No.114426

真・恋姫†無双~江東の花嫁達・娘達~(番外壱五)

minazukiさん

メリークリスマス!
ギリギリ間に合いました!
そして昨日間に合いませんでした!
申し訳ございませんでした!

続きを表示

2009-12-25 23:56:59 投稿 / 全17ページ    総閲覧数:11189   閲覧ユーザー数:8362

(番外壱五)

 

 その日、北郷一刀はサンタクロースになっていた。

 数多くいる愛娘達にクリスマスプレゼントを送るために、一月も前から準備を整えていた。

 一月前、何気なく感じた寒さでクリスマスのことを思い出して雪蓮達と相談をした結果、愛娘達にクリスマスプレゼントを送ることになった。

 それからというもの、一刀達は氷蓮達に気づかれないように水面下で準備を始めたがあっさりばれてしまった。

 そこで一刀はクリスマスパーティーを開くことを全員の前で発表して、普段食べられないご馳走とプレゼント交換をすることを伝えた。

 誰もが初めて体験するクリスマスに心を弾ませた。

 家族全員でプレゼント交換を表向きとしていたので氷蓮達は誰も一刀達の本当の狙いに気づいていなかった。

 

「とりあえず、当日着る衣装はもう準備に取り掛かっているから安心してくれ」

 

 楽しい行事になると普段以上に力を発揮する一刀に雪蓮達は苦笑し、氷蓮達はどんなものをプレゼント用に買うかそっちに意識がいっていた。

 

「ねぇパパ」

「なんだ?」

「贈り物は一人一個なの?」

「ああ。皆で交換するからな」

 

 さすがに人数が人数なだけに輪になって歌いながらプレゼントをまわすわけにはいかなかったため、くじ引き形式によって誰がどのプレゼントをもらえるかという風にした。

 

「パパも準備するのでしょう?」

「まあな。ただ誰に当たるかは日頃の行いが物を言うかもな」

 

 冗談ぽく一刀は言ったつもりだが、氷蓮達はそれを真面目に受け取ってしまったため、翌日から一月の間、特に氷蓮はいつもの天真爛漫な行動は鳴りを潜めて、彩琳ですらドン引きしかけたほどおしとやかな行動をとった。

 

「なんだか調子が狂うよな」

「そうですね」

 

 彩琳と政務をしながらそんな会話もあった。

 また屋敷では月を中心とした料理隊も一月の間でどのようなご馳走にするか議論が交わされた。

 クリスマスケーキもいるだろうということで一刀がどんなものなのかを説明をし、それを悠里がしっかりと理解をして作ることになった。

 

「一刀くんが満足できるものをお作りしましょう」

 

 月達と協力しながら悠里お手製のクリスマスケーキが幾つも試作を重ねて当日に向けて作られていった。

 

「一刀、飾りつけはどんな感じなのかしら?」

「蓮華様、お身体に障ります。用意は私どもが致しますゆえ」

 

 ほどなく臨月を迎えようとしている蓮華も積極的に参加をして屋敷の飾り付けをしようとすると、一刀と思春が慌てて止めにはいることも何度もあった。

 

「うん、これなら一刀も喜ぶわね♪」

 

 街に出て贈り物を買う雪蓮は一刀が喜びそうなものを選んでは嬉しそうにしていた。

 それぞれが慌しくも楽しそうに準備を整えていった。

 

「えっとこれが雪蓮のでこっちが冥琳、これは祭さん……?」

 

 一刀も呉国直営店に指定されている意匠家の店に政務が終わると顔を出して当日の衣装を念入りにチョックしていた。

 そして一月後。

 北郷家の屋敷はクリスマスッパーティーが開かれようとしていた。

 

「よし、教えたとおり数を数え終わったら灯りを一斉につけるんだぞ」

「「「「「「「「「「は~~~~い♪」」」」」」」」」」

「それじゃあさん、に、いち、ぜろ!」

 

 一刀が数え終わると同時に一斉に灯りがついていく。

 そこには豪華な料理がところ狭しと並び、部屋には様々な飾りつけが施されていた。

「「「「「「「「「「メリークリスマス!」」」」」」」」」

 

 一刀を中心とした全員がそれぞれに杯を掲げてクリスマスを祝った。

 一刀と母親達は酒を、娘達には果実を搾ったジュースが用意されその一口めを美味しそうに呑んでいた。

 

「さあ、皆さん、たくさん食べてくださいね」

「おお、これはまた見事な馳走じゃの」

「天の国の料理もあるわね」

 

 それぞれが箸を持って頬張っていく。

 

「これは美味い」

「天の料理もいろんな味があって面白いです」

 

 誰もが満足していた。

 一刀もみんなが喜んでくれている姿を見てクリスマスパーティーを開いてよかったと思った。

 

「お義兄さま」

「どうした、月?」

「これを召し上がっていただこうと思いましてお持ちしました」

「どれどれ……。お、これは美味いな」

 

 月が持ってきたのは鳥のから揚げだった。

 しっかりと味がしみこんでいて噛んでいくと肉汁と一緒に旨みも広がっていた。

 

「やっぱり月は料理の天才だな」

「へぅ~……」

 

 髪を何度も撫でながら絶賛する一刀に対して月は今にでも倒れてしまいそうなほど顔を真っ赤にしていた。

 

