No.1184044

義輝記 別伝 その十 後編 その弐

いたさん

ようやく三戦目に入ります。

2026-03-14 21:02:45 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:15   閲覧ユーザー数:15

 

【 思惑 の件 】

 

〖 飯盛山城 試合会場 にて 〗

 

 

この試合で天城颯馬が負けを認めた事により、二回戦は松永久秀の勝利。 これにより双方の応援陣営では一喜一憂を味わていた。

 

 

例えば───

 

 

『きぃぃぃぃ────っ!! 颯馬様が負けてしまい、悔しいですわ、悔しいですわっ!!』

 

『ふっ、さもありなん。 あの松永とやら、店の主との会話からして、南蛮の貿易も余程精通しているに見える。 なかなか侮れない奴よの』

 

『そんな事は、疾(とう)の昔から存じていますわ! それよりも、これで忌々しい久秀と対になり……も、もし颯馬様が負けてしまえば!?』

 

『まあ、その時は………だな』

 

『その時は!?』

 

『─────是非もなし!!』

 

『あ、貴女に聞いた私が、お馬鹿でしたわ!!』

 

 

────これは極端な例だが、他の陣営内も大方こんな様子である。

 

そもそも三好家は、英邁な大器を持つ当主、武に秀でた実弟、教養と政務に明るい股肱の臣が脇を固め、広大な領地を治める大大名。

 

そんな家中に仕える者達は、民より上の地位であるとはいえ、下は底辺から上は雲上と、様々な地位に溢れかえっている。

 

そんな三好家に仕える彼らは、己を切磋琢磨し、様々な地位向上を目指しているが、どうしても様々な限界という壁が生じてくるものだ。

 

金銭面、家柄、そして……己の限界。 

 

『自分だけでは』どうにもならない諸問題、これれらを越えるのには、どうすればいいか?

 

 

答えは───『他力本願』

 

 

己の力以外からなる──強力な追い風が必要。

 

力ある権力者達の集まり……いわゆる派閥に参入すれば、己の目指した地位へと躍進、いや目標より上回る地位にも届く可能性もある。

 

だが、一方で敗れれば、その派閥の被害は己にも容赦なく降りかかり、その身を破滅へと導く両刃の一面も。

 

そのため、彼らの一喜一憂は、正に天国か地獄かの片道切符を得た状態に等しい物であり、生殺与奪の権を他人に握らせた状態であった。

 

 

因みに、颯馬と久秀との諍いの発端となった、あの店で起きた最初のやり取りは、三好家中の者には既に把握済み。

 

それだけ三好家の家中は優秀……ではなく、あの店の店主が、この諍いの顛末を家中に流したからである。 無論、久秀の命令により、だ。

 

この命令を聞いた店主は『敵味方を見極めるための良策』と膝を叩いたが、久秀は店主に冷ややかな笑みを浮かべ、こう言い放った。

 

 

『勝ち馬に乗れば、表面上は誰もがしたり顔で寄ってくる。 それを味方などと戯れ事を抜かすのなら、久秀の側に居る価値なんてないわ』

 

『味方と声高々に名乗り、久秀に依存するだけの馬鹿なんていらない。 逆に愚かな醜態を晒し、余計な手間をかけさせるだけ』

 

『寧ろ、久秀を毛嫌いする実力者こそが欲しいの。 そんな相手を……久秀の手練手管で従順な玩具に変える。 それが、楽しいんじゃない?』

 

 

それを聞いた店主は、青い顔をして自分の意見を即座に取り消し、土下座して詫びたという。

 

 

閑話休題

 

 

だが、そんな事に全く関係ない城下の民達は、この突然と降って湧いたような豪華な見世物に集まり、盛大な喧騒を楽しんでいた。

 

 

『甘い菓子だよ! こちらは南蛮渡来の煎餅だぁ! だけど、煎餅より硬くなくって、頬が緩むほど旨い菓子だよっ!!』

 

 

『大事な試合を腹を減らして見るなんて、後で後悔するよ! この旨い団子で腹を満たし、熱い茶で喉を潤してからじゃなきゃ大損だ!!』

 

 

目端が利く者は、簡単にできる露店を出店し、賑わいに華を咲かせる。 しかも、三好家には上納金を示し商売の許可も得ていた。

 

