No.130030

恋姫異聞録32 武王編-修羅-

絶影さん

武王編-修羅―

後書きかきました、良かったら読んでください
主人公の能力?について少し書きましたので

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2010-03-14 18:28:24 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:22778   閲覧ユーザー数:16594

趙雲と張飛が男の気迫に怯むが関羽と呂布はお構いなしに切りかかっていく

 

「はあぁぁぁぁあああ!!!!」

 

しかし、攻撃はいなされ関羽も間合いを潰され満足に偃月刀を振れず、男の剣撃を受け続けてしまう

 

「くそっ!怯んでいる場合ではない!行くぞ鈴々!」

 

張飛は頷き二人は切りかかっていく、しかし男は相手の攻撃を利用し始める

関羽の攻撃を誘導し張飛に受けさせ、攻撃を受け動きの止まった張飛の襟首を掴み

趙雲に投げ飛ばす、投げとばされた張飛を受け止め動きの止まった趙雲に剣の矢が降り注ぐ

 

「何っ!!」

 

辛うじて二人は剣の雨を弾く、その隙を見逃さないとばかりに呂布が後ろから男に切りかかるが

また半身で避けられ、顔に剣を投げると同時に関羽の腕を掴み自分の方に引き込む

 

「うわっ!!!」

 

呂布は顔を狙った剣を避けると避けられた戟を跳ね上げ、横薙ぎに男を切ろうとするがそこには関羽が!

凄まじい攻撃を体を入れ替えた関羽に受けさせ、男は背中合わせになると腰から抜いた剣を関羽につきたてようとする

 

「愛紗っ!」

 

趙雲が男の剣に反応し、突きいれようとするが男は剣をまたあっさりと手放すと関羽の襟首を掴み槍の前に引きずり込む

関羽は敵の攻撃ではなく味方の攻撃に翻弄されていく、まるで敵と戦っているのではなく味方と相打ちさせられている

感覚に襲われていく

 

「凄い、敵の攻撃を利用して・・・」

 

「お兄さんのあれは限定された戦い方ですねー」

 

風はきがついたようね、確かに彼の舞は特殊だ味方が混ざる混戦では使えない、なぜなら彼は相手の脚しか見てないからだ

脚の動きで敵の動作を予測し利用する、近くに居るものは敵味方関係が無く巻き込まれていく、そして一番の問題は

 

「華琳様、お兄さんはひょっとして複数の相手でないと力が発揮できないのですか?」

 

「ええそうよ、3人から6人が相手なら今のような舞が出来るけど多すぎると舞うことが出来ない」

 

「やはり、敵を利用して戦うようですが足場が剣以外に埋められてしまうと駄目なのですね」

 

「え?そんなの戦場で使えないじゃない!」

 

そうだ、彼の舞は戦場では使えない、元々そんな理由で手に入れたものではないし、春蘭を相手にするため

複数の相手を同時に攻撃させて出来たものだから相手の数まで限定されてくる

 

張飛が無理やりに関羽の後ろに居る男を狙ってくると、男は攻撃を関羽に受けさせて腕を伸ばし

今度は張飛の襟を掴んで引き寄せ、呂布の攻撃を受けさせる。

張飛の背後から宙を舞う剣を動きの止まった呂布へ投げ飛ばし、横から攻撃を仕掛けてくる

趙雲に男は自分からも前へ進み一気に距離を潰す

 

「なっ!」

 

自分からも距離を縮めることで趙雲は距離感を失い攻撃をかわされてしまう、舞い上げた剣を掴んだ

男の剣撃を受けるが、一撃で男はくるりと背後を向き背中から倒れこむ

 

ヒュッ

 

倒れ込んだ男の影から関羽の偃月刀が襲い掛かり、趙雲はそれを何とか防ぐと下からは強烈な

蹴りが顎を襲う

 

「がはっ!」

 

男の動きに城壁の兵達は釘付けになっていく、舞に魅せられ兵士達の握る槍に力がこもっていく

 

