No.147188

真・恋姫✝無双 月下の再会

同人円文さん

暗いです。
暗い話は嫌、等のお方はご注意ください。

2010-06-02 07:21:58 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:7934   閲覧ユーザー数:6399

ここは魏の都、許昌。

三国同盟も順調に機能しており、北方の異民族の進行はあるも平和が続いていた。

 

「凪!そっちや!」

「わかった!!」

 

 

 

 

一刀がいなくなって9年の月日がたっていた。

 

「ほら!おとなしくしろ!」

「楽進隊長代理!捕らえた男をつれていきます」

「ああ、頼んだぞ」

 

捕らえられた暴漢が警備兵によってつれていかれた。

凪は一刀が居なくなってしばらくして隊長代理となった。

隊長に就任する案もでたが本人が嫌がり隊長代理という形で現在、部隊をまとめている。

 

「はぁ~つかれた~」

「だらけるな、真桜」

「だってぇ、さっきの奴なかなかすばしこっくて・・・」

「鍛え方が足りないからだ・・・まったく」

 

現在凪、真桜は休憩をしていた。

さっきの暴漢を捕まえるのに時間をかけたため警備兵にも休憩をとらせていた。

ちなみに沙和は現在新兵訓練をいつものようにしている。

 

「後でさっきの暴漢を取り調べないとな・・・」

「まったく迷惑やな~」

「真面目にしろ、真桜」

「へーい」

「さて行くか」

 

凪は休憩の終わりを指示しようと立つ。

 

ガシャン!!

 

「凪!どないしたん!」

 

凪が突然倒れた。

真桜があわてて席を立ち凪に駆け寄る。

 

「真桜・・・?」

「凪!?大丈夫か?」

 

凪は少し困ったように笑った。

額に手を当て真桜の方を向く。

 

「すまない、ちょっと立ちくらみ…みたいだ…」

「ちょっと休んどくか?」

「いや、問題ない」

「そっか・・・」

 

しかし、その日から凪はよく咳をするようになった。

 

 

「コホッコホ・・・!」

「凪ちゃん大丈夫・・・?」

「ああ・・・大丈夫だ」

「無理すんなや、凪・・・」

「心配するなと行っているだろう…さぁ、行こう」

 

そういって凪は笑っていつものように警邏に出ていった。

真桜たちは凪の歩いていった先を見つめる。

 

「真桜ちゃん・・・」

「凪・・・だんだん顔色悪くなっていっとる・・・心配や」

 

それから凪はなんの問題もないかのように仕事を続けた。

真桜たちは何とかして凪に仕事を休むよう頼んだりもしたが凪は言うことを聞こうとはしなかった。

そして、数日後。

その日、真桜は警邏に行き、沙和に兵士の訓練を、凪に書類整理という風に仕事を分担していた。

凪に書類整理をさせたのは少しでも無理をさせないための配慮だった。

 

「ほらぁ、そこのおっちゃん!喧嘩はアカンで!」

「へぇ!すいませんでした!」

「まったく…今日は何や騒がしいな…」

 

そこに隣にいた警備兵が声をかけてきた。

 

「もうすぐ三国同盟締結のお祭りですから町の人も気がたっているのではないですか?」

「そういやもうすぐやったな…」

 

あれから9年も時間が経った。

そのことに真桜は寂しそうな表情になる。

 

(おい!将軍たちにそのことは…)

(何のことですか?)

(お前知らないのか!?この警備隊の隊長だった御使い様の北郷一刀様がいなくなった日なんだよ!)

(あ…)

 

そのことを知らない若い兵は顔を真っ青にする。

警備隊の中では北郷一刀のことは禁句ともいうべきことだった。

暗くなる空気。

その暗くなった空気を払ったのは真桜だった。

 

「なに暗くなっとるんや!そんな顔で警邏しとると町のみなさんまで暗くなってしまうやろ!なにより、隊長がそんなこと望まん!ええか、明るくいくんや!」

「…サーイエッサー!」

 

その明るい声に兵士たちは答える。

今ここにいない隊長の思いを守るかのように。

しかしその明るい空気を壊すかのような出来事が起こった。

 

タタタタタタッ!

 

「李典将軍!!緊急事態です!!」

「何や!何があった!」

 

それは真桜たちの心配を現実のものとする報告だった。

 

「楽進将軍が血を吐き倒れました!!」

 

 

バタン!!

