

今回は久しぶりにあの子が出ます。ホントに一瞬ですが。

『というわけでぇ~ん、申し訳ないんだけど、しばらくご実家の方に帰ってて貰えるかしらぁん?』

 

なんでも、命知らずな下着泥棒が塀を乗り越えて、寮の一部を破壊して侵入したらしい。

幸いにも貂蝉の働きのおかげで盗まれた下着は皆無だったものの、窓の一部は破壊されるわ寮は荒されるわで間接的な被害と警備システムの古さが露呈してしまったらしい。

タイミング良く大型休暇に突入する時期だったので、寮に住む殆どの生徒は実家に帰るという選択肢を難なく選べたのだが。

 

「と、いうわけでして。今回は私は参加見送ろうかと」

「ふむ・・・・・・随分野蛮な輩がいたものだ」

「貂蝉さん様様だったわね」

「うむ」

 

オープンカフェでお茶を飲みながら喋繰る面々は同じ学校の先輩後輩。

顔を付き合わせて何の話をしているかといえば―――大型連休に控えた年二回の祭典・コ○ケである。

そこそこ大きな規模でリピーターも多いサークルの看板作家である詠が不参加という旨を伝えた時は三者三様の驚きを見せたが、理由を聞けばなるほどなぁと思わざるを得ないモノだった。

というのも、詠の実家はかなり離れた場所にあるため実家に帰れば参加はお財布的に絶望的。

かといって移動費その他諸々を賄うタメにバイトを始めると、今度は詠が多忙さに倒れてしまうだろう。

 

「しかし、折角スペースが取れたのに不参加は勿体無くないか?」

「愛紗・・・詠はお前と違って肉体的には繊細なんだぞ?」

「目を瞑って五秒で爆睡出来るアンタが羨ましいわ・・・」

「少しならカンパするけど・・・」

「それは流石に申し訳ないし」

「そういうトコ、詠は律儀よねぇ・・・」

 

どうしたものか、と頭を悩ませながらお茶請けのクッキーを摘み、蓮華が悩む。

ちなみに、比較的近くに実家のある愛紗と実家から通っている蓮華の家に泊まらせて貰うのはどうかという案も出たのだが―――

 

「あー・・・ウチに泊めてやりたいのは山々なんだが・・・」

「アンタの実家に行ってまでアンタの面倒見たくないわ。それに、この時期は色々忙しいんでしょ?」

「申し訳ない・・・」

「ウチに泊まってもいいけど・・・」

「いくら友達でも、流石に一月丸々面倒見てもらう訳には行かないわよ」

 

とまぁ、意固地な面を見せる詠が頷かないので平行線だった。

「ふむ。ここは一つ、ウチに泊まるか?」

「いえ、ですから」

「まぁ聞け。どうせ私もこの大型休暇は実家に帰るつもりだったよ。それに、ウチはそれなりにデカい家だし人が一人二人増えたぐらいじゃどうって事はない」

「そういう問題じゃないですよ」

「あと・・・・・・あー、本人にはオフレコな? 実は私は、『鈴っ子』と知り合いだ」

「「「?!」」」

 

鈴っ子とは知る人ぞ知る、というか同人家業に足を踏み入れた者が必ず耳にする品評家の名前である。

鈴っ子から好評価を受けたサークルは必ず大成し、もれなく商業デビューして大作家になるともっぱらの評判であり、鈴っ子からコメントを貰う事事態が一つのステータスになっているのだ。

 

「アイツとはご近所さんでな・・・そういうコネを詠は嫌うだろうから今まで黙っていたんだが、良い機会だとは思わんか?」

「詠、チャンスだと思うわよ?」

「私もそう思うぞ? 鈴っ子さんから品評を受ける事が夢だったんだろ?」

「いや・・・でも・・・」

「まぁ堅苦しく考えるな、お前がどうしてもコネを使いたくないと言うんなら無理にとは言わないさ。実際何時でも頼めるんだ」

「・・・・・・」

「だが、自分のプライドその他を脇に置いて考えてみろ。私達はお前に辞退して欲しくない、お前は出来るなら参加したい。

鈴っ子の品評を受けるかどうかはお前の自由に出来る。何も私はそれを強制してる訳じゃないぞ?