「舞はもうすぐ完成する」

 

「完成?お兄さんの武はこれが全てではないのですか?」

 

大きな勘違いだ、武ではなく舞、彼の舞いは兵士の心を揺さぶり戦場に修羅を呼び出す

過去にこの舞を使ったのは二回だけ、春蘭との戦いと私達が賊に襲われたときのみ

それ以来戦場で彼を前線から外すよう春蘭と秋蘭に約束をしたのだ

 

男の蹴りを受けて趙雲は蹈鞴を踏む、同時に体を起こした男は関羽の偃月刀を掴むと

捻り、回し、その手から奪い去ってしまう

 

「しまった!」

 

奪った偃月刀を持つと飛びのき呂布の時と同じように後ろを向き城門の方へスタスタと

歩いていく

 

「くそ、武器をっ」

 

関羽は近くの剣を地から引き抜こうとすると呂布に止められ男の方を指差される

視線を移すと男は地面に引かれた線の前に立つと関羽に偃月刀を投げて返してくる

 

「な、何のつもりだ」

 

「・・・・・・さっき武王を演じていると言ったな、見せてやる。真の武王の兵を」

 

そういうと男は両手の剣を地面に突き刺し大きく息を吸い込むと凄まじい声で叫びはじめた

 

「聞けっ!兵達よっ!劉備は我等に受けた恩を仇で返し、あろう事か我等の寝首をかこうとしているっ!

戦況は劣勢っ!しかし我等は負けはしないっ!何故かっ!?」

 

城壁の一馬はそれに呼応するように声の限り叫び答える

 

「我等は誇り高き精兵っ!卑劣な敵に劣るものではないっ!」

 

「ならば答えよっ我等の誇りをっ!」

 

男の言葉に兵達は一馬とともに声の限り答えだす

 

「「一つ、我等は誇り高き王とともにある、全ての兵は王と一つ」」

 

「「一つ、我等は力無き者に手を差し伸べ、卑劣な強者を打ち滅ぼす者」」

 

「「一つ、我等の武は限りある生を生き抜くためにある、決して己の欲望のためにあらず」」

 

声は次第に大きくなり男の声と一つになっていく

 

「「故に我等は覇王の兵、誇り高き魏のつわもの成り!!」」

 

大地を揺るがすような一つとなった声が響き、兵達の眼が変わり始める

 

「兵士達の眼が・・・これは、死兵!?」

 

「違うわ、死兵などではない。生きる意志に満ちた修羅の兵、そしてこれこそが戦神の舞」

 

「修羅!」

 

舞いは成った、剣の草原、剣舞、言霊、三つが揃い兵士達の眼つきが変わる

彼の真の力はこれだ、舞の極みの副産物、兵士達の生きる意志を強烈に揺さぶり死を覚悟させるのではなく

生きることを、生き抜くことを兵士達に訴える。それは大きな一つの意思、まるで全員が一つの生き物のように

 

「修羅の兵とは何ですかっ?華琳様っ!!」

 

「桂花、人の最も強い感情は生きるということよ。生を渇望する人間が一番恐ろしい」

 

「確かに死兵ではこのような眼にはなりませんね、このような兵は私も見たことが在りません」

 

兵士達は城門を飛び出し男の周りの剣を抜き取り、槍を構え蜀の将を前に一つも怯える事無く

武器を向ける、半数は城壁に残り弓を構えて敵兵に狙いを定める

 

「風、貴方わかるの?」

 

「なんとなくですが、死兵というのは二種類ありまして、感情の爆発によるものと徹底的に感情を削り取られ

命令を忠実にこなす刺客のようなものです」

 

その通りだ、確かに死兵は恐ろしい、だがただ恐ろしいだけ、冷静に対処すればなんという事は無い

 

「前者は誘導をすれば罠にかかりやすく、後者は痛みが無い人間、痛みが無ければ仲間が命を落としても

意にも介さず、気がつけば全滅」

 

「・・・・・・」

 

「見ていれば解るわ桂花」

 