「こら!手についた油ぐらい拭いてから月に触りなさいよ!」

 

 詠も大声で叫びながらやって来たがその手に持った皿にはおにぎりらしき物体が何個か乗っていた。

 

「まったく、あんたの油で月が汚されると思うとイライラするわ」

「悪い悪い、気をつけるよ。それよりもそれはおにぎりか?」

 

 自分の持っているものを指摘されて詠は一瞬身体を震わせた。

 

「な、何よ!どうせボクが作ったものなんてこうなるわよ」

「まぁでもせっかく詠が作ってくれたんだし」

 

 そう言いながら一刀は腕を伸ばして詠のおにぎりをつかんだ。

 

「あ、ま、待ちなさいよ!」

 

 詠が止めるより先に一刀はおにぎりを口の中に放り込んだ。

 しっかりと味わう一刀に不安そうに見つめる詠。

 最後に飲み込んだ一刀は笑顔でこう言った。

 

「凄く美味かったよ、詠」

 

 お礼を言うのと同時に一刀は詠の髪を撫でると、彼女は顔を紅くして俯いてしまった。

 自分が作ってくれたものを美味しいと言ってくれたことが嬉しくて仕方ない詠に、一刀は自分の方へ月と共に引き寄せて優しく抱きしめた。

 

「お、お義兄さま!」

「な、な、な……」

「二人ともありがとうな。こんな俺の奥さんになってくれて。陽や恵を産んでくれてありがとう」

 

 一刀の腕の中に包まれている二人はその言葉を聞いて自分達が愛している相手が一刀でよかったと心から思った。

 

「私もお義兄さまと出会えてこんなに幸せなことはありません」

「まぁ月を幸せにしてくれているから感謝はしておくわ」

 ここにきてもツンが出てしまう詠だが心ではいくら感謝をしてもし足りないほど、一刀のことを愛していた。

 

「お義兄さま」

「うん?」

「お義兄さまはいつも私達を守ってくれました。だから、私達もお義兄さまが困っていればいつでも頼ってください」

 

 恩を返すととかではなく、一刀を愛する者として手と手を取り合って生きていくことを月は望んでいた。

 いつまでも穏やかな夢のような日々。

 詠も同じ気持ちだった。

 

「まぁ一刀義兄さんだし、私達に迷惑はかけないわよね?」

「詠?」

「詠ちゃん」

「何よ。ボクは変なことでも言った?」

 

 少しムッとする詠に一刀と月は顔を見合わせて笑った。

 

「な、何よ、二人して」

「なんでもないよな、月」

「はい」

「う~~~~~ん」

 

 顔を顰める詠に二人はおかしくてたまらなかった。

 

「そうだ、二人もその姿、凄く似合っているよ」

 

 スカート調のサンタクロースの月とズボンタイプのサンタクロースの詠を見て満足そうに頷く一刀。

 

「なんでボクは月と同じじゃないのよ」

「イメージかな」

「いじめ?」

「違う違う。月はこっちが似合うけど詠はその姿のほうが可愛く見えるからそうしただけだよ」

 

 可愛いという言葉に反応した詠は拗ね顔になるが、やがて周りを確認するように見渡した。

 

「目を閉じなさいよ」

「何でだよ?」

「いいから閉じなさい。さもないと唐辛子をその口に詰め込むわよ」

 

 半ば脅迫をするように一刀に目を閉じるように迫ると、一刀も仕方ないといった感じで目を閉じた。

 

「いい?絶対に開けないでよ。もし途中で開けたら」

「唐辛子だろう?わかっているよ。それより何をするにしても早くしてくれ」

 

 詠は月の方を見ると、月は詠が何をしようとしているかなんとなく理解できた。

 そして詠は両手を一刀の頬に当ててゆっくりと顔を近づけていく。

 

「ボク達を愛してくれてありがとう、一刀」

 

 そう言って詠は一刀の唇に自分の唇を重ねた。

 目を閉じている一刀は驚き目を開けそうになったがぐっと我慢をした。

 柔らかな感触を名残惜しそうにして唇を離していく詠。

 入れ替わるように月が同じように両手で一刀の頬に触れていく。

 

「ずっとお慕い申し上げます、一刀様」

 

 二度目の柔らか感触が一刀の唇に伝わっていく。

 二人の心の篭った感謝と愛情が心の中に入っていくのがわかった。

 唇を離した月は詠の方を見ると、長年の友人は優しい笑顔を見せた。

 

「もういいわよ」

 

 詠がそう言うと一刀は何も言わずにもう一度二人を抱きしめた。

 それに応えるように二人も一刀の背中に手を回していった。

 月と詠は手を繋いで戻っていくと次にやって来たのは風と葵だった。

 二人はスカート調のサンタクロース姿だが、なぜか風の頭に鎮座している宝譿もサンタクロース仕様になっていた。

 

「お兄さん、楽しんでいますか~?」

「一刀さんもさんたくろーすの姿、かっこいいです」

「ありがとう。風や葵ちゃんも似合っているよ」

 

 初めて身にまとっているためか、二人がとても新鮮な感じに思えた。

 一刀から褒められると二人は頬を紅く染めていた。

 

「おやおや、では今度の閨ではこの衣装でお兄さんを誘惑してみますか」

「ふ、風お姉ちゃん、それはどうかと思います」

「それは嬉しいけど、今日限定だからな。他の日に着てもそそるわけではないぞ」

 

