No.108984

真・恋姫†無双 臥竜麟子鳳雛√ 3

未來さん

臥竜麟子鳳雛√の第3話です。
………え?いえ、臥竜麟子鳳雛√ですよ?
決して□リ√ではありませんったら。

………とにもかくにも、未熟な点しかありませんが、よろしくお願いいたします。

2009-11-26 06:34:58 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:30390   閲覧ユーザー数:21096

「ホント、かなり集まってくれたよなー」

 

自分の周囲には防具はまだままならないものの、確かな志を胸に集まった歩兵およそ700。

 

「まだまだ少数ではありますが、これだけの義勇兵を短期間で集めることが出来たのは、やはり一刀様の存在が大きいかと」

 

水鏡の下を出てから数ヶ所町や村などを回っただけにも関わらず集まった兵の数を思い、高評価を下す麒里。

 

「それだけみんな『天の御遣い』を望んでるってことだよな……」

「ご負担ですか、一刀様?」

 

顔を顰める一刀に朱里が問いかける。

 

「負担というか責任かな?気が引き締まるよ、これだけの命を預かってると思うと」

「で、でも、まだまだ小勢ですっ。これからもっと増やしていかなければ、為す術無く敗れ去ってしまうこともっ」

「そうだよなー。……俺1人じゃ背負えないかも知れないから、その時はよろしくな、雛里っ」

「は、はひっ!」

 

冗談めかして言う一刀に真剣な表情で返答する雛里。そんな彼女が微笑ましくて、思わず帽子越しに頭を撫でる。

 

「あわわわわわっ」

 

 

 

そんな光景を見て、むくれる少女が1人。

「私だってお支えしますのに…」

「もちろん、麒里のことも信頼してるよ」

 

 

 

さらに1人。

「むー」

「朱里だって信じてるって!」

 

普通ならそう言われて機嫌を直すものだが、今日はちょっと違うようで。

2人の視線は雛里の頭を撫でる一刀の手へ……。

 

「はいはい、頼りにしてます、軍師様」

 

ねだる視線に律儀に応える一刀。

 

「「♪」」

 

たまに繰り広げられるこのような光景が、義勇兵たちの笑いを誘う。上に立つ者が決して飾らない人間だからこそ、義勇兵たちも彼についていくのだ。

 

 

 

 

 

そうして歩を進めるうちに次の町が見えてきた。

 

「何か騒がしくないか?」

「そうですね……どなたか確かめてきてくれませんか?」

「はっ」

 

朱里の言葉に応じ、義勇兵3人が町の入り口へ向かった。

 

――――――――――――――――――――――――

 

「どうでしたか?」

「はっ。どうやら大規模な賊の出現に、県長が逃げ出したとのことで混乱が……」

 

義勇兵の報告に一刀たちは一様に顔を顰めた。

 

「県長が逃げ出したって、かなりまずくないか?」

「……その地を治める人間がいなくなっては、指揮系統は機能しません。このままでは……」

「略奪に曝されるってこと?」

 

雛里が提示する前提を基に、一刀が答えを推測する。

 

「はい……。もしくはそれ以上の……」

 

雛里の出す答えが、自分の予測しうる結末の中でも最悪のものと合致してしまったことから、早々に一刀の決意は固まった。

 

 

「……助力しよう」

「はいっ!」

 

一刀たちは町を救出すべく、進軍を開始した

 

 

 

 

入り口から離れた場所では、少女2人を中心に口論が繰り広げられていた。

 

 

「みんながやらないんだったら、ボクたちだけでやるよ!!」

「無理に決まってるだろ!さっさと逃げちまった方が良い!」

「そんな!この町を棄てるんですか?!」

「俺たちだけであんな数の賊にどう立ち向かえってんだ!?」

 

 

「どうしたんですか?」

 

人だかりの1人に一刀が話し掛ける。

 

「それが、町のみんなが逃げようって言ってんだけど、あの2人だけ賊に立ち向かうってんだよ。2人の力は町のみんなが認めてるけどよ……」

「2人だけなんていくら何でも無茶ですっ。わ、私たちが加勢しますっ!」

 

朱里の発言に男が疑問符を付ける。

 

「加勢?つか、あんたら何者だ?そこの男は変わった服着てるしよ」

「こ、こちらの方は北郷一刀様と言って、天の御遣い様なんですっ!」

「天の御遣い~?!」

 

男の人一倍大きな声に周囲が反応する。

 

「天の御遣いだって?誰が?」

「ほら、あの人じゃない?キラキラした服着た」

「ホントだー。あんな服みたことなーい」

 

 

 

「(……俺、この服脱いだらどう見られるんだろうな…)」

 