男が将に向かうと同時に兵達も駆けだす、轟音としか言いようの無い声を上げて

 

「な、なんだというのだこの兵達は!」

 

「まずいぞ愛紗っ!我等の兵が怯えている、このままでは士気がっ!」

 

そう言った趙雲に兵士が襲い掛かる、兵を槍で一突きにすると腹を貫かれた兵は槍を両手で掴み

腰を落とす

 

「な、はなせっ!」

 

「ふふふふふっ、武器はもらったぞ」

 

「貴様っ!死ぬ気かっ!」

 

「死ぬ気だと?ガハッ・・・・死ぬ気など毛ほども無い、仲間が貴様を討ち取った後、城に戻れば医者が居る」

 

動きが止まった趙雲に他の兵士が切りかかる、武器を振ろうにも槍は貫いた兵士がしっかりと掴み

離さない

 

「星っ!」

 

関羽はとっさに襲い掛かる兵士を横に薙ぎ体を二つに切り裂くが

更に後ろから三人の兵士が地から剣を何本も拾い盾にして突っ込んでくる

返す刀で更に兵を薙ごうとするが二人の兵の腹を割り剣を折るだけに止まってしまう

 

「ぐふぅっ、貴様の武器も・・・もらったぞ」

 

「しまったっ!離せっ!」

 

止まった武器に次々と兵が掴みかかり、偃月刀に覆いかぶさっていく

関羽は拳で兵達を殴りつけるが兵達は拳を意にも介さない

 

「その程度なら死にはしない、仲間も死なない、たとえ俺が死んだとしても仲間は生き残る」

 

「くそっ!貴様らはそのようなことが誇りだというのか!」

 

「お前達に俺達の何がわかる、あの人は俺達に生きろと言ってくれてるんだ、死ぬなと」

 

「そのように無様に生きることが誇りだと?」

 

「無様に生きる?馬鹿を言うな、誇り高く生きるとは最後の一瞬まで力の限り生き抜くことだ

その為の武、その為の力だ、最後の一瞬まで生き抜いてこそ俺達の生は誇り高いものとなる」

 

そういうと兵は呂布に頸を落とされる、地に落ちた頸は笑顔、関羽は戦場でこんな顔で死ぬ兵を見た事はないと呟いた

 

「確かに、死兵とは違う」

 

「そうですねー、皆が生きるために一人一人が考え変化を繰り返してます、誰が指示をしているわけでもないのに」

 

兵士達は各々が仲間を助け生き残る術を考え、戦いの中にありながら全ての兵士は戦い方を変化させ続ける

あれだけの兵士が指示も無くばらばらにならないのは一つの強い意思を共有しているからだ

 

兵士達は武器を押さえると、呂布の攻撃が仲間を死なせると見て城壁の弓兵が狙い撃ちにし

下に居る兵士達は地面の石や剣を一斉に投げつける

 

「これが覇王の兵、生きる意志に満ちた、武とは生きる為の・・・・・・」

 

「恋が動きを止められている、鈴々はあの男にっ・・・しっかりしろ愛紗っ!」

 

関羽が兵士の言葉に止まり、趙雲が肩を掴み揺さぶって正気に戻すと兵から更に声が上がった

 

「華琳様っ!援軍です!全ての将の旗がそろっています!!」

 

視線を移すと後方からは大量の砂煙と将達の牙門旗、間に合った!報告より早く来てくれた!彼を死なせずに済む

 

「こちらからも撃って出るわよ、私達の動きを見て稟が合わせてくれるはず、桂花と風は全体の動きを見失わないように」

 

「了解しました」

 

死なせない、必ず救ってみせる。

 

 

 

 

「秋蘭、見えたぞ!城壁に華琳様が見える!」

 

「・・・・・・あれはっ!」

 

城壁から視線を下ろすと兵達の先頭に立ち敵将と剣を交わしている男が眼に入った

それは何時も見ている黒い外套、腕には赤く染まった包帯、両手に握られた剣

 