 本音ではそれもありかと思ってしまう辺り、未だに衰えを知らない種馬な一刀。

 

「まったくお兄さんはダメダメですね」

「おいおい、何がダメなんだよ」

 

 風の意味ありげな視線に一刀はおちゃらけてみせる。

 

「そういえば一刀さん」

「どうした、葵ちゃん」

「その……私って一刀さんの奥さん……ですよね?」

「もちろんだよ。それがどうかしたのか?」

 

 複雑な表情を浮かべる葵に一刀は不思議そうに見るが何が言いたいのかいまいちわかっていなかった。

 

「お兄さんお兄さん」

「うん?」

「葵ちゃんはお兄さんに呼び捨てで呼んで欲しいのですよ」

 

 風に指摘をされて一刀は雪蓮達を思い浮かべてみた。

 葵と七乃を除いた全員が呼び捨てにされていることを葵は気にしていた。

 

「そういえば葵ちゃんと七乃さんだけだな」

 

 言われて気づいた一刀は葵の方を見る。

 

「葵ちゃんはお兄さんの奥さんですよ。風も呼び捨てにしているのですから葵ちゃんも呼び捨てにしても何にも問題はないと思いますよ」

「それはそうだけど……」

 

 今まで同じように呼び続けているためになかなか呼び方を変えるのは難しいものだと一刀は思った。

 

「ほら、お兄さん、呼んであげてください」

「え、あ、ああ」

 

 風に後押しをされた一刀は葵の方に押され、彼女とぶつかった。

 

「お兄さん、ここで言わないと男ではないですよ」

 

 楽しむかのように風が言うと、一刀も覚悟を決めたのか葵の肩をしっかりと掴んだ。

 それに葵は胸の鼓動が早まっていくのがわかった。

 

「か、一刀さん……」

「あ、あ、葵………………………………」

 

 必死になって「ちゃん」を言わないようにする一刀。

 閨でも呼び捨てをされたことのない葵にとって初めて聞く呼び捨てされた自分の真名。

 

「あ、葵」

「は、はい」

 

 二人を包み込んでいく妙な緊張感。

 それを風はおやおやといった感じで生温かく見守っていた。

 

「葵」

「一刀さん」

 葵はゆっくりと目を閉じていく。

 それに一刀は息を呑みゆっくりと時間を掛けて自分の顔を近づけていく。

 

「葵」

 

 優しく甘い声が葵の耳の中に入っていき、それが媚薬のように彼女の全身に溶け込んでいく。

 やがて触れ合う二人の唇。

 短くも長く感じたその時間が過ぎると二人は唇を離していった。

 

「そ、その、ごめんな、葵」

「いえ。もう大丈夫です」

 

 呼び捨てにされたことで葵はようやく一刀が自分をお嫁さんとして呼んでくれたような気がして笑顔をなっていく。

 

「一刀さん」

「うん?」

「これからも葵って呼んでくださいね。そうじゃないと夢の中で舞香さんに泣きつきますから」

「そんなことをしたら舞香さんに怒られるだろうが」

「それじゃあ呼び捨てでお願いしますね」

 

 舞香のことを思い出しても寂しさがあっても悲しみはどこにも見えない葵の笑顔に一刀は何度も頷いた。

 彼女が前を向いて歩く事が出来たのも舞香という存在があるからこそだと一刀は亡き友が羨ましく思えた。

 

「なぁ葵」

「はい」

「俺は舞香さんのようにはなれない。でも、俺は俺なりに葵をこれからも幸せにするよ」

「一刀さん」

 

 葵は一刀が舞香の代わりと思ったこともあった

 だが彼の優しさに触れていくうちに彼は彼でしかないと気づかされ、舞香は舞香でしかないのだと痛感させられた。

 

「私も私なりに頑張ります。舞香さんに笑われないように」

「ああ。一緒に頑張ろう」

「はい」

 

 一刀と葵は笑顔を浮かべると、その間に割り込むように風が入ってきた。

 

「お兄さん、葵ちゃん。風を忘れるほど愛し合いたいのですね」

「えっ、あ、そ、そんなことはないです」

「そ、そ、そうだぞ。風だってもっともっと愛してあげたいさ」

「では風としてはお兄さんのどんな要求にも応えられるようにしないといけませんね」

 

 ある意味で爆弾発言をお構いなく転がしていく風に一と葵は顔を紅くしていく。

 そして葵は恥ずかしそうに一刀にこう言った。

 

「わ、私も一刀さんが望むなら頑張ります!」

「いや、そこは競わなくていいから」

 

 自分のために頑張ってくれると宣言する葵が嬉しかった。

 もちろん風のことも忘れていなかった。

 

「二人とも」

「「はい?」」

「これからもよろしくな」

 

 一刀は彼女達の唇に自分の唇を重ねていった。

 自分達のことを愛してくれている一刀に風と葵は頷き、彼の両方の頬に同時に口付けをしていった。

 

「こちらこそですよ」

「ずっとお慕いしています」

 

 風と葵の照れくさそうな笑顔を見て一刀はもう一度口付けをした。

 二人は彼の優しさで救われたことに感謝をしてぎゅっと抱きついていった。

 それから風と葵が琥珀と恋の暴食とも思える行動を見つけて落ち着かせるために一刀から離れていった。

 

