No.144616

真・恋姫無双二次創作 ~盲目の御遣い~ 拠点其之捌 明命√『相貌』

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色々と意見や感想や質問、
『ここはこうしたらいいんじゃねえの?』的な事がありましたらコメントして頂けると嬉しいです。
では、どうぞ。

2010-05-22 01:41:43 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:17753   閲覧ユーザー数:14008

 

遥か遠くの地平線。

 

蒼穹と大地の境目が、果てしなく続いている。

 

新緑に染まる木々。

 

黄砂に包まれた荒野。

 

唯一変わる物と言えば、くっつき千切れを繰り返す白い雲だけ。

 

そんな絵画のような景色を見つめる深き紅の瞳が二つ。

 

周泰幼平こと、明命である。

 

城壁の上にに建てられた物見櫓の上で突っ立ったまま微動だにせず、時折吹く風がその濡れ羽色の髪を棚引かせる。

 

動きを阻害せぬよう最低限に纏った赤銅色の手甲と脚甲、そして背負う大太刀の鞘が暗く鈍い輝きを放っていた。

 

仁王立ちの理由は僅か四文字で事足りる。

 

 

『任務』。

 

 

そして『監視』。

 

 

ただそれだけ。

 

別段敵の軍勢が見えたり、攻めてくるという情報が入った訳ではない。

 

本当に、単なる『監視』。それが『任務』。

 

しかし、彼女にとっては十分過ぎる理由。

 

それは例えば、

 

 

―――――ぐぅ。

 

 

「・・・・」

 

 

―――――ぐぅ。

 

 

「・・・・・・・・」

 

 

―――――ぐぅ。

 

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 

自分の身体が知らせる空腹のサインにも気付かない程の集中力を発揮する程に、である。

 

『精神が肉体を凌駕する』

 

創作等で良く使われる表現であり、現実でも少なからず有り得る事だが、今の明命は正にその状態だった。

 

何度腹の虫が唸りを上げても双眸は城壁の外から逸らされる事は無く、ただただ時間だけが過ぎるのみ。

 

 

 

だったのだが、

 

 

 

――――――トス。

 

 

 

「・・・・・・・・??」

 

ふと、足に何かがぶつかった感触がした。

 

微動だにしなかった視線がゆっくりと下に向けられる。

 

しなやかな身体。

 

フワフワの体毛。

 

綺麗な三角の耳。

 

ピンと伸びた三本髭。

 

そして、丸く大きな目。

 

脊索動物門哺乳綱ネコ目ネコ科ネコ属ヤマネコ種の哺乳類。

 

早い話が、

 

 

 

「お猫様~~~~~~~♪」

 

 

 

先程までの凛々しい表情は何処へやら。

 

声は高らかに弾み、両の瞳は爛々と輝いている。

 

足下に佇むそのシャム猫は大人しく、明命を見上げるようにお座りしていた。

 

しゃがみこみ、前足の下に手を差し込んで持ち上げ、抱きしめた。

 

「はぅわ~・・・・もふもふ気持ち良いです~♪」

 

「ミャウ」

 

どうやら相当に人懐っこい猫らしい。

 

明命の割と強い抱きしめも嫌がる事無く、腕の中で大人しく鳴き声を上げるだけであった。

 

が、

 

「あぅあぅ~・・・・あれ?」

 

ふと明命は優しく愛でるその手を止め、白猫の顔を覗き込んだ。

 

「凄いです!!目の色が右と左で違います!!」

 

言葉通りであった。

 

そのシャム猫の左目は空のような青。

 

そして右目は暗い緑に染まっていたのだ。

 

「凄く綺麗です~・・・・あなたはとても凄いお猫様なのですね!!」

 

「なぅ~」

 

興奮気味に高い高いをする明命に、シャム猫は答えるように小さく鳴いた。

 

もう一度抱きしめ頬ずりしていると、

 

「――――あれ?」

 

視界の端に映ったのは、ゆっくりと城壁へと上がって来た一つの人影。

 

ぼんやりとしていたが、陽光を反射する白い上着が誰なのかを十二分に物語っていた。

 

「白夜様・・・・どうされたんでしょう?」

 

明命はシャム猫を抱きしめたまま櫓を階段を下り、小走りに彼へと近づいて行った。

 

 

階段を登り切ると、相変わらず良い風が吹いていた。

 

「ここに来るのは、久し振りですね・・・・」

 

燦々と輝く太陽の下、空を仰いで深呼吸を繰り返す。

 

見渡すように首を巡らせ、鼻孔を擽る匂いが脳裏に広大な景色を創造させる。

 

すると、

 

 

――――――トトトトトトトト

 

 

「?」

 

石畳を軽快に叩く小さな音が耳朶に届いた。

 

明らかに誰かの足音であった。

 

(誰でしょう・・・・?)

