No.1074288

第三皇子と皇子直属学者

ぽっぽさん

好きになってしまったのでエルフリック皇子とロゼルタ部長でしたためた短文や140字ssをまとめました。

部長単独も含めたので、部長の出番が多め。

2021-10-10 21:32:10 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:330   閲覧ユーザー数:330

・部長ロゼルタは早く研究の続きがしたい …2p

 皇子に年一回の晩餐を用意されていた部長で140字ss。

 

・崩壊の兆し …3p

 もし呪いが長いこと解けずにいたら?というテーマで140字ss。

 フォロワーさんの呟きに触発されたものです。

 

・感情と好奇心 …4p

 皇子が部長を探るために2人きりの食事に誘った話、というテーマの短文。

 

・その一通から始まる …5p

 皇子が部長を取り立てる時、最初は文通していたのでは?というテーマで短文。

 ※シューラー家についての捏造があります。

 

 

 

『部長ロゼルタは早く研究の続きがしたい』

 

年に1度、用意される豪華な食事。今年もこの日が来たらしい。そうそう出合えないような晩餐にありつけるのは悪くない。

 

でも何故、年に1度必ずこの日はあるのだろう。

用意させた本人は特に何を言うわけでもない。

 

感謝こそはしているが、困ったことが一つある。

 

─豪華な食事は、時間がかかってしまう。

 

 

『崩壊の兆し』

 

代わり映えのない顔ぶれ。繰り返される日々。あれから何年たったのか、新大陸という場所はとうとう進展をなくしてしまった。

机の上に敷き詰めた写しの数々、そこに考察をいくら記して積んでも答えが出ないまま。

 

震える手でおもむろに紙を取ると、ロゼルタは衝動のままにそれを裂いた。

 

─もう、疲れた。

 

 

『感情と好奇心』

 

「キミを羨ましく思ったこともあるんだ」

 

突然始まった二人きりでの食事、いくらか進んでからそんな話題を出された。

「羨ましい、ですか」

「ああ」

テーブルの向こうの相手は、手にしたグラスを静かにまわしながら眺めていた。グラスに僅かに残ったワインの跡。そこよりも随分低いところで赤い水面が揺れる。

「キミは為せば為すほど周りが認めていくからな。それに比べて私は、そうするほど敵が増える。命を狙われるほどに·····」

「·····」

『第三皇子』の肩書きを持つ目の前の人物は聡明であると評判だったが、その分疎まれることが多かった。帝位継承。一国をかけた蹴落としあい。誰一人として譲るつもりのない席を奪いかねない存在とあれば、そうなるのも当然だった。

そこまでは事実だろう。ただ『羨ましい』というのもそうなのかは正直ロゼルタには判断しかねた。

立ち回り一つ間違えば命を落としかねない場所で生きてきた人物である。芝居の一つや二つは打てるだろう。

 

しかしそれを踏まえても、今彼がここで見せている表情は、そこにある感情は、なんと興味深いものだろうかと、ロゼルタは密かに思った。

 

 

『その一通から始まる』

 

両親がいなくなってからのロゼルタは自由だった。そんなものを学ぶ必要はないと本を取り上げられたり、次はこれを学べと気乗りのしない学問を押し付けられることがなくなったからだ。

 

他の家ではどうかは知らないが、ロゼルタの家では何故か『実用的な学問』というものが重視されていた。実用的といっても「手厚い保護が受けられる」だとか「軍に重用される」だとかそういったものばかりで、そのどれもがロゼルタの興味の引くものではなかった。

両親を失くしてからというもの、ロゼルタは本当に自分のしたい研究を好きなだけ出来るという自由を謳歌をしていた。─1通の手紙が届くまでは。

 

「古代文明の叡知に惹かれる同士がいることが嬉しい。是非ともにその未知を明かしてはみないか」

 

そんな文面を含んだ手紙には送り主の名前がなかったものの、記された紋章から皇室のものであることがわかった。

古代文明─。それはロゼルタの興味を独占した学問である。触れる人間が少なく難解なことから未だ多くの謎と失われた技術を持つ文明。おおよそこの国での『実用性』とは程遠いとされる学問だった。

だからこそ両親は学ばせたがらなかった代物なのだが、それを理由に皇室から目をかけられようとは、随分皮肉なものだった。

「·····」

文面を数度読み返し、ロゼルタは息を吐いた。

 

出来る限りの支援を約束することが書かれたその内容は、正直なところありがたいものだった。

研究に必要な道具、材料、そして資金。今も未知の分野に分類される『古代文明』は、他の学問で必要になるそれらが桁違いに多い。正直に言えば今の環境では限界があった。

そのうえ、皇室には関係する者でしか触れられない書庫がある。そこで知識を得られることもまた魅力的だった。

しかし、皇室に行けばおそらくまた「他人の指示で」研究を行うことになる。ロゼルタにはそれが気がかりだった。

 

手紙を元の通り丁寧に閉じ、封筒に直す。

机にあるものの中から一番上質な紙を選び、ロゼルタは返事を書き始めた。

 

─皇子直属の学者として取り立てられ、宮殿でまた新しい興味の対象と出会うのは、もうしばらくあとのことだ。

 

 


 
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