No.137478

真・恋姫✝無双 仙人で御遣い 35話

虎子さん

報告:34話の5ページを訂正しました。

2010-04-19 23:54:23 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:4759   閲覧ユーザー数:3989

 

“臆病者”

 

その言葉で、場の雰囲気が一気に張り詰めた。

そして、愛紗が口を開く。

「御遣いを騙る愚か者紫堂!覚悟!」

愛紗は、殺気立った視線を豪臣に向けたまま言う。

「御託は要らないだろ。さっさと掛って来い」

そんな愛紗の視線を向けられながらも、薄笑いを浮かべながら豪臣は言う。

愛紗は、舌打ちをした後、数瞬の沈黙の後名乗りを上げる。

「・・・我が名は関雲長!我が姉、劉備の一の矛!」

言葉の後、愛紗は青竜偃月刀を構える。

「我が名は紫堂。天より遣わされし者なり」

(うわぁー、自分で言って置いて何だけど、恥ずかしい名乗りしちまったな)

豪臣は、そんな全く関係の無いことを思いながら名乗りを上げた。

しかし、名乗りを上げただけで構えたりはしない。

(この男、名乗りを上げてまでこの態度か!)

愛紗は、豪臣の態度に更なる怒りの炎を燃やし

「参るっ!であぁぁぁっぁあああ!!」

無防備な豪臣に対して斬りかかった。

 

 

愛紗が踏み込んで来た瞬間

 

「我が心を以て、我が身、力を得る――『怪』、我が心を以て、我が身、風と為る――『疾』」

 

と、豪臣は呟く。

青竜偃月刀が、豪臣の頭上から振り下ろされる。

 

ガキンッ!

「「「なっ!!!」」」

 

振り下ろされた愛紗の一撃は、豪臣の右手にある煙管の三日月によって受け止められていた。

豪傑で鳴らす武人の矛を片手、受け止めたのは鉄の棒(三日月)。劉備軍の面々は驚愕に目を見開く。

まさか自分の豪撃が片手で受け止められるとは思っていなかった愛紗は、つい動きを止めてしまった。

「ぬるい」

そんな隙を見逃す程、今の豪臣は優しくない。

豪臣は、言葉と共に踏み込む。

「チッ!!」

愛紗は、舌打ちと共に後方に飛び退く。

(紫堂の間合いは狭い。これは当たらない!)

初動は僅かに豪臣よりも遅れたが、自身よりもリーチの短い豪臣の攻撃ならば届かないだろうと踏んだのだった。

しかし

 

ドゴッ!!ミシッ!

「ぐぅう!」

(な、何故・・・)

 

愛紗の鳩尾には、三日月の先が打ち込まれていた。

(私が・・・見えなかったのか?)

 

 

 

愛紗は膝から崩れ落ちた。

 

 

【視点・愛紗】

 

私は、力無く膝から地面に崩れ落ちた。

(何故・・・?何故見えなかった!?)

気づいたときには、紫堂に懐に入られていた。

確かに、踏み込むのではなく飛び込めば一歩の距離だった。

しかし、その距離を簡単に詰めさせる程、私の実力は低くない。

では、何故踏み込まれ、さらに一撃までもらったのか。

(・・・それだけ、この男の実力が私を凌いでいると言うことか!)

あまりの悔しさに唇を噛み締める。

(私は終わるのか?こんなところで?あんな鉄の棒程度に?・・・莫迦な!私は、桃香様の一の矛!桃香様の大望を叶えるまでは死ねない!)

弛緩していた体に、力が戻ってくる。

「ほぉ、まだ動けるのか」

上から、あの男の声が聞こえる。

私の中に、再び怒りの感情が広がっていく。

(怒りに身を任せるな!この男は、力だけでは倒せない!)

自らの怒りを押さえ込む。

今、自らに課すべきこと。

それは

(冷静に。しかし、猛々しく在ること)

そう心に念じながら立ち上がる。

前を見ると、紫堂は余裕の表情で私を見ている。

青竜偃月刀をゆっくりと構え直す。

(・・・いける!桃香様の前で、これ以上、先程の様な醜態など晒してなるものか!)

先程よりも、軽く感じる体。

冷静に自分の状態を見れている。

と、自分の状態を分析していると紫堂の様子が変わる。

鉄の棒を持つ右手を前に出し、半身になりながら腰を落とした。

(・・・構えた?)