流石は、かの三好家城下の商人達。 

判断が早い………と言わざる手腕である。

 

 

更には───

 

 

『さあ、張った張った! 最後に勝つのは、三好家の誇る才色兼備の松永さまか!? それともポッと出の優男か!?』

 

『俺は松永様だ! あの聡明で愛らしい方が負けるなんて信じられねぜぇ! 俺は松永様の勝ちに有り金ぇええ、全部だぁっ!!』

 

『───ほぉう、面白い話じゃの? これは颯馬の方に賭けねば、わらわの面目丸潰れといえる。 よしっ! 店主よ、この持ち金全部賭けるぞ!』 

 

 

────賭け事も始まっている。

 

 

始めは、颯馬と久秀の騒動を数名で見守るだけで始まった賭け事が、いつの間にか大事となり、しかも三好家主催による公式戦である。

 

しかも、全面公開による野試合であるため、誰でも見物は可能ときたのだ。

 

そんな面白い出来事を、娯楽の少ない日常を送る民達が黙っている訳が無い。

 

そんな中で、最終戦が行われる事となる。

 

 

 

◇◆◇

 

【 龍虎 の件 】

 

〖 飯盛山城 試合会場 にて 〗

 

 

次の試合の準備と双方の体調維持のため、四半刻(約三十分)の休息が告げられた。

 

未だに熱狂する者達を他所に、用意されていた席上から一人の将が離れ、そのまま幕外へ出る。

 

その将とは、《越後の龍》とも《聖将》とも言われる上杉謙信。 ちなみに謙信は法号であり、初名は景虎である。

 

彼女は周辺を見渡し、自分一人だと確認した後、静かに溜め息を吐き小さい声で呟いた。

 

 

『天下の三悪……松永久秀……か』

 

『───世に聖将と謳われし上杉景虎ともあろう者が、招待してくれた三好家に仕える重臣、しかも長慶殿の懐刀を何故そう称するのですか?』

 

『し、信玄! いつの間に!?』

 

『貴女と一緒に出たのですが……成る程、どうやら私が余りにも小さいゆえ見過ごしていたと、そう言いたい訳ですね?』

 

『それは違ぅ──』

 

『ふん。 まあ、それはいいとしても……先の言葉は看過できませんよ、景虎?』

 

 

自分以外に誰も居ないと確認したばかりなのに、過去の宿敵である《甲斐の虎》こそ武田信玄が、何故か横に居てジト目で景虎こと謙信を睨む。

 

まあ種を明かせば、謙信が動いた時に直ぐ後方へ張り付きながら移動、辺りを見渡した時は屈み込んでやり過ごすという、努力の賜物である。

 

何にしても、三好家の重臣相手に他国の、しかも国主が貶す言葉を発するのは、実に非常識な行いであり、敵対関係も辞さない意味合いもあった。

 

 

『いっ!? いや、失言だった!! そ、その……聞き流してくれれば……ありがたいのだが……』

 

『理由次第……ですね。 折角、颯馬が繋いでくれた我が武田家と上杉家の同盟が、こんな些細な事で破綻するなんて、余りにも情けないですから』

 

 

颯馬の名前が出てくるのは、上杉家と武田家双方で面識があり、第三者の足利家として同盟の仲を取り持ったからである。

 

彼が何をしたかの詳細は省くが、上杉家と武田家共々に大きな益を齎(もたら)した行いの為だ。

 

それは兎に角、『壁に耳あり障子にメアリー、森の中にはボブとジョン』という諺?通り、どこに聞き耳を立ているかは分からない。

 

この場は油断した自分が悪いと……謙信は肩を落とし、信玄に事情を話し始めた。

 

 

『たまたま……三好家の家臣達がな。 久秀殿は足利将軍の弑逆を試み、三好家の簒奪を目指していると、《 小耳 》に挟んだんだ』

 

『新参が成り上がれば、古参の臣下は面白くないのは道理。 ですが、その話は私も知っています。 《 確証 》は……掴めませんでしたが』

 

 

二人は簡単に言っているが、この情報を得る為に優秀な細作達が、主達の命令を受けて動き判明したことである。 

 

 

各々の家が誇る諜報集団

 