「かずと~♪」

「美羽、蜂蜜を舐めながら来ると」

 

 転ぶぞと言う前に見事に躓いて瓶から蜂蜜が床に豪快にこぼれていった。

 慌てて美羽を抱き起こしに行くと、美羽は今にでも泣きそうな表情になっていた。

 

「大丈夫か、美羽?」

 

 注意をするのではなく彼女を心配する一刀。

 美羽はせっかくの蜂蜜が台無しになったのが悲しくて身体を震わせていた。

 

「妾の蜂蜜が……」

「大丈夫だって。まだ残っているぞ」

 

 瓶を拾って中を見ると半分ほどは無事だった。

 

「美羽、一緒に舐めようか」

「…………」

 

 まだこぼしてしまったことを悲しむ美羽に一刀は指先に蜂蜜をつけて彼女の口の中にゆっくりと入れていった。

 これには驚いた美羽だが、蜂蜜の味に気づくと一刀の指を舐めていった。

 

「これって美羽のところで取れた蜂蜜だろう?」

「そうじゃ……」

「俺も何度か口にしたけど、さすがは美羽だなって思ったよ」

「どういうことじゃ?」

「だってこれは長年、味わった蜂蜜を美羽が作っているんだろう?これほど美味しい蜂蜜は他にはないよ」

 

 今でも北郷家の食卓に上ることがある美羽の蜂蜜を満足そうに舐めていく一刀。

 それを見ていた美羽は自分の指を瓶の中に入れて蜂蜜をつけて一刀の口の中に入れていく。

 

「どうじゃ?」

 

 不安が入り混じっている美羽の声。

 だがそんな彼女の不安を吹き飛ばすほどの一刀の笑顔が広がっていった。

 

「美味いよ。美羽が舐めさせてくれた蜂蜜は一番だよ」

「一刀……」

「あ、そうだ。もっと美味しく感じる方法があったな」

 

 そう言って蜂蜜を口に含んでそのまま美羽の唇に自分の唇を重ねてゆっくりと口移しをしていく。

 美羽は驚きを隠せなかったが、流れ込んでくる蜂蜜を呑んでいく。

 全てを移して唇を離していくと、美羽は顔を紅くして一刀の方を見た。

 

「どうだ?」

 

 少し照れくさそうに言う一刀に美羽は黙って蜂蜜を自分の口の中に入れて、両手で彼の頬を捕まえて同じように口付けをした。

 流し込んでいく蜂蜜と美羽の温もりを感じる一刀は彼女を抱き寄せていく。

 口移しが終わると美羽は唇を離した。

 

「一刀と舐める蜂蜜は七乃と舐める蜂蜜と同じぐらい美味じゃ」

「あら、七乃さんと同じか」

「当然じゃ。じゃが光栄に思うが良いぞ。妾がそれだけ一刀が大好きじゃということじゃ」

「俺も大好きだよ、美羽」

 

 二人はそう言って笑いあうと妙な視線を感じ始めた。

 それを辿っていくと羨ましそうに七乃が指を銜えて二人の熱々ぶりを眺めていた。

 

「な、七乃さん!?」

「どうしたのじゃ、七乃?」

「二人とも私をそっちのけだから寂しいですよ」

 

 肩が見えるサンタクロース姿の七乃は不満げに美羽を後ろから抱きしめた。

「私も混ぜてください」

「ち、ちょっと七乃さん!」

「く、苦しいのじゃ」

「知りません♪」

 

 美羽だけを抱きしめていたのであれば一刀が退けば問題なかったが、どういうわけか七乃の手はしっかりと一刀の腕を掴んでいた。

 

「一刀さん、私にもお嬢様と同じことをしてくれますか?」

「は?」

「だって、私もお嬢様と同じで一刀さんのお嫁さんですよ?」

 

 つまり美羽と同じことをしてくれないと満足できないといっているようなものだった。

 何事においてもお嬢様一番の七乃がそのような事を言うのは、酒の匂いがしてきたことで納得できた。

 

「七乃さん、もしかして酔ってる?」

 

 周りを見ると、雪蓮と祭が嬉しそうにしていた。

 

「もう~私は酔っていませんよ~。ただ一刀さんとお嬢様が仲良くしているのが見えたので私も混ぜてほしいだけです」

 

 顔を紅くしている七乃はそのまま一刀達に口付けをしていく。

 しかもいつの間にか口元には蜂蜜がついていた。

 二人は蜂蜜を口移しされ、一刀はそれだけではなく七乃の舌の感触まで感じていた。

 

「どうですか~~~~~」

「な、七乃さん……」

「な、七乃……」

 

 さすがの美羽も驚きを隠せないでいた。

 それに対して七乃はさらに二人に密着していく。

 

「一刀さん~、お嬢様~、私もここにいてもいいのですよね?」

「当たり前じゃないか」

「七乃は妾の傍にいて当たり前じゃ」

「えへへっ、嬉しいです♪」

 

 どれだけ呑まされたのか七乃がこれほど酔っぱらうのは珍しいことだった。

 それでも一刀と美羽の顔を自分の顔を近づけてこう言ってきた。

 

「一刀さん、お嬢様、ずっとこれからも一緒ですよ」

「もちろんだ」

「当然じゃ」

「お二人に出会えて私は嬉しいです」

 