 

その方へと顔を向け、気配を探ろうとして、

 

「白夜様~!」

 

その必要は無くなった。

 

自分を名前に様付けで呼ぶ人物は限られているし、何よりこの明朗な声色を聞き間違えたりはしない。

 

暫く待つと、足音が直ぐ近くで止まった。

 

「お早うございます、白夜様!何か、ここに御用ですか?」

 

「お早うございます、明命さん。特に用があった訳じゃないんです。ただ―――――」

 

白夜は顔を城壁の外へと向け、

 

「―――――前に一度来て、ここが気に入ったんです。色んな物が感じられるから」

 

その横顔は、とても穏やかな笑顔だった。

 

その横顔がこちらへと向けられて、

 

「明命さんは、どうして此処に?」

 

「はい、監視です!」

 

「・・・・監視ですか?」

 

「はい!」

 

「ひょっとして、一日中ずっと、此処で?」

 

「はい、任務ですから!」

 

あまりにも真っ直ぐな返答に白夜が鳩が豆鉄砲を喰らったかのような表情になっていると、

 

 

 

「ミャウ」

 

 

 

「へ?」

 

思わず間抜けな声を漏らしてしまった。

 

「あ、すっかり忘れてました」

 

「猫、ですか?」

 

「はい、さっき私の所に来たんです。凄いんですよ!目の色が右と左で違って、とっても綺麗なんです!」

 

「っ!!」

 

その言葉に、白夜は息を呑んだ。

 

そんな彼に明命は首を傾げ、

 

「・・・・白夜様?」

 

「・・・・左右の眼の色が違うんですか?」

 

「はい、そうですけど・・・・?」

 

「その子、何猫ですか?」

 

「えと・・・・シャムのお猫様だと思いますけど?」

 

「・・・・ちょっと、貸してくれませんか?」

 

「は、はい・・・・」

 

ただならぬ雰囲気に明命はシャム猫をゆっくりと差し出し、白夜は白杖をベルトに差し込むと、ゆっくりとその猫を抱き寄せた。

 

赤ん坊をあやすように揺り籠のように抱き上げ、ゆっくりとその小さな頭に手を伸ばして、

 

「・・・・・・・・やっぱり」

 

触れた途端に呟いたその言葉は、何処か複雑そうだった。

 

何処か悲しそうな。

 

何処か辛そうな。

 

その笑顔は、決して明るくはなかった。

 

「・・・・どうしたんですか?」

 

明命には解らなかった。

 

普通、動物に触れあった人の反応は大体決まっている。

 

『可愛い』と喜び愛でるか。

 

『怖い』『嫌い』と言って避けるか。

 

ほぼその二者択一の筈。

 

だが、白夜は明らかにそのどちらにも当てはまっていなかったから。

 

 

 

だから、次の言葉があまりにも強烈に響いた。

 

 

 

「この子は、多分目に病気を持ってます」

 

 

 

 

愕然とする明命に、白夜はゆっくりと話し始めた。

 

「明命さんは、こういう子を見たのは初めてですか?」

 

「・・・・はい。だから凄く吃驚しました」

 

「『オッドアイ』と言うんです。意味はそのまま『色違いの瞳』。非常に珍しい事で、私の国では『金目銀目』と呼ばれ、縁起が良いものとして珍重されているんですが、シャム猫の場合、稀に視覚に問題を抱えている事があるんです。・・・・ほら」

 

白夜がゆっくりと猫の頭の上に手を翳すと、

 

「・・・・あ。白夜様の手に気付いてない」

 

白夜の手は鼻先数センチの距離にあると言うのに、猫は何の反応も示さない。

 

普通なら目を瞑るなり、顔を背けるなりする筈なのに。

 

『そう言えば』と明命は思い出した。

 

この猫を見つけた時、この子は自分の足にぶつかっていた。

 

猫が障害物にぶつかる事は殆ど無い。

 

