No.136265

恋姫無双 ~天帝の花~ 6話

夜星さん

今回は、栄花についてのちょっとしたお話です。

2010-04-13 22:19:17 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:2802   閲覧ユーザー数:2387

 

「もう、こんな時間になってしまいましたか」

 窓から差し込む、白い光が部屋の中を照らし月が頂まで昇ることを知らせ幻想的な世界が生まれる。

 蝋燭の灯りも無く、部屋の椅子に座り窓の奥にある空を眺め続ける姿は罪人のような姿だった。

 ただそこに在るだけ。何をすることも無く、ただそこに存在するだけでまるで壊れた人形のように焦点も合わない目は、確かに夜空を映していたことは事は確かだ。

 月の光が少しずつ伸び、やがて部屋全体を白く照らし始めると同時に冷気が流れ込んでくる。

「それでは、行きましょう」

 それが、合図のように動き始める栄花。しかし、何度も何度も手足を動かし動作を確認する行為は滑稽に見え子供が人形遊びをするように一つ一つの関節を曲げていた。

 無事に動くことができ満足して笑う姿は、昼間のような自然な笑みはなく、ひどく壊れていた。

 そして、部屋を後にする背は少しずつ闇の中に消えていった。

 

 

 月明かりの光の下、林の道を歩く先に白い光の線が続いていく。白光を浴び闇の中を進み周りの木々達は風に揺られ劇場の中にいる観客のようだった。

 気がついたら、開幕を告げる小さな川へとたどり着いた。

 水面には夜空に煌く星星を映し出し、蛍の光が飛び散り全ての準備が整った。

 小話だが始めよう、一人の青年の話を。

 

 紅い光が飛ぶと栄花の体もそれにつられるように、流れ始める。この空間の中で鍛錬をするのが、子供の頃からの日課で未だ誰一人として、踏み込んだ者はいない。

 常に一人きりで練習する姿は、最初はぎこちなかったが段々と一つの型に成りつつある。

 江東の虎と恐れられている、孫堅の姿だ。得物が違うためか、所々動きに雑が見え隠れするが基本は完璧に創りこまれ一撃必殺の剣技も取得するのも時間の問題である。

 次に現れたのが、漢の忠臣・馬騰の姿で伸びる槍からは確実に相手を粉砕するであろう。

 最後に現れたのが竜の超雲であり、臓を突き刺しにせんとして襲い掛かる。

 これが、現在の栄花の姿だった。

 あまりにも無理な動きをするせいか、額からは汗がすべり落ち呼吸の乱れ方が尋常ではなかった。

 もしも、この場所を誰かが見つける事ができたならすぐにでも止めに入るだろう。

 それぐらいに、体に負担を掛けても栄花は止まることはなかった。

 脳裏に浮かぶのは、悲惨な戦場の中で生き残った自分の姿。家族を失い仲間を殺され、自分自身さえ消えてしまい殻になった者を助け、家族になってくれと言ってくれた、孫堅の姿。

 そして、家族になり彼女の期待に応えようと勉強も武芸にも励んだが成果はまるでなかった。

 考えれば当たり前で元からあるのは、曹涼と栄花、という名前だけ。

 他には何も無く、ただ情報として入ってくるだけでそれをどう活用することを知らない。

 しかしある日、王の間に呼ばれ――

 

「栄花、これからは私のようになりなさい」

 

 それからは彼女の仕草を目で追い、幾つの日が流れ人間として成長することが出来、一つの約束事が決まった。

 曹涼という名を明かしてはならないこと、現在この名を知っている者は過去に栄花と暮らしていた人間、縁のある家系、そして孫堅だけだ。

 このことによって事実上、曹涼という名が真名にあたることになる。真名は、栄花なのだがそうではない。

 これは、孫堅が保護したときに"栄花"と呼んだ時は反応しなかったが"曹涼"と呼んだ場合に反応したからであった。

 簡単に説明すれば、名前は曹涼 真名を栄花 という一人の人間に二つの人格が灯ったことになる。

 そして、陰である栄花は人々の動きを取り入れることができる術を手に入れた。このような芸当は、殻である栄花でしかできないことだ。

 でも、人の身体である限り無理に酷使し続け自分よりも何倍も強い相手を使い続ければ徐々に命は削られ

やがて尽き果てるであろう。だが、彼は止まらない。

 胸の内に秘め残された時間は少ないと動き続ける姿は、花が散るかのように美しく儚く武人の領域へと足を踏み入れていく。

 

 常闇の空間の中に水晶を囲むように白装束の男達が取り囲み、一番内側には二人の男が不気味に光る

水晶を覗き込んでいた。

「干吉準備のほうは、どうなっている?」

 忌々しく水晶を睨み視線だけで、人を殺すことができるかのような銀髪の男が左磁である。

「残念ながら、まだ三割といったところでしょうか。何分始めての事態なのですので、対応しきれません」

 眼鏡をかけ、外見を裏切らず声までが優男という言葉が似合う干吉である。

 

「そうか、俺は間に合いさえすればどうでもいいからな」

「嬉しいのですか? 私も怒りに満ちた顔をみることが幸せですからね」

 目の前に、打ち抜かんと剛拳が迫るがその先には、干吉の姿は消えていた。

「貴様! そのような減らず口を二度といえないようにしてやる!」

「ふふふ、ますます素敵になりましたよ。もっと、貴方の傍で顔を見たいのですが仕事がありますので私は

これで失礼します」

 声は反響し、やがて闇の中に静かに消えゆく直前に――

「そうそう言い忘れていましたが、管賂もそろそろ彼に接触すると言っていましたよ」

 左磁は軽く舌打ちをし、再び水晶に視線を戻すが、先ほどの怒りは消え微かに微笑んでいた。

 水晶には、書物に埋もれながらも勤勉に本を読んでいる北郷の姿が映っていた。

「北郷一刀待っていろよ、必ず外史もろとも消し去ってやるからな」

 薄く笑う姿は、徐々に闇に飲み込まれやがてそこには、水晶だけが取り残された。

 

 あとがき

 

 予定通りにあげる事ができましたが、量がすくなくて申し訳ありません。でも、このような話を

書きたいと思っていたので悔いはないです。

 うーん、ついにあの方達にもこの外史が見つかってしまいましたね。登場させる気は、作者の予定にはなかったのですが……今更ですが三期の恋姫ををやっと見る時間ができたので楽しみにしていたんですが……

張譲様が出てしまうとは…まぁ、好きなのでいいんですけど。だけど作品の……

 もしかしたら、さっきの言葉だけで少し話しの内容が分かってしまいそうですね。

 今回は、栄花について少し語ってみたのですがどうだったでしょうか。作者のわけがわからない、言い回しに加え文のおかしさがさらに目立っていると思っております。

 とりあえず栄花の中には本当の自分がいるんだな、と理解してくれたら幸いです。

 さて、次の更新日ですが……土曜日??ぐらいにしたいと思っています。

 では、またの機会にお会いいたしましょう。 


 
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