No.1194484

とある少女のフコウ説。五話

とある魔術の禁書目録の二次創作です。 上条当麻女成り代わり主の体に空の境界の両儀織が同居してます。危険があると入れ替わります。

2026-10-12 16:48:34 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:63   閲覧ユーザー数:63

五、「繰り返しの中で」

 

 神裂と交戦した結果、上条は一日意識を失っていた。

 こんなことは初めてだと驚く上条に、インデックスは当たり前のように甘えてくる。

 意識が入れ替わったことを悟られないように、上条はインデックスに接する。

 一方通行(アクセラレータ)は、一日前のことが曖昧な上条を見て不安そうな顔をし、「当麻、降りたいなら降りてもいいんだぞ」と言った。しかし上条は何のことかわからず、「最後までやる」と返して何とかその場をやり過ごした。

 どうやら『彼』は神裂や一方通行(アクセラレータ)と何かやり取りをしたようだ。

 何か痕跡がないかとスマホを開いて探してみたところ、書かれているのは「大丈夫、心配するな。俺に全て任せろ」という内容だった。

 一体何の取引をしたのだろう。でも、メールアプリに書かれていたのは初めてのことだったので、一応返信を書くことにした。

「私は君を独りにしない、大丈夫!」と。

 こちらの意味さえ伝わればよいので、長々しい説明は省いて短文にした。

 一方通行(アクセラレータ)は上条が不安定そうな様子なので何か言いたそうな顔をしていたが、何も言わずインデックスの期限の日まで日常を過ごした。

 そして、期限が来た。

 

※

 

 夜。

 眠っていたインデックスが苦しみ出すと、上条の意識が切り替わる。

 身体は汗でぐっしょりと濡れ、苦しげな息を繰り返す。

 目を覚まさないまま、彼女の意識は深い海に沈んでいく。

 

「始まったか……」

 

 織は冷静にその様子を観察する。

 その隣で、一方通行(アクセラレータ)も黙ったまま、ただ彼女の異変を見つめていた。

 

 織はインデックスの顎に手を添えて口を開かせる。

 

「やっぱり……圧迫している痕がある」

「魔術ってやつが、コイツの脳を締め上げてるって話だったな。首輪、ってやつか」

「うん。……この魔術、魔術師たちを都合よく操るための道具だったんじゃないかな。……たぶん、だけどね」

「アイツらが共闘してるなんて想像もつかなかったが……俺が説明した。わかンなかったらバカだろ」

 

 その時。

 玄関が勢いよく開かれる。

 

「来たぞ、ヒーロー気取り」

 

 ステイル=マグヌスがそう言って現れた。

 その背後から、神裂火織が姿を現す。

 

 インデックスの苦悶する様子に、神裂はすぐに駆け寄りそうになったが、ぐっと堪え、織をまっすぐ見据えた。

 

 織は頷いた。

 

「じゃあ、始めるよ」

 

 そう言って彼は、インデックスの口の中に右手を突っ込む。

 その瞬間、バチン!という激しい閃光と衝撃。

 織の身体が吹き飛ばされた。

 

 痛みに顔をしかめながらも、右手を押さえてインデックスを見上げる。

 

 インデックスの目が開かれ、機械のような無機質な声が響く。

 

「──警告。第三章第二節。Indx-Librium-Prohitorum。禁書目録(インデックス)の『首輪』、第一から第三までの全結界を突破。再生準備……失敗。『首輪』の自己修復は不可能。現状、十万三千冊の書庫の保護を最優先とし、侵入者の迎撃を開始します」

 

 一夜の死闘が、始まる。

 

※

 

 一方通行(アクセラレータ)は、屋上の陰からその戦いを見下ろしていた。

 織から「手は出すな」と釘を刺されていたのだ。理由は明白だった。

 彼が戦えば、その被害はあまりに甚大だから。

 

 それでも、彼の胸の中は煮えたぎっていた。

 

 ──上条当麻は、時々人が変わったようになる。

 

 例えば、夜道で不良に絡まれた時。

 まるで武道の達人のような動きで、見事に敵を制してしまう。

 今もまさにそうだ。

 食用ナイフを左手に、魔術の光線を右手で受け止めながら、彼はただ真っ直ぐインデックスに向かっていく。

 

 ステイルと神裂の援護を受けつつ、確実に距離を詰めていく織。

 

 その手は、光を受け止めるたびにジリジリと焼けただれ、皮膚が爛れていく。

 

「……アァ、歯がゆい」

 

 一方通行(アクセラレータ)は奥歯を噛み締めた。

 

 助けたくて助けたのに。

 手を伸ばしたのに、また何かを失うのか。

 今度こそ守れると思ったのに、結局また——

 

(でも……今度こそ、俺が“助ける”)

 

 たとえ、彼女が“記憶を失って”も。

 命さえあれば、いくらでもやり直せるのだから。

 

※※※

 

 戦いが終わり——

 

 織は、病院のベッドに座っていた。

 手にするスマホの画面には、ひびが入っていた。

 それでも、涙が一筋、頬を伝って落ちる。

 

 表示されたメッセージは、彼宛だった。

 

「織。私の代わりにインデックスと、記憶を失った私をお願い。それと、一方通行のことも。君にしかできないことだから。私の分まで、長く生きて。ごめんね。私はもう変えられない。運命だから。……今までありがとう。もう足掻かなくていいよ。織に幸あれ」

 

 メッセージの差出人は、“彼女”。

 

 戦いの最後、織が右手でインデックスの『首輪』を破壊したとき、人格が切り替わった。

 記憶を持つ“彼女”は、もういない。

 織だけが生き残った。

 

 何度も、繰り返してきた。

 足掻いて、抗って、歴史を変えようとした。

 でも——

 

(……もう、変えられない)

 

“本当の彼女”は、神の意志に従うように記憶を失い、消えていく。

 織の記憶だけが、今もこの胸の中に残されている。

 

 彼女が言っていた。

「寂しい」と。

 その言葉に寄り添ったあの夜が、今も焼きついている。

 

(だけど、俺は生きていく)

 

 彼女が遺したこの想いを抱えて。

 失われたものの記憶を胸に刻んで。

 

 織は、病室の窓の外を見上げる。

 新しい朝が、静かに始まろうとしていた。


 
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