 

「凪!!」

「真桜さん!」

 

そこにいたのは凪達の副官の孫礼だった。

真桜は孫礼につかみかかる。

 

「虎々!凪はどこや!」

「奥の救護室で眠っています…」

「クッ!」

 

すぐさま奥の部屋の布をめくる。

奥のベッドに凪が顔を白くさせて横になっていた。

 

「はぁはぁ…凪?」

「今は…眠っています」

「そっか…」

 

真桜は虎々の答えに安心するのを感じた。

真桜はそっと凪に近づく。

その寝顔を見ると顔色は悪く、まだ安心できないことを示している。

 

(やっぱり…体調悪いやんか…凪)

 

真桜はその部屋から出ていった。

そこに…

 

「凪ちゃん!!」

 

訓練に出ていた沙和がやってきた。

 

「沙和!」

「真桜ちゃん!凪ちゃんは!!?」

「今は寝とる・・・奥におるから見てみい」

「うん・・・!」

 

それから1時間ほどたって凪は目を覚ました。

その表情に力は無く見るからに病を抱えている人間にしか見えなかった。

 

「すまない、二人とも・・・まだ仕事が残っていたのに・・・」

「そないなことはどうでもええんや!」

「凪ちゃんは休んでて!」

「すまない・・・」

 

そういって凪は再び目を閉じた。

眠った凪を見て真桜と沙和は兵士にこのことを華琳に伝えに行かせ、凪の看病を孫礼にまかせ、自分たちは凪の残した仕事を片づけることにした。

 

 

「凪が血を吐いて倒れたですって…!」

「はっ!」

 

その報告に華琳と秋蘭は驚きを隠せなかった。

 

「それで容態はどうなんだ!」

「現在、詰め所の救護室でお休みになられています」

「…わかったわ、すぐに凪の自室に行けるよう馬車をだしてあげなさい。それと医者の用意を」

「はっ!」

「華琳様…」

「凪には病が治るまで仕事を休ませましょう…いいわね」

「…それがよろしいかと」

 

その後、凪はすぐに自室に運ばれ医者の診察を受けた。

そして、華琳の指示により病が治るまで休職を命じられ療養することとなった。

しかし、

いっこうに凪の体調はよくならずそればかりか、ますます体力は衰えを見せ始めた。

 

 

「すまない…二人とも、私が働けなくなったばかりに負担を強いてしまって…」

「そんなことあらへん!凪は体をよくすることだけ考えとったらええんや」

「そうなの、また一緒に警邏に行かなきゃ!」

「そうだな…コホッ」

「凪ちゃん…無理は駄目だよ、ほら横になって」

「すまない…」

 

凪は起こしていた体を横にする。

 

「じゃあ凪、うちら仕事に行くから…」

「ちゃんと寝てるの~」

「ああ、わかってるよ」

 

凪は不安げな顔をする二人に笑顔を見せる。

その笑顔を見届けて二人は部屋を出ていった。

 

(すまない・・・真桜、沙和)

 

凪は感じていた。

自分の命はそう長く持たないだろうと。

死、そのことに恐怖は無いわけではない。

しかし覚悟はしている。

自分は武人だ。

戦場では何時、どこで死ぬかわからない。

死ぬことはいつでも覚悟していたことだ。

しかし凪には別の恐怖があった。

それは大事な人たちに会えなくなること。

 

 

北郷一刀を待つこと、会えなくなること…。

 

 

(隊長…)

 

 

今、ここにいない愛しい人を想い凪は眠りについた。

 

 

 

…ぎ…

 

なぎ…

 

 

凪…?

 

凪…。

 

 

ガバッ!!

 

「ハァ、ハァ…、隊長…?」

 

 

自分を呼ぶ、一刀の声が聞こえた。

外を見るとすでに日が沈んで時間がたったのか、大きな満月が見える。

外から聞こえるのは一刀の声。

 

(隊長…)

 

 

「凪ちゃん…大丈夫かな…」

「大丈夫やって、今日は流琉に体にええもん作ってもらっとるから、これでよくなるやろ…」

「うん…」

 

二人は夕飯の後、流琉に凪の夕飯を作ってもらっていた。

真桜達が凪のために用意した朝鮮人参や体に良い漢方をふんだんに使った粥だった。

流琉や季衣、他の魏の武将、文官も凪の話を聞いて皆が心配していた。

皆、日に一回は凪の見舞いに来ていた。

凪を心配する心は一緒だった。

そうこうしているうちに凪の部屋に近付いてきた。

 

「ん…?」

「どうしたの、真桜ちゃん?」

「部屋が開いとる…」

「ホントだ~誰か来てるのかな…」

 

そいって二人は部屋に入ろうとする。

 

「凪~入るで~」

「おじゃましまーす…」

 

そこに

 

ガシャン!