おそらくは、あれがあの武器の構えなのだろう。

先程まで、ただ棒立ちになっていた男が構えた。

それは何を意味するのか。

(・・・少しは認められた、のか?・・・ん?)

「フッ」

そう思うと、つい自分を鼻で笑ってしまった。

(何を考えているんだ、私は。倒すべき男に認められて嬉しい?莫迦な)

私は、首を振って自身の感情を否定し顔を上げる。

「っ!」

驚いた。

あの男、紫堂豪臣が笑っていた。嗤うのではなく、だ。

「どうした?まだ殺るんだろ?」

「・・・ああ!当然だ!」

(ああ・・・駄目だ。ニヤけることを抑えられない)

「・・・参る!!」

私は、突っ込んだ。

 

【視点・終】

 

 

【視点・豪臣】

 

(つまらないな。・・・三國志でも最強クラスの武将がこの程度か)

俺は、無様に倒れ伏す、美髯公こと関雲長を見下ろしていた。

挑発はした。ムカついたから挑発した。

しかし、だからと言って、ここまで簡単にその挑発に乗ってくるとは思っていなかった。

一撃で決めようと、なかなかに膂力の乗った一撃を振り下ろしてきた。が、それを止めたらどうだ?呆けて隙をみせやがった。

はっきり言って、俺は呆れ果ててしまった。

確かに、星や昴(すばる)も最初は驚いていた。しかし、そこは関雲長。すぐに次撃を繰り出すと思っていた。

が、あまりにも隙を見せ過ぎだった。

俺は、そのまま鳩尾に三日月を突き入れた。

すると、何の抵抗も無く三日月は鳩尾に吸い込まれ、関羽は膝から崩れ落ちた。

(終わったか)

俺はそう思い、その場を後にしようと背を向けた。

すると、後ろで動く気配がした。

「ほぉ、まだ動けるのか」

俺は、そう言って振り向いた。

(!!)

振り向くと、関羽は、膝立ちの状態になっていた。

(驚いたな。もう、立ち上がろうとしているのか)

そう思っていると、関羽が顔を上げた。

(!・・・目が死んでいない。いや、さっきよりも強い輝きを放っている・・・まだまだ終わっていない、か)

関羽は、偃月刀を再度構える。

俺は、内心で少しワクワクしながら、腰を落とし構えて見せた。

関羽を見ると、彼女は笑っている。

(いい顔だ。さっきまでの怒りはどこへ行ったのやら。・・・フッ、それはお互い様か)

俺は、自分の顔が笑っていることに気がついて、自身を鼻で笑う。

関羽を見ると、俺の顔を見て驚いている。

(おいおい。先に笑ったのはお前だろ?)

心の中でツッコミを入れながら

「どうした?まだ殺るんだろ?」

そう声を掛けた。

関羽は

「・・・ああ!当然だ!」

と、声を上げる。

(良い顔するじゃないか)

俺がそう思っていると

「・・・参る!!」

関羽が突っ込んできた。

 

【視点・終】

 

 

「・・・凄いでしゅ」

「愛紗しゃんの攻撃が・・・」

「全部流されてる」

劉備軍の面々は、襲い掛かった愛紗の攻撃、その全てが豪臣に往なされていく。

転じて、『白虎』の面々は余裕の表情だ。

そんな中、

 

ギンッ!

 

それまで、愛紗の攻撃を受け流していた豪臣が攻撃を受け止める。

「さて、・・・そろそろこっちがいくぞ!」

「くっ!」

偃月刀をそのまま押し返す豪臣。

膂力では勝てないと理解している愛紗は、豪臣の押す力を利用してそのまま後ろに跳び、着地と同時に構えようとする。

しかし

「残念」

豪臣が笑って踏み込んで来ていた。

(しまった!)