ちょっと悲しくなった御遣い様であった。

 

 

 

そんな時、初老の男性が1人、一刀の前に歩み出る。

 

「儂はここで長をさせてもらってるもんじゃ。……本当にあんたが天の御遣いなのかい?」

「……こればかりはみんなに信じてもらうしかありません。でも……」

「…………」

「手を伸ばして救える命があるなら、救いたいんです」

「……まだ若いのに言葉が重いのー……」

 

長老は思わずつぶやいた。言葉、表情、そして心。

今まで培った人生経験があるからこそはっきりと分かる、少年の決意。

年も大きく離れた少年の言葉に、長老も決意する。

 

 

 

「………季衣と流琉を呼んできてくれぬか?」

 

それを聞き、長老の近くにいた男は駆けだした。

 

 

 

 

現れたのは、先程まで口論の中心にいた2人の少女。

 

「何、長老様?長老様が何て言ったってボクたちっ」

「落ち着け、季衣」

「ぶー」

 

『季衣』と呼ばれる少女は、長老に言葉を遮られたことに口を尖らせる。

 

「えと、長老様。こちらの方は?」

「……こちらは天の御遣い様じゃ」

「え、ええええー!?この方が天の御使い様ですか?!」

 

一方『流琉』と呼ばれた少女は、一刀が天の御遣いであることに驚きあたふたしている。

 

「へー。この兄ちゃんが天の御遣いなんだー」

「ちょっと季衣!失礼だよ!」

「そんなこと言われてもさー……ってそんなこと言ってる場合じゃないよ!長老様っ、ボクと流琉はっ」

「守るぞ、儂らの町を」

「「へっ?」」

 

長老の言葉に、季衣と流琉は思わず拍子抜けする。

 

「ちょ、長老様?みんなは逃げようって…」

「……もちろん命が大事なのは当たり前じゃが、このまま逃げ続けても安寧は訪れんじゃろ。上の人間に頼るだけじゃなく、自分たちで守らにゃならん。

 それに……このような時に御遣い様が現れてくださったのは、天恵というものじゃ」

「………」

 

長老の言葉に、周囲の者は口を閉ざす。

 

「強制はせん。前線では戦えぬこんな老いぼれの言葉じゃ。……それでも……儂はこの村が好きなんじゃ。あんな賊共に奪われるなんぞ、悔しすぎて死んでも死にきれん」

「………」

 

長老の言葉に、町民は押し黙る。

 

 

 

しばし沈黙が場を支配した後、町民たちが動き出す。

 

「俺、家から武器になりそうなもん取ってくるわ」

「農具あたりでいいんじゃないか?鎌とか鍬とかよ。」

「あたしたちは怪我人が出た時の手当の準備でもしようかね」

「子供たちは私たちと一緒に準備を手伝ってー」

 

町民がそれぞれの役割を全うするために持ち場に散る。

 

「あやつらもこの町が好きなんじゃよ、季衣、流琉」

 

 

「……うん!そうだよね!」

「絶対に守ります!!」

 

 

意気込む2人を優しく見守り、長老は一刀に向き直る。

 

「この2人はこの町でも群を抜いた武の持ち主じゃ。御遣い様の下で使っておくれ。

2人とも、自己紹介せぃ」

 

 

 

「うん!ボクは許緒!真名は季衣!よろしくね、御遣いの兄ちゃん!!」

「私は典韋って言いますっ!ま、真名は流琉です!よろしくお願いします、御遣い様!」

 

 

一刀は思う。許緒も典韋も、この辺りに住まう人物だったろうか…と。もっと東の地域に住んでいたような……。ただ、今はそれよりも気になることがある。

 

「いいの?俺に真名預けちゃって?」

「うん!兄ちゃんにならいいよ!」

「御遣い様はみんなの『勇気の象徴』ですから」

 

自分のことを『導き手』として認めてくれたということだろう。であれば……

 

 

「分かった。よろしくな、季衣、流琉」

 

 

あとは、前に進むのみ。

 

 

 

「それじゃ作戦立てようか。朱里、雛里、麒里。よろしく」

「はいっ!敵の規模がどの程度か分かる方いますかー?」

「えと、んと……こちらで戦える方はどれだけいますかー?」

「すみません、この辺りの地形を詳しく知りたいのですが…」

 

 

「……(3人の働きに比べて俺って……)

 え、えーと……よ、よし。季衣!流琉!俺たちは町のみんなの手伝いするぞ!」

「分かったよ、兄ちゃん!」

「はいっ、御遣い様!って、季衣!いつまでその呼び方で……!」

 

 

来たる敵に備え、町総出の準備が始まった。

 

 

 

 