───上杉家の《軒猿》

 

───武田家の《三ツ者》

 

 

その者達の働きは、主に敵や味方の情報収集等を行い、得た情報を速やかに主君へ報告する事。 

 

    《 知彼知己、百戦不殆 》

 

戦国の世にて、情報収集は強国である要の一つ。

 

だから、本来は内密な内輪揉めさえも、こうして聞き及ぶ事もできる。 特に今回の件は、上杉武田両家にとって値千金の値打ちがあった。

 

数年前、足利義輝が襲撃されたが九死に一生を得たもの、将軍職を追われ流浪したのち、颯馬達の手助けで、大名として返り咲けたのは有名な話。

 

後に、襲撃者達は捕らえられたが、肝心の黒幕が不明のままで、事件は有耶無耶に終わった。

 

だが、それが今となり、細作が三好家中の噂話を掴み、自分の主君へ報告した。 勿論、信憑性等も合わせて精査した結果である。

 

もし、この話が真実と証明できれば、足利家に借りを、三好家に大打撃を、と様々な妙手が取れるし、最悪でも何かの切り札として使用可能だ。

 

上杉武田の両家、いや他にも気付いた者達も、物証や証人を血眼になりながら探し求めた。 

 

だが、その全ては……完全に不首尾と終わる。

 

あれほどの噂が流れているのに、何一つも証拠になる命令が記された書状、実行犯の自白、関係者の有無さえ、見つからなかったのだ。

 

だからだと、謙信は控えめに声を出して言う。

 

松永久秀は、上杉家や武田家は元より、足利家を重んじる主君、三好長慶さえも欺く、天下の大悪人ではないかと。

 

 

『事の真偽は不明……だが、ふと思ったのだ。 《火のない所に煙は立たぬ》と。 ならば、事の次第、久秀殿は天下の三悪ではなかろうかと』

 

『一つは将軍弑虐の加担疑惑。 二つは主家簒奪の陰謀。 ならば………あと一つは?』

 

 

しかし、噂の内容は二つであり、謙信のいう《天下の三悪》には一つ足りない。

 

不思議に思った信玄が謙信の顔を見ると、不自然に朱を染めたように赤くなり、顔も信玄の視線を拒むように、横へと背けているではないか。

 

 

『……………………』

 

『………どうしました? もし話せないなどと呆れた事を言えば───』

 

『りゅ、龍の雲を奪わんとしていることだ!』

 

『……………はっ?』

 

『分からんのか! 今のは隠喩で───』

 

 

古代中華の書物《 易経 》乾卦文言伝に曰く《雲従龍、風従虎》(龍には雲、虎には風が従う)と。

 

似た言葉には、《 龍吟雲起 虎嘯風生 》があるが、その意味は別に不要であろう。

 

つまりは───

 

 

『勿論、理解はしましたよ。 それをわざわざ擬(なぞら)える景虎の言う意味など……痛いほどに』

 

『わ、分かっているなら聞き返すな! こちらだって………恥ずかしいのだぞ……』 

 

『ですが、その件に関して武田家、いえ武田姉妹は猛烈に抗議します! ええ、誰が如何様に言おうが認めませんから!!』

 

『何ぃい!? どうして信玄達に───』

 

『龍が雲を欲すなら、虎も風を求めるは必須!  それに、私達が先に渡りを付けたのに、それを横から掠めるような者など、聖将とは片腹痛い!』

 

『………言っておくが、困り果てている武田家に対し塩を融通したのは、この上杉家なのだがな!』

 

『それは感謝していますが、それはそれ! これはこれ! 颯馬の事は全くの別ですっ!!』

 

『だからと言って、武田家ばかりが優先とは限らないぞ!! 何故なら私は既に───』

 

『それなら、武田家は当主共々───』

 

 

─────と言う訳である。

 

 

ああ、まさか近隣に恐れられた偉大な統治者である《 越後の龍 》と《 甲斐の虎 》が、一人の男を巡り、乙女のように口喧嘩を始めるとは。

 

どこぞの世界に居るという〈 世が世なら万の軍勢を縦横に操ると称された天才軍師 〉さえ、このような事になろうとは見抜けなかったに違いない。 

 

