2021年9月完成

20年ほど前私が模型を始めた当時、まだ田舎の中学生だったこともあり都市部の人に比べて模型環境―有り体に言えばレアキットやレア素材を扱う模型店―に恵まれておらず模型誌等で時折紹介されるガレージキット（特にエヴァ）や海外製のキットにお目にかかかることはなかなかありませんでした
ガレージキットはまたそのうち話すとして、海外製のキットと言ってもエアフィックス、ドラゴン、イタレリは地元の模型店にそれなりにあったものの（今から思えば恵まれてる方かも）、当時輸入が始まっていた東欧を中心とする新興メーカーの戦車や航空機の簡易インジェクションキットはなかなか見ることができませんでした
模型誌曰く大手メーカーがキット化しないマニアックな機種選択とスキルを要する内容、そして国産の同規模のキットの二倍の価格とそのハードルの高さは蠱惑的に過ぎました

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またモデルグラフィックスの飛行機の簡イキットの製作レビューをする連載『鹿目晃一郎のこのキットの完成品が見たいんじゃ！』にて氏の軽妙な語り口とどこか温かみのある作風もまた簡イキットの魅力を高めました
その後大学進学に伴い上京し、なにせ秋葉原に自転車で行ける距離に住んだこともあり当然模型を買いに通うのですが、その時選んだのは国産の新品だけではなく、昔（と言っても数年前。今からしたら大したことない）模型誌を飾った簡イットたちで、それらは今も私の在庫の中核をなしています

そんなわけで上京後に通ったイエサブやレオナルド、ジャーマンホビードラ（最近閉店したみたいですね）と言った専門店で入手がかなったものの、その多くは消え入りそうなモールド、ダルダルの細部、ヒートプレスのキャノピー、合わない部品、と相応にスキルを要求する内容で「これが模型誌で散々指摘されてた内容か！」と感慨にふけりつつ、自分のスキルでは手に余ると感じ在庫として未来の自分に託しました

この1992年に発売されたフォッカーD.23もその中の一つで、
・ランナーに囲われず、枝に葡萄状にくっついたパーツ
・もちろんフィッティングなんて期待もできない
・消えかけているというかそもそもヘロヘロなモールド（このメーカーはゴム型を使っているそうで原型から直接型取りしたのか？）
・氷砂糖が如く分厚いキャノピー、しかもメタルパーツと同梱されていたので開封時に傷だらけ
・単色刷りの素朴なパッケージと組説。塗装はパッケージの裏を見ろという仕様
・ホワイトメタル製のプロペラと主脚（これは美点。どうもメーカーが薄かったり細いパーツの整形が難しいことを認識し金属製にした様子。本体のプラが分厚くて重いので脚が金属製なのは強度的に助かる）
・すでにパリパリになっているデカール
と、普通のインジェクションキットと遜色ない簡イキットが出回って久しい最近では見ない2000年代以前の簡イキットのフォーマットを今に伝えており、懐かしい気持ちになった方もいるのではないでしょうか
ちなみにこのキットの製作困難さは自明ですが、一番危険なのは表面上はすごく綺麗で簡単に作れそうに見えて実は全然部品が合わないという見えない地雷のようなキットで、こういうキットは最近でも結構あります

さてフォッカー自体新しい簡イキットで2009年にRSモデルから発売され、歴史的使命が完全に終了したキットであることは間違いないのですが、ある日「ちょっとガッツリ切ったり貼ったり工作するキット作りたいなー」と思って着手しました
購入当時から長じてスキルはさして変わっていないもの、マテリアルの進化によってスジボリの彫り直しのハードルが下がったり、速乾系流し込み接着剤やタミヤイージーサンディングのようなパテを代替する材料が出たことで製作能力は向上し、在庫の簡イキットのいくつかを完成させて自信をつけたこともあります
それで実際の工作は
・隙間埋めとモールドの彫り直しを徹底
・操縦席内部インテリア自作（シート後ろの燃料タンクとか。ここ被弾して火災になったらパイロットヤバそう…）
・分厚いプラ製の首脚収納庫ドア・主脚収納庫ドア（内側）をプラ板に置換、しかしなぜか主脚収納庫ドア（外側、主脚にくっついている方）は薄いメタル製だったのでそのまま
・キャノピーは研磨
・デカール自作。プロペラにメーカーのロゴが入ると精密感がアップ
・機銃・ピトー管を真鍮線・パイプに置換
となります
塗装はベースの茶色だけエアブラシで、ダークイエローと緑は筆塗り

そういうわけで工作をエンジョイ（真顔）しながら非常にユニークな串型エンジン配置の双発双胴戦闘機が完成しました
そのスタイルは私のコレクションの中でも異彩を放っています

おまけのスピットファイアF.24はこれまたペガサスの1/72
機種延長、主脚カバー自作、尾翼流用といろいろしましたが昔はインジェクションはこれしかなかったはず