それに―――偶には先輩の顔立てるのも、後輩の役目だとは思わんか?」

「・・・・・・ありがとうございます」

「良かったな、詠」「うん、良かったわね」

 

良かった良かったと、四者四様の笑顔を見せながら問題解決した事に安堵していたその時である、秋蘭のケータイの着メロが響いた。

その音を聞いた途端秋蘭は瞬時に五感の全てをケータイに注ぎ、愛紗と蓮華は固唾を呑んでソレを見守り、詠は「あー一刀さんかー」と確信しながら紅茶を啜り、荷物の仕分けの算段を立て始めた。

「もしもし、ああ、平気だ―――それで、どういう事だ?  うん、ああ、帰る予定だが。

うん・・・いや、私は構わんし姉も同様だろうが―――ああ、なるほどな。言っておく」

 

詠は聞き耳立てちゃ悪いなぁと明後日の方向を向きながら思っていたのだが、愛紗と蓮華は違ったらしい。

ずいっ!ずいっ!と自分の座っていた椅子を大胆にずらしながら秋蘭の傍へ寄っていき、何とか聞き取れないモノかと耳に神経を集中させていた。

 

「(馬鹿)一号、それに(馬鹿)二号も。はしたない事しないの」

「「やだー!!」」

 

聞き分けのない子供二人をあやしていると、電話の終わった秋蘭が満面の面持ちで詠に向き直る。

 

「それで詠、日程なんだが―――色々予定もあるだろうが、休暇が始まる初日に出発したいんだが」

「あ、それは全然大丈夫です。というか、私としては至れり尽くせりです」

「すまんな。全く一刀め「「先輩!!」」なんだお前等まだ居たのか、ほら行った行った」

 

犬猫を追い払うようにしっしっと手を振って愛紗と蓮華を追い払う仕草をする秋蘭だったが、満面の笑みでその仕草は勝ち誇っている様にしか見えない。詠は空気が読めるので何も言わなかったが。

 

「「秋蘭先輩!!!私達もお願いしますっ!!」」

「愛紗は実家が忙しいんだろうが・・・それに蓮華も、家族旅行があるんじゃなかったのか?」

「大丈夫です!!娘一人幸せに出来ない訳がありません!!」

「あ・・・」

「話してみて日程変更出来る様ならして貰えば良いんじゃない?元々アンタにはあの会場の雰囲気は合ってないんだし、そっちまで無理する事ないでしょ」

「あ、ありがとう詠・・・」

 

暴走に苦労させられる事も多いが、今回の様に親身になってくれるからこそ、助け舟を出した詠だったのだが―――直ぐに後悔する事になるのを、この時はまだ―――ちょっとは想像できていた。

 

「しゅ~ご~う」

「いちっ!」

「にー」

「・・・言わなきゃダメですか?」

「いや、ノリだ」

 

日は経って休暇初日、詠が暫く世話になる事は既に伝達済み+愛紗と蓮華のお泊りも難なくOKされ、四人は駅のホームで電車を待っていた。

 

「しかし、愛紗はともかく蓮華は良くOKしてもらえたな?」

「母がそういう事ならと、自分の休暇を弄ってくれたみたいで」

「良い親御さんだ」

「はい」

「愛紗、アンタホントに平気なの?」

「知っているか、この世には事後承諾という魔法の言葉があってだな」

「秋蘭せんぱーい、此処に悪い子がいまーす」

「嘘だ嘘!!ちゃんと許可は下りた!!」

 

周囲の迷惑にならない様に出来るだけ声を押さえ、それでも楽しげな雰囲気を隠しきる事も出来ずに喋る四人。

向こうの町はどんな感じなのか。とか秋蘭のお姉さんはどんな人なのか。とか一通り喋っていると電車の時間になり―――愛紗が目に見えてソワソワしだした。

 

「あ、あの秋蘭先輩?そろそろ時間のようですが・・・・・・一刀先輩は?」

「ん?アイツは今バイトだぞ?」

「「なん・・・だと・・・」」

「へー、珍しいですねこの時間帯にバイト出てるなんて」

「ああ、今日の午後の電車で帰ってくるらしい」

「あ、それで」

 

なるほど。と一人納得している詠を余所に、目に見えて落ち込んだ愛紗と、そんな愛紗を慰めながらも自身も肩を落とす蓮華。

 

「というか詠、何故お前が一刀先輩のシフトを知っているんだ・・・?」

「え?だってメル友だもん」

「え?!ちょ、ちょっと待って・・・詠、一刀とそんなにメールしてるの・・・?」

「寝れない時とかー? まぁ私の場合下心ないからねー」

「おーい周りの迷惑になるから暴れるなよー」

 