もし、この事象を指摘されると、苦し気な表情を浮かべ『うっ……うるせーバーカ!!』などと逆ギレされるかどうかは知らないが。

 

 

結局のところ、騒ぎを聞き付けた武田信廉が、双方を激しく叱りつけて周囲に謝罪させ、この騒動は終わったそうだ。

 

 

◇◆◇

 

【 画策 の件 】

 

〖 飯盛山城 試合会場 にて 〗

 

 

最終試合の開始が始まるとの伝令が飛び交う中、颯馬と久秀が先に会場へ現れた。 

 

今度の試合となる問答の出題は、少し変わった物になる。 

 

二人は交互に出題して、其々が正解を引き当てたのだ。 どちらかが出すのでは不公平だし、試合としても成り立たない。  

 

だからこそ、今度の出題者は第三者に任せなくてはいけない。 しかも、それなりの地位があり、二人が納得する人物でないと話にならない。

 

その人物は、試合場にある中央に置かれた一段高い台へ登壇し、出題することになっている。

 

颯馬達は台を避けるように横へ向かうが、そんな颯馬の態度は緊迫感に満ちていたが、対照的に久秀は余所行きの澄まし顔で佇む。  

 

颯馬としては、何かと自分に手出しをしてくる久秀が苦手で、側に居られると実に落ち着かない。

 

特に、こんな静かな時が要注意だと考えていた時、久秀が意を汲んだように何気なく近寄ると、小声で喋り掛けてきた。 

 

 

『ふふふ……次の勝負で決まるわね、颯馬』

 

『……………』

 

『まさか、こんな大袈裟な話になるとはね。 だけど、久秀にとっては好都合。 だって、颯馬の居場所は、久秀の側だと決まっているんだから』

 

『久秀殿、貴女が何を企んでいるのか知らないが、俺は足利家に仕える臣。 どのような手段で来ようが、三好家に入るつもりはない!』

 

 

颯馬を自分の物にしたいとの欲、これを露骨に現してきた久秀に対し、颯馬は激しく否定する。

 

颯馬自身が何度なく断ってきた話。

 

武田、上杉、三好家と、数々の大名から秋波( しゅうは ) を送られても、決して頷なかった。

 

だが……久秀は颯馬の反応を見て、その柔和な笑みは更に深める。 

 

まるで、予想内の反応だと言わんばかりに。

 

 

『幾ら抵抗しても無駄。 既に久秀が長慶様に進言して、勝てたら三好家に仕える許可を得たばかり。 勿論、足利家も手を回して承諾済みよ』

 

『───何だとッ!?』

 

『だから、今度の出題者は長慶様よ。 確実に久秀を勝たせるために、無理を通して立候補したみたいね。 これで颯馬の勝ち目も……うふふ』

 

 

そんな言葉を放ち、嬉しそうに微笑む久秀。 

 

対照的に、颯馬は青ざめた表情で驚愕するしかない。 無論、周囲には見物客で溢れているため、目立つ態度は出来ない。

 

深呼吸を数回繰り返し落ち着かせ、残りの不快な気持ちは掌を拳に変えて強く握りしめる。

 

足利義輝は言うに及ばず、三好長慶は親友である十河一存の実姉であり、颯馬の良き理解者。

 

久秀は三好家の重臣であるから、それなりの配慮は必要。 だが、颯馬と一存は久秀の危険性を説き、長慶も警戒を怠らないと誓っていた。

 

なのに、なぜ颯馬を蔑ろにし、久秀の肩を持つのか分からなかったからだ。

 

 

『………………………』

 

『言っておくけど───』

 

 

久秀の声が冷たく、ねっとり、確信を持って、颯馬の耳に刺さる。 

 

反論一つ許さないと言わんばかりに、久秀が口許を寄せて、颯馬の耳へ自分の声を届かせる。

 

まるで、一種の呪いの如く。

 

 

『久秀が見つけた獲物を諦めた事なんて、今までないの。 必ず勝って、颯馬を、手許で可愛がってあげる。 ちゃんと最後まで……ね』

 

 

久秀が言い終えた後、大太鼓の知らせとともに現れたのは、当の三好家当主である三好長慶。

 

唖然とする颯馬を尻目に進み、既に準備された台の上に登壇すると、集まった者達へ語り掛けるのであった。

 

