No.1171140

帝令旧校舎~十三帝の気配~

2025-07-25 19:15:39 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:107   閲覧ユーザー数:107

 

「……旧校舎跡、か」

 

帝令旧校舎跡。

今は誰にも使われず、静かに朽ちるばかりの廃墟――

だが、その空気には、まだ何かが息づいているようだった。

 

「ふふっ、英雄様はやんちゃなのですね。こんな所にきてしまうなんて」

 

柔らかな声が背後から届く。

振り返らずとも、その存在はわかっていた。

 

「急に姿を消したので、心配になって追いかけてしまいました。

……どうして、旧校舎跡へ?」

 

撒いたはずの監視。

だが、彼女だけは追跡していた。

 

「……気配を感じたんだ」

 

「気配……?」

 

「――十三帝将」

 

十三帝将、その言葉に、彼女の瞳がわずかに細められる。

空気が、ピリリと緊張を帯びた。

 

「……」

 

沈黙が一瞬、張り詰める。

だが――次の瞬間、彼女の唇が艶然と笑みに歪む。

 

「ふふっ……ふふふふふ……」

 

澄んだ声。

その笑いは、美しくも、どこか底知れぬ冷たさを湛えていた。

まるで、旧き封印がほんのわずかに軋んだ音のようだった。

この廃墟に何かあるのは間違いない。


 
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