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「……旧校舎跡、か」
帝令旧校舎跡。
今は誰にも使われず、静かに朽ちるばかりの廃墟――
だが、その空気には、まだ何かが息づいているようだった。
「ふふっ、英雄様はやんちゃなのですね。こんな所にきてしまうなんて」
柔らかな声が背後から届く。
振り返らずとも、その存在はわかっていた。
「急に姿を消したので、心配になって追いかけてしまいました。
……どうして、旧校舎跡へ?」
撒いたはずの監視。
だが、彼女だけは追跡していた。
「……気配を感じたんだ」
「気配……?」
「――十三帝将」
十三帝将、その言葉に、彼女の瞳がわずかに細められる。
空気が、ピリリと緊張を帯びた。
「……」
沈黙が一瞬、張り詰める。
だが――次の瞬間、彼女の唇が艶然と笑みに歪む。
「ふふっ……ふふふふふ……」
澄んだ声。
その笑いは、美しくも、どこか底知れぬ冷たさを湛えていた。
まるで、旧き封印がほんのわずかに軋んだ音のようだった。
~
この廃墟に何かあるのは間違いない。
~
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