やれやれ。と引率の先生染みた自分の発言に溜息を溢しながら、ヤンチャ達の面倒をみる秋蘭だった。

一方その頃、件の一刀はバイト先にて洗い物をガチャガチャと片付けている所だった。

 

(えーと、荷物はもう作ったから帰って直ぐにシャワー浴びて・・・・・・課題詰めるの忘れた・・・)

「一刀さーん、追加でお願いしまーす」

「はーい」

 

平日とはいえ、学校帰りの同年代達がチラホラと入ってくるのでそれなりの忙しさを保つ厨房。

店長の一人娘兼店長代理である亞莎はまだ学校らしく、同じバイト同士で何とか切り盛りしていた。

 

「ねー、一刀くんは休みどうするのー?」「沙和達とどっかいかなーい?」

「あー・・・今日終わったら暫く実家帰るんすよ」

「まじでー?」「ざんねーん」

 

ちっとも残念そうに聞こえない口調なのはさておき、社交辞令でも誘ってくれたのは嬉しいなぁなどと考えながら仕事をこなす一刀。

しかし気分は上の空で、心此処に在らずなのは簡単に見て取れた。

 

(帰ったらとりあえず秋蘭の部屋に荷物置かせて貰って、バーベキューは今日やれないだろうなぁ)

「雪蓮さんと付き合ってるって噂ってガセだったのー?」「あー、アレ本人が虫除けに流したらしいよー」

(あ、俺お土産買ってないなぁ・・・電車一本遅らせるか)

「マジでー?それひどくなーい?」「雪蓮さんめっちゃナンパされてっからじゃなーい?」

(でも出来るだけ早く帰りたいしなぁ、どーするかなぁ)

「だったら先に告っちゃえば良かったー」「えー、一刀くん彼女はちゃんといるって噂だよー?」

(悩み所だなぁ・・・・やべぇ、姉ちゃん達所か思春にも何も買ってねぇ。つーか学生が実家帰るのに近所にお土産配るのってどうなの)

「うっそ、まじ?」「普段夜番じゃーん?そん時めっちゃ可愛い彼女と一緒に帰ってるってさー。○○も××も腕組んでるの見たってー」

(でも買って帰らないと拗ねるだろうしなぁ・・・・・・いっその事、思春には最後まで知らせないってのはどうだろう)

「あー聞いた事あるかもー。アレじゃない?黒髪のー」「え?沙和が聞いたの金髪の子だよー?」

(偉い人は言いました、バレなければ正義であるかもしれない)

「働けー!ってか、なんのはなしー?」「一刀くんの彼女の話なんだけどー」「なんか意見食い違ってるんだよねー?」

(思春も忙しいかもしんないし!うん、邪魔するのは良くないよな!)

「あれ、卒業したら亞莎ちゃんと結婚するんじゃないの?」

「アタシ雪蓮さんと付き合ってると思ってたー」

「えー?結婚は別に相手いるんじゃなかったっけ? こないだ△△が未亡人っぽい女の人とホテル入ってくの見たって言ってたよー?」

「うっそ?!だってこないだ亞莎ちゃんと一緒に産婦人科から出てくるの見たって□□が・・・」

「え?待って、雪蓮さんとゼ○シィ買ってたって聞いたよ?」

 

噂は怖い。流す人はもっと怖い。

 

「・・・・・・あの、お三方さん?視線がすんごい痛いんですけど?」

「「「一刀くんきちくー」」」

「生まれてきてすいません・・・」

一刀が根も葉も無くは無い噂によって虐げられている頃、秋蘭一行は目的の駅に着き、下車していた。

 

「さて、ここから少し歩くわけだが、その前に幾つか注意をしておく」

「注意、ですか?」

「何かあるんですか?」

「ああ。まず、ウチの姉に合ったら必ず「挨拶ぐらいはしますよ幾ら何でも」手に何を持っているかを確認しろ」

「「「はい??」」」

「手に肥料を持っていたら要注意だ、節分の豆代わりにぶつけて来る可能性大だからな」

「「「・・・・・・」」」

「庭弄りが趣味なんだが、虫が少々苦手でな。今では鎌の刃先で蚊の羽を落とす腕前になった」

「あの・・・先輩・・・」

「もしお姉さんが鎌を持っておられたら・・・」

「いくらなんでも・・・人には投げないですよね?」

「近くに虫が居なければな・・・・・・」

 