 

「凪…!」

「凪ちゃんが…いない…」

 

 

凪の姿はなかった。

 

 

 

「華琳様!!」

「真桜…?何かあったの」

「凪が…おらん…」

「なんですって…!」

 

真桜は悲痛な声で華琳に告げる。

 

「凪が!!どこにもおらん…!!」

 

誰もいない部屋を見た二人は周囲を探したがどこにもいなかった。

そこで真桜は華琳に報告、沙和は警備兵に凪の捜索を連絡したのだ。

 

「…だれか!」

「は!」

「聞いていたでしょう?皆を集めなさい!凪の捜索に手を貸すよう!」

「わかりました!」

「華琳様…」

 

華琳は真桜の方を向き優しく笑う。

 

「安心しなさい…あの体ではそんなに遠くには行けないはずよ…」

 

 

その頃、凪は町の中を歩いていた。

その姿は白い寝巻姿で髪も結わずにおろしてある。

 

「はあ、はあ…」

 

歩みに力は無く、明らかに無理がある。

しかし、その歩みは止まることはない。

今の凪には一刀の声しか入っていなかった。

ただ、声の聞こえるほうへと足が動くだけだった。

 

「たいちょう…ッ、たいちょう…!」

 

凪は月の見える南側の城門へと向かっていた。

声は上の方から聞こえている。

そして、その力のない歩みで城壁の上へと続く階段を登る。

万全であれば10秒もかからない階段を何分も掛けてゆっくり登る。

最後の一段を登ろうとして前を見たとき。

凪は見た。

月を眺める一刀の姿を。

 

「隊長…!!」

 

凪は残り少ない体力で駆けだす。

一刀は凪が来るのをわかっていたように笑顔で振り向く。

凪は力の無い足を懸命に動かす。

 

(もうすこし…!!)

 

あと一歩、その瞬間に凪の足は崩れた。

凪は城壁の石の床に倒れそうになる。

倒れそうになる凪を一刀が抱きとめた。

 

「たいちょう…?」

「うん」

「たい、ちょう…たいちょう…たいちょう…!!」

「来るのが遅れた…ごめんね、凪」

「遅すぎます…私、待ちくたびれました…」

「うん、ごめんね…来るのが遅すぎたな…」

 

凪は持てる力全てを使って一刀を抱きしめる。

一刀も凪を力強く抱きしめた。

凪は抱きしめられて感じる。

 

(隊長だ…この匂い…声…体の大きさ…温かさ…力強さ…)

 

愛しい人がいる。

ただそれだけで凪の心はいっぱいだった。

 

「隊長…」

「うん」

「これからは…ずっと、一緒にいてくれますか…?」

「ああ、ずっと一緒だよ」

「もう、離しませんから…!」

「俺もだよ…」

 

一刀は優しく微笑む。

その顔を見て凪は心から安心した。

これからはずっとそばにいてくれる。

ただ、それだけで凪は満たされていた。

それから、二人は腰をおろし一刀の居なかった間の話に花を咲かせた。

真桜の事、沙和の事、華琳達の事、蜀の事、呉の事、戦の事、町の事。

いろいろな話をした。

 

「そっか…俺がいない間、大変だったんだな…ごめんな、凪」

「いえ…隊長の残してくれた知識のおかげで今の平和があるんです…」

「そっか…」

 

すると凪が船を漕ぐように頭を揺らしだした。

 

「眠いの?」

「すみません、ねむ…くなって…きてしまいました…」

 

一刀は凪の頭を膝に置き床に寝かせる。

 

「大丈夫…ゆっくり休んでいいよ、俺はここにいるから」

「はい…たいちょう、これからは…ずっ…と、一緒…」

「ああ…おやすみ…凪」

 

凪は一刀の温かさを感じながら、眠った。

 

空に一筋の星が落ちていった。

 

 

同時刻、風、稟、霞が町を走っていた。

三人も凪を探すため走り回っていた。

ふと、空を見上げる風。

その時、空に星が落ちた。

星が落ちるのを見て風は足を止める。

 

「どうしたのですか、風?」

「なんや?どないしたん?」

 