「・・・・・・!!」

 

男の姿が眼に入ると秋蘭は氷のような殺気を放ち一人馬を駆る

 

「秋蘭!落ち着け、一人で行っては駄目だっ!くそっ夏候惇隊、夏候淵隊っ私の後に続けっ!」

 

兵達を指揮し、春蘭は秋蘭を追いかける。春蘭は秋蘭の横に並び声をかけるが声は

届かず、秋蘭の強まる殺気に兵達も息を呑んでしまう

 

 

 

 

 

秋蘭たちが来たか、聞いていたより早い、随分と強行軍できたのだろう、ならば後は劉備の頸を取るのみ

 

「兄者っ!ご無事でっ!」

 

「一馬、ここは任せた」

 

そう言い残すと張飛の攻撃をいなし真直ぐに敵兵の中へ、劉備本陣へと走り出す

 

「逃がさないのだ!」

 

「おおっと!ここは通さへんで!惚れた男の晴れ舞台や、女の意地にかけてアンタを止めて見せるっ!」

 

男に向かい走り出そうとする張飛を真桜と工作兵達が道を塞ぐ、それぞれの手に持っているのは投網

兵達は構えると真桜が螺旋槍を力の限り回転させ張飛の動きを止めにかかる

 

「一瞬でも動きが止まったらウチごと狙って網をなげろ!足止めさえ出来れば隊長に追いつけん!」

 

「了解です!ですが将軍を死なせはしませんっ!網を投げたら全員で捕縛にかかります!」

 

「あったりまえや!死んだら隊長に怒られるっ!死ぬ気なんぞ毛頭ないわい!」

 

兵達は網を回しながら隙があれば張飛に向かい網を投げる、しかし避わされ網を切られるが

しつこくまとわり着かれ脚を完全に止められてしまう

 

「愛紗っ!ここは任せる!」

 

趙雲が男の動きに気がつき武器も持たずに走り出す。後を追おうとした関羽に一馬の乗る馬の蹴りが襲う

 

「悪いがここは通さない、兄者は任せると言ったのだ」

 

「ぐぅっ、馬を操って攻撃するだと!?」

 

関羽は地に刺さった剣をとっさに抜き取り、防いだが衝撃で体はフラフラとよろめいてしまう

 

「せめて偃月刀があれば」

 

男は無人の野を行くがごとく本陣へと走っていく、前に人込みの中を抜けていったときのように

そしてその後を兵達が進み道をこじ開けていき、男に追いつくと男の前の兵達を攻撃し始める

決して殺させはしないと

 

「・・・恋がいく」

 

そういうと敵兵の矢や剣の雨をなぎ払い、男に向かい走り出そうとしたとき

呂布に向かい両手両足、喉、心臓を正確にほぼ同時に矢が襲い掛かった

 

「殺す」

 

とっさに戟を振り回し矢を叩き落すが更に矢は急所を狙い襲い掛かる

またもや一息で六射、限界を超えた秋蘭の矢が呂布を狙う

 

「秋蘭、無理をするなっ!指から血がっ!」

 

「・・・・・・」

 

無言で矢を撃ち続け、呂布は矢を払い続ける、完全に動きを止められ男を追うことが出来なくなってしまう

しかしその代償として秋蘭の指は皮が裂け血が流れ出している

 

「落ち着け、矢とて無限ではない、私が呂布を討つ!秋蘭は昭を追えっ!」

 

「・・・姉者、昭があの姿という事は劉備を討ちに行ったのだ、ならば我等のする事は華琳様を守り

敵将をこの場に留める事」

 

「秋蘭・・・」

 

秋蘭の口からは血が流れる、唇をかみ締め精一杯気持ちを押しとどめ、男の気持ちを守ろうとしている

主を守り、友を守り、皆を守り、前線に立てば男は満足に自分の力が使えず討ち取られてしまうかもしれないのに

 

「解った一緒に戦うぞ、援護してくれ」

 

「姉者・・・ああ、矢も無限ではないが姉者となら昭が帰ってくるまで持つ」

 

 

男はその身を削りながら前へ前へと進んでいく、周りでは仲間が傷つき倒れそれでも

皆生きようと必死に互いを助け合い進んでいく、男の目からは絶えず涙が流れ続ける

 

「昭様を守れっ!劉備の頸を取れば皆生き残るぞっ!」

 

「おおっ!皆死ぬなっ!敵には三人で当たれっ!」

 

すまない皆ッ!あと少しだっ!早期決着を望もうとしていたのか本陣が近い、今更退却など間に合うものかっ!

