夏侯の旗が左翼、凪、真桜、沙和の三人で右翼を形成か・・・
走りながら縦列陣形を無理矢理に組んでいる幽に、背後から鋼の声が突き刺さる。
「陰隊を幽、陽隊を麗が率い・・・鶴の両翼を根元からもぎ取って来い」
漸く組みあがりかけていた縦列陣を・・・真っ二つに割り、各個で縦列陣を再び組み直し、突貫して各個撃破しろ。
一影の言葉はそう言っているのだ。
この状況で、ありえない命令・・・
だが『魔王の軍』において、『魔王』の言葉は絶対・・・
幽にとっては、一影の命令は、反論の余地無く完遂されるもの。
「麗、ぐっどらっく」
「幽さんも、グッドラックです」
並走して走る騎馬の上で、親指を立てた幽の右手と、麗の左手が軽く触れ合う。
同時に振り向く二人に、一影は軽く顎を引く。
「お前達二人の命はオレのものだ、勝手に死ぬことは許さん。
・・・穿て幽、舞え麗」
その言葉に背をおされる様に、『魔王の片腕』『魔王の舞姫』が左右に分かれ各隊の先頭へと駆け抜けて行く。
『魔王の軍』に口上は要らない、鬨の声も無く、旗も無い・・・
手元に残った三分の一に満たない兵を振り返る事無く。
漆黒の方天画戟を無言で掲げる。
彼の元に残った三分の一の兵全ての目が、その動きに集中している中。
漆黒の方天画戟は、断頭台の罪人に落とされるギロチンのように、無慈悲に振り下ろされ
一影は一言だけ、相手に終わりを告げるように、鋼の声で短く同じ命令を下す。
「突撃」
指し示すは、敵正面本隊の夏侯の旗・・・慧眼の御使いその人。
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続きです。
見切り発車のちょっとした手違いで、途中まで読まれた方は
再度最初から読んでいただいた方が、お話がつながるかと思います。
どなたか一人でも面白いと思っていただけたら僥倖です。