※青少年育成条例改正案断固反対からの続きですが、初見でも大丈夫です。

「......おい」

「やあやあ」

二週間近くの間を置いて、ようやくカズヤとSkypeで連絡を取れた。

「お前、いい加減時間守れよ」

「ちょっと色々調べててね」

前回、カズヤから青少年育成条例改正案について概要を教えてもらった。

それから約二週間近く放置され、今どういう現状か分からない。

「ってか、もうこの件に関しては連絡しなくても大丈夫かな〜って思ってさ」

「はぁ？」

「あれ、知らない？」

「知らないも何も、あれから聞いてないだろ」

「ニコニコ動画のURL送ったよね？」

「......ミクがあったからそっちに行った」

「ミク厨きめぇ」

「うるせぇな！　好きなんだよ！」

まずこいつにだけは言われたくない。

「それで、結局改正案は......いや、その前に内容忘れたからちょっと教えてくれ」

「......本気？　頭大丈夫？」

「うるせぇ！　初見の人とか分からない人とか色々あるんだよ！」

「わかった。今回の件をまとめると、こういう感じ」

ーーま　と　めーー

1.青少年に悪影響を及ぶと判断した不健全な作品の販売を規制

2.暴力描写などの反社会的表現を含んだ作品への規制

3.『非実在青少年』による性的表現を含んだ作品も規制していく

4.規制対象は漫画、アニメ、ゲーム、映画、小説に加え、声優の演技・下ネタ的単語も規制対象

5.単純所持規制もあり

「思い出したか？」

「......前回そんな説明あったか？」

「あったよ。あったってことでいいいだろ」

こいつ......

「なあ、１の悪影響ってどんなの？」

「エッチなやつ。まとめると18歳以下に見えるキャラクターの性的描写、裸体、下着姿、又は下着に近い」

「おおおおお......」

「2は喧嘩、流血も入るのでそれが該当する作品もアウト」

「何でこんな悪法もっと早く言わなかったんだよ！」

「自分で調べろって言っただろ？」

......。

「でもまあ、今のところは大丈夫だよ」

「と言うと？」

「一応６月に伸びた」

「へぇ」

「オレが頑張ってメールしたからね」

「うぜぇ」

「でもユウヤは結局行動しなかったんだ？」

「......まぁ」

正直、簡単に規制されてこういう業界ががらっと変化するのがいまいち現実味にかけた。

加えて、今まで大丈夫だったからと月並みな考えがあったのも確かだろう。

「それで、今日はどんな話しをしてくれるんだ？」

「......ユウヤはボクをどういう風に見てるのかちょっと分かったよ」

うるせぇなぁ。

「簡単にまとめると、６月に伸びたっていうのが動きとしては一番大きいかな。それと賛成派、反対派の意見を見てたからそれについてまとめようと思う」

「へぇ」

「......なんかむかつくなぁ」

「気のせいだろ」

こいつは自分の思い通りのリアクションをしないとすねるから面倒くせぇ。

「じゃあまずは賛成派はこんな感じかな？」

ーー賛成派ーー

・青少年の健全な育成のため

・自分の家族や子どもに性的表現を見て欲しくない

・犯罪の抑止力に繋がる

・先進国で日本は規制が甘すぎる

・オタク気持ち悪い

「......最後のやつ、過激だな」

「そうかな？　大体世間の印象はそんなものじゃないかな」

「お前躊躇ないな」

「問題です。ギャルゲキャラの抱き枕を持ってコンビニに変な男が入って来た。アナタが従業員ならどうしますか？」

「入店と同時にセコム呼ぶ」

「......言ってることが矛盾してるぞ」

「節度は大切だろ？」

ーー反対派ーー

・表現の自由が抑制される

・コンテンツ産業が衰退する

・規制の判断がしづらい

・メリットが分からない

・もっと規制すべきモノがある

・そもそも認知度が低いうちに法案を通すのに憤りを感じる

「この一番下のやつお前だろ」

「うわ、ユウヤごときにバレた」

面と向かってごときとか言えるこいつはある意味大物だな。

「この『もっと規制すべきモノがある』って例えばどういうの？」

「AV業界とか風俗関係もあるし、近いところなら18歳以下がインターネットを通して悪影響を受けない方法とかかな」

18歳以下のネットでの悪影響？

「未成年がネットを通じて悪影響って......そんなのあるの？」

「割れ厨もそうだし、エロサイトを見てるガキもいるし、酷いガキは割れ厨で売買したりもあるしね」

「割れ厨って？」

「違法コピーだよ。それで販売してるガキもいるから本当にむかつくよね」

「......お前子ども嫌いだろ」

「三次元はね。だって同じことを大人がやったら捕まるし、ガキは少年法が適応されるしネット上でのマナーも無いし......ってオレのこととか割れ厨とかは別の話で、今大切なのは規制の順番ってことだよ」

順番ね......

それは一理あるだろう。

「でも2010/６月に延期になったんだから、とりあえずは大丈夫なんだろ？」

「......延期、な」

「ん？」

「廃案でなく、延期になったんだよ。まだこの問題は終わっていない」

こいつ変な映画見たな。

「ともあれ、今は動けないのは事実だからね。６月に近づくか、法案に関するニュースが動いたときにまた世間では騒がれる、かな？」

「......」

「ひとまずこの話しはこれぐらいにしようか。」

「最後に、カズヤが反対する理由を聞いてみよう」

「ユウヤは？」

質問を質問で返すなよ。

「オレは......まぁ、ジャンプとかアニメとかいつも目にしてるものが規制を受けるのは嫌だから......かな」

「ボクもそんなところだよ」

こいつ汚い！

「強いて言えば、この法案は理論的に矛盾しているところかな」

「......ん？」

「それはまた次の機会にでも」

「次なんてあるのか？」

「６月にはまた情報が出るからね。法案の厳密な範囲、処罰、賛成派の目的ぐらい判れば反対しやすいし、状況によっては町中歩いてデモしてもいいかなって思ってる」

「引きこもりのカズヤが？」

「まぁね。ボクは人のためとか社会のためとか、そんな綺麗事は嫌いだけど、あくまで自分自身のためにデモしたいと思う」

「言っておくけど、かっこよくないからな。むしろ最悪」

「......」

そこで通話が終了した。