「私たち義勇兵が700。この町で戦える方が500。そして相手が1500……」

「御遣い様たちが来てくれたってのに、まだそんなに差があんのかよ…!」

 

朱里の報告に町の若い男が悔しそうに言葉を漏らす。

 

「いえ、この規模での300は、みなさんが思っている程絶望的な差ではありません」

 

完全に軍師モードの雛里が見解を述べる。普段のおどおどした様子は見られない。

 

「ほとんどが元農民だった賊が、策を用いるとは思えません。おそらく獣のように猛進するだけでしょう」

「策だけでなく、こちらには季衣ちゃんと流琉ちゃんという強力な武もあります」

 

『賊』というものの本質を語る朱里と、間違いなく自分では敵わないと思える武を持ち合わせた2人を称える麒里。

すでに互いの真名は預けており、信頼関係を築いている。

 

 

3人の見解に表情を明るくする町民だが、3人はそれを戒める。

 

「で、でもっ、決して楽観視していいわけではないですっ!」

「賊の中に有能な軍師がいないとも限りませんっ」

「武将に関しても同じです」

 

町民の表情が曇る。

 

「それに……」

 

それまで黙っていた一刀が口を開く。

 

「今ここを賊から守るだけじゃなくて、その先。みんなが好きなこの町で、また幸せな生活が出来るようにするのが目的だからね」

 

犠牲は覚悟している。それでも、1人でも多くの人に生き残ってほしい。またこの地で、みんなが笑顔を振りまけるように…。

 

「そのために、この戦いではより大きな戦果が求められると思う。この先も賊を牽制させるために……で、合ってるかな、みんな?」

「はい。ご名答です、一刀様」

「はわわっ。先に言われちゃいましたー」

「やっぱりご主人様はすごいですっ…」

 

一刀の展望に純粋な驚き、感嘆する3人。

 

「3人には鍛えられてるからね。……でも詳しい作戦は俺には無理だから、そこはよろしくな」

 

そうして一刀は、みんなの緊張を解すようなとびきりの笑顔を見せた。

 

 

 

 

民兵軍と義勇軍を合わせた混成軍は、部隊を大きく3つに分けている。流琉と雛里を中心とした部隊は町の正面に構え、季衣と麒里を中心とした部隊は町の近くにある小さな丘の向こうで伏兵として備えている。一刀と朱里は指揮のため、正面に展開する部隊の後方に構える。

兵数はそれぞれ500、600そして100。賊に情報がどの程度あるか分からないが、少しでも油断を誘うために町正面に構える兵を少なめにしている。

伏兵が攻撃を始めるまで防衛戦となる町正面は、性格上季衣より流琉が向いてると判断。その一方で伏兵として待つことになる季衣を抑えるために、軍師として麒里が配置された。

 

 

 

 

兵の配置を終えた混成軍。ここで視点は、迎撃部隊の後方にいる一刀と朱里に移る。

 

 

 

「いよいよだな……」

「初の実践ですっ。……緊張なさいますか?」

「緊張と言うより苦しい…かな?敵にしろ味方にしろ、沢山の人が……」

「……大丈夫です。例え周囲がどう思おうと、私たちは一刀様をお支えします」

 

朱里の目を見ていると、自然と胸の奥の靄が晴れるように感じる。

 

「……ありがとな」

 

自分を勇気づけてくれる小さな少女に感謝して、頭を撫でる。

 

「……えへへ♪」

「よしっ。いくぞ、朱里!」

「はいっ!各自迎撃態勢を整えてください!!」

 

 

 

 

 

 

 

「怪我をした人たちは下がって!私たちがなんとかするから!」

「奇襲部隊が攻撃に移りました!動揺が広がってる間に、私たちも反撃に移ります!」

「お前らみたいなヤツがボクに敵うなんて思うなよー!!」

「必ず2人1組で対応してください!助け合うことをみなさんの力としてください!」

 

 

「うぉぉぉぉおおおぉぉ!!」

「死ねぇぇええぇぇ!」

「こんなとこで死ねっかぁぁぁぁああぁぁ!!」

 

 

目を血走らせ、怒声を轟かせながら、武器を振り下ろす。そこに残るのは紅く染みる血と、横たわる躯。

初めて目の当たりにする惨劇に、一刀は一切声音を漏らさず見つめる。強く握りしめたせいか、拳からは血が零れる。

 

 

 

そんな一刀を、朱里は心配そうに見つめた。元々ただの一般人だった自分の主は、このような形での人の死を経験したことがないと言っていた。覚悟は出来ていたはずだが、それを実際に目の当たりにすることで、心が折れてしまうのではないか……と。だから……。

 

「………」

 

だから……朱里は一刀の拳に手を添える。自分のそれよりも数回り大きな拳に、小さな小さな手を。この優しき主に、少しでも力を…と。

 

 

 

「朱里」

「……はい」

 

 

 

「……絶対にみんなを幸せに出来る世界にしよう。悲しむ人が1人でも少なくなるように」

「っ…はい!もちろんです!

