No.1103183

いきて戻らぬ者へのバラッド7

さん

2022-09-25 14:12:17 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:171   閲覧ユーザー数:171

 

 

多くの文献を読みこんで、砂漠の女王は思案顔。

聖なる姫巫女はどうしたものかと首かしぐ。

リトの英傑は美声なれど、これだけのバラッドはなせぬ。

ゴロンの英傑は孤独なる悪人の心を解することあたわず。

 

やさしきゾーラの姫君は、あわれとおもえど口つぐみ

勇猛なる近衛の騎士は主君の一声を待ち続ける。

 

口開きたるは砂漠の女王。

ゼルダに筆もて記録せよという。

我が夫は詩人であった。

彼には到底及ばぬが

わらわも真似事してみんとて

ここに歌いいだすものなりき、と。

 

ゼルダ姫はよろこびて

砂漠の女王がつむぐ歌

聞き洩らさぬよう書きつける。

 

 

夕日の色を背に受けて

盗賊王はもゆる髪をなびかす

 

命をうばわれしハラカラの

無念はらさんとて参るなり

 

一国の、礎築かん

民くさの、希望に答えん

 

若きおのこは幼き時から

厳しく鍛えられてきた

 

剣もたされれば空を舞い

槍持てば一騎当千

魔術は二人の[[rb:乳母 > めのと]]から

じきじきに手習いす

 

これだけの

技量もてばもう十分

老いたる[[rb:乳母 > めのと]]はうち笑みて

若きガノンを送り出す

 

緑の風吹くハイラルに

恋こがれるは盗賊王

美しき便りをおくらんと

筆をとりて立ちすくむ

 

彼の母たる[[rb:乳母 > めのと]]らは

あいすまない、事切れ申した

駆け寄る使者は息もたえだえ

ガノンドロフに申しあぐ

 

盗賊王は使者をさげつつも

その心に疑念をいだく

 

たれぞ、たれぞ

我が[[rb:乳母 > めのと]]の命を奪いしは

さては王家の者か

裏切り者か

 

あわれ、ガノンの心は

幼き時から[[rb:乳母 > めのと]]らのもとにあり

手柄をたてればほめるめのとの

笑顔見たさが真意なり

 

ガノンは狂えり

すべてを疑い追い落としけり

恋い焦がれたハイラルの

大地に寝そべる午睡のときも

彼の心をなぐさむものは

とわに果てにとびさりしという

 

あわれ、ガノンよ

その身こそ偉丈夫そのもの

しかしその心はまるでわらべの泣くごとく

 

あわれガノンよ

立身出世を夢見るまでに

その心が健やかに育まれておればよ、と

 

疑心暗鬼のガノンドロフ

異形の者としたしく交わり

闇の一族とちぎりたもう

 

城下のものには恐れのくびき

国王たちには甘い顔

まこと恐ろしき男になりけり

 

さて、その悪事はそうつづかぬもので

時の勇者が仮面をはぎとる

 

まことの顔は欲ぶかい

その姿はいのししかハテは豚か

牙もて、爪もて、魔物をしたがえ

多くの民くさ殺したと

 

勇敢なるものと

姫巫女を追い落とさんとて

知略と謀略の網をはるが

 

己のみを信ずるガノン

計略にかけられ封印された

 

時には戦いのなかで命おとし

輪廻転生して生まれ変わるも

そのからだことごとく悲鳴をあげる

 

ハイラルの創造神は罪作り

あんな未熟な男のからだに

なぜ力の聖三角をさずけたか

 

知恵と勇気と力の因縁

とわに三者をつなぎとめる

 

大地にありし聖なる図形は

まさに呪いともいうべきもの

 

この三者はみつどもえのごとく

とわに互いを追いかける

 

あわれガノン

身の丈あわぬ力を受けて

生かさぬよう殺さぬよう

城の地下に繋がれた

 

封印とて手足をきられ

各地に埋められ行方はしれぬ

代わりの手足はなんと醜かろ

機械の脚、武器の脚

 

せめて少しの慈悲あれば

魔王は誇りたかくあれたのに

 

ガノンの心が健やかなれば

英雄譚にかたられたろに

 

ゲルドは彼を恨みながらも

けして忘れることはできぬ

ゲルドの女の腹から出でて

異国の地下に封じられし魔王

 

産まれたばかりのみどりごを

その手に抱くたび思い出す

野心いだいて出立し

骸すらも帰らぬ王を

 

我が子がめのこならば

紅教えてかわいがり

 

我が子がおのこならば

支度を授けて送り出す

 

ガノンはゲルドのすべてをかえ

彼らに呪いを授けしものなり

 

ガノンは悪なりき

ガノンは己の鏡なり

 

しかし

 

ガノンを非難することなかれ

人の心には

かならず獣の心が巣くう

 

用心せよ

飼い慣らせぬ獣はいともたやすく

ぬしを魔王の座へとくくりつける

 

魔王と戦うものは用心せよ

悪なるものは己の心のうちにあり

常に片隅にひそむなり

 

砂漠の女王は語り終え

傍らの水をあおりける

 

さてさてこれだけの長い歌

誰が石碑に刻みましょうか

 

それなら私、ゾーラの民

お任せあれとミファー言う

 

我らであれば

みごとな石碑を作って見せると

 

ではその石碑をだれが運ぶか

それなら俺だ、力自慢のゴロン族

石碑の1つ、なんのその

 

丁寧にはこぶのなんざ当たり前

大役われらにおおせつけい

 

リズムをつけるの誰がやる

僕僕、僕しかおらぬだろう

 

リトが生んだ第一の戦士にして

たぐいまれなる音楽家たるこの僕が

素晴らしき節をつけてさしあげよ

 

ではではいったいだれが

そこのおひい様の隣について

もろもろのお願いに行くか

 

それなら俺がまいります、

とリンクはいう。

 

各部族の窮地を救い

厄災討伐を成し遂げたこの俺こそ

 

ハイラル王国既にほろびぬ

青の御旗は燃え落ちぬ

しかし俺の心には

永久に御旗がひるがえる

 

いざまいりましょう我が主君

 

リンクは姫の手を取って

仕事をなさんと出立す

 

 
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