暗い暗い顔になった秋蘭に、三人は違わず「ああ、投げられた事があるのか」と悟った。

 

「姉に関する注意は幾つかあるんだが、とにかく悪意は無いんだと覚えていてやってくれんか・・・」

「はぁ・・・」「わかり・・・ました・・・」「不幸だ・・・」

「おっぱいいただきっ!!」

 

重苦しい雰囲気をぶち壊すっ!!といわんばかりに、秋蘭の背後から胸を鷲掴みにする人物がいた。

 

「ほほぅ・・・・・・なかなかエロいブラ付けるようになったねぇ秋蘭ちゃん」

「・・・何をしてるんですか、桃香さん」

「えー、久々にあったのに酷くなーい?少しは驚けー!」むにむに

「揉まないで下さいませんか」

 

ちぇー。と唇を尖らせ秋蘭の胸から手を離す桃香。私服なのを見ると、これから電車に乗ってお出かけするのだろう。

 

「お久しぶりです」

「うん、久しぶり♪」

「あ、こんにちわ、桃香さん」

「蓮華、この痴女はお前の知り合いか?」

「愛紗・・・あんた、言うに事欠いて・・・」

 

すいません、失礼な子で。と詠が頭を下げるが、桃香の顔には「ん?」とでも言いたげな疑問符が浮かんでいた。

 

「失礼も何も、下着が見えそうな丈のスカートをはいて知人とは言え他人の胸を公衆の面前で揉むような女だぞ?」

「愛紗・・・・・・」

 

秋蘭が額に手を当てながら頭を振るが、ソコまで言われた桃香はと言えば、面白いのを見つけたと言わんばかりに顔を歪ませていた。

桃香が少々やんちゃなのを妹経由で知っている蓮華は、空気を換えなければと勇気を振り絞って話しかける。

 

「え、えっと、お出かけですか?」

「うん♪ またシャオ借りるね~?」

「いつもありがとうございます、面倒みて貰っちゃって」

「ううん♪ シャオってば色々と気が利くから、私の方が面倒見て貰っちゃってる感じかな~?」

「い、いえそんな・・・」

「あー、そろそろ行かないとー。 あ、ごめん秋蘭、ちょっとだけいい?」

 

ごめん。と態々された前置きに薄ら寒いモノを感じながら近寄ると、桃香は「後で苛めるからアイツには黙ってろ」と耳打ちする。

それが何を意味するのか、何の事を黙っているのかを確認しなければならない付き合いではない。

春蘭だけでも大変なのに、他に後五人も姉が増えるのか。と珍しくホンの少しだけ一刀を怨んだ秋蘭だったが、桃香に逆らえる訳も無くはい・・・と弱弱しく頷くのだった。

またまたその頃。

 

「んじゃあがりまーす」「「「おつかれー」」」

 

何故か視線を感じ続けた一刀だったが、何事か尋ねても皆素知らぬ顔でそっぽを向くので解決するわけも無く。

 

「なーんかいつもより疲れた・・・」

「お、お疲れ様です、一刀さん」

「あ、店長「代理って言うな」・・・亞莎が最近冷たい」

「一刀さんがしつこいのがいけないんですぅー」

 

傷ついたような口調の一刀につーんとそっぽを向いて応える亞莎だったが、両者が不仲になった訳ではない、念のため。

学校との兼ね合いと自宅兼職場という事情の為、亞莎は基本的に忙しくなる午後から働いているのだが、そうなると一刀との接触は基本多くなるのだ。

最初こそ目の端に涙を溜めて反論していた亞莎だったが、いい加減慣れたのか今ではこうやってやり返す事も珍しくない。

 

「今から?頑張ってな」

「はい。 あ、あのですね・・・」

 

途端モジモジとしだし、えーと・・・と言葉を濁しながら後ろに隠していた包みを差し出す亞莎。

なんじゃらほい?と思いながら受け取った一刀だったが、布越しに伝わるほのかな暖かさにもしや?!と思い立つ。

 

「あのさ・・・まさか、お弁当、とか?」

「あ、あの!!残り物で恐縮ですが!!」

 

一刀がおちゃらけてないと急に固くなる亞莎だったが、今の一刀には気を配る余裕はなかった。

「え、えと!ゆっくりしてきてください!」

「亞莎は俺の嫁、異論はみとめねぇ!!」

 