本隊も出ます!この戦いを終わりにさせましょう!!」

 

 

 

戦いは終結へ。ここに、北郷一刀初の実戦が終わろうとしていた。

 

 

 

 

「すみませんでした」

 

 

 

戦いを終えた町民に対し、一刀が発した第一声は謝罪だった。

 

「俺たちが助力したにも関わらず、みんなにも…犠牲者が……」

 

戦いはほぼ圧勝と呼べるものだった。であるが、犠牲者がいなかったわけではない。

覚悟はできていた。

しかし、人の死に直面することはその覚悟すら揺らいでしまうくらいのインパクトがあった。

 

「……目を伏せないでくだされ、御遣い様」

 

長老の言葉に従い、一刀は視線を上げる。

 

「皆、ああなることを覚悟の上での戦いじゃった。誰も後悔などしとらんよ」

「いや、でもっ」

「……そうですな。どうしても謝罪をしたいと言うのなら……」

 

長老の目が微かに光る。

 

「御遣い様がこの町を治めてくれんかの?」

「え、ええええええ?!ちょ、ちょっとそれはっ」

「皆あなた様に信頼を寄せておる。それこそ今までの県長より……ですな。それに……」

 

長老は言葉を探し、躊躇いがちに言う。

 

「残された者の中には、心に傷が残った者もおるじゃろぅ。

 これからを生きる者に………『幸せ』を与えてやってほしいのじゃよ」

「っ!」

 

それは、自身が水鏡の前で誓った言葉と同じもの。

そう、嘆くだけではいけない。生きている者がいる限り、前を見続けていなければ……。

 

「朱里……雛里……麒里」

 

こういう時は3人の意見を仰べきだと考え、視線を向ける。

 

「わ、私はっ、いいと思いますっ」

「わわわ私たちの夢への、第一歩でしゅ!…あぅ……」

「この町から始めていきましょう、一刀様」

 

 

 

「ボクも兄ちゃんみたいな人が県長の方がいいなー。前みたいな情けないヤツじゃなくてさっ」

「わ、私もその、御遣い様に、この町を治めてほしいですっ……」

 

 

 

あちこちから声が上がる。一刀自身、自分は何もしていないとの意識は変わらない。が、町の人々からしてみたら自分たちを導いてくれた救世主。『ぜひこの方に』と願う。

 

 

 

 

「……そっか。それじゃ、これからよろしくお願いします」

 

 

 

雍州扶風郡のとある町。天の御遣いはこの地で、統治者としての大きな一歩を踏み出す。

 

 

 

 

世の中には、おでこを出してる子に「前髪下ろせば可愛いのに」と言う方がいるそうです。

もしこれをご覧になっている方で、「自分もそう思う」という方がいらっしゃったら……

まず『でこちゅー』をしてみてください。あれ、相当ハマると思います。

 

 

 

 

後書きという名の言い訳

 

 

――――更新頻度について――――

 

まず、更新が遅くなってしまったことを謝罪させてください。申し訳ありませんでした。

しかし正直作者にはこれが精一杯です。月に2話程度でしょうか……。他の作者様のような更新スピードは決して期待しないでください。

というかみなさん更新早すぎです。ホント尊敬してしまいます。

 

 

 

――――三國志について――――

 

前作のコメントで『三國志は読んだ方がいい』という意見を頂きました。アドバイスくださいまして、ありがとうございます。

しかし、正直時間がございません。・゚・(ノД`)・゚・。更新頻度がさらに遅れるも可能性ありますし……。

ですので当初の方針通り、恋姫で起こっている出来事をベースに……ということにしたいと思います。たまにそれ以外の出来事も混ぜていければとは考えていますが……。

アドバイスくださった方や、三國志要素が少ないと感じる方には大変申し訳ありませんが、何卒ご了承を……。

 

 

 

――――季衣と流琉の加入について――――

 

「単に作者が好きなだけなんだろ?」という皆様の声は決して否定いたしませんw

まぁ好きな娘を入れるのであったら、もう最初の時点で『全員集合!』してしまうわけですがw

許緒は徐州、典韋は兗州陳留郡出身とのことですが、まぁそこは外史ということで……。

 

 

 

 

それでは、今回も拙作をご覧下さってありがとうございました。また次回、よろしくお願い致します。

 

 

 


 
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