愛紗は、迫る豪臣の顔を見詰めながら焦りを覚え

 

ストンッ

 

と、首筋に痛みを感じると同時に意識を失った。

 

 

 

~戦闘から五分後~

 

「ハッ!」

気絶していた愛紗が目を覚ます。

「おいおい。急に体を起こすと貧血起こすぞ」

「え?・・・あ!紫堂殿!」

愛紗は、声を掛けてきたのが豪臣だと分かると驚き、慌てて姿勢を正す。

「おいおい。急に動くなって」

豪臣は、苦笑する。

そんな豪臣に、愛紗は頭を下げる。

「・・・どうした?」

「先程までの無礼、謝罪いたします」

「は?・・・いや、ホントにいきなりどうした?」

急な謝罪に、驚き訊く豪臣。

「先の一騎打ちの中、紫堂殿は噂の様なことはしない、何故かそう感じたのです。そして、そのことを前提に考えてみると、噂の中にある多くの矛盾に気づき・・・本当に申し訳ありませんでした」

「い、いや~・・・」

(・・・どうしよ。戦ってる途中で、そのこと忘れてた何て言えないし)

豪臣は、困った様に頭を掻く。

「ま、まぁ、気にしなくて良いよ?」

(忘れてたし)

「ほ、本当ですか!?」

(あれだけの無礼を働いた私を・・・何て器の大きな方だ!)

豪臣の思いを知らずに、愛紗は豪臣を尊敬の眼差しで見た。

(おぉっ!目がキラキラしてる!・・・何か勘違いされてる?)

「・・・・・・取り敢えず、戻ろっか?」

「はい!紫堂殿!」

豪臣は、困った表情のまま愛紗を促し、元気な愛紗と皆の下へ戻って行った。

 

 

 

~天幕前~

 

「また・・・ですか」

二人の様子を見ていた朔夜は、そう嘆息した。

「ですな・・・どうしたものか・・・」

朔夜の横で、星も嘆息する。

二人の溜息に、桃香たちは首を傾げる。が、二人はそれを無視して話を続ける。

「ここは・・・軍師に託しましょう」

「おお!確かに、それならば安心ですな」

朔夜の言葉に、星は大きく頷いた。

(鈴花(りんふぁ)に言ったらどう対策を練るか。・・・他の女子に目移りしない様に、全員で閨に・・・ふむ、悪くないですな。遂に、私も破k「星」)

星が思案していると、朔夜が声を掛けてくる。

「何か?今、大事なことを考えていたのですが」

星が苦情を言うと、朔夜は呆れた様に

「その考えが口から垂れ流されています。後、そういった言葉は自重してください」

そう言った。

「む、そうでしたか。いやいや。私も真の女になれるかと思うとつい。流石に、私も唇だけでその後をお預け、というのは、ちょっと欲求不満でしてな」

そう言って星が笑うと、朔夜が、バッ、と顔を上げ

「唇!?何ですか、その話は!?」

血相を変えて、そう訊いてきた。

「?知らなかったんですかな?豪臣殿は、すでに全員に手を出しておりますよ?」

「・・・・・・・・・」

星がことも無げに答えると、朔夜は黙り込んでしまった。

そして

 

「ふふふ・・・豪臣。あたしや燈(あかり)だけでなく星たちまで・・・いい度胸です。覚悟しておきなさい・・・ふふふ」

 

そういって、戻って来る豪臣たちを見ながら笑った。

その横に立つ星は

(・・・豪臣殿、すまない。死なない様に頑張ってくれ)

と、豪臣の無事を願った。

 

 

 

 

 

「豪臣、本当に殺してあげましょうか?」

と、朔夜は呟く。

 

(!!・・・・・・・・・無理かもしれない?)

星は・・・豪臣の冥福を祈った?

 

 

あとがき

 

どうも、虎子です。

まず、お詫びをさせて下さい。

34話のp5の「――孫権とその娘を――」と言う文がありましたが、“息子”の間違いでした。不勉強で申し訳ありませんでした。

 

では、作品の話です・・・

戦闘描写がヘボイッ!泣きたくなるくらいショボイッ!

ホントごめんなさい。

まぁ、愛紗との仲を修正出来たので、作者的には及第点です。

てか、愛紗が気絶して5分もほっとくなよ! と思う読者の方々。その件は、次回にちゃんと書きますので。

後、前話の、星の思いつきの場面。先の方へのフラグですので、覚えててくださいね?

 

次回投稿は、25日(日)。遅くとも26日(月)までの投稿を予定してます。

 

作品への要望・指摘・質問と共に、誤字脱字等ありましたら、どんどんコメント下さい。

 

最後に、ご支援、コメントを下さった皆様。お気に入りにご登録して下さった皆様。

本当にありがとうございました。

 

ではでは、虎子でした。

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
37
2

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択