No.134647

真恋姫無双~風の行くまま雲は流れて~第26話

第26話です。

もはや原作はどこへやら…
        ↑修正
4/7追記

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2010-04-05 23:59:27 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:8269   閲覧ユーザー数:7498

はじめに

 

この作品はオリジナルキャラが主役の恋姫もどきな作品です。

 

原作重視、歴史改変反対の方、ご注意下さい。

 

 

ねぇ詠ちゃん

 

天子様にはこの世界はどう映っているのかな

 

天子様はどんな世界を見ているのかな

 

お父様も

 

お母様も

 

お兄様も

 

家族といえる人が皆居なくなっちゃって

 

頼りになってくれる人が誰も居ないこの宮で

 

誰も守ってくれる人が居ないこの国で

 

天子様は何を思っているのかな

 

ねぇ詠ちゃん

 

私ね

 

 

「なんやおもろい事考えとるやろ?」

 

比呂の覚悟の瞳に目を細める霞

 

「解るか?」

 

いたって真面目に答える比呂

いたって真面目に

 

五本の弓を纏めて此方に向けて構えている

 

やぶれかぶれ…っちゅうわけや無いなあの目は

冷静に

胸の疼きを必死に押し留めながら霞は比呂の構えを見据える

 

「ちゃんと飛んで来るんかいなそれ?」

 

五本やで?

真剣な目ぇ如くさって何考えとるんやこのアホは?

スッと比呂の腰元に視線を一瞬だけ移す

腰に挿しとる剣…あれが正真正銘最後の武器や

となれば

矢を放つと同時に斬りかかって来る

ウチが矢を叩き落すと見込んで

叩き落した直後を狙って

この場において冷静になりよったか

ウチに再度挑発を仕掛けて来よった

 

叩き落して見せろ

その直後の一撃もろとも

全て

 

「自信が無いなら三本にまけてやろうか?」

 

はっ!言いよるわ!

飛龍偃月刀の先をゆっくりと上段に構え

 

「ハッタリやったら承知せんで?」

 

不敵に笑ってみせる

 

来てみぃ…逆に度肝抜かしたる!

 

すうっ…

ふぅぅ…

 

二人の呼吸が重なり

 

比呂が矢を放つ

 

 

「くっ!?」

 

驚くことに五本全てが彼女目掛けて真直ぐに飛んで来た

その全てを

 

「っし!」

 

突き落とす

突き落とす

突き落とす

突き落とす

突き落とす

しゃあ来いや!

 

直後…否、同時に

 

「なっ!?」

 

彼女目掛けて飛んで来る比呂の剣

なんちゅうもん飛ばしてくるんや!?

見境い無しかい!

考えるよりも早く

 

「あほんだらああぁ!!」

 

飛龍偃月刀を振るい、剣を弾き落とす…そして飛び掛ってくる比呂の姿を捉える

 

「はあああ!」

 

獲物の尺(リーチ)を取ったんか!?

振るった直後の隙を狙い弓を剣の様に振りかざす比呂、完全に意表を突かれた霞だが

 

「んなくそが!」

 

素早く下段から自身の獲物を振り上げる…しかし

遅い?

互角のリーチに先に振るう比呂のそれは

何を狙って…

霞ではなく飛龍偃月刀へと振り下ろされる

 

 

スパン!

 

 

飛龍偃月刀によって真っ二つにされる弓

当たり前やろ!刃も無しに受けられるかい!?

だが

 

ヒュっ

 

擦れ違い様に一瞬光る『何か』が視界に入り

…何や?

ゾクリと背筋が凍る…そして

 

「…動くな」

 

気づけば自身の首に銀色に光る糸が巻かれていた

 

 

「…初めから『コレ』が狙いやったんか」

 

首に巻かれた『弦』を指差す霞

 

五本同時に放たれた矢も

直後に放たれた剣も

刃もない弓で殴りかかった事も

弓で飛龍偃月刀に『斬りかかった』事も

 

最後まで読み間違わせる為の伏線

 

しかも

 

「唯の弦やないな?」

「鋼鉄で出来た特注品だ…動けば貴様の肉を裂き、骨を削り、首と胴が泣き解れるぞ」

 

自身に巻かれるそれさえも武器であったわけだ

 

