No.1193266

蓮が咲き行く道へ二話

BLEACHの二次創作です。
浦原喜助の娘の成長話です。

2026-09-14 11:53:22 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:72   閲覧ユーザー数:72

二話「役割と消える運命」

 

 私は、人間ではない。

 百十年をかけて、赤子から幼子へ、少女へと、ゆっくり育った。今の姿は十五、六歳ほど――けれど、私の成長はまだ終わらない。

 

 私は、前世と前々世の記憶を持っている。しかもなぜか、この世界……漫画『BLEACH』の知識までも。

 いわゆる「転生したら漫画の世界だった!」というやつだ。けれど、私がいるこの世界は、原作そのままじゃない。歪みが、ある。

 

 たとえば。

 小さい頃に異世界から転移してきた母・常沖(つねおき)は、本当の名前を隠している。神である“おんじ”――狼の神様の助言で、名を伏せるよう言われたのだ。

 この世界には、“おんじ”を祀る神社がいくつもある。けれど、原作には、巨大な白い狼なんて出てこなかった。

 でも、現実には、いる。

 

 そして――何より、浦原喜助が結婚して、子供までいる。

 母・常沖がその妻であり、私がその娘だ。

 これまでの人生、私は不自由なく育ってきた。幸せだった。……けれど、その穏やかな時間に、じわりと影が差す。

 母が、眠ることが増えたのだ。

 

 それは――黒崎一護の両親、真咲さんと死神・一心さんが結ばれた時期と重なっていた。

 母が、眠りの中へと引きずり込まれるようになったのは、その頃だった。

 

 私は、怖かった。大好きな母が、遠くへ行ってしまうのではないかと。

 でも、てて様……浦原喜助は、すべてを知っているかのように、小さく呟いた。

 

 「……そろそろ、なんスね」

 

 その声は、寂しさと覚悟が滲んでいた。そして、てて様は私に向き直って、こう言った。

 

「成さん、ボクは“役割”を果たさなきゃいけません。それは、ボクが原因を創ったっていうのもあるんスけど……」

「……役割?」

 

 私の問いに、てて様は静かに頷いた。

 

 「成さん、これからボクがすることに――黙ってついてきてくれませんか?」

 

 それは、優しい口調なのに、決して逆らえない眼差しだった。

 私は言葉を飲み込み、小さく頷いた。

 

 「これは、沖さんを救うためでもあるッス」

 「救う……って、かか様を?」

 「はい。沖さんの存在は、黒崎さんたちによって回り始めた“歯車”の影響で、不安定になってきてる。彼女は、おんじさんと同じ神の血を引いてる。世界のバランスが崩れると、沖さんの“存在”自体があやふやになるッス」

 

 私の胸がぎゅっと痛んだ。

 

 「……夢の中にいるみたいな、そんな感じ?」

 「うん、近いッスね。沖さんは今、神そのものに“なりかけて”いるッス」

 

 ぞわりと、背筋に冷たいものが走る。

 

 「……それって、おんじと同じ霊体になるってこと?」

 「ほとんど同じ。これからは、存在するために“義骸”を作るしかない。あんまり残るモノを作るの、好きじゃないんスけど……」

 「……かか様、消えちゃうの?」

 「ううん。この世界から“消える”っていうより、“戻る”だけッス。元のあるべき場所にね」

 

「でも……離れ離れになるんでしょう?」

 

 私の声が震える。てて様は、そっと私の頭に手を置いた。

 

「……違う。ボクらは、おんじさんと一緒に“別の世界”へ行くッス。だから、成さんにはこの世界に未練を残して欲しくない」

 「そんなの無理だよ!!」

 

 私は叫んだ。

 

 「てて様とかか様がいなかったら、私、生きていけない! 未練があっても、絶対一緒に行く!」

 

 そのとき、てて様は私をぎゅっと抱きしめた。

 

 「……ボクらの都合で、成さんを振り回して、本当にごめんなさい」

 「……っ」

 「だから、成さんは好きなだけ、ワガママを言ってください。どんなに困らせてもいいッス。ボクがこの世界の問題を片付けたら――今度は、ボクが成さんを助けますから」

 

 “今度は”って、どういう意味?

 何を、どう助けてくれるの?

 

 けれど、私は何も聞けなかった。

 てて様の声には、どこか……やるせなさと、深い悲しみが滲んでいたから。

 

 私は、ただ頷くしかなかった。

 そして、母が“この世界”から消えてしまう運命に、胸が張り裂けそうになりながら、涙を堪えた。


 
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