 美羽に出会う前の七乃を二人は知らない。

 だが、今の七乃には二人が、たくさんの大切な人達がいる。

 

「お嬢様」

「なんじゃ?」

「また美味しい蜂蜜を作りましょうね」

「当然じゃ。妾と七乃がそろえば最高級の蜂蜜など簡単にできてしまうのじゃ」

 

 どんな事があっても決して離れる事のなかった二人はこれからも変わることはないだろうと一刀は思った。

 そしてそんな彼女達を娶れたことが嬉しかった。

 

「美羽、七乃さん」

「なんじゃ?」

「はい?」

「二人ともこれからもよろしくな」

 

 そう言って二人に口付けをしていく。

 もちろん美羽も七乃も自然と一刀を受け入れた。

 

「お嬢様と一緒にこれからもよろしくお願いします」

「こちらこそ」

 

 三人は笑顔で残っていた蜂蜜を仲良く舐めていった。

 それから美羽はクリスマスパーティーをさらに盛り上げるため娘達と一緒に歌を歌い始め、それに合わせるように七乃も二胡を奏でた。

 その様子を椅子に座って聞いていた一刀のところに悠里が酒を持ってやってきた。

 悠里のサンタクロース姿は大人びた魅力を感じさせており、素肌を晒している肩が色っぽく一刀には写った。

 

「楽しんでいますか、一刀くん」

「もちろん。悠里も楽しんでいる?」

「はい。これほど楽しいものだとは思わず、つい呑み過ぎてしまいました」

 

 その割には表情には出ていない悠里だが、椅子に座る一刀の隣に膝をついてそっと手を重ねていく。

 

「悠里?」

「一刀くんは本当に不思議な方ですね」

「不思議?どうして?」

「天の御遣いという名だけの人物かと思いましたが、何事にも立ち向かい私達が望んでいたものを手に入れてくれました」

 

 悠里は目の前で楽しそうに歌を歌っている愛娘の姿を目を細めて温かく見守っていた。

 

「でも俺は何もできなかった。今の平和を勝ち得たのも皆がいてくれたからだよ」

「そんなことはありません。あなたがいてくれたからこそ私達はこうしていられるのです」

 

 そして愛してくれ子を宿しもした。

 これ以上の幸福などないと悠里はその身に感じていた。

 

「悠里」

「はい」

「俺は悠里に初めて出会ったときからいいなあって思っていたんだ」

「それはいけませんね。あの頃は雪蓮様だけでしたのに」

「もし悠里に一番初めに会っていたらこんな風になっていたかな?」

「どうでしょう。私はそのような仮定よりも今という現実の方が大切ですよ」

 

 悠里にとってこれほど幸せな日々はないと思っていた。

 

「一刀くん」

「なに?」

 

 振り向くと同時に悠里が下から一刀の顔に近づいていき唇を重ねていった。

 そっと触れるだけの口付けだが、悠里は頬を紅く染めていた。

 

「悠里?」

「私を娶っていただきありがとうございます。あなたに抱かれている時の自分がもしかしたら本当の自分なのかもしれないと思ってしまうことがあるのです」

 

 冷静沈着で何事にも簡単には動じない悠里でも一刀と過ごす閨では全く違っていた。

 それだけに身も心も一刀に捧げていたという証だった。

 

「一刀くん、これからも私とあの子をよろしくお願いいたします」

「こちらこそよろしく。悠里、できればそのくんを取ってくれると嬉しいんだけどダメかな?」

「それはダメですよ」

 

 あっさりと否定された一刀は苦笑いを浮かべた。

 と、そこへ京ろ真雪がやって来た。

 

「旦那、悠里ちゃん」

「かずさま、悠里ちゃん」

 

 二人とも多少の酒が入っているのか顔が紅かった。

 京は胸の辺りが少し窮屈そうだったが真雪はまるで子供サンタのように見えた。

 対照的な二人だが、一刀にとっては愛妻に変わりなかった。

 

「旦那ももっと呑まないとダメだよ」

「そうでしゅ。かずさまの案なのでしゅから」

「二人とも酔ってる?」

「「酔ってないよ(でしゅ)!」」

 

 それが酔っているのだとあえて口にしなかった一刀。

 真雪は前から京は悠里の反対側に座って一刀を見上げていた。

 

「旦那」

「どうした?」

「オイラ達、こんなに幸せでいいのかな?」

「なんだよ、急に」

 

 消えることのない傷だらけの京は自分なんか娶られるとは思いもしていなかった。

 それだけに真雪と一緒に娶られる時、思わず涙を流した。

 

「旦那はオイラの傷を見ても哀れだと思わなかったのはどうして?」

「それをつけたのは俺の身勝手さだよ。申し訳ない気持ちがあっても哀れだなんて思ったら京に失礼だろう?」

 

 傷ついていようがいまいが、一刀にとって京は大切な人に違いなかった。

 それは真雪にも言えることだった。

 過去、何があろうとも今というこの時には何も枷になるものはなかった。

 

「俺は外見や過去を知ったからってお嫁さんになって欲しいって言ったわけじゃない。心から京や真雪、それに悠里が好きだからだよ」

 

 その想いは何年、何十年過ぎようとも変わることのない愛そのものだった。

 三人は一刀が語る言葉を一言一言、自分の心に刻み込んでいく。

 

(私達は良き人に出会えましたね)

(オイラを好きだって言ってくれる旦那が好きだよ)