風は顔を俯かせ、何も言わずに稟に抱きつく。

 

「風…?」

「凪ちゃんが…」

「…ッ、そう…ですか」

 

その声は涙で震えていた。

 

 

 

「凪…!どこやー!」

「凪ちゃーん!」

 

真桜と沙和は町の中を数人の警備兵と走っていた。

 

「凪…あんな体で…どこいったんや…」

 

いくら探しても見つからない。

そのことがただ焦りを生むだけだった。

真桜は月が見える南側を向く。

その瞬間、目に入ったものがあった。

 

「沙和…あれ…」

「…あれは!」

 

沙和、真桜の目に入ったもの。

それは…

 

 

月の光を浴びて光る銀色。

風になびく、凪の髪の光だ。

 

 

二人は警備兵を置いて南門の城壁へとむかって走る。

城壁の上へと続く階段を10秒とかからずに登ってしまう。

そして登り切った先に二人が見たものは。

 

 

床に横たわる凪の姿だった。

 

 

「凪!!!」

「凪ちゃん!!!」

 

凪に駆け寄る二人。

すぐにその体を揺さぶる。

 

「凪!凪!!」

「凪ちゃん!!凪ちゃん…!」

 

しかし、反応は無い。

 

「何、寝とんねん…凪…おきろや…こないなとこ、風邪引くだけやん」

「真桜ちゃん…」

「さぁ起きるんや…また一緒に警邏に行くんやろ…一緒に兵の訓練せなあかんやろ…!」

「真桜ちゃん…」

「目ぇ開けてな…凪ぃ…頼むから、もう警備の時サボらんから…まじめ、に…する、から…」

「まおう、ちゃん…もう」

「目ぇ…あけてぇな…おねがいやぁ、凪…」

 

真桜は何度も呼びかけた。

しかし、その目が開くことはもう無かった。

 

「まおう、ちゃん…なぎちゃん…」

「うっく、ううぅうぅ…」

 

目の前の出来ごとにただ泣く真桜と沙和。

 

「かりん、さま…」

 

そこに華琳が秋蘭、春蘭と共にやってきた。

床に膝をつき華琳は凪の顔をなでる。

華琳は気付いた。

凪の顔に、頬笑みがあったことを…。

 

「凪…あなた、会えたの?」

 

 

後ろには桂花、霞、稟、風、季衣、流琉も来ていた。

一同、華琳の言葉に華琳の方を向く。

 

「そう…会えたのね…一刀に」

 

ポタ…。

華琳の瞳から涙がこぼれた。

 

 

「な、凪…なぎぃぃぃ!!」

「うぅ…うわあぁあぁぁん!!」

 

真桜と沙和は動かない凪の体を起こし、抱きつきただ泣いた。

 

「凪さん…!」

「ううぅぅう…」

 

季衣と流琉は互いに抱き合い二人で泣き。

 

「凪…」

「…」

 

春蘭と秋蘭は目を閉じ、顔を隠すように俯き。

 

「凪殿…」

「ぐす…」

 

風は稟に顔を当て稟は涙を流し、風の背中に手を回して抱きしめ。

 

「なんで…死んでしまうんやッ」

 

霞は嘆きその目を涙で濡らし。

 

「…」

 

桂花は何も言わず振り向き、目から大粒の涙を流し。

 

「さよなら…凪…」

 

華琳は涙を流し、凪に今生の別れを告げた。

 

 

その翌日、魏の都、許昌は町全体が喪に服した。

楽進こと凪の死は市井に衝撃を与え、町全体がその死を悲しんだ。

しかし、その死はのちに戯曲となりこう語り継がれた。

 

天の御使いの帰りを待ち続けた恋人はその死の間際に再会し天の国で幸せに暮らした、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『一刀様、ずっと一緒ですよ…もう離しませんから』

 

 

 

死にネタという奴でしょうか…今回はこんな風にしてみました。

コメントありましたらどうぞお受けします。

ただ自分の考えとしては一刀は帰ってくるのが自分の考えです。

しかし。

もし帰ってこないとしたら…という思いで作ってみました。

ちなみにこの話のネタは昔やってたNHKの朝ドラが元です。

その話のラストに思わず泣いてしまったことを思い出して…今回の話にしてみました。

二度目になりますが私は一刀は帰ってくるものと思っています。

今度は一刀の帰還の話を作ってみます。

ではここまで読んでいただきありがとうございます。


 
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