人生初の『可愛い女の子の手作り弁当』にテンションが上がりきった一刀は、同僚の三人が影から見ている事も気付かずに快成を叫ぶ。

いつもの冗談なのか、それとも本当に本気なのか判断が付かない亞莎は顔を真っ赤に茹で上がらせて、俯いて指をモジモジと弄らせている。

 

「あ、あの・・・ホントに、期待しないでください・・・」

「やべー超嬉しい」

「か、一刀さん・・・?」

「人生初だよ・・・超嬉しい・・・実家帰ったら自慢しまくるわ」

「いえあの?!本当に大した事無い中身ですので」

「サンキュー!!」

「いえあの・・・喜んでもらえるのは嬉しいんですけど・・・」

 

亞莎の言葉に全く聞く耳を持たず、ひゃっほうと全身で叫びながら一刀は荷物を引っ掴むとそのまま出て行った。

 

「亞莎ちゃんおっはー」

「あ、沙和さん。おはようございます」

「ねぇねぇ?さっき一刀くんに渡してたのって、お弁当だよね?」

「え!?」

 

年上の後輩三人のニヤニヤとした顔に、見られていたと悟った亞莎は更に顔を真っ赤にして口篭る。

 

「ねー?だから言ったじゃん亞莎ちゃんと入籍コースだって」

「えー!?だって沙和が聞いたのはー」

「だからー、それはもう終わったって事じゃない?」

「あ、あの・・・何の話を・・・」

「ねぇねぇ、亞莎ちゃんってさ、妊娠してるってホント?」

「はぁ?!」

「一刀くんが卒業したら結婚して夫婦で此処経営するって聞いたよー?」

「だ、だれがそんなことを?」

 

亞莎の当然な問いかけに、モブA子と沙和はモブB子を指さし、B子ははーいと手を上げる。

 

「な、なんでそんな話に・・・」

「なーんだ、違うのー?」

「学生結婚とかアコガレだよねー」

「ねー、超アコガレる~♪」

「一刀くんの本命って結局誰なんだろうねー?」

「だーかーらー!さっきも『亞莎は俺の嫁!』って言ってたじゃん。ねぇ?」

「へ?! いえあの、一刀さんのアレは冗談というか、結構言われてますから・・・」

「「「でも公開告白とかまじないわ~」」」

 

一刀哀れ。しかしなんだろう、この爽快感。

秋蘭達一行は散歩がてら町内を歩き、愛紗が「先輩の通った学校を見たい!」と途中騒ぎ、蓮華も無言という肯定を差し向けたのだが詠の喧しいの一言で無かった事にされた。

何は兎も角荷物を一旦置こう。と肉体的な限界が近そうな詠の顔色を伺った秋蘭が方針を決め、ようやく夏侯家に到着した。

其処で秋蘭達四人を出迎えたのは、麦わら帽子に白いワンピースという、いかにもお嬢様な服装で花壇に水をやる春蘭だった。

 

「あら秋蘭ちゃん、おかえりなさい」

「・・・ああ」

「それで、後ろの子達が後輩さんかしら?」

「初め・・・・・・まし「無理に喋るな。詠と言ってな、暫く面倒を見る」

「愛紗です、初めまして」

「蓮華です」

 

秋蘭の忠告を守り、三人は春蘭の持つジョウロを凝視していた。それをどう扱えば兵器になるのか定かではなかったけれど。

 

「それで、姉よ。態々その服装で出迎えるという事は、私に喧嘩を売るという意思表示で構わんのだな?」

「喧嘩?あぁ・・・・・・・うふふ♪」

 

秋蘭に指摘されると、春蘭はワンピースの裾を摘んでヒラヒラと振ると踊る様に鼻歌交じりに動き出す。

 

「え、えっと・・・素敵な服ですね・・・?」

「え、ええ。お似合いです」

「えへへ♪そうでしょう?『絶対春蘭に似合うと思った』って、カズちゃんがプレゼントしてくれたんですよ~♪」

「なるほど、その喧嘩買った」

「あら?秋蘭ちゃんはまだカズちゃんからお洋服プレゼントされてないの?」

 

心底不思議そうに首を傾げる春蘭に、秋蘭は右の閃光(センコー)を叩き込み、辺りに車のタイヤがパンクしたかのような音が鳴り響く。

流石に鼻を殴るマネはしなかったが、だからといって首が不自然に揺れ動く速度で顎の先端を殴りつけるのは如何なものなのか。

 