髭がセンサーの役割を果たし、障害物までの距離を測り取る事が出来るからだ。

 

 

 

―――――だが、そもそも障害物が何処にあるのかすら解っていなかったとしたら。

 

 

 

「さっき頭を撫でようとした時も無反応でした。真正面から手を近付けたのに」

 

猫は、何時の間にか白夜の腕の中で眠っていた。

 

指が喉を撫でるとゴロゴロと気持ち良さそうに喉を鳴らす。

 

その姿が、何処か小さく見えてしまった。

 

 

 

 

「・・・・可哀そうだと思いますか?」

 

 

 

 

「――――え?」

 

 

突然の質問に思わず漏れたのは、あまりにも呆けた声。

 

 

「この子は、悲しんでると思いますか?こんな目を持って産まれた事を、悔やんでいると思いますか?」

 

 

「えと・・・・その・・・・」

 

 

真剣な表情に、何も言えなかった。

 

 

気まずい沈黙が続く。

 

 

何を言えば良いのか解らない。

 

 

頷けばいいのか。

 

 

否定すればいいのか。

 

 

それすらも解らない。

 

 

「その・・・・私は――――――」

 

 

それでも、何かを言おうとして、

 

 

 

 

 

 

ぐぅ。

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

空気が一変した。

 

居た堪れない雰囲気は完全に霧散し、暫しの沈黙の後、

 

「くすっ・・・・ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ」

 

「あぅ・・・・」

 

艶やかな黒髪から湯気が立ち上っている。

 

俯き何も言えなくなってしまう明命に眠るシャム猫が差し出され、

 

 

 

「丁度いい頃合いですし、お昼御飯食べに行きましょうか」

 

 

 

言って踵を返した白夜の背中に、叫ぶ。

 

 

 

「あ、あの、白夜様!!」

 

 

 

「・・・・はい?」

 

 

 

「さっきの答え、なんですけど・・・・私はそうは思いません!!」

 

 

 

白夜は振り返り、

 

 

 

「だって、このお猫様にとっては、それが『普通』ですから!!」

 

 

 

その言葉に、白夜は穏やかに微笑んで、

 

 

 

「・・・・その子の御飯も用意して貰えないか、訊いてみましょうか」

 

 

 

「はいっ!!!!」

 

 

 

弾けそうな笑顔を浮かべ、明命は階段を駆け降りる。

 

 

 

「あまり揺らすと、その子が起きちゃいますよ~!」

 

 

 

苦笑混じりの白夜の言葉を背中に受けながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――有難う御座います、明命さん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(続)

 

後書きです、ハイ。

 

今週は忙しかったです・・・・レポートが幾つも重なって、書くだけで精一杯でした。

 

グラフとか実験データの整理とか、面倒臭い作業ばかりで気が滅入ります。

 

天気の良くない日は余計に。

 

 

で、

 

 

明命の拠点でした、いかがでしたでしょうか?

 

真っ直ぐな彼女らしさがちゃんと書けていれば良いんですが・・・・

 

結構な難産でしたしね。

 

シャム猫のオッドアイに関する事は事実です。

 

昔、何かのテレビ番組で見たうろ覚えの知識を引用しました。

 

他にも白猫だと聴覚に障害があったりするそうです。

 

ちなみに『金目銀目』というのは一方が黄色で、もう一方が黄味の無い淡銀灰色、あるいは淡青色の白猫の事を指します。

 

 

さて、そろそろ話を本編に戻します。

 

いよいよ反董卓連合篇に突入です。

 

魏や蜀、袁家の連中との初顔合わせ・・・・いやぁ、今から書くのが楽しみだ♪

 

まだ所々のプロットが未完成なのでやはり遅筆気味になると思いますが、今まで通り気長にお待ち下さいませ。

 

 

 

閑話休題

 

 

 

最近、自炊のメニューがマンネリ気味です。

 

新しい料理とか覚えようかと思うんですが、中々『食べたい』と思う物がありません。

 

皆さんは、御飯のお共に何を食べます?

 

俺はメンマ、もしくはバターライスで食う事が多いです。

 

TKGはデフォルト。醤油の代わりにポン酢を使うと意外とさっぱりしてて美味いっすよ♪

 

それでは、次の更新でお会いしましょう。

 

でわでわノシ

 

 

 

 

・・・・・・・・最近、講義中の睡魔が物凄い事に。


 
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