 

男は駆け、両腕の武器を器用に使い敵をいなし進んでいく、回りの兵達は男の為に進みながら拾い集めた武器を

男の周りに投げていく、それを腕で弾き宙に浮かし、敵の動きを見切りいなして進んでいく

 

避けるだけならこの状態でもいける!皆が武器を、俺に力を貸してくれる!あと少しだ

あと50人・・・・30・・・・・・20

 

体を回転させ、槍を避わし、地に脚を滑らせ体を低くし敵の剣を避け続ける、見る間に劉備の本陣へと近づいていく

 

後5人っ!この柵を越えればっ!

 

柵を飛び越えると両脇に隠れていた兵士が槍を向けるがとっさに気がついた男の腰から剣が投げられ

頭を貫き崩れ落ちる、眼前には劉備と諸葛亮

 

「劉備っ!その頸もらったっ!」

 

「させるかっ!」

 

男が劉備に切りかかろうとした瞬間、滑り込むように体を盾にして趙雲が劉備の前に体を広げるが

剣は趙雲の喉元でとまり、男は微動だにしない

 

趙雲か、ここまでだな。劉備の頸を取れなかった、すまない皆

 

「行け、俺達の勝ちだ」

 

「くっ!何のつもりだっ!」

 

「義弟を助けてくれただろう?借りを返すだけだ」

 

「それだけで敵将の頸を取らずに」

 

あたりまえだよ、俺にとって家族や仲間の命は何よりも重い、それこそ国より重く大切なものだ

そして恩を仇で返すなど、我等の誇りに反する行為。もし俺が趙雲を殺せば皆が許してくれないだろうよ

趙雲は俺の傷をみて口の端が釣りあがる

 

「その傷で限界なのではないのか?」

 

「試してみるか?たとえ両腕落ちようとも劉備の喉笛喰いちぎってやる」

 

俺の眼を本気と捕らえ趙雲は体を劉備に被せるように俺との間に立つ、少しずつ後ずさりながら

そのとき何を思ったのか後ろにいた劉備が趙雲の横からこちらに乗り出してきた

顔は笑顔で、そして俺を見て子供のように喜んでいる

 

「お兄さんっ!私の所に、蜀に来てくれませんか?貴方が居れば私の理想は叶う、争いごとの無い

皆が笑い合える世界をっ!」

 

俺は劉備の言葉を聞き呆れてしまった、ここまで来てまだこんなことを言うのか?強かと言えもしないが

迷いや自分の理想に近いものを見てしまいそこを手に入れようとするのは解る、だが家臣の心を、

関羽の心を踏みにじるのか?俺は無意識に剣を握る手に力がこもっていった

 

「申し訳ないが、私は前も申しましたように魏の将。私の居場所は魏にある」

 

そういうと劉備は顔を真っ青にすると顔を伏せ肩を震わせて趙雲の腕を掴むと

 

「・・・・・・殺してください、あの人を殺してくださいっ!じゃないと私の理想はっ!私のっ」

 

劉備の言葉で俺の怒りは爆発した、どこまで甘えるつもりだっ!仲間の心を踏みにじりやがって!

斬り殺す!そう思ったとき

 

パァンッ!