 

◇◆◇

 

【 代理 の件 】

 

〖 飯盛山城 試合会場 にて 〗

 

 

『皆、大儀である。 私が三好修理大夫長慶だ』

 

『『『 ─────はっ! 』』』

 

 

三好家当主が威風堂々たる様子で現れると、普段は接する三好家家臣は元より、騒がしかった城下の民達も急に静かになり、慌てて頭を下げた。

 

本来なら民は平伏すべきだが、何分急な登場で現状の認識が追い付かないのもある。 

 

だが、周りは狭い場所に多くの人混みで溢れ、只でさえ平伏する場所も難しい。

 

だが、せめて礼儀として、親愛なる領主に頭を下げ敬意を払いたかった心情の表れだった。

 

勿論、長慶も皆の心情を汲み取り、これしきの無礼で怒る筈もなく、動こうとする兵達を制止させ、笑って見過ごしてくれる。

 

この様子を見る限り、長慶が家臣だけてなく民達からも畏怖されている事が分かるだろう。

 

そんな中で、長慶は表情を引き締めて告げる。

 

 

『今回、私の信頼する松永久秀から、足利家家臣である天城颯馬殿、この者を三好家に迎えるよう熱心な進言があり、思案した結果がこれだ!!』

 

『本来であれば内々的に行う儀であるが、下々にも天城殿の実力を見て納得がいくよう、私が途中より公開を命じたのだが、どう見ただろうか?』

 

 

柔和な表情で優しい口調で話す長慶だが、その目は真剣であり、その雰囲気に感化された周囲の者達にも緊張感が漂う。

 

そんな長慶が両手を左右に広げ、前方を見つめながら颯馬の事を熱く語れば、長慶に気を取られた者達は慌てて周りを見渡した。

 

そこには、一斉に衆目から集まった視線に驚き頬をかく天城颯馬。 同時に対戦相手である松永久秀は皆に向けてニッコリと微笑む。

 

天城の活躍は、足利家の近隣領となる三好家にも聞こえている。 

 

軍師としての活躍もあるが、今の主君である足利義輝を流浪の身の上から引き上げ、一国の領主から数ヵ国の大名とした義理人情話も有名。

 

更には、三好長慶達と良好な関係を気付き、知恵比べとはいえ、かの松永久秀を一敗させたなど、逆に反対する要素が見つからない。

 

だから、二人を認識した者達は、其々が大歓声で喜び、天城颯馬の成した偉業を口々に囀(さえず)り、三好家に仕えるのを歓迎する。

 

 

『よし、颯馬! 久秀が勝ったら俺専任の軍師になれっ! 俺と組めば、三好家は確実に天下を取れるぜ!!』

 

『…………………どうして、お前が群衆と共に騒いでいる、一存。 おい、誰かある! あの愚弟を急ぎ捕縛し私の前に連れてこい!!』

 

『ね、姉さんっ!? 冗談、冗談だから! 頼むから本気にしないでくれっ!!!』

 

 

こんな具合だが、現在の戦局は……互角。

 

あと、一勝すれば勝ちが決まるのだ。

 

 

『………ゴホン。 それでは、三回戦を始めるが、その前に言っておきたい。 両人も気付いていると思うが、今度の出題は代理人を立てる』

 

『双方ともに出題したのに、片方が改めて出題してしまえば不公平。 かと言って、後に問題が起これば、責任を負える高い地位の者が必要だ』

 

『そうなると……適任者は……』

 

 

長慶は一拍の間をおいて、適任者を定めた。

 

 

『適任者は……私こと三好長慶しかできない! よって、私が最後の問題を出そう!!』

 

『『『 ───────!? 』』』

 

『そもそもの発端は三好家内の話であり、最終的な判断は私が決める。 ならば、最終戦の問題は、私が出題して勝敗を着けるのが筋だ』

 

 

この言葉に、当事者である颯馬と久秀からの反対意見はなく、他の者達も口を挟む者など居なかったため、三好長慶が出題する事になった。

 

 

『ならば、出題させてもらうぞ。 私からの問題は───』

 

 

この後、颯馬と久秀は大いに困惑する事になった。

 

 

 

 

 
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