(かずさま、大好きでしゅ)

 

 三人の想いは同じだった。

 

「旦那」

「うん?」

「これからもオイラ達は旦那と一緒に歩いていっていいんだよね?」

「当たり前だ。というか、いてくれないと困る」

 

 誰一人欠けることなくこれからも進んでいく。

 死が彼らを裂こうともその想いまでは引き裂く事はありえない事だった。

 

「悠里、京、真雪」

「「「はい(でしゅ)」」」

「大好きだよ」

 

 彼女達一人一人に口付けをしていく。

 何度しても飽きることのない口付けを一刀はしていくが、それは悠里達も同じ事だった。

 愛する人から触れられるだけでも胸の鼓動が早くなっていく。

 心地よさが広がっていく。

 

「私も」

「これからも」

「ずっと」

「「「大好きです(でしゅ)」」」

 

 三人は声を合わせて愛の告白をして自分達から口付けをしていく。

 柔らかく温かな感触。

 笑顔になっていく四人。

 

「さあ、まだまだこれからだから盛り上がっていこう」

「その意気だよ」

 

 夜はまだ長い。

 もっと彼女達と楽しく騒ぎたい気持ちが湧き上がっていった。

 

「それじゃあ、旦那。呑み比べしようよ」

「いいぜ。やろうやろう」

「真雪さんも行きますか?」

「はいでしゅ!」

 

 四人は立ち上がってまだ残っている料理を摘みながら酒を呑んでいく。

 そして仮設の舞台で歌う美羽達の声を楽しく聞いていった。

 雪蓮達も楽しそうに酒を呑み、料理を摘んでいる姿を一刀は見ながら酒を何杯も呑んでは悠里達にも注いでいった。

 程よく酔いがまわった一刀が一息ついていると、蓮華と尚華がやって来た。

 お腹を大きくしている蓮華を気遣う尚華の姿を見て一刀は良い子に育ったなあと思った。

 

「なんだかこういうのもいいわね」

「だろう。でもあまり騒ぎすぎてお腹の子が驚かないかな」

「大丈夫よ。一刀と私の子よ。これぐらいで驚いたりなんかしないわよ」

 

 蓮華のお腹に手を当てながら一刀は尚華を近くに呼んだ。

 そして彼女の手を母親のお腹の上に当てさせた。

 

「ここに尚華の妹か弟がいるんだぞ」

「早く会いたいです」

「そう慌てなくてもいいわよ。もうすぐだから」

 

 親子の会話は穏やかなものだった。

 蓮華としてはまた一刀の子を宿せた喜びがあり、尚華は同じ母親の妹か弟が出来ると思い嬉しかった。

 それは決して今の状況に不満があるわけでもなかった。

 

「尚華がまたお姉ちゃんになるな」

「は、はい」

「きっと皆とも仲良くなれるはずよ」

 

 これまでもこれからも何も変わることのない幸せな毎日がある。

 尚華が王になっても平和な世の中が続いていくことであろうと一刀と蓮華は思った。

 

「それよりも尚華」

「はい」

「私の代理とはいえよく国を治めているわね」

「いえ、氷蓮姉上様や彩琳姉上様、それに父上様達がいてくださるからです。私一人では何も出来ません」

 

 一刀達が支えてくれているからこそ王の代理を務めることができると尚華は思うと同時にもっと立派な王になるためには勉強をしなければならないと思った。

 

「尚華」

「はい」

「尚華はいい王様になるよ。俺が保障する」

「父上様?」

「今は確かに蓮華に及ばない。でも、尚華には蓮華のないものがある。だからそれを自分で見つけることが出来ればもっと成長できる。だから頑張れ」

 

 今は小さな力でもやがて大きくなっていく。

 それを温かく見守ることが出来るのも親の勤めだった。

 

「大丈夫。俺と蓮華の娘だ。どんな困難があってもみんながお前を支えてくれる」

「父上様」

 

 一刀の手が尚華の手を覆っていく。

 それは心強い温もりと優しさが含まれていた。

 

「私、頑張ります」

「ああ。でも辛くなったらいつでも言うんだ。そうしたら俺達が背中を押してあげる」

「そうよ。貴女には私達全員がついているわ」

 

 決して一人ではない。

 尚華を支えてくれる者は多くいる。

 

「それじゃあせっかくのクリスマスだ。もっと楽しもう」

「そうね」

「はい」

 

 一刀はふと蓮華の方を見てそっと口付けをした。

 

「一刀……?」

「大好きだよ」

「私も大好きよ」

 

 蓮華はもう一度一刀と口付けを交わして、『四人』で賑やかな中に戻っていった。

 しっかりと一刀と尚華の手を握った蓮華の表情はとても穏やかだった。

「パパ~~~~~あ~~~~~ん♪」

 料理が恋達食糧部隊によってほぼ壊滅した頃合を見計らって人数分ほどのケーキが運ばれてきた。

 限られた材料で最大限似たものを作ってくれた月や悠里達に感謝をしながら一刀達はクリスマスケーキを堪能した。

 その中でも氷蓮は積極的に一刀に密着していき、雪蓮や蓮華達から集中攻撃を受けた。

 彩琳も目立たないように一刀に近づいて「あ~ん」が出来るとそれはもう幸せで天に昇りそうな気持ちになり、それを見つけた氷蓮と楽からのいたずらの標的にされた。

 