「あ、あの・・・・・・先輩?」

「『ブッ殺す』と心の中で思ったなら、その時スデに行動は終わっているんだ」

「淡々と言わないでください・・・」

「ぜぇ・・・・・・ぜぇ・・・・・・」

「詠が限界だな。愛紗、荷物を持ってやってくれ」

「はぁ・・・」

普段なら何が何でも自分の荷物は自分で持つのが信条の詠だったが、かなりの荷物を詰めたスポーツバッグ×2を担ぎ、結構な距離を徒歩で歩いたのが効いたのか無言で地面に降ろす。

と、その時お向かいの家のドアが開き、眠たそうな顔の女が頭をボリボリ掻きながら出てきた。

 

「タマの休みぐらいのんびりさせんかいな・・・・・・春蘭、お前今度は何しくさったんじゃ」

「霞さん、ただいま帰りました。お変わりない様で何よりです」

「んー? おぉ秋蘭やんかー!元気にしとったか?」

「はい」

(ねぇ愛紗・・・・・・あの人、何処かで見たこと無い・・・?)

(奇遇だな・・・私も今そう感じていた)

「っておい?!その子は大丈夫なんか?!」

「? あぁ、少々線の細い子でして。他人の手を煩わせるのを極端に嫌うので」

「んな事ゆーてる場合か!!」

 

スポーツバッグの上に垂れる様にへたり込んだ詠の姿を見て、霞は踵を返して出てきた家に舞い戻る。

その時に上げた声量で、愛紗と蓮華の疑問も氷解した。

 

(・・・・・・ねぇ、愛紗。あの人って、この前電車で・・・)

(私達二人で、喧嘩を売ったな・・・)

 

ぐったりと倒れ込んだ春蘭には何も触れない辺りに変わらないモノを感じた秋蘭だったが、詠は兎も角何だか顔から血の気が失せた愛紗と蓮華が気に掛かった。

 

「どうしたんだお前達まで? まさか、熱中症にでもかかったか?」

「あ、あの~・・・秋蘭先輩? 先程の人は一体・・・?」

「ん?霞さんの事か?見ての通りお向かいの長女で、一刀の姉君だ」

「そ、そう・・・ですか・・・・・・」

「お、お姉さん・・・」

 

予期せぬパンチに愛紗は足元から崩れ落ち、蓮華は口を真一文字に結んで唸る。

本格的に怪しくなってきた両者の立ち振るまいに秋蘭が何事かと問い質そうとした時、霞が濡れタオルを持って飛び出してきた。

「え~っと、家の分は買った、思春のトコと秋蘭のトコも買った。うん、完璧」

 

亞莎のお手製弁当を大事に抱え、凄い速度で家に帰った一刀は不器用に刻まれた肉野菜炒めや不恰好な玉子焼き諸々を美味しく戴いた。

一口食べる度、美味しさとは別のベクトルで頬が緩むのは仕方ないだろう漢として。

閑話休題。お弁当を食べたし、急いで帰ったから汗だくだし、荷物の件も気になっていたしで、結局電車を遅らせる事にした一刀は再度荷物を纏めるとお土産を求めて駅構内をうろついていた。

元々驚かせようと姉達には連絡せずにいたため、電車を遅らせても何の不都合も無かったのでゆっくりとお土産を見て回っていたのだが、これが中々楽しいものだった。

 

「姉ちゃん達の買い物は何が楽しいのかさっぱりだけど、見て回るのも面白いなぁ」

 

自分の欲しいモノを見て回るのなら百歩譲ってそういうものかと納得できるが、霞と凪を筆頭に男前な買い物をする姉達。

一番時間が掛かる買い物が、弟の物を買う時なのは健全な乙女として如何なものなのか。

 

「まぁ土産買ったんなら連絡しとかんと怒るよな、俺も暇になるし」

 

電車が来る前に連絡しとこうと、ケータイをポチポチ操作して思春にメールを送るとその間に溜まったメールに返信を返す。

頻繁にメールするのが于吉な辺りに涙を隠せないが、それでも無茶振りばっかの祭やハーレ○イン読みすぎだろと突っ込みたくなるエロメールを送り付ける桔梗の頻度が少ないのは僥倖というモノだった。

 

「・・・・・・あらためて見ると、俺ってモテないなぁ」

 