 

劉備は頬を押さえ腰を地に付いて座り込んでしまっている、趙雲が振り向き平手を入れたのだ

俺はその光景で動きが止まってしまった

 

「しっかりしなされ、皆貴方を信じている。愛紗など己が桃香さまの御使いになると申しています」

 

趙雲は優しく劉備を抱きしめると優しく、優しく語りかける

 

「もちろん私も、貴方を信じています。だから己の道を信じて、私達が側にいます」

 

劉備は趙雲の言葉に涙を流し、子供のように声を上げて泣き始めた

まるで秋蘭と涼風、王は独り、何時でも孤独なもの、だが回りに眼を向ければ支えてくれる仲間が居る

劉備は己一人で抱えすぎたのだろう、すでに心はボロボロだったのだ

 

「御使い殿、私達は引かせてもらう。貴方の義弟を助けた恩、ありがたく頂戴する」

 

「ああ、手強くなるな」

 

「フフッ、当たり前だ。我が主は大徳、劉備玄徳。覇王に引けを取るものではない」

 

必ず劉備は飛躍する。これほどの将達に支えられているのだ、いずれ曹操様を脅かすものとなろう

だが俺達も負けはしない、大陸に覇を唱えるのは我が主、曹操様のみ

 

「お兄さーん、迎えに来ましたよー」

 

「風、良くここまで来れたな」

 

風は馬に乗り劉備本陣に乗り込み俺を迎えに来てくれたようだ、おそらくは味方の兵士達が俺を逃がすために

道を無理やり空けて迎え入れてくれたのだろう

 

「風、稟はどうした?息災か?」

 

「元気ですよー、星さんのことも気になっていました。無事でよかったですー

でも今はお兄さんを連れて帰らなければならないので、また戦場でお会いしましょう」

 

俺は後ろに乗ると風は心配そうに俺を見上げてきた、安心させるように頭を撫でると

猫のように目を閉じて気持ちよさそうに撫でられている

 

「でわでわー」

 

そういって風は馬を走らせた、そうだ・・・秋蘭たちが無事か聞かなければ

曹操様はもちろん・・・・・・無事だろう、一馬も真桜も・・・よくやってくれた。詠にも・・・・・・華佗にも礼をしないとな・・・・・・

 

「お兄さんは無茶をしすぎなのです。風も心配をしていたんですよー」

 

そうか・・・皆に心配をかけてしまったな・・・・・・どうやって・・・礼を・・・・・・

 

「お兄さん?・・・お兄さんっ!お兄さんっ!!しっかりしてくださいっ!」

 

男はゆっくりと風にもたれかかり、髪は赤く染まっていく、風は今にも泣きそうな顔をするが

必死に堪えて馬を城へと走らせた、男の命を救うために

 

 

 

 

 

あとがきのようなもの

 

 

絶影です、いつも読んでくださっている方ありがとうございます

今回後書きのようなものを書かせていただいたのは主人公の舞についてです

彼の舞はかなり特殊です。条件も沢山あり、はっきり言って使えません

弱点の目白押しです!なぜなら秋蘭を嫁に迎えるためだけの目的で作ったからです

 

条件はおいおい書いて行こうと思っているのですが待ちきれんという方に

条件と能力を少し明かそうというわけで後書きなんぞ書きました

 

 

1・複数(3人から6人)でないと完全に力を発揮できない

 

2・剣が大量に無ければ戦うことも出来ない

 

3・敵味方の区別がつかない

 

4・武器破壊をされ続けると戦えなくなる

 

5・戦神の舞は必ず戦闘の中じゃないと発動をしない、しかも三つ草原と剣舞と言霊も揃わなければならない

 

6・周りは生きる意志を強烈に呼び起こされるが本人は完全な死兵状態、死を覚悟というよりは

己の死は頭に入らなくなっている

 

7・常に腕や手を削っているのでそのうち戦えなくなる

 

と他にもいくつかあるのですがそれは後々明かしていこうと思います

今回は特殊な条件が奇跡的に揃ったと思っていただければよいかなと思っております^^;

 

以上でまだまだ解らないという部分があれば個人的にでも説明をしますので

コメントやメールでもいただければなと思います><

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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