「まったく子供っていうのは底なしだな」

 

 酔いもほど良く回っているため大人達はゆっくりと食べていくが、氷蓮達はまだまだ勢いが衰えていなかった。

 

「元気なことはいいじゃないか」

「そうね」

 

 子供達が笑顔でいることは何よりも嬉しかった。

 笑顔が溢れ笑い声が聞こえる。

 

「彩琳ったらパパにあ~~~~~んしてもう」

「あ、姉上もしていたではないですか!」

「でも彩琳ねぇちゃんの顔の方が面白かったよ」

「ら、楽!?」

 

 とくに氷蓮達を見ていると自分達以上に元気が有り余っているように思えた。

 彼女達が自分達の跡を次いでこの呉を持ちたてていくと思うと心強かった。

 

「俺達の想いが受け継がれていくといいな」

「そんなの受け継がれるわよ」

「そうですよ。旦那様と私達の想いはあの子達にしっかりと受け継がれていますよ」

 

 父親の優しさとそれぞれ個性のある母親達の血を受け継いでいる愛娘達ならばもっと良き国を作っていくことがでいる。

 天下百年の計。

 それもまんざら嘘ではないかもしれなかった。

 

「そうだな。俺達の娘達だもんな」

 

 そう言いながら蓮達を眺めていると、突然何かが一刀の顔面に直撃した。

 

「あ!」

「ち、父上大丈夫ですか!」

 

 慌てる娘達の声。

 そう、一刀の顔面に当たったのはケーキだった。

 

「ほ、ほら彩琳、謝りなさいよ」

「なぜ私なのですか!投げたのは姉上ですよ」

 

 一刀はゆっくりとケーキを取ってくとそこには笑顔があった。

 ただしクリームまみれだった。

 

「氷蓮~♪彩琳~♪」

 

 嬉しそうに愛娘達の真名を呼ぶ。

 だが何かを察したのか二人は怯え始めた。

 

「食べ物は粗末にしないっていつも言っていたよな?」

「えっと…………」

「は、は、は、は、は、は…………」

「大丈夫、ちょっとお仕置きをするだけだからそんなに怖がらなくていいよ」

「「ご、ごめんなさい!」」

 

 逃げ出す二人に楽が巻き込まれ、それを見て鬼ごっこかと思ったのか他の妹達が跡を追う。

 

「待て~~~~~~!」

 

 一刀はクリームをとらずに氷蓮達を追いかけていった。

 

「どっちが子供かわからないわね」

「それが旦那様のいいとろこかもしれないわ」

 

 雪蓮と冥琳は半分呆れつつもどこか楽しそうに追いかけている一刀を見て微笑んだ。

 それから時は流れていよいよプレゼント交換をするときがやってきた。

 全員が一品ずつ用意をして机の上に並べていく。

 そして事前に用意したくじ引きを一刀が持ってきて一人ずつ引き当てていった。

 

「これ凄く欲しかったんです♪」

 

 歓声が起こるところもあれば、

 

「何よ、これ八百一本って誰よ!」

 

 と嘆く者と多種多彩だった。

 そんな中で一刀のプレゼントを引き当てたのは以外にも雪蓮ではなく楽な姿勢で椅子に座っている蓮華だった。

 

「これは?」

「ああ、それは首飾りだよ」

 

 花を象った首飾りに蓮華は心から喜んだ。

 

「ありがとう、一刀」

「な~んだ、蓮華が当てちゃったのね」

 

 残念そうに言う雪蓮だが、蓮華の嬉しそうな表情を見ていてそれ以上の愚痴は言わなかった。

 

「それとこれは皆に」

 

 そう言って一刀は少し大きめな箱を机の上に置いて蓋を開けた。

 中から手のひらサイズの木箱を取り出して並べていく。

 

「これは俺個人から皆へのクリスマスプレゼントだよ」

「何が入っているの?」

「それは後で確認をしてくれ。今ここで開けられると恥ずかしいから」

 

 頭を掻きながら答える一刀は照れていた。

 大切な彼女達のためにこっそり溜め込んでいたお金を一気に放出して買った品物であった。

 

「それじゃあこれは私達からよ」

 

 雪蓮はそう言って思春に包みを持ってこさせた。

 それを受け取った一刀が包みを開けていくとそこに羽扇があった。

 

「これは?」

「何がいいか色々悩んだけど、今の一刀にならそれを持つ資格があるとおもったの」

 

 かつて冥琳が大都督の時に使用していた羽扇。

 それを送られるという事はようやく彼女達から真の大都督であることを認められたようなものだった。

 

「本当はもっと早く渡したかったんだけど、なかなかそういう機会がなかったから」

 

 だからこのクリスマスパーティーを利用しようと雪蓮達は思った。

 同時に自分達の想いがそこに込められた。

 

「一刀、今までもこれからも私達を愛してくれる?」

 

 雪蓮達の視線が一人の男に集まっていく。

 北郷一刀をいう人物と接点を持つ者ばかりがそこにいる。

 彼女達の望む答えは一刀の中にはずっとあった。

 

「もちろんだよ。これからもずっと雪蓮達を愛する事をここに改めて誓うよ」

 

 羽扇を握って彼女達の心配りに感謝の意を示した。

 

「ありがとう。雪蓮、冥琳、蓮華、そして皆」

「どういたしまして♪」

 