「けったいな『篭手』しとると思ったわ」

「素手で引けば指が飛ぶからな」

 

比呂の腕には他の弓使いとはあからさまに違う篭手

 

「当に奥の手っちゅうわけや」

「…そうだ」

「せやったらこの首はよう持ってったらどうや?」

 

ツンツンと自分の首を突いてみせる

 

「…聞きたい事がある」

 

だが比呂はそんな素振りを見せずに質問してくる

 

「なんや~?口説き文句なら間に合うてるで?」

「茶化すな」

「下れ言うのもなしや…はよこの首落としぃな」

「なら武器を捨てろ…既にその気は無いのだろう?」

 

背後を取られ、尚且つ動きも封じられた今

霞には抵抗の意思は無かった

 

カランっ!

 

彼女の武器が音を立て

 

「これでええか~?」

 

両腕を上げ背中の向こうの比呂に無抵抗の意思を見せる

 

 

そんな霞に比呂はすぐ後ろまで近付き

 

「動くなよ」

 

霞の首に巻かれた弦が緩む、そして

 

ヒュっ

 

緩んだ弦の輪が彼女の頭をすり抜ける

比呂のとった行動に霞は振り向き

 

「なんやどういう…」

「二人を助けたい」

「…は?」

 

比呂の瞳が霞を真直ぐに見据えている

 

「月殿と詠殿を助けたい」

「…っ!?」

 

反射的に拳を比呂に突き出すが

 

パシっ!

 

右手で受け止める比呂

 

「先の戦で二人とは真名を交換した」

「それが何でこんな処に居るんや!?」

 

怒りを露わに霞が叫ぶ

 

「すまない…だが黙って此処まで来たのはお互い様だ」

「……」

 

比呂の目に虚無を見る霞

望まぬ戦いに誰もが傷ついている

その事が…悔しくてしょうがない

 

 

「助けるて…どうするつもりや?」

 

霞は震えていた

 

「二人を保護した上で太守の座から降りてもらう」

 

霞に震えが拳を通して比呂に伝わる

 

「無理や…処刑されんのがオチや」

「二人を保護した上で洛陽に入り、天子様に御目通り願う」

 

比呂の目を見ることが出来ず

霞は俯く

 

「例え献帝に会えたとしても…二人の助命は通らへん」

「何故だ?」

 

幼き帝を救ったのは月と詠では無いのか

 

「出来んのや…献帝には二人を救う手立てがない」

「どういう意味だ?」

 

いくら幼いとはいえ仮にもこの大陸で尤も権力がある御方だ

 

「献帝には二人を弁護できんのや」

「既にお亡くなりになったのか?」

 

比呂の言葉にブンブンと首を振る

 

「まだ…喋られへんのや」

「……まさか!?」

 

いつしか身体全体を振るわせる霞

 

「先の霊帝が亡くなられた時…献帝はまだ王夫人の…腹ん中におったんや」

「…馬鹿な」

「生まれたと同時に跡継ぎを巡り後宮内で内乱が起こりよった」

「…そんな」

 

ポロポロと霞の目から涙が落ちる

 

「二人が洛陽に入ったのは王夫人が毒殺された次の日やった…何進もとっくに死んでて

 ウチと華雄が途方に暮れてん処に…二人が来たんや」

「……なら月殿と詠殿は!?」

 

比呂の声に霞が頷く

 

「全部…自分が背負うて…言うたんや…献帝も洛陽も責任も…全部自分が守るて」

 

 

 

ねぇ詠ちゃん

 

私ね

 

この子を助けてあげたいの

 

この子が安心して暮らせるように

 

この子が一人で悲しまないように

 

この子が家族がいないことで

 

泣いちゃわないように

 

私ね

 

この子の為に

 

この子が大きくなるまで

 

この子の苦しみを背負ってあげたいの

 

 

 

私ね

 

この子のお母さんになりたいの

 

 

 

あとがき

 

ねこじゃらしです

 

此処までお読み頂き有難う御座います

 

というわけで

 

そういうわけでした

 

どうしたら二人の命を助けられる?

 

此処は一つ

 

あの方に戻って来て貰いましょう

 

それでは次の講釈で

 

 


 
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