受信ボックスは于吉于吉華佗于吉、華琳が入って于吉于吉于吉……と見事なまでの男率。一刀は一度自分のアドレス帳を確認するべきだと思うんだ。

着信履歴はそれなりに女性率も高いが、それでも半分は身内が占めている辺りに己の不甲斐無さを隠せない一刀。

うーむ、さっさと彼女作らんとマジで姉ちゃんに貰われてしまう。と殴りたくなるような悩みを抱いていた一刀だったが、思春から返信が届くとそれを確認しつつ、乗る予定の電車に乗り込んだ。

(買った、とうとう買ってしまった)

 

ギャルゲーのアンソロジーに801本に、コミックの新刊にラノベと大分偏った買い物袋の中身から取り出したのは、料理の本。

先日の調理実習が(ノ∀`)な結果に終わってしまった思春は、大型の休暇に入る事を利用して家事の特訓をする事を決意した。

 

(イマドキ女だから家事やるってのもどうかと思うけど、どう考えたってアイツに家事任せるのは無謀の極みよね。

それにほら、子供生まれてもお惣菜が食卓に並ぶのはどうかと思うし、一刀だったらお惣菜でも贅沢すぎるけど、流石に子供には可哀想よね、うん。

べ、別に私が一刀の事好きな訳じゃないけど?!そういうんじゃないけど、うん、なんていうかほら、私が貰ってやらないともう誰も相手にしてくれないだろうし、幼馴染の誼っていうかほら、あのーアレよボランティア精神!!うんボランティアボランティア♪あーアタシってば良い女だなー)

 

と、ツンデレのテンプレの様な言い訳を己に言い聞かせながら、顔を真っ赤にして料理の本を手に取りパラパラと捲って中身を確認した思春は、自分でも何とか出来そうなベタなおかずの作り方が載っている本を買うと駆け足で自室に帰って―――まず真っ先に趣味の本にカバーを付け出した。

 

「今月ちょっとヤバいかなー。コ○ケはまぁサンプルとか戴けるから何とかなるかー」

 

よ!とスカートを脱ぎ、パンツ丸出しでベットに寝転がると買ってきた思い出達を読み出す思春。その時、ケータイがメールの着信を告げた。

 

「もー良いトコだったのにー。一刀ってば相変わらず空気読めないんだからー」

 

ニッコニコしながら文句を言う釣り目美人って萌える。

 

『件名:らいぶあらいぶ              

 本文:俺には、帰りを待ってくれている人がいる!』

 

文に目を通し、その意味を十二分に脳が理解した瞬間思春は恥ずかしさから手を付けられなかった料理の本を取り出した。

急いでパラパラとページを捲り、開かれたそのページに付箋を貼り付けると台所に行こうとしてセミヌードの自分に気付く。

 

「もう!なんで急にそんな事言い出すかなコイツは!アタシにだって都合ってモンがあんのよ!!」

 

口でグチグチと言いながら、Tシャツにダブダブのズボンを着込むと解いていた髪をポニーテールに纏めて再度台所へ―――行こうとして、メールに返信を返す。

 

『件名:あの世で俺に詫び続けろ

 本文:まってねーよ 』

 

よし!とメールが届いた事に満足すると、おかーさーん!と声を上げながらドタドタと廊下を走る思春だった。何この可愛いの。

言い訳

 

最初の目標と着地点が異なるのは自分の仕様なのだと気付きました、くらげです。

 

愛紗と蓮華のウキウキ一刀家訪問ツアーだったのですが、気が付いたら思春に喰われてました。

この後二人は霞にDOGEZAを決め込んだ後、帰ってきた一刀に思春を紹介されて女の争いを繰り広げる予定です。

全部書こうとするともう10日ぐらい伸びそうだったので断念しました。遅筆が恨めしい。

 

コメントにて『○○マダー』とのご意見多かったので、今回沙和をねじ込んでみました。

ぶっちゃけ沙和は何も考えていなかったので、どこで練り込もうと扱いは大して変わらなかったりします。お好きな方申し訳ないです。

メインヒロインなのに一度も登場していない翠に関してですが、彼女が出る=この外史の終わりを意味しますのでどうしたものかなぁと考え中であります。

翠はメインヒロインなので、成長して一刀に再会する=ルート確定=ゴールインな方程式が成り立ってしまいます、私の妄想的に。

なのでコ○ンボにおける【ウチのかみさん】的な扱いにしようと思っていたのですが、それだと華琳様に太刀打ちできません。

 