 笑顔で彼女達の愛する男を見る。

 

「これからもよろしくね、旦那様♪」

「こちらこそよろしく、みんな」

 

 こうして北郷家の初めてのクリスマスパーティーは終わった。

 寝静まった深夜。

 一刀は愛娘達にクリスマスプレゼントをそっと寝台に置いていった。

 どの表情も幸せに満ちていただけに、一刀は嬉しくなりそっと頬に口付けをしていった。

 全員のを配り終わると、一人庭に出て夜空を見上げた。

 

「お疲れ様」

 

 そこへ雪蓮がミニスカのサンタクロース姿でやって来た。

 二人は庭のベンチに身体を寄せ合うように座った。

 

「なんだかあっという間だったな」

「そうね。でもみんな、楽しんでいたじゃない」

「そうだな」

 

 一刀は雪蓮の方へ身体を密着させていく。

 

「ねぇ一刀」

「うん?」

「まだ私からのくりすますぷれぜんとあげてなかったわね」

「さっきのは?」

「あれは皆で考えたものよ。これは私だけよ」

 

 雪蓮は一刀の唇に自分の唇を重ねていく。

 息が出来なくなるほど唇を重ねあう。

 

「うぷっ……しぇれん?」

 

 唇を離しても一刀を抱きしめて離さない雪蓮。

 

「ねぇもっと私に一刀を感じさせて」

「雪蓮……」

 

 彼女の想いに応えるように一刀は口付けを交わしていく。

 深く深く、離れる事のないようにどこまでも深く繋がっていきたい。

 そんな想いが二人を溶かしていく。

 

「一刀」

「雪蓮」

「気に入ってくれた?」

「ああ。雪蓮らしくてよかったよ」

 

 二人は冬の寒さから身を守るかのようにお互いを抱きしめあう。

 サンタクロースが二人。

 夜空の下でお互いの温もりを感じる喜び。

 

「来年もしたいわね」

「そうだな」

「この衣装も凄くいいわね。一刀を悩殺できるし♪」

「十分に堪能できたさ」

「あ、やっぱり?」

 

 嬉しそうに言う雪蓮。

 二人は夜空を見上げるとそこには幾億の星々が輝いていた。

 

「一刀、ずっと愛しているわ」

「俺もだよ」

「きちんと言葉にしてよ」

「愛しているよ、雪蓮」

 

 その言葉には二重の意味が含まれていたわけではない。

 ただ雪蓮が誰よりも愛しく思えた。

 

「私はどんなことがあっても北郷一刀を愛し続けるから」

「俺もどんなことがあっても北郷雪蓮を愛し続けるよ」

 

 何度も交わされた約束。

 その度に強くなっていく二人の想い。

 それが今の夢のような日々の中に確かに生きていた。

 月夜の美しいクリスマスの夜。

 北郷一刀と北郷雪蓮は喜びや幸せを分かち合い、この夜のことを終生忘れることはなかった。

 翌朝。

 氷蓮達は枕元に置いてあったプレゼントを見つけ、先に貰った木箱と一緒に中身を見て誰もが喜んだことは言うまでもなかった。

(座談)

 

水無月:え~今日はキリストの聖誕祭です。

 

雪蓮 :あら確か更新は昨日だったわよね?

 

水無月:イブに奇跡が…………起きなかった!

 

雪蓮 :あとでお仕置きね♪

 

水無月:ヒィィィィィィィィィィィィィ!?

 

雪蓮 :まぁ今回は特別にたっぷりとその根性を叩きなおしてあげるから覚悟しておきなさいね♪

 

水無月:そ、その前に読んでくださっている皆様にお知らせが!

 

雪蓮 :そうだったわね。

 

水無月:え~、いつもこのシリーズを読んでいただいてありがとうございます。ここまでやってこれたのも皆様のおかげです。が、始まりあれば終わりありと申しますか、今回で番外編とこの座談が終了ということになります。

 

雪蓮 :そうなの?

 

水無月:はい。ということは次回はどうなるかというといよいよこのシリーズ完結編です。ちなみに四個から六個連続投下になりますので三十一日に更新いたします。これで最後です。

 

雪蓮 :そっか~。もうここでのおしゃべりもなくなるのね。

 

水無月:今まで何だかんだとやってきましたが今回で終わりです。今までお付き合いしていただきありがとうございます。

 

雪蓮 :まぁいつかは終わりを迎えるもの。今までありがとうね♪

 

水無月:というわけで次回最後の更新となります。皆様、最後までお付き合いのほどよろしくお願いいたします。

 

雪蓮 :またどこかで会いましょう♪

 

水無月:それでは皆様にメリークリスマス!

(お知らせ)

 

いつも『江東の花嫁』シリーズを読んでいただきまことにありがとうございます。

座談でも申し上げましたが今回で番外編と座談を終了させていただきます。

長らくお付き合いをしていただき心から感謝いたします。

 

いよいよこのシリーズも次回の更新で最後です。

皆様に満足していただけるように今最終チェックをしていますのでもうしばらくお待ちください。

 

最後になりましたが、最後までお付き合いをしていただければこれほど嬉しいものはありません。

皆様の記憶の片隅の片隅にあればこれ以上の嬉しいものはありません。

 

それでは次回最終回もよろしくお願いいたします。

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
129
25

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択