というわけで、前言を無かった事にして「ばんがいのに」の続きで翠を登場させようと思ってます。いつになるやらさっぱりですが。

次は全く手もつけてませんので、合コンになるか水着選びになるか、それとも「ばんがいのさん」になるか分かりません。

行き当たりばったりが過ぎると自分でも思いますが、新作ゲーム達が面白いのがいけないんです。うん、私は悪くない。

 

なお、秋蘭の言っていた鈴っ子ですが、正体は当然パンツ娘こと思春です。

なんか面白いコト書きたかったんですが、上手い事いきませんでした。ままならない。

 

では次ページからお礼返信させていただきます。いつも読んでくださってる皆様、ありがとうございました。

お礼返信ページまで目を通してくださっている方、もしかしてヒ(ry

風の旅人様  ホントに華琳様は可愛がられるよ(*´・ω・)(・ω・`*)ネー

 

四方多撲様  公式でツン:デレ比が10:0と言われてるキャラは他に知りませぬ。

       桂花のおかげで中の人の他のキャラも(ry

 

zero様    なんだか色々コールしていただきまして、ありがとうございます。

       翠は兎も角星は全く触れてもいませんねそういや。なんとかせねば。

 

Kito様    生還でござる!生還でござる!

       月の昔のはなしとな? 喜んで書かせていただきます。代わりにルート消滅しますががが

 

悠なるかな様 一羽でたぜーいえー。 真桜は霞ねーさんの舎弟です、たぶんそのうちヒョコっと出てくると思います。

 

2828様    まーだだよー

 

tanpopo様  出し惜しみしてたら敵が強大になりすぎました。腐ってやがる、早すぎたんだ・・・

 

風籟様   やってるコトはそこらのヒロインと大して代わらんのですがね。それでも萌えるのが桂花クオリティ

 

t-chan様  からみ酒とかその場の勢いで書いたので全くノープランだったりします。

 

リョウ流様  思春きた!コレで萌える!!

 

テス様   風ちゃんのお茶目な部分は書いてて楽しいです。意外に月とは良いコンビ。

 

景様   またまたご冗談を!!ほら、アレとかあるじゃないですか!ほら・・・あのーアレですよアレ。分かるでしょ?

 

tyoromoko様  全員酒入りとかR18指定です。

 

happy envrem様  ハードルは上げれば上げるほど潜りやすくなる。その金言を信じたいです。

 

司 葵様  設定だけ書き殴ろうかとも思いましたが、そうすると今後に支障をきたすかもしれませんのでやめました。

 

ちきゅさん様  こんな馬鹿SSでも力になれているようで何よりです。うれしい。

        ノリの良い桂花とかマジ伝説クラスのレア度だと思うんですよ。

 

kurei様  華琳様の安定感は色んな意味でバツグンです。ついつい頼りたくなってしまう。

      あんま変わらんのじゃないかなぁと首傾げながら書いたので、受け入れて頂けて嬉しい限りです。

 

mighty様  秋蘭も出ましたー。今回病んでないよ!!自分でびっくりだよ!!

 

asf様   ここの一刀くんはニブチン。鋭いと一話目でハーレム結成しちゃいますので。

 

よーぜふ様  女は度胸、あと腕力ってばっちゃが言ってた!!

 

叢 剣様  ヤンデレ祭さんマダァ-? (・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン

 

比良坂様  華琳様はオーバースペックですんで恋ねーちゃん以外とは仲良くやれます。恋ねーちゃんの懐柔は皆無理。

 

tomi様   姉×6「調子こかせてもらうぜっ!!!」

 

jackry様  あるぇ~(・3・)? 詠メインで書き出したのに秋蘭に喰われて思春に持っていかれた。

 

水上桜花様 友人がこんな事を言ってました。「成せば成る。成さぬ事もある」

 

samidare様  キット、楽シイ一時ヲ過ゴセタンジャアナイカナァ。

 

おやっと?様  ギャグ枠は逞しいんです。だからきっと大丈夫。

 

曹仁様   意表をついて蒲公英エンドとか妄想してました。此処に書いた時点でお蔵入りですががが

 

宗茂様   試合=人生ですね!わかりません!!

 

Ocean様  畜生!!なんで俺には義理の姉妹がいなかったんだ!!

 

カズト様  またまたご冗談を!!紳士淑女の集まりで流血沙汰なんてアリエマセンヨ!!

 

シズナ様  むしろ華琳様はルート突入しない方が美味しいと思うんだぜ!!

 

 

長らく期間空けまして申し訳ないです。読んで下さった皆様に感謝してます。


 
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